生命科学

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なぜ化石に残らない特徴が化石からわかるのか?生物が海から陸上へと進出した過程と「羊膜類」の出現が「石炭紀」だとわかる理由!

なぜ化石に残らない特徴が化石からわかるのか?生物が海から陸上へと進出した過程と「羊膜類」の出現が「石炭紀」だとわかる理由!完全な陸上進出を成し遂げた羊膜類昔、私たちは魚だった。それから長い進化の道のりを経て、私たちは哺乳類になった。そのあいだには、さまざまな出来事が起きたけれど、そのなかで最大の出来事の一つが陸上への進出だろう。gettyimages現在の私たちは、完全に陸上で生活することができる。多くの両生類も陸上で生活しているけれど、卵や幼生のときはたいてい水中で暮らしている。でも、私たちには、そういう時期はない。私たちのなかには、大人になるまで海や湖を見たことがない人もいるかもしれない。それでも、生きていくうえでは、とくに不都合はないのである。ところで、私たちが陸上生活を送れるようになるためには、「羊膜卵」の進化が決定的な役割を果たしたと考えられている(羊膜卵については後述する)。羊膜卵を持つ動物を「羊膜類」といい、現生生物のなかでは爬虫類と鳥類と哺乳類が含まれる。化石記録によれば、羊膜類は石炭紀(約3億5900万~2億9900万年前)に現れたと考えられている。ところが、羊膜卵は...
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わずかに頭角を現し、やがて急速に増えていく…「生命はあるけど生物じゃない」存在が「生命誕生の謎」を明らかにする「衝撃のシナリオ」

わずかに頭角を現し、やがて急速に増えていく…「生命はあるけど生物じゃない」存在が「生命誕生の謎」を明らかにする「衝撃のシナリオ」最初こそゆっくりだけど、時間とともに一気に増加する生命は必ず自己複製しないといけないか、というところから疑って考察すると、自己触媒という手段が考えられます。ふつうの触媒反応は、用いられる触媒分子Cによって、出発分子AからBがつくられるものです。触媒C自体は変化しません。しかし、CがAから自分と同じCをつくりだす反応があります。これが、自己触媒反応です。この反応では、Cは原材料Aがなくならないかぎりは増えつづけます。しかも、しだいに触媒が増えるため、反応速度も増加します。ただ、ふつうは材料に制限があるので、反応は減速されて頭打ちになります。自己触媒反応において、Cの濃度の変化をグルフに取ると、その変化はS字型の曲線「シグモイド曲線」となります(図「自己触媒反応」)。自己触媒反応。(b)では生成されたCが触媒となり反応速度を上げ、グラフ(図の右)上には特徴的なS字カーブ「シグモイド曲線」描かれるCの触媒能が小さく、もともとのCの濃度が低い場合も、Cの増え方は最初こ...
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この宇宙で生命は生まれているのか…じつは、生命の材料は「簡単」にできる。それでも、生命の生成を阻む、限りなく「確率ゼロに近い壁」

この宇宙で生命は生まれているのか…じつは、生命の材料は「簡単」にできる。それでも、生命の生成を阻む、限りなく「確率ゼロに近い壁」地球外生命検出の「ミシュラン方式」現在の地球においても、「1」(生命)と「0」(非生命)の区別は、実はそう簡単につかないことがわかりました。そのような状況で、地球外に生命がいるかどうかなど、どうやって調べたらいいのでしょうか。これまでに行われた例としては、ヴァイキング計画での、土壌を熱して出てくる有機物を調べる方法や、3つの「ヴァイキング生物学実験」があることは、以前の記事で紹介しました。これらは地球の表層環境での生物の検出から発想されたものでした。しかし最近では、火星には表層ではなく地下に生物がいる可能性が考えられていますので、光合成を調べる方法(図のA)などは使えないでしょう。生命の存在を調べる「ヴァイキング生物学実験」ヴァイキング生物学実験A:「熱分解放出実験」。火星の土壌に水と二酸化炭素を加え、光を当てたあとに土壌中で有機物がつくられるかどうかを調べる実験。もし地球の光合成生物(シアノバクテリアなど)のようなものがいれば、土壌を加熱したときに二酸化炭素...
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ますます深まる謎…ウイルスから考える「まぎれもない生物」と「明らかな無生物」のはざま

ますます深まる謎…ウイルスから考える「まぎれもない生物」と「明らかな無生物」のはざま生命と非生命の境界連続的なスペクトラムという考え方は、生命と非生命のあいだにも当てはめることはできないでしょうか。『生物と無生物の間』という本があります(川喜田愛郎/岩波新書)。副題は「ウイルスの話」とつけられています。たしかに、ウイルスは生物と無生物のあいだに置くことができるのかもしれません(なお、ほぼ同じタイトルでベストセラーになった『生物と無生物のあいだ』(福岡伸一/講談社現代新書)は生命とは何かについて考察をめぐらせたものです)。ウイルスが生物か生物でないかということは、たびたび議論されていますが、生命と非生命を二分する立場の生物学者から見ると、ウイルスは生物ではないとすることが多いようです。ウイルスは、細胞膜は持っていませんが、核酸(DNAもしくはRNA)を持ち、カプシドというタンパク質で覆われています。なかにはエンベロープとよばれる脂質二重膜を持つものもあります。しかし、単独では代謝ができず、宿主の細胞に入って宿主のタンパク質合成系を用いて、タンパク質を合成しています。以前の記事〈まさか…生...
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生における性の問題…男と女のあいだは、じつに「さまざまな状態」だった

生における性の問題…男と女のあいだは、じつに「さまざまな状態」だった虹の色から考える連続性生命と非生命はデジタル的に0と1に区分できるのでしょうか。それとも連続的につながっているのでしょうか。連続的なものには「スペクトラム」という言葉が使われることがありますが、もしかしたら生命においても「生命スペクトラム」という概念が成り立つのでしょうか。生命と非生命のあいだをどう埋めればよいかを考えていきたいと思います。空にかかる虹の色は、日本では「虹の七色(なないろ)」といわれています。外側からいえば、赤・橙・黄・緑・青・藍・紫です。これはニュートンが著書『光学』の中で虹の色を音階の7音(ドレミファソラシ)と対応させたからで、ニュートン以前は3色とか5色とされてきました。しかし、いまも虹を何色とするかは国によってさまざまで、オランダやイタリアなどはニュートンに従って7色としていますが、ドイツやフランスでは5色(赤・橙・黄・緑・青)とされ、アメリカやイギリスでは20世紀以降は、青や紫と見分けにくい藍を7色から除いて6色とすることが一般的です。実はニュートンも、虹の色がはっきり7つに分かれると思ってい...
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じつに、5000個もある「太陽系外の惑星」。そこに生命の存在は見出せるか…認めざる得なかった「地球の生命システム」の独自性と多様性

じつに、5000個もある「太陽系外の惑星」。そこに生命の存在は見出せるか…認めざる得なかった「地球の生命システム」の独自性と多様性全球凍結で生じた光合成生物の激減地球での生物進化を振り返り、そこに、非生命が生命に至るまでの化学進化について学ぶものがあるか、考えてきました。その過程で、前回の記事では、シアノバクテリアの大量発生を原因とする、地球大気の酸素濃度上昇「大酸化事変」が引き起こした「全球凍結」(スノーボール・アース)事件を取り上げました。では、全球凍結とは、どのような出来事だったのでしょうか。米国の地質学者ジョゼフ・カーシュヴィンクは、 6億3500万年前には赤道の直下だったはずの南オーストラリアの地層を調べたところ、そこに氷河が運んできた堆積物が存在するのを見つけ、この時期に地球全体が凍結していたとする全球凍結説を提唱しました。それまで知られていた新生代の氷河期は、氷河が中緯度まで押し寄せてきたとするもので、赤道までは凍っていませんでした。もし、赤道も凍っていたとすると地球は真っ白な惑星になり、太陽からの光の多くを反射するため、地球の温度はますます下がってしまうでしょう。それは...
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なんと、地球丸ごと氷に覆われた時代があった…生物進化と地球進化の「衝撃的なシンクロ」事件

なんと、地球丸ごと氷に覆われた時代があった…生物進化と地球進化の「衝撃的なシンクロ」事件「進化曲面」で考える進化前回、見てきたダーウィンの自然選択説は、いろいろと批判を受けてきましたが、変異が起きるしくみが説明されていないなどの欠点はあるものの、さきほど紹介した突然変異説や、新たに発展してきた遺伝学により補強されていきます。さらに、変異の多くは自然選択的に有利でも不利でもないという、日本の遺伝学者の木村資生(きむら・もとお。1924〜1994)が唱えた「中立進化説」が登場します。当初は自然選択説に対抗するものともみられましたが、変異はすべて中立であるとする考えは、実は自然選択説と共通するものであり、やがて両者は統合されていきました。こうして自然選択説のもとにこれらの説が一つにまとまっていき、現在では「総合進化説」や「ネオ・ダーウィニズム」などとよばれ、さまざまな修正を受け入れながらも基本的には進化のメカニズムの中心にすえられて、ダーウィン進化論は進化学の主流となっています。NASAの生命の定義にも「ダーウィン進化しうる自立した分子システム」と明記されています。自然選択説は、さまざまな修...
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この地球最大の謎「生命は、どうやって生じた」のか…じつに、40億年もの生物進化から見えてきた「意外すぎる盲点」

この地球最大の謎「生命は、どうやって生じた」のか…じつに、40億年もの生物進化から見えてきた「意外すぎる盲点」有力説ながら、不明点も多い「化学進化説」1920年代、オパーリンとホールデンは、生命の誕生を単純な物質から複雑で組織化された物質への化学進化によって説明しようとしたことを、かつての記事で述べました。この化学進化説はいまも、多くの研究者に大筋では認められています。しかしながら、その詳細については不明な点だらけです。アレクサンドル・イヴァノヴィッチ・オパーリン(左)とアレクサンドル・オパーリン*参考記事:「生命は自然に発生する!」ありえないとされた説が息を吹き返して提唱された「生命の一歩手前」の衝撃の姿そのため数回にわたるシリーズ記事でも、化学進化の道筋をより明瞭なものにするため、他の天体での化学進化を探ったり、もし「第2の生命」が存在すればそれと比較したりする必要があることを述べました。しかし、惑星探査には時間がかかるため、それらの情報が得られるのは、少し先のことになりそうです。そこで今回から数回にわたって、現時点でも地球上で可能な、化学進化についての考察を深める手段をみていきま...
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「土踏まずがある人」と「偏平足の人」では、どちらが進化しているのか…あまりに「誤解されすぎている考え」から導き出す「本当の答え」

「土踏まずがある人」と「偏平足の人」では、どちらが進化しているのか…あまりに「誤解されすぎている考え」から導き出す「本当の答え」土踏まずがない横綱「土俵の鬼」と呼ばれた横綱がいた。1958年に横綱に昇進し、栃錦とともに栃若時代を築き上げた二代若乃花である(初代若乃花(あるいは若ノ花)とされることが多いが、師匠である大ノ海も若ノ花の四股名を使っていたことがあるので、正しくは二代である)。この若乃花は、自分には土踏まずがない、と言っていた。土踏まずがない足のことを偏平足というが、どうやら若乃花は偏平足だったらしい。土踏まずがなかった初期の人類土踏まずというのは、脚の裏にある凹んだ部分のことで、かかとと親指の付け根を結ぶ骨が上向きにアーチ状の構造をしているために形成される。足は地面に着地するときに衝撃を受けるが、その衝撃を吸収するクッションの役割を果たすので、歩くときに便利な構造である。土踏まずが見えるよう、左内側から写した右足のレントゲン写真 photo by gettyimages人類の進化において、チンパンジーに至る系統と私たちに至る系統が分かれたのは、およそ700万年前のことと推定さ...
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もしも「地球外生命」が見つかったら…原始地球で繰り広げられた「生命誕生のシナリオ」は、どう塗り替えられるのか

もしも「地球外生命」が見つかったら…原始地球で繰り広げられた「生命誕生のシナリオ」は、どう塗り替えられるのか地球の化学進化のヒントとなるタイタンの大気組成地球での生命誕生の痕跡は、現在の地球上にはまったく残っていません。そのため、化学進化の過程を議論するためには、実験室内で模擬実験をしたり、計算シミュレーションをしたりする方法が主流になっていますが、天体という大きなスケール、長い時間で実際にどのようなことが起きるかを知るには、それらでは不十分な点が多々あります。そこで、他の天体に注目するわけです。自然界でどのような化学進化が起きうるのかを考える手がかりとして、最も有力視されている天体はタイタンです。大気中の窒素とメタンから、さまざまなエネルギーによって、どこでどのような有機物ができるのかをカッシーニ計画で調べたところ、高度950km以上の高層大気で、波長が短い紫外線により、高分子量の複雑な有機物(カール・セーガンがいう「ソーリン」)が生成していることがわかりました。また、もう少し下方(高度数百km)でも、土星の磁気圏の電子によるプラズマ放電でソーリンが生成していて、これがタイタン上空で...
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じつは、ここ20年ほどで「海のある天体」は、次々と見つかっている…「地球外生命の発見」が、一気に現実味を増した「衝撃的な発見」

じつは、ここ20年ほどで「海のある天体」は、次々と見つかっている…「地球外生命の発見」が、一気に現実味を増した「衝撃的な発見」タイタンの謎に迫る「カッシーニ・ホイヘンス計画」前回の記事でご紹介したボイジャーによる探査の結果、土星の惑星「タイタン」の表面には、「液体のメタンの海があって、その海の中では、水の代わりにメタンを使うような生物が存在しているのではないか」という疑問と期待がふくらんでいきました。タイタンは生命が存在しうる「ハビタブル世界」なのか?この謎の解明を目的として、NASAと欧州宇宙機関(ESA)、さらにイタリア宇宙機関(ASI)がスクラムを組んだのが「カッシーニ・ホイヘンス計画」です。1997年、NASAが製造した探査機「カッシーニ」が打ち上げられ、2004年に土星系に到達すると、タイタン着陸用にESAが製造した「ホイヘンス」が切り離されました。翌年1月、ホイヘンスはタイタンの大気を調べながら降下し、無事に着陸しました。着陸したホイヘンスのイメージ・イラスト illustration by gettyimagesベールを脱いだ「タイタンの素顔」こうしてそれまで「もや」で見...
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「水」の痕跡があった…! 「大気」が似ていた…! 今も地球からもっとも遠くを飛ぶボイジャーが、地球を沸かせた「衝撃的発見」

「水」の痕跡があった…! 「大気」が似ていた…! 今も地球からもっとも遠くを飛ぶボイジャーが、地球を沸かせた「衝撃的発見」ミッション「液体ノ水ヲ探索セヨ」NASAの標語にも「Follow the Water!」とあるように、地球外生命を探査するとき、まず考慮されるのが液体の水の存在です。現在の地球は、表面の約70%を液体の水に覆われています。水は宇宙ではありふれた物質ですが、その表面に水が液体として存在する天体は珍しく、太陽系においては、いまでは地球のみです。内側の“隣人”、金星は太陽に近く、表面温度が水の沸点を超えていますし、外側の火星の表面では、わずかに残っている水はほぼ氷の状態です。このため、宇宙での生命の存在を考えるときは、天体の表面で液体の水が存在できることが最重要と考えられるようになりました。なお、水が惑星表面に液体で存在できる範囲は「ハビタブルゾーン」とよばれています。この考えでいきますと、木星や土星はハビタブルゾーンの外側ということになります。1977年、NASAは2機の惑星探査機を打ち上げました。「ボイジャー1号」と「ボイジャー2号」です。1979年に2機は相次いで、...
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これは、本当に生物だったのか…あまりに小さすぎる「火星の芋虫」が起こした「地球外生命への期待」

これは、本当に生物だったのか…あまりに小さすぎる「火星の芋虫」が起こした「地球外生命への期待」火星探査のみならず、地球外生命研究にも影響1976年のヴァイキング1号、2号が採取した火星土壌から生命が存在する証拠となるものが発見されなかったことから、火星探査も下火になっていましたが、1996年8月7日、その後の火星探査のみならず、地球外生命研究の方向をも一変させる発表が、NASAのダニエル・ゴールディン長官によって行われました。日本でも多くの新聞やテレビがトップニュースとして報じましたので、ご記憶の方もいらっしゃると思います。それは米国の研究チームが「ALH84001」とよばれる隕石中に、生命の痕跡を発見した、というものでした。1984年に南極のアランヒルズで発見されたその隕石は、内部に閉じこめられていたガスの分析から、火星から飛来したものであることがわかっていました。その中に生命の痕跡があったということは、火星に生命が存在していたということになります。火星由来の隕石「ALH84001」 photo by NASA火星の「芋虫」から始まったアストロバイオロジーこの火星隕石を観察したのは、...
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地球以外に存在するのか…「地球外生命」への大きすぎた期待と、じつに意外だった「ヴァイキング探査の結果」

地球以外に存在するのか…「地球外生命」への大きすぎた期待と、じつに意外だった「ヴァイキング探査の結果」生物学者と天文学者地球以外に生命を宿す星はあるのだろうか?これは生命の起源と並ぶ、未解決の大きな謎です。しかし、この二つの謎は、一つの謎の二つの面といってもいいでしょう。生命が簡単にできるものならば、地球以外でも生命ができる星はいくらでもあるでしょう。しかし、生命の誕生が難しいものならば、たとえば、以前の記事で紹介したフレッド・ホイルらの考え*が正しければ、宇宙でもそうそう奇跡は起きないでしょうから、地球外生命の可能性は低いことになります。フレッド・ホイル photo by David Levenson / gettyimages科学者の中でも、生命の起源の細かい議論を別とすれば、生物学者は、「生命のような複雑ですばらしいものが、地球以外でそう簡単にできるわけはない」と考える人が多く、一方で天文学者は、「地球は特別な惑星ではない、これほど広い宇宙で地球以外に生命がいないわけがない」と考える人が多いといわれてきました。2000年頃からはアストロバイオロジーに参入する生物学者も増えてきて、...
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なんと、原始の大気に陽子線をあてたら「がらくた分子」ができた…! じつは、これこそが「生命のはじまり」かも、という「驚きの仮説」

なんと、原始の大気に陽子線をあてたら「がらくた分子」ができた…! じつは、これこそが「生命のはじまり」かも、という「驚きの仮説」放射線によってできる「がらくた分子」原始大気や宇宙空間などで、放射線の影響によりアミノ酸前駆体が生成することを述べてきました。では、こうしてできるアミノ酸前駆体とは、どのようなものなのでしょうか。もし、ミラーや欧米の多くの研究者が考えるように、アミノ酸がストレッカー合成*でできるならば、その前駆体はアミノアセトニトリルという比較的単純な分子(図2 ‒ 5)のはずです。しかし、加速器実験による生成物を加水分解する前に分析したところ、アミノアセトニトリルは少量しか存在せず、加水分解後に生じるアミノ酸のごく一部しか説明できないことがわかりました。では、ここでのアミノ酸前駆体とは、おもにどのような分子なのでしょうか。*ストレッカー合成:アルデヒド(またはケトン)とアンモニア、シアン化水素との反応により、アミノ酸を合成する反応。詳しくは、『生命と非生命のあいだ』第2章、もしくは記事〈残念ながら、原始地球の大気に「メタンありき」は、思い込みだった…衝撃的だった「ミラーの実...
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なんと、この「地球の生命」が持つアミノ酸は「特別な比率」だった…地球に飛来した「マーチソン隕石」が、生命科学者に投じた衝撃の波紋

なんと、この「地球の生命」が持つアミノ酸は「特別な比率」だった…地球に飛来した「マーチソン隕石」が、生命科学者に投じた衝撃の波紋マーチソン隕石に含まれていた多様なアミノ酸1969年9月にオーストラリア・ビクトリア州に飛来したマーチソン隕石が、その後のアストロバイオロジーに非常に重要なインパクトを与えた、と書かれていました。小林憲正氏(以下、小林):マーチソン隕石が飛来した1969年は、惑星科学にとって「奇跡の年」でした。その分野で、大きな進展が複数あった年として知られています。1969年7月20日、アポロ11号が史上初めて人類による月面着陸を成功させました。アポロ11号とマーチソン隕石の関係性については、後ほど説明します。隕石の中には、最大3質量%程度の有機物を含むものもあれば、ほとんど含まないものもあります。マーチソン隕石は、有機物をふんだんに含む隕石でした。加えて、多くの種類のアミノ酸も含む、非常に珍しいタイプの隕石だったのです。もちろんマーチソン隕石以前にも、地球に飛来した隕石からアミノ酸が検出されたことはありました。しかし、再検証すると、検出されたアミノ酸は人の指紋やほこりに由...
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じつは、多くの人が「生命のシステムは1種類」だけと思っている…「地球外生命」の存在をも左右しかねない「驚愕の生命観」

じつは、多くの人が「生命のシステムは1種類」だけと思っている…「地球外生命」の存在をも左右しかねない「驚愕の生命観」地球外生命体はいるのか地球外生命体は、いわゆる「観測可能な宇宙」にいるのでしょうか。小林憲正氏(以下、小林):私も含め、アストロバイオロジーの研究をしている研究者は、長らく「観測可能な宇宙」の中に地球外生命体がいるか否か、実験や議論を重ねてきました。観測可能な宇宙には、10²³個ほどの星があります。宇宙空間に膨大に存在する星の中で、太陽もその周りを公転している地球も、ありふれた星に過ぎません。特別ではない太陽系の珍しくもない衛星である地球に生命が存在しているということは、広く見渡せば、宇宙のどこかに複数の地球外生命が存在していても不思議ではないと思います。東京大学大学院教授の戸谷友則氏は「観測可能な宇宙に地球外生命が存在している可能性は極めて低い」「ただし観測可能な宇宙の外まで考慮すると地球外生命が存在する可能性は高い」という説を発表しています。小林:「観測可能な宇宙に生命が存在しているか」という問題に対する考え方は、研究者によってまちまちです。生命の起源をどう定義するか...
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スーパーフレアが地球生命を生んだのか…? じつは、宇宙線が「生命の材料」を生成していた「衝撃の事実」

スーパーフレアが地球生命を生んだのか…? じつは、宇宙線が「生命の材料」を生成していた「衝撃の事実」太陽がスパーフレアを起こす可能性こうしたフレアは「スーパーフレア」とよばれています。それまでは太陽はスーパーフレアを起こさないと信じられてきたのですが、この観測によって、1000年に一度くらいはスーパーフレアを起こすことは想定しておく必要があると考えられるようになりました。なんの準備もせずにスーパーフレアに遭遇してしまった場合、生物学的にすぐに人類が滅ぶところまではいかないでしょうが、電気を基盤とする人類の文明が崩壊してしまう可能性があります。一般に恒星ができたての頃は、見た目は暗いのですが、フレアを頻繁に起こすなど、活動は活発です。ということは、若い頃の太陽は現在よりもスーパーフレアを数多く起こしていた可能性が考えられます。若い頃の太陽は現在よりもスーパーフレアを数多く起こしていた可能性が考えられる illustration by gettyimagesスーパーフレアが地球生命を生んだのかNASAゴダード宇宙飛行センターのウラディーミル・アイラペティアン博士は、理論的にその可能性を計算...
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じつに、恐るべき「太陽フレア」による宇宙線…なんと、地球誕生時には「もっと頻繁に起こっていた」かもしれない

じつに、恐るべき「太陽フレア」による宇宙線…なんと、地球誕生時には「もっと頻繁に起こっていた」かもしれない加速器実験でアミノ酸ができた!筆者が生命の起源についての研究を始めたのは、東京大学で博士号を取得したあと、1982年から1986年まで米国メリーランド大学化学進化研究所に博士研究員として研究をしていた頃のことです。筆者は、進化研究所の4つの研究室(地球化学、惑星化学、有機化学、生化学)のうち、惑星化学研究室を担当し、主としてさまざまに組成を変えた惑星大気から有機物を合成していました。まさに、ミラーの実験の発展版といえます。帰国後、東京工業大学教授(当時)の大島泰郎(たいろう)先生から、「東工大にある加速器を使って何か実験ができないか」とのお誘いをいただきました。加速器とは、陽子などの粒子にエネルギーを与えて非常に速い速度まで加速する装置で、通常は原子核物理の研究などに使われています。私はそれまで、ガンマ線を照射する実験は経験がありましたが、加速器を使ったことはありませんでした。まずは、加速器を使うことが何のシミュレーションになるかを考える必要がありました。文献で知っていたのは、メル...
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なんと、深海の熱水孔より「高温の熱水を噴き出すスポット」が陸上にあった…「生命誕生は陸上」説で生じる謎と「うまい具合のシナリオ」

なんと、深海の熱水孔より「高温の熱水を噴き出すスポット」が陸上にあった…「生命誕生は陸上」説で生じる謎と「うまい具合のシナリオ」新しい「系統樹」前回の記事でご紹介した熱水噴水孔が、深海底で相次いで発見された、その頃、生物学では進化の研究について、新たな方法が用いられるようになっていました。黒い煙のように噴き出す「ブラックスモーカー」(前回記事より再掲) photo by gettyimagesダーウィンは、すべての生物を形態で比較して樹の枝のようにつないだ「生命の樹」を考えましたが(図「生命の樹から分子系統樹へ」の左[ダーウィンの「生命の樹」])、20世紀後半になって核酸の塩基配列が調べられるようになると、形態のかわりにこれを使って「分子系統樹」をつくることが可能になったのです。米国イリノイ大学の生物学者カール・ウーズ(1928〜2012)は、すべての生物が持っているリボソームRNAの塩基配列を用いた、分子系統樹をつくりました。この系統樹では、すべての地球生命は共通の祖先から進化したものとなります。共通の祖先はまず、原核生物の2つのタイプ、バクテリア(真正細菌)とアーキア (古細菌)に...