欧州の歴史

ロシアの歴史

ナチスと戦わなかったEU諸国とナチスと戦ったロシア、それぞれの戦勝記念日

ナチスと戦わなかったEU諸国とナチスと戦ったロシア、それぞれの戦勝記念日 第2次世界大戦は連合国の勝利で終わった。ヨーロッパ戦線で連合国と戦っていたのはドイツであり、戦勝記念日はドイツが降伏した日ということになるのだが、ヨーロッパは5月8日、ロシアは5月9日に祝っている。 ヨーロッパでの戦争は1939年9月1日にドイツ軍がポーランドへ軍事侵攻した時に始まったとされている。チェコスロバキアをドイツ軍が侵攻した際には黙認していたイギリスやフランスなどは9月3日に宣戦布告するのだが、それから半年間、本格的な戦闘はなかった。いわゆる「奇妙な戦争」の期間だ。 イギリスやフランスだけでなくドイツも戦争の準備ができていなかったのだが、それだけでなく、ドイツはイギリスやフランスに対して和平を呼びかけ、拒否されている。ドイツは1940年7月に停戦を呼びかけた際、イギリスの権益を傷つける意思がないことを伝えるが、米英両国は応じなかった。(Patrick J. Buchanan, “Churchill, Hitler and ‘The Unnecessary War’,” Crown, 2008) ソ連軍は...
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ロシアとの戦争に執着する大英金融帝国

ロシアとの戦争に執着する大英金融帝国 ウクライナを舞台にした戦闘でロシアが勝利したことは明白である。ロシアにはNATO/ウクライナと話し合う意味がないものの、ウクライナや西側諸国は停戦を実現して態勢を立て直す時間が欲しいはずだ。自分たちの好戦的な政策が破綻したことを人びとに気付かれたくないということもあるだろう。 アメリカをはじめとするNATO諸国は2014年から8年かけて反クーデター派の人びとが生活するドンバスの周辺に要塞線を築き、本格的な攻撃の準備が整った2022年にロシア軍が一歩早く攻撃を開始、そこから戦況はロシアが優勢なまま現在に至っている。要塞線はマリウポリ、ソレダル、マリインカ、アウディーウカの地下要塞が軸になっていたが、2024年2月までに全て陥落。この時点でNATO/ウクライナの敗北は決定的だった。 ネオ・ナチを使ったクーデターでNATO諸国は2014年2月22日、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒すことに成功するが、軍や治安機関の中にはネオ・ナチ体制に反発する人も少なくなかったようで、約7割が離脱し、一部は半クーデター軍に合流したと言われている。そのためクーデター軍は反ク...
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トランプ復帰が促すアメリカ世界統治の終焉――自壊する「西洋」と私たちはどう向き合うか① 東京外国語大学名誉教授・西谷修

トランプ復帰が促すアメリカ世界統治の終焉――自壊する「西洋」と私たちはどう向き合うか① 東京外国語大学名誉教授・西谷修ドナルド・トランプとイーロン・マスク(1月、ワシントン)アメリカ大統領に返り咲き、就任直後から次々と既定路線を覆していくドナルド・トランプの言動に世界中が翻弄され、メディアもまるで予測不能な暴れ者が世界を手中におさめたかのようにとりあげている。国内外政策の大幅な転換に踏み切っているように見えるトランプの再登場とそれを生み出したアメリカの今をどう見るか――本紙は、『アメリカ 異形の制度空間』(講談社選書メチエ)などの著書でアメリカの特異性とその世界への影響について論考を展開してきた東京外国語大学名誉教授の西谷修氏にインタビューし、その考察をまとめた。3回に分けて連載する。(文責・編集部)―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― アメリカ大統領に復帰したドナルド・トランプの言動に今、世界が振り回され、混乱が拡大している。 彼は一度選挙で追い落とされ、「ホワイトハウスを譲らない」といえばクーデターといわれ、訴追までされた。にもか...
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ドイツ戦争責任の終わり?

ドイツ戦争責任の終わり?2025年2月3日   田中 宇ドナルド・トランプの事実上の特使として国際言論を使った攻撃(や実験?)を進めるイーロン・マスクが、ドイツ国民に対し、第二次大戦のナチスの戦争責任にもう拘泥するなと勧める発言を放った。マクスは1月25日、ドイツ東部のハレで開かれた右派政党AfDの集会(4千人参加)に動画をつないで画面参加して演説した。(Elon Musk faces criticism for encouraging Germans to move beyond 'past guilt')マスクは演説で「(ドイツ人は第二次大戦の)歴史的な罪にこだわりすぎだ。子供たちは、親や祖父母の罪を自分たちの罪として背負うべきでない。過去を乗り越えて未来に向かうべき」とか「ドイツの文化や伝統価値は素晴らしい。誇りに思うべき。(リベラル派や権威筋マスコミが流布する英米系の)多文化主義に希釈されている現状から脱した方が良い」「ドイツの文化を重視するAfDは素晴らしい」といった趣旨を述べた。(Elon Musk tells Germans to be ‘proud’)マスクの発言は、こ...
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米英の長期戦略が世界を核戦争の瀬戸際まで追い詰めている

米英の長期戦略が世界を核戦争の瀬戸際まで追い詰めている ウクライナやパレスチナは戦乱で建造物だけでなく社会そのものが崩壊、東アジアもきな臭くなっている。いずれの地域でも中心的な役割をは対しているのはアングル・サクソン系国のアメリカとイギリスだ。 米英を含むヨーロッパは近代と呼ばれている時代を築いた。そうしたことを可能にした富の相当部分は16世紀以降、ラテン・アメリカから盗み出されている。 例えば、1545年に発見されたボリビアのポトシ銀山では18世紀までに少なくとも15万トンが運び出されたとされ、スペインが3世紀の間に南アメリカ全体で産出した銀の量は世界全体の80%に達したと言われている。全採掘量の約3分の1は「私的」にラプラタ川を経由してブエノスアイレスへ運ばれ、そこからポルトガルへ向かう船へ積み込まれた。 スペインも同じように略奪していたが、それらの国が財宝を運ぶ船を海賊に襲わせて富を築いたのがエリザベス1世時代のイギリスだ。中でも悪名高い海賊がジョン・ホーキンス、フランシス・ドレイク、ウォルター・ローリーである。 ホーキンスの場合、西アフリカでポルトガル船を襲って金や象牙などを盗...
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米国が始めたロシアとの戦争にのめり込み、自国を破壊したドイツの政治家

米国が始めたロシアとの戦争にのめり込み、自国を破壊したドイツの政治家 ドイツ連邦議会の有力議員、ノルベルト・レットゲンはアメリカの大統領選挙でドナルド・トランプが勝利することを懸念している。レットゲンはドイツがアメリカ軍に占領されている状態を受け入れている政治家で、トランプが勝利するとウクライナにおける戦争でロシアの勝利、つまりアメリカ/NATOの傀儡軍の敗北が決まり、西側諸国は分裂するとしている。 1941年6月にドイツはロシアに対する軍事侵攻作戦「バルバロッサ」を始めるが、最初に侵攻した国がウクライナにほかならない。米英の傀儡軍事組織であるNATOがウクライナを支配下に置くことは新たなバルバロッサ作戦の始まりにほかならず、それをロシアが容認するはずはなかったが、アメリカの外交や安全保障分野を支配しているシオニストはウクライナ制圧を目論む。 ソ連は1991年12月に消滅したが、その前、1990年にウクライナ議会はソ連からの独立を可決している。それに対し、ソ連時代に民意を無視してロシアからウクライナへ割譲されたクリミアでは1991年1月にウクライナからの独立を問う住民投票を実施、94%...
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この水に100万市民の命がかかっていた…ローマ帝国の水道「驚愕の精密さ」

ギリシャ・ローマ時代の科学、技術のレベルはかなり高かったようです。自然現象をしっかり観察し、その原理や摂理を応用して、これを科学、技術にまで昇華させる。そして、国家や社会の基盤建設を実現させていく思考過程は現代の科学技術にかけている思考のようにも思います。この水に100万市民の命がかかっていた…ローマ帝国の水道「驚愕の精密さ」古代ローマの時代、ローマ水道が建築されました。6月24日は、そのうちの1本であるトラヤナ(トライアーナ)水道が完成した日です。ローマ帝国は、帝国内の各大都市において水道を建設しましたが、なかでも最大の都市ローマには、500年あまりにわたり、11本もの水道が開鑿(かいさく)されました。このうち、トラヤナ水道は、帝国内の公共施設の強化に努めたトラヤヌス帝(在位期間は98年 〜117年)の時代、紀元109年にローマへの10本目の水道として完成したものです。トラヤナ水道は、初期に造られたアッピア水道(紀元前312年)やアルシエティーナ水道(紀元前2年ころ)の水量や水質に問題が生じてきたために、造られました。ローマの北西30kmほどのところにあるブラッチャーノ湖で取水され、...