世界各国

現代のロシア

ウクライナ和平交渉、EUの軍事化、そしてキエフ政権の運命:ラブロフ外相の演説から読み取れる重要なポイント

ウクライナ和平交渉、EUの軍事化、そしてキエフ政権の運命:ラブロフ外相の演説から読み取れる重要なポイントロシアの外交官は、EUが和平プロセスを妨害しようとしていると非難しながら、モスクワは和平提案の草案を最終決定していると発言した。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が、国民のアイデンティティと民族の自決に関する会議に参加する©  セルゲイ・グネエフ、RIAノーボスチロシア外相は金曜日のいくつかのイベントで、ウクライナ紛争の解決に関する幅広い話題や、このプロセスで米国とEUが果たす役割に関するモスクワの見解について語った。モスクワで開かれた国際会議で演説し、その後の質疑応答で記者団に答えたこの外交トップは、ウクライナのウラジーミル・ゼレンスキー大統領とキエフ「政権」の将来、紛争の仲介における米国の役割、そして敵対行為の長期化に対してEUが負う責任について語った。彼の発言から得られる重要なポイントは以下のとおりです。ウクライナ和平プロセスラブロフ外相は、紛争の根本原因に焦点を当て、現地の現状を認めるのであれば、ロシアは引き続き新たな交渉に応じる用意があると強調した。同氏は、ロシアは現在、潜在的...
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オバマの侵略戦争でシリアとリビアはアル・カイダ、ウクライナではネオ・ナチ

オバマの侵略戦争でシリアとリビアはアル・カイダ、ウクライナではネオ・ナチ バラク・オバマ政権が侵略戦争を始めたリビアとシリアはアル・カイダ系武装集団に制圧された。​このアル・カイダとはCIAの訓練を受けた「ムジャヒディン」の登録リストだということをイギリスの外務大臣を1997年5月から2001年6月まで務めたロビン・クックは05年7月8日付けガーディアン紙で説明している​。そのクックは2005年8月6日、休暇先のスコットランドで散歩中に心臓発作で急死した。 アル・カイダの仕組みを作り上げた人物は、ジミー・カーター政権で国家安全保障補佐官を務めたズビグネフ・ブレジンスキー。戦闘員はサウジアラビアの協力で集められたが、その中心はサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団だった。 カーターは1971年から75年までジョージア州知事を務めたが、その時、カーターに目をつけたのがブラジンスキーとデイビッド・ロックフェラー。ラジンスキーとロックフェラーは日米欧三局委員会をアラン・グリーンスパンやポール・ボルカーらと創設している。ブレジンスキーはオバマの師匠でもある。 2009...
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ケネディ米厚生長官、諸国に「WHO脱退」呼び掛け

ケネディ米厚生長官、諸国に「WHO脱退」呼び掛けスイス・ジュネーブで開催された世界保健機関(WHO)の総会で、ビデオメッセージを寄せる米国のロバート・F・ケネディ・ジュニア厚生長官(2025年5月20日撮影)。(c)World Health Organization (WHO)/AFP【5月21日 AFP】ロバート・F・ケネディ・ジュニア米厚生長官は20日、世界保健機関(WHO)が肥大化し機能不全に陥ったと非難し、代わりに新たな機関を設立するために他国に「われわれに加わることを検討」するよう求めた。ケネディ氏はWHO総会にビデオメッセージを寄せ、WHOが中国、ジェンダーイデオロギー、製薬業界から過度の影響を受けていると述べた。ドナルド・トランプ米大統領は1月の就任後、1年にわたるWHO脱退に向けた手続きを開始した。米国は伝統的にWHOの最大の資金拠出国であった。米国の脱退と2024年および25年の分担金の支払い拒否により、WHOは財政的に苦境に陥っている。ケネディ氏はビデオメッセージの中で、「WHOは官僚主義の肥大や凝り固まった考え方、利益相反、国際的な権力政治に陥っている」と非難。「...
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米露首脳会談の中身は?

米露首脳会談の中身は?2025年5月19日   田中 宇5月16日にトルコのイスタンブールで行われた3年ぶりのロシアとウクライナの停戦交渉会議は、予定通り、中身が薄かった。両国は、千人規模の捕虜交換を決めたが、それだけだった。ウクライナ戦争は、停戦せず今後も続く。(Russian Delegation Satisfied With Ukraine Talks Outcome, Ready to Continue Dialogue)トランプ米大統領は、ウクライナのゼレンスキー大統領を加圧して出席させた。ゼレンスキーは当初、プーチンも来るならイスタンブールに行っても良いと言っていたが、プーチンは来なかった。ロシア側は3年前と同じ下級の代表団だった。プーチンは、下級の代表どうしで交渉して合意できたらゼレンスキーと会っても良いと言っている。ゼレンスキーは領土の譲歩を拒否しているので下級どうしで合意できない。(Russia's Maximalist Demands At Istanbul Peace Talks Revealed)「ゼレンスキーがイスタンブールに行かないならウクライナへの軍事支援...
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表裏あるシリアとの和解

表裏あるシリアとの和解2025年5月18日   田中 宇5月14日、サウジアラビアを訪問中のトランプ米大統領が、シリアのシャラア(暫定)大統領と会った。昨年末にシリアを政権転覆したシャラアは「アルカイダ(聖戦士団)」のシリア支部を作った(元)指導者で、米国からテロリストとみなされて1000万ドルの懸賞金がかかっていた。トランプがシャラアと会ったのは予定外で、意外な行動とされた。しかもトランプはシャラアを「戦士という強い過去を持った、強靭で魅力のある奴だ」と絶賛した。トランプは、テロリストを称賛した。(Trump Meets With Syria's Al-Qaeda Leader-Turned President, Praises His 'Strong Past')トランプは、シリアを乗っ取ったテロ戦士のシャラアに会って絶賛しただけでなく、米政府の対シリア制裁も解除した。トランプは、シャラアに会う前日、サウジに着いてすぐに行った演説で、MbSに頼まれてシリア制裁を解除することにしたと発表している。米軍はシリアに千人ぐらい駐留しているが、それも撤退する方向だ。トランプは、シリアと国交を...
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トランプ関税のせいで世界の79%の国がアメリカより中国に好感 デンマークのシンクタンクが調査

トランプ関税のせいで世界の79%の国がアメリカより中国に好感 デンマークのシンクタンクが調査2025年 中国・中南米カリブ海諸国共同体フォーラムで基調演説をする習近平国家主席(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)トランプ関税が発表されたあとの今年4月9日から23日にかけて、デンマークに根拠地を置くシンクタンク「アライアンス・オブ・デモクラシーズ(Alliance of Democracies=AoD)」(創設者はNATO元理事長)が世界100ヵ国11万1,273人を対象に意識調査を行なった(調査の実施自体はNira Dataに依頼)。そのデータDPI2025が5月12日に発表された。ただし、このリンク先からデータを得るには各自が自分の名前やメールアドレスなどの個人情報を入力しないとならない。そのプロセスを経てデータを入手したところ、世界の79%の国が「アメリカよりも中国に好感を持っている」と回答していることが分かった。DPIとはDemocracy Perception Index(民主認識指標)のことだが、「認識」というのは直訳で、「評価」という言葉を使った方が日本人にはピンとくるかもし...
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トルコでの交渉でロシアはウクライナやNATO諸国が目論む時間稼ぎを拒否

トルコでの交渉でロシアはウクライナやNATO諸国が目論む時間稼ぎを拒否 5月15日にイスタンブールでウクライナ情勢に関して話し合う会議が開かれた。ロシア政府はウラジミル・メジンスキー大統領補佐官を団長とする代表団、ウクライナ政府はルステム・ウメロフ国防相を団長とする代表団を送り込んだが、話し合いは2時間足らずで終わった。会談ではロシアの代表団がウクライナ側に対し、ドネツク、ルガンスク、サポリージャ、ヘルソンからの完全撤兵を要求、ウクライナ側が拒否したところで終了したという。 キエフ体制やその後ろ盾になっているイギリス、フランス、ドイツなどヨーロッパ諸国は停戦を求めているが、停戦は戦力を増強して態勢を立て直す時間稼ぎにすぎないことを理解しているロシアが応じないことは明白だった。2014年のミンスク1と15年のミンスク2で煮湯を飲まされた過去をロシアが忘れているはずはない。戦場で西側を圧倒しているロシアは事実上の降伏を要求している。仲介役を演じようとしているアメリカ政府はこうした状況を理解していないのかもしれない。 ロシアはすでにドネツク、ルガンスク、サポリージャ、ヘルソンの4州をロシア領...
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これがウクライナ和平の実態だ! ゼレンスキーと西側諸国首脳は「小芝居」を止めよ

これがウクライナ和平の実態だ! ゼレンスキーと西側諸国首脳は「小芝居」を止めよ政治経験なしにウクライナの大統領役から本物の大統領になったウォロディミル・ゼレンスキーは、さすがに小芝居がうまい。それを後ろで本物らしく見せかけているのが欧州の政治指導者であり、テレビや新聞といったオールドメディアだ。今回は、彼の小芝居の舞台裏を暴くことで、ウクライナ戦争の停戦・和平問題の実態について論じてみたい。不誠実なゼレンスキーと欧州指導者まず、5月10日からどんな出来事が進行中かをおさらいしてみよう。この日、フランス、ドイツ、ポーランド、英国の首脳がキーウに集まり(下の写真)、ゼレンスキーとともに、12日から少なくとも30日間の停戦を提案する共同声明を出した。それによると、「停戦は少なくとも30日間継続し、外交のためのスペースを確保することで合意した」。左からキール・スターマー英首相、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領、エマニュエル・マクロン仏大統領、ドナルド・トゥスク・ポーランド首相、フリードリッヒ・メルツ独首相がウクライナのキーウからドナルド・トランプ米大統領に電話をかける(出典:AP通信)(出所...
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いつの間にか“キリストの代理者”に。そもそも「ローマ教皇」とは何か?

いつの間にか“キリストの代理者”に。そもそも「ローマ教皇」とは何か?先日、新しいローマ教皇を決める選挙「コンクラーベ」が8日行われた結果、アメリカ・シカゴ出身のロバート・フランシス・プレボスト枢機卿が選ばれ「レオ14世」と名乗ることが発表されました。これは、ローマ・カトリック教会のフランシスコ前教皇が4月に亡くなったことを受けておこなわれたものですが、そもそもローマ教皇とはどんな存在なのでしょうか? メルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』の著者である作家・ジャーナリストの宇田川敬介さんが、改めてローマ教皇という存在について解説しています。新しいローマ教皇にレオ14世。ところで「ローマ教皇」とは?ローマ教皇とは、カトリック教会の最高位聖職者の称号であり、一般的にはカトリック教会のローマ司教にして、全世界のカトリック教徒の精神的指導者です。初期のローマ司教たちはペトロの後継者、ペトロの代理者を任じていましたが、時代が下って教皇の権威が増すに従って、自らをもって「イエス・キリストの代理者」と評すようになっていきました。もともとは十二人の使徒のひとりの後継者なのに、いつの間にか格...
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115%の関税引き下げ トランプ最大の誤算は「中国の報復関税」か 日本は?

115%の関税引き下げ トランプ最大の誤算は「中国の報復関税」か 日本は?スイスで米中貿易協議 追加関税の一時引き下げで合意 米側記者会見(写真:ロイター/アフロ)5月12日、米中関税交渉の結果、互いに90日間115%もの関税引き下げを行うという劇的な発表があった。5月7日にトランプ大統領は対中関税145%を引き下げるかと聞かれ「ノー!」と断言し、その2日後の5月9日には「80%まで引き下げるのが適当かもしれない。ベッセント次第だが」と投稿したばかりだ。喧嘩を吹っ掛けた方から引き下げるとは言えないので、ベッセント財務長官のせいにして、その実、トランプは切羽詰まった状況に追い込まれていたものと考えられる。なぜなら5月9日には145%関税を受けた中国貨物船が米国の港に着いており、まさに米国の店に並ぶ商品が全面的に値上げする直前だったからでもある。また、4月23日に米メディアのCBSはウォルマートなどのCEOがトランプ大統領に関税のせいで間もなくスーパーの棚が空になると警告していたと報じている。そうなれば反トランプ運動が爆発するのは目前だった。米国から中国製品を追い出すことなど、できるはずも...
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サウジ皇太子とトランプ大統領、経済連携協定に署名

サウジ皇太子とトランプ大統領、経済連携協定に署名皇太子はサウジアラビア国民を代表する偉大な人物であると述べた。ムハンマド皇太子、王国は6,000億ドルの投資機会を検討しており、これが10兆ドルに増加することを望んでいると述べた。アラブニュースリヤド:サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子とドナルド・トランプ米大統領は火曜日、トランプ大統領の地域訪問中のリヤドで戦略的経済パートナーシップ協定に署名した。このパートナーシップには、エネルギー、鉱業、防衛に関する協定が含まれている。トランプ大統領は火曜日にサウジアラビアに到着し、ガザに関する緊急外交と巨大なビジネス取引を織り交ぜた 「歴史的 」中東ツアーと称した。サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、サウジの首都にあるキング・ハーリド国際空港でエアフォース・ワンから降りたトランプを温かく出迎え、中東歴訪のスタートを切った。その後、両首脳はリヤド空港の大広間に退き、そこでトランプと側近たちは、儀礼的なガンベルトを着用した待機中の係員から伝統的なアラビックコーヒーを振る舞われた。サウジアラビア空軍のF-15が、王国の首都に近づくエ...
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トランプの「ウクライナ植民地計画」をなぜゼレンスキーは容認したのか?

トランプの「ウクライナ植民地計画」をなぜゼレンスキーは容認したのか?秘密裏に結ばれた2つの協定多くの西側メディアは4月30日に、米国とウクライナが、ウクライナの鉱物資源、石油、ガス、その他の天然資源への共同投資を確立するための協定に署名したと報道した。しかし、この裏で、秘密裏に本協定とは別に二つの協定が結ばれていたことに注意を払った西側メディアは少ない。Photo by gettyimages唯一、4月30日付の米政治メディアPoliticoは気になる情報を紹介している。それは、ウクライナ側が主要な経済協定と二つの技術的なサイド・アグリーメントへの署名を渋っていたという話だ。「米国政府関係者は、ウクライナが土壇場でいくつかの変更を要求し、米国財務省が強硬手段をとった後、双方が三つの協定すべてに署名したことを確認した」と記されている。このなかの本協定だけが部分的に明らかにされたというのである。情報操作にだまされるなここまで知っていれば、協定に署名した当事者のユリヤ・スヴィリデンコ第一副首相兼経済相が4月30日に情報発信した内容に「大嘘」が含まれているであろうことが容易に想像できる。彼女は...
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進むイスラエルのガザ虐殺

進むイスラエルのガザ虐殺2025年5月8日   田中 宇イスラエルが、ガザに残っている人々を餓死させようとしている。国際支援団体などが外部からガザに食糧など物資を運び込むことは、3月からイスラエル当局によって止められている。国際支援団体はガザへの物資搬入を許されず、次々と活動停止に追い込まれている。(World Central Kitchen Halts Aid Operations in Gaza Due To Israeli Blockade)(Israeli Defense Minister Says No Humanitarian Aid Will Enter Gaza, Vows Indefinite Occupation)ガザは、2023年10月に開戦する前から、外部からの食糧搬入(輸入や支援)がないと、人々が食べていけなかった。開戦後、ガザの経済活動は完全に麻痺している。食糧搬入がなければ人々は餓死する。イスラエル政府(ベングビル安保相)は、市民の餓死につながる食糧搬入の停止が戦略の一つだと認めている。(As Israel Openly Declares Starvati...
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膨大な海外米軍基地が示す戦後体制 習近平は貿易で世界制覇を狙っている

膨大な海外米軍基地が示す戦後体制 習近平は貿易で世界制覇を狙っている米国防総省(写真:ロイター/アフロ)米国の海外軍事基地の数え方にはさまざまあり分類の仕方によって違うが、「128ヵ所」という数え方と「562ヵ所」という数え方がある。いずれにしても地球上で米軍だけが突出して多く、中国はジブチ「1ヵ所」しか持っていない。 したがって中国による「軍事的世界制覇」はあり得ないと考えるのが妥当だろう。その代わりに中国は貿易で世界を制覇しようとしている。トランプ大統領がまるで「世界の王様」気取りで全世界を相手取って関税喧嘩を吹っ掛けられるのは、この米軍基地が世界を制覇しているからだ。本稿の図表1(米中の海外軍事基地マップ)をご覧になると、海外米軍基地による世界制覇は、第二次世界大戦への処罰であり、「日本、ドイツ、イタリア」という三国同盟、特に「日本とドイツ」をアメリカは今も監視し続けていることが見えてくる。戦後80年経った今もなお、世界は第二次世界大戦の「米国による戦後支配体制」で動いているというのは驚くべき事実だ。地球上で戦争が絶えないのも、基本的にそのせいだと言っていいだろう。一方、東南アジ...
中国の歴史

国際プロパガンダの研究

JOG(229) 国際プロパガンダの研究文書偽造から、外国人記者の活用まで、プロパガンダ先進国・中国に学ぶ先端手法。■1.エドガー・スノー■ 世界を征服するには、まず中国を征服しなければならぬ≪田中手記≫ 1941(昭和16)年、大東亜戦争開戦の年の春にアメリカのランダム社から出版されたエドガー・スノー(冒頭画像)による「アジアの戦争(The Battle for Asia)」の第一編第一章の冒頭に引用されたセリフだ。「アジアの戦争」とは日本の「世界征服計画」の第一ステップだと言うのである。 エドガー・スノーは1936年、中国共産党の支配する大陸奥地に潜入して、毛沢東とのインタビューに成功し、翌年出版した「中国の赤い星」は英米でベストセラーとなった。「私は、着くとすぐに毛(沢東)と会った。その姿はやせたリンカーンのように見えた」という見事な一節で、中国の共産主義者は、ロシアの革命家のような「血に飢えた権力主義者」ではなく、「良心的な民主主義者」であると印象づけた。 その中国を侵略する日本人を「アジアの戦争」では次のように描写する。 神道の教えを基にする武士道を信ずるサムライたちは、百年...
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トランプ関税とイーロン・マスクが、アフリカを中国にいっそう近づけた

トランプ関税とイーロン・マスクが、アフリカを中国にいっそう近づけた米総合格闘技を観戦するトランプ大統領とイーロン・マスク氏(写真:Imagn/ロイター/アフロ)中国は建国以来、アフリカとの関係を重んじ、緊密度を深めてきた。そこにトランプ1.0の時の2018年にトランプ大統領がアフリカを「肥だめ」呼ばわりして完全に中国の方にアフリカを押しやっている。トランプ2.0ではトランプ関税と、意外なことに、イーロン・マスクの存在がアフリカを徹底して中国に近づける役割を果たしてしまった。その現状分析と謎解きをしたい。◆イーロン・マスクとトランプがアフリカでGDP最大の南アフリカを怒らせたトランプ大統領はトランプ1.0の2018年にアフリカ諸国を「肥だめ」呼ばわりしたことは周知のことだと思う。念のためBBC日本語ニュースの<トランプ大統領、禁句使い中米やアフリカの移民罵倒>をご紹介しておきたい。すると、毎年北京で開かれている「中非(中国・アフリカ)協力フォーラム」で、アフリカ諸国の首脳が人民大会堂で一堂に会し、習近平国家主席のスピーチが終わると割れんばかりの拍手とスタンディングオベーションがくり広げら...
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東南アジアは日中どちらを向いているのか? 習近平vs.石破茂?

東南アジアは日中どちらを向いているのか? 習近平vs.石破茂?ASEAN関連首脳会議 ラオスで開催(写真:ロイター/アフロ)石破首相は4月30日、東南アジア歴訪を終えて帰国した。石破政権発足以来、二回目の東南アジア訪問で、東南アジア重視が目立つ。習近平国家主席も4月14日から東南アジアを歴訪している。トランプ関税に報復関税を宣言した数少ない国として、東南アジアを味方につけておくことが目的だろう。トランプ大統領は東南アジアに関心が薄いにもかかわらず、相互関税に関してだけは非常に厳しい数値を出しているので、東南アジアは中国と日本の「草刈り場」のような存在になりつつある。そこで東南アジア諸国は、中国と日本のどちらを向いているのか、また日本は今後どのように東南アジアと付き合えば良いかを、「外交・貿易・意識調査(シンガポールのシンクタンク)」の三つのファクターから考察してみた。意識調査はトランプ関税発動前なので、分析はやや困難だが、それでも「一番信頼している国は日本」というデータもあるので、今後の動向の分析には有用だ。結果的に言えるのは、石破首相の早くからの東南アジア重視は正解だったということに...
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続くウクライナ停戦の茶番劇

続くウクライナ停戦の茶番劇2025年5月2日   田中 宇5月1日、米国とウクライナが、2月から延期されていた資源協定を結んだ。米国がウクライナに軍事支援し続ける見返りに、ウクライナが地下資源の利権を米国に渡す協定だとされている。ウクライナの利権をむさぼりたいトランプの強欲を示す協定だとも言われている。(Seven takeaways from Ukraine minerals deal)トランプはゼレンスキーに、資源協定を結ばないと軍事支援しないと加圧してきた。ゼレンスキーは2月に協定調印のために訪米したが、その会合でトランプやバンスと喧嘩してしまい、トランプは調印を中止してゼレンスキーを追い出した。トランプは、協定を結べと加圧しつつ、実際は結ぶ気がなく、協定は強欲さを演出する「偽悪作戦」的な目くらましな感じだ。(ゼレンスキーを騙し討ち)ウクライナ政府は、調印した資源協定の文面を発表した。そこには軍事支援のことが書いていない。停戦して国家再建していく際に、米国とウクライナで投資金を出し合って、ウクライナの石炭石油から希土類までの地下資源を開発していく協定になっている。米国がウクライナ...
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【停戦案をスッパ抜く!】米国はクリミア放棄を通告、どうするゼレンスキー?

【停戦案をスッパ抜く!】米国はクリミア放棄を通告、どうするゼレンスキー?ウクライナ戦争の停戦・和平をめぐって大詰めを迎えている。ロイター通信は、4月25日、戦争終結のための提案を記した2つの文書を報道した。米国が17日、パリでの会合で、スティーブ・ウィトコフ特別代表が提示した枠組みおよび23日、外相級から格下げされたロンドンでの会談の後、ウクライナと欧州諸国の代表が米国に手渡した回答案である。ここでは、この二つの案を紹介しながら、戦争継続か、停戦合意を受け入れるかの土壇場に置かれた、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の現状について分析する。ウラジーミル・プーチンを描いたカーニバルのプラットフォーム(デュッセルドルフ、2024年2月12日)。 写真:Christopher Neundorf / EPA(出所)米国はクリミア半島のロシア支配を承認米国案では、恒久的停戦が前提とされており、ウクライナの安全保障として、(1)ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)への加盟をめざさない、(2)ウクライナは欧州連合(EU)加盟をめざす可能性がある――という項目があり、安全保障の保証国と...
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ドナルド・トランプとイーロン・マスクの関係はどうなるか

ドナルド・トランプとイーロン・マスクの関係はどうなるか 古村治彦です。※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。『トランプの電撃作戦』←青い部分をクリックするとアマゾンのページに行きます。 今回は、興味深い論稿をご紹介する。民主党系のストラティジストが書いた文章で、内容は、イーロン・マスクが行っている政府効率化(連邦政府職員の削減、連邦政府機関の一部の閉鎖、予算の削減)がトランプと支持者たちを離間させるというものだ。論稿の著者ブラッド・バノンは「マスクはトランプのスケープゴートにされる可能性がある。民主党は、トランプを弱体化させることが最終目標であり、マスクを攻撃することではないと認識すべきである」と主張している。失業保険や生活保護など、連邦政府の予算が入っている福祉制度や労働対策制度を利用している低所得者層にとって、連邦政府の予算削減は生活に直結する大問題だ。これまでにブログで何度も書いているが、トランプは、アメリカの貧乏白人、白人労働者たちの支持を受けて、彼らの代表として、既存の政治...