JOG(1468) 先進国では稀な「右脳-人間脳」国家・日本の使命

日本人の世界観
JOG(1468) 先進国では稀な「右脳-人間脳」国家・日本の使命
自然や人間への豊かな感性を発揮する「右脳」と、動物脳の衝動を抑えて共同体のために尽くす「人間脳」と。 ■転送歓迎■ R08.04.19 ■ 85,472 Copies ■ 9,448,418Views■ 過去号閲覧: 無料受講申込み: __________ ■本稿でご紹介した篠浦伸禎先生のご講演■ 講師: 篠浦伸禎 先生(篠浦塾塾…

JOG(1468) 先進国では稀な「右脳-人間脳」国家・日本の使命

自然や人間への豊かな感性を発揮する「右脳」と、動物脳の衝動を抑えて共同体のために尽くす「人間脳」と。

■1.「動物脳」が支配する国際社会の行き詰まり

花子: 先生、最近はロシアのウクライナ侵略や、アメリカとイスラエルのイラン攻撃、それに中国がいつ台湾に攻撃を仕掛けるか、など、なんだか物騒な世の中になってきていますね。

伊勢: 本当だね、花子ちゃん。それについては、実は脳神経外科医の篠浦伸禎(しのうら のぶさだ)さんという先生が、脳科学の立場から非常に説得力のある発言をしている。

 篠浦先生には、弊誌でもこれまで、二度登場いただいている。先生の著書によれば、脳の中心下方には大脳辺縁系という動物的な本能、保身にかかわる脳があり、これを「動物脳」と呼んでいる。「動物脳」は危険から自分の身を守ろうと戦ったり、逃げたり、快楽を追い求めたりする。この「動物脳」が強く働くと、人間は「利己的」に動いてしまう。

 たとえば、ロシアがウクライナを、中国が台湾を自分の領土にしてしまおう、なんていう発想も、まさにその利己的な「動物脳」の働きだと言っていい。「アメリカ・ファースト」と自国中心主義を訴える今のトランプ政権も「動物脳」で動いているように見える。

花子: 確か人間には「動物脳」とは別に「人間脳」もあるということでしたね。

伊勢: そう、「動物脳」である大脳辺縁系の上方・外側には大脳新皮質という進化の過程で新しくできた脳がある。人間はこの大脳新皮質が他の動物に比べてより発達しているため、篠浦先生はこれを「人間脳」と呼んでいる。そして、日本人は、この「人間脳」を高度に発達させてきた。
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 島国で暮らす人というのは、自然環境に恵まれているので、自然に寄り添うことで生きていこうとします。外敵からの侵入がほとんどないこともあり、争いごとを好みません。国内で争ってしまうと逃げるところがないので、極力争わなくてすむように、お互いの顔色をうかがって、譲り合ったり、遠慮しあったり、という習性が根づいています。[篠浦、p83]
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伊勢: 今の世界的な騒乱を収めるためには、「動物脳」を抑えて、もっと「人間脳」を発達させる必要があるんだけど、その前に、もう少し順を追って、考えてみよう。

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■2.日本人の「人間脳」を鍛えた日本列島

花子: 日本人が恵まれた自然環境の中で「人間脳」を発達させてきた、ということですが、でも、日本列島では、地震や津波、火山噴火、台風など自然災害も多いですよね。それらは、危険から身を守ろうとする「動物脳」を刺激するのでは?

伊勢: それに関しては、篠浦先生はこう言っている。
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 台風、地震、火山の噴火などの自然災害が世界一多いといってもいい島国です。島全体のほとんどが山岳地帯であり、それら自然の厳しさゆえに、自然に対する畏敬の念が強く、自然から学び自然に溶けこんで生活してきました。[篠浦R01、2555]
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 自然から何を学んだのか。それは災害の時は、それぞれの利己的な欲求は抑えて、互いへの思いやりをもって助け合った方が、共同体としては生きのびられる可能性が高まる、ということじゃないかな。

 たとえば、船が沈む時に、子供や女性を先に救命ボートに乗せる、ということは、人類が共通して持っている共同体保存の本能のように思われる。大災害で共同体全体の滅亡の危機を何度も乗り越えてきた日本人が、利他心を発揮する「人間脳」を高度に発達させてきた、ということは、説得力のある議論だね。これに続けて、篠浦先生は、こう書いている。
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 また、稲作は多くの水を田に供給する水治を必要とするため、村人が共同で農作業をしてきました。[篠浦R01、2555]
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 水田農耕では、灌漑用の水路や、日照りの時のための溜め池を作ったりと、共同体全体で力を合わせる必要がある。そこでは自分だけ楽をしようという動物脳ではやっていけない。

花子: なるほど、平時では食物に恵まれた豊かな日本列島で争いがもともと少なく、災害時は共同体で助け合う。さらに皆の力でこの山の多い列島で水田農耕を行う。そういう何千年もの経験が、日本人の人間脳を鍛えたんですね。

■3.右脳の日本人、左脳のイギリス人

伊勢: 動物脳-人間脳を進化の縦軸とすれば、もう一つ、人間には左脳-右脳という横軸がある。左脳は「論理の脳」、右脳は「感性の脳」と言われる。
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 左半分は論理の脳と呼ばれ、読み書きなどの言語能力、論理的な思考、計算などを主に担当します。これに対して右半分は感性の脳と呼ばれ、想像力や発想力、注意力や集中力を担当し、芸術を理解する感覚、人の表情や感情を読み取る能力があります。[篠浦H28、p72]
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 イギリスも日本と同じ島国だけど、それぞれの自然環境から、まったく違う右脳タイプと左脳タイプに発達したと篠浦先生は指摘している。

 日本人は先ほど述べたように、普段は恵み豊かな自然への感謝、しかし時に災害の荒れ狂う自然の「鎮め」、共同体として支え合う人間どうしの関係性を大切にすることで、右脳が大きく発達した。
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 ところが、イギリスはこの真逆で、台風、地震、火山はなく、国家はほぼ平坦で高い山はありません。そうすると、イギリス庭園に代表されるように、自然を人間がコントロールできるという発想になり、人間は理性的つまり左脳的になり、権利を主張してお金を貯める方向に、早くも中世の時代からいきました。[篠浦R06,2555]
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花子: そうするとコントロールしやすい自然環境から、イギリス人は左脳を発達させ、そこから資本主義や民主主義、植民地主義などの論理的な仕組みを構築したということですね。

■4.英米は左脳-人間脳、中露は右脳-動物脳

伊勢: そう、資本主義や植民地主義などは、きわめて利己的な仕組みだから、イギリス人は左脳-動物脳タイプだったと言えるかな。しかし、同時に国内的には立憲政治、民主主義、法治主義を確立してきた。そうした歩みの中で、左脳-人間脳へと進化してきた。

 アメリカ人も、その後継者として人種差別やグローバル資本主義などを広めてきたから、もともとは左脳-動物脳タイプだったけど、国内で一致結束してイギリスから独立し、その後、共産主義の脅威から世界を守ったりして、やはり左脳-人間脳に移行してきた。トランプ大統領になって、アメリカ・ファーストを唱えて、左脳-動物脳タイプに先祖返りしているのかもしれないけどね。

 一方、中国人やロシア人は広い大陸で力尽くで支配を広げてきた。英米が論理的な制度・ルールを構築する左脳的アプローチをとるのに対し、中露は相手の出方を感覚的に読んで力で押し通す、という直感・感覚優位の右脳的なアプローチをとる傾向がある。こうした動物脳的な国家がのさばっていては、平和的な国際社会は築けない。

 それに対して、日本人は右脳-人間脳タイプと言えるだろう。篠浦先生は、こう言っている。
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日本人はそのような縄文人の遺伝をついでいるので、先進国で唯一といっていい、争いを好まない右脳的な民族になっていったのでしょう。[篠浦R01、3090]
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伊勢: 日本人はお互いを自制して「争いを好まない」というところが、人間脳をしっかり働かせている証拠だけど、そのためにも共同体の中でお互いへの思いやりを働かせる感性的な右脳が発達して、高度の「右脳-人間脳」になったんだね。

■5.「三方よし」は、右脳-人間脳の賜

花子: しかし、いくら日本人が右脳-人間脳だと言っても、「先進国で唯一」という状態で、まわりが動物脳の国家ばかりで、国際社会は平和にはならないのではないでしょうか?

伊勢: そう悲観する必要もない。国際的に右脳-人間脳を発揮して、お手本を示している事例が産業界にはある。篠浦先生は、それがトヨタ自動車だと指摘している。
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 何があってもお客様のほうを向いて、いまお客様は何を欲しているか全神経を使って感じ取り、そしてお客様の喜ぶことを提供すると。ただし、これを実現するためには、経営者だけでいくらがんばってもどうにもなりません。お客様に直接相対している現場の従業員がお客様のためにという志向にならないとだめです。そこで重要なのが現場主義です。
経営者自ら現場に足しげく通い、一人ひとりに声をかけ、話を聞き、様子を観察し、現場の人たちがお客様のために力を発揮できるように、会社として何ができるだろうということを徹底して追求していく。
 大事なことは、こうしたトヨタのやり方というのは、日本人だからこそできるということです。[篠浦H28、p117]
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伊勢: 「お客様のために」という経営姿勢はまさに人間脳の働きだけど、それを現場の一人ひとりに伝え、人の気持ちに寄り添いながら引き出していくのは、感性や共感を司る右脳の働きだ。まさに日本人の持つ右脳-人間脳を最大限に発揮している、という事だね。

花子: トヨタに限らず、国際派日本人養成講座では「売り手よし、買い手よし、世間よし」という「三方よし」の精神で、いろいろな企業が成功し、日本経済の発展をもたらした、と説かれていましたよね。
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テーマ・マガジン「三方よしの日本的経営」
多くの企業が、買い手よし、売り手よし、世間よしの「三方よし」を追求することで、永続的な成功を享受してきた。
https://note.com/jog_jp/m/me3ec3c881a98
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伊勢: そうだね。「三方よしの日本的経営」自体が、日本人の右脳-人間脳の実例だし、トヨタはその最大の成功事例と言うべきだね。

■6.英米の左脳-人間脳と、日本の右脳-人間脳とは相性が良い

伊勢: もう一つ、ここで留意したいのは、アメリカで発達した自動車文明自体が、アメリカ人の左脳-人間脳の賜だった、という事だ。

 自動車の大量生産を始めたヘンリー・フォードは、田舎で大量の野菜が採れるのに、都会までの運搬手段がないのでムダになっている状態をなんとかしたい、という志、つまり「人間脳」から、一般大衆が購入できる価格で自動車を提供しようと、大量生産システムを始めた。

 そこから、大量生産のフォード・システム、さらには道路や信号、交通ルール、給油所などの自動車文明が発達したのだが、これらの仕組み作りは、まさに「左脳」の働きと言って良い。

 トヨタの成功は、アメリカ人の「左脳-人間脳」がつくったフォード以来の自動車文明の上で、日本人の「右脳-人間脳」が見事に発揮されて実現したものだ。

花子: そういう意味では、「左脳-人間脳」と「右脳-人間脳」が協調・連携すると、良い結果をもたらす、ということでしょうか?

伊勢: そう、そこが大事だね。19世紀のイギリスは世界の覇者として「パックス・ブリタニカ」(大英帝国による平和)を実現し、20世紀のアメリカは「パックス・アメリカーナ」(アメリカによる平和)をもたらした。両方とも、英米の左脳-人間脳が実現したものだ。

 戦前の日英同盟や、戦後の日米同盟がうまく機能したのは、「パックス・ブリタニカ」や「パックス・アメリカーナ」の仕組みの中で、日本人の右脳-人間脳が十二分に発揮されたからだろう。今後も英米とは限らないけど、左脳-人間脳で動く国々と、右脳-人間脳で動く日本が協力することで、より平和な世界が築けるのではないかな。

 地球全体が多様な国家、地域を抱えながら、一つの島国みたいに狭くなった現在、「全体が一つのシステムでやっていこう」とする左脳的アプローチを強引に押し通そうとしても、各国の個別の事情もあるから、うまくやっていけないだろう。

 そこでは、国々が相互に思いやりをもって助け合う、という右脳的なアプローチをもっと伸ばしていかなければならない。そこに日本がお手本を示す役割がある。

■7.日本人の右脳-人間脳の復活のために

花子: でも、先生、足元の日本社会を見ると、パワハラやいじめ、引きこもりや不登校などといった問題がいろいろ起きています。これらは日本人の右脳-人間脳の衰弱を示しているのではないでしょうか?

伊勢: そう言われれば、本当にそうだね。パワハラやいじめは相手への思いやりの欠如で、右脳の未発達の結果だ。また引きこもりや不登校は、危険からの逃避という動物脳の働きだね。日本の子供たちが、未来への希望を失っているということ自体が、公への志、つまり人間脳の衰弱の現れだろう。

花子: それでは、右脳-人間脳の復活のためには、どうすればいいんでしょうか?

伊勢: それに関しては、篠浦先生も危機感を持たれていて、次の二つの手段を提唱されている。

 まずは食事で、伝統的な玄米菜食、つまり玄米と野菜中心の食事にすること。幕末では、吉田松陰のような下級武士の家では、魚でさえ年に1、2回しか食べられず、あとは米と一汁一菜程度の食事だった。それでも、現代人よりははるかに強靱な体力、気力を発揮して、明治維新という世界史に残る偉業を成し遂げた。

 篠浦先生は、もともと日本人には肉食は体質的に合っていないとして、自身の専門である脳外科の分野、特に悪性脳腫瘍などの患者には、手術直後から玄米菜食を中心とした統合的な医療を取り入れることで、西洋医療のみとは比べものにならないずば抜けた治療成績を上げているそうだ。玄米菜食で日本人はかつての体力を取り戻せる。しっかりした体力があってこそ、脳もよく働く。

 もう一つは、偉人の伝記などを読んで、生き方を学ぶこと。後世の人たちから尊敬される生き方をした人は、例外なく動物脳をしっかりコントロールして、人間脳を発達させ、そこから世のため人のための志を伸ばしている。そういう人々の生き方を学ぶことで、気力が充実してくる。

 私たちが運営する『歴史人物学習館』は、まさにそのような学びを子供たちに提供することを目指している。

 今の日本人が昔の日本人よりもはるかに豊かな生活をしているのに体力も気力も貧弱なのは、誤った食事により身体への栄養が、偉人の生き方を学ぶ機会の少なさで精神への栄養が、ともに不足しているからだと思うんだ。

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