2025-05-06

現代の世界各国

トランプ関税とイーロン・マスクが、アフリカを中国にいっそう近づけた

トランプ関税とイーロン・マスクが、アフリカを中国にいっそう近づけた米総合格闘技を観戦するトランプ大統領とイーロン・マスク氏(写真:Imagn/ロイター/アフロ)中国は建国以来、アフリカとの関係を重んじ、緊密度を深めてきた。そこにトランプ1.0の時の2018年にトランプ大統領がアフリカを「肥だめ」呼ばわりして完全に中国の方にアフリカを押しやっている。トランプ2.0ではトランプ関税と、意外なことに、イーロン・マスクの存在がアフリカを徹底して中国に近づける役割を果たしてしまった。その現状分析と謎解きをしたい。◆イーロン・マスクとトランプがアフリカでGDP最大の南アフリカを怒らせたトランプ大統領はトランプ1.0の2018年にアフリカ諸国を「肥だめ」呼ばわりしたことは周知のことだと思う。念のためBBC日本語ニュースの<トランプ大統領、禁句使い中米やアフリカの移民罵倒>をご紹介しておきたい。すると、毎年北京で開かれている「中非(中国・アフリカ)協力フォーラム」で、アフリカ諸国の首脳が人民大会堂で一堂に会し、習近平国家主席のスピーチが終わると割れんばかりの拍手とスタンディングオベーションがくり広げら...
現代の中国

トランプ関税はEUを中国に近づけた アメリカなしの世界貿易新秩序形成か?

トランプ関税はEUを中国に近づけた アメリカなしの世界貿易新秩序形成か?訪中した仏大統領と欧州委員長が習近平国家主席と会談(2023年)(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)習近平国家主席にとってEUとの投資協定である「中欧投資協定」は長いこと悲願だった。しかしバイデン政権の介入や中国の安価なEVの「津波」によって挫折し、EUは2024年10月にEVに関する対中関税を決定。両者の関係は冷え込んでいた。ところが「トランプ関税」がEUにも圧し掛かってきたことによってEUの対中姿勢は一転。EVに対する対中関税を撤廃し、価格協定で折り合う方向に動き始めた。実は2021年にEUがウイグル問題で中国の官員を制裁し、中国がEU官員を報復制裁することで中欧投資協定が凍結されていたのだが、中国はその報復制裁を解除すると言い出したこともあり、習近平宿願の「中欧投資協定」が復活しつつある。トランプ関税は中国と東南アジアの緊密度を強化する役割をしただけでなく、EUに近づけたことになる。その結果、「アメリカなしでの世界貿易新秩序」が形成しつつあるのを見逃してはならない。◆トランプ相互関税直後、欧州委員会委員長が中...
現代の世界各国

東南アジアは日中どちらを向いているのか? 習近平vs.石破茂?

東南アジアは日中どちらを向いているのか? 習近平vs.石破茂?ASEAN関連首脳会議 ラオスで開催(写真:ロイター/アフロ)石破首相は4月30日、東南アジア歴訪を終えて帰国した。石破政権発足以来、二回目の東南アジア訪問で、東南アジア重視が目立つ。習近平国家主席も4月14日から東南アジアを歴訪している。トランプ関税に報復関税を宣言した数少ない国として、東南アジアを味方につけておくことが目的だろう。トランプ大統領は東南アジアに関心が薄いにもかかわらず、相互関税に関してだけは非常に厳しい数値を出しているので、東南アジアは中国と日本の「草刈り場」のような存在になりつつある。そこで東南アジア諸国は、中国と日本のどちらを向いているのか、また日本は今後どのように東南アジアと付き合えば良いかを、「外交・貿易・意識調査(シンガポールのシンクタンク)」の三つのファクターから考察してみた。意識調査はトランプ関税発動前なので、分析はやや困難だが、それでも「一番信頼している国は日本」というデータもあるので、今後の動向の分析には有用だ。結果的に言えるのは、石破首相の早くからの東南アジア重視は正解だったということに...