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複雑に進化した動物の「眼」。人間の「色覚」が弱いのは、恐竜のせいだけではないかもしれないと思う理由

複雑に進化した動物の「眼」。人間の「色覚」が弱いのは、恐竜のせいだけではないかもしれないと思う理由私たちヒトの色覚はいわゆる3色型で、魚や鳥のような4色型に比べると、色を感じる能力は低いと言われている。その理由は、まだ恐竜がいた時代に、私たちの祖先が夜行性だったことが関係していると、一般には考えられている。しかし、それだけではなく、もっと積極的な理由がある可能性もある。光の三原色はモニターなどに応用されている(gettyimages)動物が「色」を感じる仕組み私たちが光を感じる器官は眼だが、もっと具体的にいえば、眼球の奥にある網膜で光を感じている。網膜には光を感じる細胞が2種類あり、それぞれ桿体(かんたい)細胞と錐体細胞と呼ばれている。桿体細胞は、非常に優れた光センサーで、光の粒子である光子1個を感じることができるといわれている。夜中に目覚めたときに部屋の中が見えたりするのは、この桿体細胞の働きのおかげである。その代わり、色を識別することはほとんどできない。もう一つの錐体細胞は色を感じるセンサーだが、感度はあまりよくなく、明るいところでしか機能しない。一般に鳥は目がよいといわれるが、そ...
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意外な事実。飛べない鳥がいるのに、「飛べないコウモリがいない」謎…「飛べないカラダに進化」する道筋が、通れなくなってしまったわけ

意外な事実。飛べない鳥がいるのに、「飛べないコウモリがいない」謎…「飛べないカラダに進化」する道筋が、通れなくなってしまったわけ進化には「通れない道」がある!? 飛べなくなった鳥はいるのに、なぜ飛べなくなったコウモリはいないのか。前回、発達した生物の特徴は、必ずしも進化とは言えない、ということを、鳥の飛翔能力から検証してみました。ところで、コウモリは飛翔能力をもつ哺乳類で、立派な翼を持っています。しかし、鳥に「翼を持ちながらも飛ぶことをやめた」ものがいるのに対して、コウモリに「飛ぶことやめた」仲間はいません。飛べるコウモリから飛べないコウモリへの道は、進化的に通れない道なのでしょうか。なぜ飛べないコウモリがいないのか地球にはさまざまな生物が生息しており、その多様性には目を見張るばかりである。まるで生物の進化には無限の可能性があるかのように思える。しかし、そのいっぽうで、その多様性には欠落があるように思えることもある。その一つの例がコウモリだ。コウモリの仲間は、完全な飛翔能力を持つ唯一の哺乳類である。そして不思議なことに、飛べないコウモリというものはまったくいない。たとえば、鳥の仲間も完...
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なぜ、夢は「宣言した人」から叶っていくのか?年末に知りたい行動科学

なぜ、夢は「宣言した人」から叶っていくのか?年末に知りたい行動科学年末が近づくと、「来年こそは何かを変えたい」「大きな一歩を踏み出したい」と誰もが思い始めます。しかし、結局叶わなかった、という方も少なくないのかもしれません。では、夢を叶える人と、叶えられない人の決定的な違いはどこにあるのか?「6つの仕事を掛け持ちする時間管理の専門家」として知られる石川和男さんは自身のメルマガ『石川和男の『今日、会社がなくなっても食えるビジネスパーソンになるためのメルマガ』』の中で、自身が実際に夢を叶えるために実践したことを伝えています。なぜ夢は言うほど叶うのか? 年末年始に始めたい目標達成の科学朝晩の冷え込みが強くなり、街のイルミネーションも少しずつ輝きを増す11月。年末年始の予定がちらほら話題に上り、「来年はどんな一年にしよう?」と胸の奥がそわそわし始める季節です。せっかくなら来年を最高のスタートで迎えたい。そんな時期だからこそ、今日、どうしても伝えたいことがあります。それは「夢は、黙っていても叶わない。言いふらした人から叶っていく」ということです。私は税理士として独立し、大学講師として教壇に立ち、...
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じつは、それほどコスパが良くない…飛ぶことをやめた「ドードー」にみる、「発達した特徴が進化とは言えない」、じつに納得の理由

じつは、それほどコスパが良くない…飛ぶことをやめた「ドードー」にみる、「発達した特徴が進化とは言えない」、じつに納得の理由生物の生存戦略として、まず考えられるのは、食料の確保や、生命の保存(捕食者からの逃避)が考えられます。また、より生存に適した環境を選んで移動することもあるでしょう。こうした生存に有利な行動は、鳥のように翼があって飛べることが非常に有利に働くと思われますが、はたして本当にそうでしょうか。今回は、発達した生物の特徴は「進化」と言えるのかを、鳥の飛翔能力を通して考えていきます。初めて長距離を走ることができた人類「ホモ・エレクトゥス」ものごとがうまくいかないとき、私たちはため息を吐いて、空を見上げる。そして、大空を飛んでいく鳥を見ながら、ふとこう思う。「あぁっ、私も鳥のように、自由に空を飛んで、自由に生きたいなあ……」空を飛ぶことに憧れる人は多いが、実際に空を飛べば、生物にとってよいことがたくさんある。たとえば、餌を見つけやすくなる。約200万年前にアフリカに現れた化石人類、ホモ・エレクトゥスは、初めて長距離を走ることができた人類だと考えられている。この記事の全ての写真を見...
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あれほどの「信頼を得ていた」進化論だったのに…「優秀な生物学者だった」オーウェンの理論が、すっかり忘れ去られてしまった、じつに納得のワケ

あれほどの「信頼を得ていた」進化論だったのに…「優秀な生物学者だった」オーウェンの理論が、すっかり忘れ去られてしまった、じつに納得のワケ古代の爬虫類のあるグループを指して「恐竜」という名を与えたことで有名なリチャード・オーウェンは、独自の理論を展開し、広く知られ、支持を集めていた進化論者でした。しかし、『種の起源』が出版されると、すさまじい賛否の論議が沸き起こり、その中で、オーウェンの理論は次第に忘れ去られていきました。今回の「一番簡単な進化の講義」は、オーウェンの理論の特徴を検証しつつ、やがて『種の起源』の影に隠れていった理由を考えてみます。   *   進化理論といえばダーウィンが有名だが、じつはダーウィンの進化理論に匹敵するほど高い評価を受け、人々のあいだでも信用されていた進化理論が存在したことは、あまり知られていない。それは、ダーウィンの『種の起源』より11年前に発表されたリチャード・オーウェン(1804~1892)の進化理論である。オーウェンはイギリスの解剖学者で、一時はイギリス科学界の頂点に君臨していた非常に優秀な科学者だった。爬虫類のなかに恐竜というグループを見出し、その...
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だから、クジラの下腹部に埋もれた「痕跡の謎」を納得させられた…じつは、『種の起源』は、進化論を示しただけではない。他説を圧倒的な力でねじ伏せる、驚愕の論旨の中身

だから、クジラの下腹部に埋もれた「痕跡の謎」を納得させられた…じつは、『種の起源』は、進化論を示しただけではない。他説を圧倒的な力でねじ伏せる、驚愕の論旨の中身チャールズ・ダーウィンによる『種の起源』は、出版されるやいなや、たちまち多くの反論が出たものの、それを凌駕する圧倒的な支持を集めました。なぜ、ダーウィンの『種の起源』が、そこまで支持を集めるに至ったのでしょうか。それは、それまでの進化論(や反進化論)が、納得のいく説明を提出できなかった数々の問題に対して、じつに鮮やかで、簡単に理解できる説明がなされていたからに他なりません。いったい、その説得力は、『種の起源』のどこにあるのでしょうか。この記事の全ての写真を見る(全11枚)ダーウィンの時代は進化論が流行していたダーウィンが生きていた19世紀のイギリスでは、進化論が流行していた。もっとも、それは進化論が社会的に広く受容されていた、ということではない。進化論を支持するにせよ、進化論に反対するにせよ、知識階級のあいだでは進化に関する文献が出版されたり、それが話題になったりすることが多かったということだ。フランスの博物学者であるジャン=バ...
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「脳が大きいと長寿命」衝撃の真偽…じつは、当てはまらない残念な生物がいる。「常識」が通じない、納得の理由

「脳が大きいと長寿命」衝撃の真偽…じつは、当てはまらない残念な生物がいる。「常識」が通じない、納得の理由一般に脳が大きく知能も高い生物は、寿命も長いと言われます。事実、データベースを利用した研究でも、脳の大きさと寿命の相関は認められるそうです。ところで、無脊椎動物のイカやタコの仲間には、かなり知能の高い種がいますが、その寿命は長くありません。この不思議をどう考えるか、イカやタコの進化から、その秘密を探っていきます。道具を使うチンパンジー。霊長類などをはじめとして、知能が高い動物は長寿命の傾向にあるというが、全ての生物に当てはまることだろうか? photo by gettyimages「脳が大きい動物は長生きである」は本当か脳が大きくて知能が高いと考えられている動物は、一般に長寿の傾向がある。知能が高い動物としては、チンパンジーなどの類人猿やイルカの仲間が有名だが、カラスやオウムの仲間もそれらに劣らず知能が高い。そして、これらの動物は、たいてい寿命が長いのである。チンパンジーのなかには60年以上生きるものがいるし、イルカも50年以上生きることがある。イルカに近縁なシャチの場合、90歳に達...
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なんと「親子対立」は、胎盤で始まっていた…「受精と栄養供給の順番」が決める繁殖様式の実態

なんと「親子対立」は、胎盤で始まっていた…「受精と栄養供給の順番」が決める繁殖様式の実態繁殖様式というと、大きく「卵生」と「胎生」に分かれますが、じつは、卵生や胎生ほど有名ではないものの、それ以上に本質的な考え方が、「親子の対立」の有無で分けるという考え方です。繁殖における「親子対立」とは、どういうことでしょうか。この記事の執筆者更科 功(さらしな・いさお)分子古生物学者。理学博士。現在、武蔵野美術大学教授、東京大学非常勤講師。専門は分子古生物学。『化石の分子生物学』(講談社科学出版賞)の他、著書多数。詳しいプロフィールは、こちらさまざまな繁殖の仕方意見や価値観の違いから親子が対立することは珍しくない。これは子供が成長していく過程において、ある程度は自然なことだ。しかし、生物学的な視点から見れば、親子の対立はすでに胎児のころから始まっているのである。動物の繁殖様式は、卵生と胎生に分けられることが多い。卵生とは、体外に産出された卵が、体外で孵化して新しい個体となることだ。いっぽうの胎生は、母親の胎内で卵から発生した子が、ある程度成長してから母親の体外へ出産されることである。この胎生も、い...
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本当なのか…「陰嚢は、精子を冷やすために進化した」の真実…「常識を疑う」ことで見えてくる、新たな可能性

本当なのか…「陰嚢は、精子を冷やすために進化した」の真実…「常識を疑う」ことで見えてくる、新たな可能性進化についての仮説は、しばしば、多くの人に真実と理解されてしまい、「常識」のように受け止められていることがあります。 「精子を冷却するために、陰嚢が進化した」というのも、よく聞く“常識”ですが、はたして本当なのでしょうか?体温が高過ぎる進化に関する仮説には、けっこう怪しいものが多い。そのなかには、世間に広く普及して、常識の域に達しているものさえある。そういう怪しい進化仮説に足を掬われないためには、常識を疑うことも必要だろう。私たちヒトは有性生殖をする生物である。女性は卵を、男性は精子を作り、両者が受精して受精卵となる。そこから新しい人生が始まるわけだ。新しい人生は、卵と精子が受精して受精卵となるところから始まる illustration by gettyimagesところが、じつは私たちの体温は、精子を作るためには高過ぎる。そこで、ヒトの男性は、陰嚢という器官を体外に突き出して(というか、ぶらさげて)、そのなかに精巣を入れている。こうすることによって、精巣を冷やしているのだ。私たちの体...
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「人類は海辺で進化した?」アクア説の「意外に反論が難しい主張」と、提唱者がつらぬいた「科学者としての姿勢」

「人類は海辺で進化した?」アクア説の「意外に反論が難しい主張」と、提唱者がつらぬいた「科学者としての姿勢」人類は水中で進化したのか…「アクア説」の主張を、近年発見された化石から検証して見えてきた真実と、提唱した生物学者の科学者としての姿勢を見ていきます。アクア説の真実と、我々に伝えること photo by gettyiages人類の起源についての仮説「アクア説」人類の起源を説明する仮説の一つに、アクア説(水生類人猿説)というものがある。これは、「人類の祖先は水生生活を送るようになったので、他の類人猿とは異なる特徴を獲得して人類になった」という説である。『裸のサル』などの著者として知られるイギリスの動物学者、デズモンド・モリス(1928~)や、やはりイギリスの動物学者でナレーターとしても有名なデイビッド・アッテンボロー(1926~)などの影響力のある人々が、この説を紹介したことで、アクア説は社会に広く知られるようになった。少し前の話だが、日本でも某明治大学教授がベストセラーとなった著書で紹介したりしたため、日本にもアクア説の支持者は一定数いるようだ。このアクア説を支持する科学者は、現在で...
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生命は「宇宙で生まれた」…パンスペルミア説の「2つの根拠」から明らかになる「否定はしないけれど、すっかり鵜呑みにはできない」ワケ

生命は「宇宙で生まれた」…パンスペルミア説の「2つの根拠」から明らかになる「否定はしないけれど、すっかり鵜呑みにはできない」ワケ「生命は宇宙で生まれた」というアレニウスの着想生命の起源は謎に包まれている。生命は地球で生まれた可能性が高いけれど、起源がはっきりとしない以上、宇宙で生まれた可能性も完全に否定することはできない。「生命は宇宙で生まれた」という仮説をパンスペルミア説という illustration by gettyimagesこの、「生命は宇宙で生まれた」という仮説のなかで、もっとも有名なものがパンスペルミア説である。パンスペルミア説は、スウェーデンの物理化学者でノーベル化学賞の受賞者でもあるスヴァンテ・アレニウス(1859~1927)により、1903年に提唱された。アレニウスは、胞子のような何らかの強固な構造を取った細胞が、地球の歴史の初期に、宇宙からもたらされた可能性を示したのである。スヴァンテ・アレニウス photo by gettyimages細胞が宇宙空間を移動する手段として、アレニウスは光の放射圧を考えた。物体が光を放射したり吸収したり反射したりすると、微弱だが圧力...
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昨日と今日の自分は、本当に同じ自分なのか?「シミュレーション仮説」や「世界五分前仮説」をもとに意識、ヒトの生について考えてみると

昨日と今日の自分は、本当に同じ自分なのか?「シミュレーション仮説」や「世界五分前仮説」をもとに意識、ヒトの生について考えてみると 歴史に「もしも」があったら?歴史にもしもはない、という。もしも武田信玄が病気で死ななかったら……もしも平泉で藤原泰衡(ふじわらのやすひら)の軍勢に囲まれたとき、源義経が脱出していたら……。そんなことは、考えても仕方のないことだ。でも、私たちは、ついそんなことを想像してしまう。もしも歴史が違う方向に進んでいたら、と夢見ることを、私たちはやめることができない。そして、それは……私たちだけでなく、他の知的生命体でも同じかもしれないのだ。スウェーデン人の哲学者であり、オックスフォード大学の教授であるニック・ボストロム(1973‐)は「シミュレーション仮説」を提唱した。この仮説は、私たちが生きている世界というものが、知的生命体が行っているコンピューター・シミュレーションである可能性を指摘したものである。gettyimages私たち人類だって、どんどん文明が発達していけば、地球全体(ひょっとしたら宇宙全体)のシミュレーションを行うことが可能になるかもしれない。そうなれば...
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20世紀の王道シナリオが「あり得ない」とひっくり返された…なんと、ミラーの「衝撃的実験」に惑星科学の進展が「再検討」を迫った

20世紀の王道シナリオが「あり得ない」とひっくり返された…なんと、ミラーの「衝撃的実験」に惑星科学の進展が「再検討」を迫ったニワトリが先か、タマゴが先か「ニワトリが先か、タマゴが先か」という問題があることは、みなさんも聞いたことがあるでしょう。実は、これはプラトンとアリストテレスの頃からあった生命の起源をめぐる論争で、ニワトリとタマゴのどちらが先にこの世に誕生したのかを問うものです(図「ニワトリとタマゴ問題」の左)。1953年にDNAの二重らせん構造が明らかになり、分子生物学が興ると、タンパク質がなければ核酸はできない、また核酸がなければタンパク質はできないことがわかり、この問題は「タンパク質が先か、核酸が先か」という問題に置き換えられました。タンパク質は、アミノ酸を正しい順番でつなぐことにより、触媒として働きますが、つなげる順番は、核酸の塩基配列により指定されます。しかし、その核酸もまた、合成されるには触媒であるタンパク質が必要です。つまり、両者がそろって初めて、生命というシステムは動きだすのです。しかし、タンパク質も核酸も複雑な高分子有機物ですので、原始地球上での化学進化の過程にお...
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残念ながら、原始地球の大気に「メタンありき」は、思い込みだった…衝撃的だった「ミラーの実験」が残した「1つの功績と2つの罪」

残念ながら、原始地球の大気に「メタンありき」は、思い込みだった…衝撃的だった「ミラーの実験」が残した「1つの功績と2つの罪」アミノ酸は簡単にできる!1953年にミラーの論文が発表されたときの話に戻りましょう。この論文は多くの科学者の興味をひきました。化学進化の実験が数日でできるなんて、誰も考えていなかったからです。このあと、ミラーをお手本に化学進化の実験を始めるグループが続々と現れました。まず、材料については、原始地球大気は二酸化炭素を多く含むとする説と、メタンを多く含むとする説が対立していたと述べましたが、ミラーの結果を受け、多くの人がメタン派となりました。しかし、ミラーと同じことをしても論文にはなりません。そこで、ミラーが考えた雷による放電とは別のエネルギーを考えてアミノ酸をつくろうとする実験が、1970年くらいまで続々と報告されました。まず考えられたエネルギーは、火山の熱でした。マイアミ大学の原田馨(1927〜2010)とシドニー・フォックス(1912〜1998)は、放電の代わりに熱を使った反応装置をつくりました。とはいえ本物の溶岩の温度は約1000℃で、こんな温度で熱するとほぼ...
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これは「物質から生命が生まれる瞬間」かもしれない…地球生命に絶対必要なアミノ酸が、なんと「わずか数日」でできてしまった「衝撃の実験」

これは「物質から生命が生まれる瞬間」かもしれない…地球生命に絶対必要なアミノ酸が、なんと「わずか数日」でできてしまった「衝撃の実験」生物学の革新時代「1953年」DNAの二重らせん構造が発見された1953年は、ほかにも生物学上の重要な発見がありました。たとえば英国の生化学者フレデリック・サンガー(1918〜2013)は、タンパク質のアミノ酸配列を調べる方法を開発し、この年に初めて、インスリンというタンパク質(膵臓でつくられるホルモン)の51個のアミノ酸の並び順(一次構造)を発表しました。そして、米国の化学者スタンリー・ミラー(1930〜2007)によるアミノ酸の合成が発表されたのも、この年のことでした。ミラーは1951年にカリフォルニア大学バークレー校で化学の学士を取得したあと、シカゴ大学大学院に入学しました。彼が選んだのは、ハロルド・ユーリー(1893〜1981)の研究室でした。ユーリーは重水素の発見で1934年にノーベル化学賞を受賞し、その後、研究の興味を宇宙化学に移していました。ハロルド・ユーリー photo by gettyimages「初期の地球大気」2つの説初期の地球大気に...
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まさか…生命と非生命が「区別できない」とは…! それでも地球型生命に2つの「絶対必要な分子」があった

まさか…生命と非生命が「区別できない」とは…! それでも地球型生命に2つの「絶対必要な分子」があった生命を定義することの難しさ生命を定義しようとする試みは、多くの研究者によってなされてきました。いま述べたように生化学系の研究者は、生体内で反応が進行すること、ひとことでいうと「代謝」を重視することが多いようです。一方、分子生物学者は、DNAを重んじることから「自己複製」を重視する傾向があります。ほかには、オパーリンのように外界との「境界」の存在を重視する人もいます。また、前回の記事でご説明したようにシュレーディンガーは、エントロピーという物理量から生命を定義しようとしました。シュレーディンガーは、エントロピーという物理量から生命を定義しようとした近年では、「進化」を重視するようになってきている傾向があります。米国ソーク研究所のジェラルド・ジョイス(1956〜)は、RNAの試験管内分子進化の研究で有名ですが、生命を「ダーウィン進化しうる自立した分子システム」と定義しました。これはNASAの「生命の定義」に採用されています。一方、20世紀の終わりには、生命を定義すること自体の問題点も指摘され...
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なぜ、ショウジョウバエとヒトの形は大きく異なるのか?この疑問から、生物のボディプランと進化の速度を考え直してみると!

なぜ、ショウジョウバエとヒトの形は大きく異なるのか?この疑問から、生物のボディプランと進化の速度を考え直してみると!カンブリア紀の脊椎動物と節足動物動物は(研究者によって多少異なるが)35個ぐらいのグループに分けられる。それぞれのグループは「門」と呼ばれ、独自のボディプランを持つことで区別されている。それらの中でもっとも繁栄しており、かつもっとも身近なグループは、「脊椎動物門」と「節足動物門」だろう。脊椎動物門は私たちヒトが属しているグループだし、節足動物門は非常に種数が多い昆虫を含むグループだ。そして、脊椎動物門も節足動物門も、すでにカンブリア紀(約5億3900万年前~約4億8500万年前)には現れていたことが知られている(ちなみに、かつて脊椎動物は「門」の下の分類階級である「亜門」とされていたが、最近は「門」とすることもある)。上・脊椎動物「ミロクンミンギア」(Andrew Dalby)、下・節足動物「エオレドリキア」(Ghedoghedo)たとえば、中国雲南省のカンブリア紀の地層(約5億2000万年前)から産出した澄♯江{チェンジャン}生物群には、脊椎動物であるミロクンミンギアと...
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だってそれ、結局「神様のやったこと」にしてないか…? 量子力学で「高名な物理学者」の言葉に噛みついた「生化学者のこだわり」

だってそれ、結局「神様のやったこと」にしてないか…? 量子力学で「高名な物理学者」の言葉に噛みついた「生化学者のこだわり」コアセルベートと「化学進化」1935年、モスクワにソ連科学アカデミー・バッハ記念生化学研究所が設立されると、オパーリンはその副所長に就任し、植物の加工などについての実務的な研究を行う傍ら、生命の起源の考察も進めていきました。そして1936年には、前著の小冊子『生命の起原』を大幅に拡張した『地球上の生命の起源』を発表します。少しくわしい人は、オパーリンというと「コアセルベート」を連想し、それについて書かれたのは1924年の『生命の起原』であるという印象を持っているかもしれませんが、コアセルベートが登場するのは、この1936年版が初めてです。というのは、オランダの化学者H・G・ブンゲンブルク・デ・ヨングが「コアセルベート」という命名をしたのが1929年だからです。前述のようにオパーリンは、コロイド溶液を生命のもとと考えていました。しかし、この溶液は、他の物質を加えるなどすることにより、コロイドが高濃度に集まった部分と低濃度の部分の2つに分離することがあります。これをコア...
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「生命は自然に発生する!」ありえないとされた説が息を吹き返して提唱された「生命の一歩手前」の衝撃の姿

「生命は自然に発生する!」ありえないとされた説が息を吹き返して提唱された「生命の一歩手前」の衝撃の姿オパーリンの『生命の起原』1917年、ロシアでは十月革命が起こり、ソヴィエト連邦が誕生しました。この年にモスクワ大学を卒業したアレクサンドル・イヴァノヴィッチ・オパーリン(1894〜1980)は、大学に残って生化学の研究を続けていました。アレクサンドル・イヴァノヴィッチ・オパーリン photo by gettyimages1922年、オパーリンは、ロシア植物学会モスクワ支部で、生命の起源に関する発表を行います。そして1924年には、その内容をまとめた70ページほどの小冊子『生命の起原』を発表しました(やはり「起源」ではなく「起原」と訳されています)。その後、オパーリンは生命の起源についての本を何冊も書いていますので、それらと区別して、1924年版を「小冊子」とよびます。この小冊子でオパーリンはまず、アリストテレスからニーダムに至る自然発生の考えが、パストゥールによって否定されたことにより、「生命がいかに地球上で生じたか」という問題が生じたことを述べています。次にパンスペルミア説を紹介し、...
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もし本当なら…「地球で最初の生命は、進化では誕生できない」…進化論で生じた「すこぶる当然の疑問」

もし本当なら…「地球で最初の生命は、進化では誕生できない」…進化論で生じた「すこぶる当然の疑問」ダーウィンのオリジナル概念ではなかった「進化」1859年、チャールズ・ダーウィン(1809〜1882)は、ジョン・マレー出版社から『自然選択という手段、または生存闘争の中で好ましいとされる種が保存されることによる種の起原について』という長いタイトルの本を出版しました。これが、今日の生物進化学の基礎を築いた、『種の起源』という名で知られている著作の正式な書名です(「起“源”」ではなく「起“原”」と訳されました)。実は「進化」という概念自体は、ダーウィン以前にもありました。たとえば、彼の祖父のエラズマス・ダーウィン(1731〜1802)は、生物学に進化(evolution)という言葉を持ちこんでいました。また、フランスの博物学者ジャン=バティスト・ラマルク(1744〜1829)は、キリンの首は高いところの葉を食べようとして伸びた、といった「用不用説」と呼ばれる考え方で進化を説明しようとしていました。ダーウィンは初め、医者である父のあとを継ぐためエジンバラ大学に進学しましたが、医学学には向かずに退...