なぜ与党は「消費税減税」カードを引っ込めたのか。置き去りにされる国民の負担軽減=斎藤満

現代の日本
なぜ与党は「消費税減税」カードを引っ込めたのか。置き去りにされる国民の負担軽減=斎藤満 | マネーボイス
政府内で浮上していた消費税引き下げ論が、日米交渉の進展とともに大きく後退しています。かつてはトランプ政権の圧力や選挙戦略の一環として具体化しかけた減税案ですが、米国側の交渉姿勢の変化や、日本政府の対応方針の転換により、今や選挙の争点からも外れつつあります。政府の迷走、そして「次の一手」が見えないまま迎える参院

なぜ与党は「消費税減税」カードを引っ込めたのか。置き去りにされる国民の負担軽減=斎藤満

政府内で浮上していた消費税引き下げ論が、日米交渉の進展とともに大きく後退しています。かつてはトランプ政権の圧力や選挙戦略の一環として具体化しかけた減税案ですが、米国側の交渉姿勢の変化や、日本政府の対応方針の転換により、今や選挙の争点からも外れつつあります。政府の迷走、そして「次の一手」が見えないまま迎える参院選に、不安の声が広がっています。(『 マンさんの経済あらかると 』斎藤満)

どうなる消費税減税

消費税に対する政府内の考えが2転3転しています。

もともと政府は消費税引き下げには消極的でした。それが米国との相互関税交渉の中で、トランプ政権が消費税の廃止を求めてきただけに、政府内にも引き下げやむなし、のムードが高まり、それなら消費税引き下げを参議院選挙の目玉にしよう、との動きまで出ていました。

ところが、日米関税交渉の過程でトランプ政権による「農協解体」「財務省解体」が頓挫し、日本がにわかに強気になるなかで、消費税引き下げ機運がすっかり後退してしまいました。

野党は多かれ少なかれ消費税の廃止、引き下げ、一時的引き下げ論をたて、選挙に臨もうとしているだけに、政府は参院選にどう臨むのか、不安の声も上がっています。

政府の姿勢大きく後退

第1回の日米関税交渉の時点では、米国の要求をまず聞き、それにどう答えてゆくか検討していました。トランプ政権の交渉上の優先順位はまず円安修正のための日銀利上げ、ついで消費税廃止、そしてコメなど農産物の市場開放、米国車の販売促進のための規制緩和と並んでいました。

その時点で日本サイドとしては高い相互関税を回避するためには消費税の引き下げもやむなし、の状況でした。その際、党の税調からは税率の引き下げや食品などの個別対応ではシステムの変更コストなどがかさみ、いっそのこと消費税全体をやめる手もある、との声までありました。当然、そこまでやるなら、政府としてはこれを参議院選挙の目玉に使い、場合によっては衆参同時選挙で少数与党から脱却するチャンスとの声もありました。

ところが、トランプ政権の迷走を見て、政府の見方が変わりました。

当初はトランプ政権が求める「4月中の回答」を準備していたのですが、トランプ政策の迷走を見て、政府内には「トランプ関税は年内にも大幅修正をせざるを得なくなる」との見方が台頭、米国との交渉においては拙速で妥協することなく、じっくり構えて敵が折れるのを待つ戦略に変わりました。

これは石破総理もつながりのある米国CFR(外交問題評議会)からの情報も影響しているようです。米国ではニューヨーク州など民主党系の12の州でトランプ関税は緊急事態には当たらず違法であるとして、差し止め請求が出ています。

これが連邦最高裁でどう結論が出されるのか、ということですが、違法判決となれば、関税を取り下げることになります。この情報に乗って政府は時間をかけてじっくり交渉しようということになった模様です。

この結果、日本の税体系に大きな影響を与える消費税の見直し論は大きく後退しました。

もっとも、それでは選挙が戦えないとする自民党議員69名が森山幹事長に消費税引き下げを求め、幹事長はこれを党税調での議論に付す姿勢を見せました。税調で議論してガス抜きを図る意向とも見られています。政府の消費税引き下げ機運は大きく後退しています。

この消費税も含めた対米交渉での日本の変節には2つのリスクがあります。

新たなトランプリスクも

1つはトランプリスクを軽減できない可能性です。石破政権はトランプ関税が実現しない可能性に賭けています。1つには前述のように、トランプ関税に緊急性がなく、大統領の発議は違法との判決に期待していますが、保守系の判事が過半の最高裁がトランプを支持する可能性があり、日本の期待が外れる可能性があることです。

2つにはトランプ関税が物価高となって国民の負担になるため、トランプ大統領が取り下げる結果を期待していますが、トランプ大統領がこれを恒久化するリスクがあります。トランプ大統領は、「90日が過ぎても交渉がまとまらなければ相互関税を元に戻すだけ」と言っていて、ディールに応じなければ日本に対して24%の相互関税と自動車などへの追加関税がかかり続けることになります。

もう1つのトランプリスクは、日本がディールに応じないために、その分防衛費の増額(GDPの3%など)や為替の円高誘導を求められるリスクがあることです。これまでの交渉ではこの2つは議題に上がらなかったといいますが、貿易交渉が不成立となれば、改めて突きつけられる懸念があります。

日本は二度と米国と戦争をするわけにはいきません。そのためには日米同盟、日米安保の基本形は崩せません。そこで防衛費をGDPの3%に増額を求められればこれに応じざるを得ません。ただし、米国もその内容までチェックしないでしょうから、佐藤優氏も指摘するように食料安保費用やサイバー経費、空港管理などをすべて「安全保障」の範疇として防衛費に組み入れれば、実質負担は軽減できます。

参院選で与党敗北も

消費税引き下げを取り下げると、政府は夏の参議院選挙で苦戦を余儀なくされます。コメの価格高騰など物価高の中で消費税引き下げ期待が出ていただけに、これをやめれば与党が政治リスクを負うことになります。

政府内に消費税引き下げには慎重論があるだけでなく、国民の間にも財源問題を考えれば無理に消費税を下げなくてもよいとの見方は少なくありません。消費税を下げてもその分社会保険料負担が増えたり、別の負担が増えたりすれば元も子もないからです。

しかし、共産党など消費税の引き下げ財源を法人税増税(内部留保課税を含む)や富裕層への増税で賄う議論もあり、国民が納得する財源を見つければ、消費の負担を軽減する消費税の引き下げは不可能ではありません。少なくとも、消費税の形態をとることによって、輸出企業に年間7兆円以上の「還付金」を払うことが、トランプ大統領の「不当な補助金」批判になっており、これを軽減できます。

財源の当てもなしに「手取り増」をうたうポピュリズムは論外ですが、企業への不当な補助金や、使っていないファンド資金、600兆円もため込んだ企業の内部留保への課税などを財源とした消費減税は、国民の不満軽減にもつながり、検討の余地があります。

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