
自動車メーカーが悪いのか?「認証不正問題」の根深い課題。国と企業の“足の引っ張り合い”が競争力を奪っていく=原彰宏
トヨタ・マツダ・ホンダなど日本が世界に誇る自動車のトップメーカーに問題が相次いで発覚しました。一体どうしてこのような問題が起こったのか。そして、国土交通省の認証試験というのは一体どういうものなのか。深堀りしたいテーマは「メーカーだけが本当に悪いのか」「他にも何か問題があるのか」という点です。(『 らぽーる・マガジン 』原彰宏)
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※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2024年6月11日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
日本の自動車メーカーに不正まん延?
トヨタ・マツダ・ホンダなど日本が世界に誇る自動車のトップメーカーに問題が相次いで発覚しました。
一体どうしてこのような問題が起こったのか。そして、国土交通省の認証試験というのは一体どういうものなのか。考えてみます。
深堀りしたいテーマは「メーカーだけが本当に悪いのか」「他にも何か問題があるのか」という点です。
今回、不正が発覚した対象車は5社500万台以上。一方で、各社は口を揃えて「国より厳しい基準で独自に試験をしているので安全性に問題はない」と主張しています。
安全性に問題はない?どういうこと…。
トヨタ側から出てくるメッセージとして、衝突実験等において、日本よりも厳しい海外基準で行って問題ないというデータをとっているので、審査基準が、海外と比較して緩い日本の検査においては問題ないと判断したということです。
ところが、国土交通省は「日本で検査をしていない」ということで、「不正」と判断したとのことです。
例えば「後面衝突実験」。クルマの追突事故を想定し、クルマの後面に評価用の台車を衝突させ、
燃料漏れがないか確認する試験です。
日本の基準は小型車に相当する1,100kgの台車を衝突させるのですが、アメリカでも販売しているトヨタは、大型車が多いアメリカを想定して北米基準の1,800kgの台車を使用しました。
それでも燃料漏れ等の問題がないと、このデータを国土交通省に提出したのですが、国交省側は
「国交省が決めた手順をもってしていない」として「不正・改ざん」としたのです。
日本だけでなく海外でも販売しているメーカーが、海外基準で実験するのは当然です。それが、日本国内の基準よりも緩いのではなく厳しい基準となっているのです。
制度と現場にギャップ?
豊田章男トヨタ会長は「日本の型式指定制度」について、「“制度”と“現場”にギャップがある」と指摘して、この制度自体をどうするのか議論になっていくとよいと語っています。
国土交通省から「不正」とされたトヨタ自動車とマツダは、5つの車種の生産を停止しました。
生産を停止した車種に部品の供給などを行う取引先の企業は、トヨタ自動車が間接的な取引先も含めて1,000社以上、マツダは直接取り引きする企業だけでもおよそ300社となっています。
「日経クロステック」の記事はこう指摘しています。
トヨタは6つの認証試験において不正行為が見つかった。具体的には、
(1)前面衝突時の乗員保護試験
(2)オフセット前面衝突時の乗員保護試験
(3)歩行者頭部及び脚部保護試験
(4)後面衝突試験
(5)積み荷移動防止試験
(6)エンジン出力試験
──である。第1~第4の試験について同社は、国交省が定める認証試験よりも厳しい条件で行ったとしており、認証試験が求める性能値は超えているという。ただ、定められた手順や条件の通りに試験を行わないと不正となる。第6の試験では、認証試験で求める出力が得られなかった。そこでエンジン制御コンピューターを操作し、求める出力が得られるようにした。意図的な不正といえる。
メーカー側に問題がなかったわけではありません。
昔からずっと続いている認証制度そのものも、現状に合わせたバージョンアップが必要ですし、いろんな場面での“フレキシブルさ”が求められる部分があることは、よくわかりました。
国と企業が足の引っ張り合い…
フレキシブルさのもう1つの重要な点は「スピード」です。
今まではヨーロッパとかアメリカみたいに、開発スピードがそれほど高くないところが競争相手となっていましたが、今後は中国とか韓国みたいに開発スピードが早い国と勝負することになります。特に、様々な場面で、物事を決めるプロセスの早い中国と戦わなければならないのです。
中国の電気自動車などを見ていると、開発スピードが違いますね。
最後に、林芳正官房長官の記者会見での発言をご紹介します。
「国土交通省としては、出荷停止による経済への影響を低減する観点からも、基準適合性の確認試験を速やかに行うこととしているほか、不正のあったメーカー各社においても、生産ラインを止めないため、出荷停止となった車種以外の増産を行う等の対応を検討していると聞いています。
国民の安全・安心の確保を大前提として、厳正に対処していくことはもちろんですが、経済への影響を最小限に抑える観点からも、国土交通省として努めていきたいと思っています」。
国土交通省と民間企業が、このような制度の違いを言い争っている場合ではないように思います。
国と民間での“足の引っ張り合い”にも思え、官民協力して「オール・ニッポン」で世界と戦っていかなければならないと思うのですが…。
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