
なぜ日本「劣化」止まらぬ?東証インサイダー疑惑、行政の情報隠蔽、司法の捏造ほか先進国とは言えないレベルに=原彰宏

日本の国家機能「劣化」が浮き彫りになっています。東京証券取引所のインサイダー取引疑惑、行政の杜撰な記録管理、そして司法の捏造問題など、経済・行政・司法の各分野での信頼低下が加速。このままでは日本の民主主義と法治国家としての信頼が地に落ちてしまいます。(『 らぽーる・マガジン 』原彰宏)
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※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2024年10月28日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
日本の国家機能「劣化」がよくわかる2つの出来事
「日本」という国家機能が大劣化しています。
東京証券取引所の職員が業務で把握した未公開の情報を親族に伝え、インサイダー取引に関わった疑いがあるとして、証券取引等監視委員会から強制調査を受けていたことが分かりました。
東京証券取引所の20代の男性職員が、今年、株式公開買い付け(TOB)の上場企業の未公開情報を業務で把握し、複数回にわたって親族に伝えた疑いがあるということです。職員の親族は、情報が公開される前に株の取引を行い、一連の取引で少なくとも数十万円の利益を得たとみられています。
証券取引等監視委員会は先月、職員の自宅などに強制調査を行っていて、東京地検特捜部への告発も視野に取引の状況を詳しく調べています。
日本取引所のホームページの引用になりますが、「インサイダー取引」とは、上場会社の関係者等が、その職務や地位により知り得た、投資者の投資判断に重大な影響を与える未公表の会社情報を利用して、自社株等を売買することで、自己の利益を図ろうとするものです。
「関係者等」とは、当然、業務上知り得る事ができる立場の者も含まれます。
売買動向等で日々分析して、インサイダー取引が行われていないかどうかをチェックしているそうです。「売買審査」というらしいです。
※参考:インサイダー取引 – 日本取引所グループ
インサイダー取引が問題になった有名な事例としては、「村上ファンド事件」が挙げられます。
「村上ファンド」とは、多額の資産を運用し、多数の企業に対して投資を行っていた企業グループで、2004年11月から2005年1月にかけて、AMラジオ放送事業を行う「株式会社ニッポン放送」の上場株式を売買しました。
「ライブドア vs フジテレビ」の騒動は、連日ワイドショーを賑わせていましたね。
こんなことが、日本の経済の中心である東京証券取引所で行われていたなんて、前代未聞です。いやはや、もはや世も末ですね…。
もう1つ、情けない出来事を紹介します。朝日新聞の記事です。
大量の在庫が問題になった新型コロナ対策の布マスクを巡り、業者との契約過程を示す文書を開示するよう上脇博之神戸学院大教授が国に求めた訴訟で、複数省庁による「合同マスクチーム」のうち業者と直接やりとりした職員ら3人が15日、大阪地裁に証人出廷した。「やりとりは口頭が基本で、文書は残していない」と口をそろえた。
出典:アベノマスク契約めぐる訴訟 裁判長も「全て口頭で?」と突っ込み – 朝日新聞デジタル(2024年10月15日配信)
裁判長も「全て口頭で?」と、突っ込みがあったとあります。
マスクは2020年4月に安倍晋三首相(当時)が各戸配布を表明し、政府が400億円超をかけて約3億枚を調達したもので、「アベノマスク」と呼ばれたものです。
税金400億円が、使われたのですよ。
需要の乏しさから約8,300万枚が残り、国会などで税金の無駄遣いが指摘されたもので、税金を多額に使った発注を、文書も残さないで「口頭」で行われていたなんて信じられますかね…。
文書を作っている余裕はなかった、容量が限られているために(メールは)2~3回に1度に消去して保存していない……子どもみたいな言い訳ですね。
すべて対応が終わったあとからでも文章は残せますし、これだけの多額の税金を使ったのなら残すべきです。
行政の業務において、文書を残さない先進国は、地球上には存在しません。
官公庁のサーバーの容量が足らないのなら、自分のところから先にデジタル改革を進めるべきです。そんなことはすぐにでもできます。
デジタル大臣は、健康保険証とマイナンバーカードをどうこうと言う前に、足元のデジタル環境をしっかりと整えるべきです。ねぇ河野さん…。
「劣化」は司法の現場にも…
司法の現場にも一言。
2024年9月26日、静岡県清水市内で一家4人が惨殺された事件の再審で「無罪」が言い渡されました。再審請求のあり方など、“今の”司法手続きの大不備が指摘されました。
検察による証拠捏造により、袴田さんは「48年」もの長い人生を奪われたのです。「証拠捏造」による無実の罪でです。しかも検事総長のコメントは「袴田さんは犯人に等しい」と表現しています。はぁ、なんのプライド?検察は何を守りたいの?
この判決の影響なのか、福井市で昭和61年、中学3年の女子生徒(当時15)が殺害された事件で懲役7年の判決が確定し、服役した前川彰司さん(59)が裁判のやり直しを求めた第2次再審請求審で、名古屋高裁金沢支部は23日、再審開始を決定をしました。
前川さんは一貫して否認しています。前川さんが犯人だと示す直接的な物証はなく、「事件直後に血の付いた服を着た前川さんを見た」「犯行を打ち明けられた」といった複数の知人の証言が有罪の根拠とされたのですが、これらの証言の信用性が、非常に重要な鍵になっています。覚醒剤事件などで逮捕、勾留中で前川さんとは知人だった当時暴力団組員の男性が、「事件直後の前川さんを見た」と証言したことが犯人確定の根拠となったのです。
通常審の1審福井地裁で無罪判決、第1次再審請求審の高裁金沢支部で再審開始決定が出ましたが、いずれもその後に覆っています。今回の再審請求審では、知人の1人が有罪の根拠となった証言を翻し、「事件の日に前川さんを見ていない」と証言しました。なんか、この段階でもう“ぐちゃぐちゃ”ですね。
この内容は初期の供述調書とも同じで、「福井県警の捜査員に自身の覚醒剤事件を見逃してもらう見返りに記憶と異なる証言をした」と説明したとのことです。またまた官憲の捏造ですか。
日本の裁判においては、相手方から求められる場合や裁判所から文書提出命令が出された場合を除いては、不利な証拠の開示義務はありません。不利な証拠がある時裁判で不利になる証拠を持っていても提出義務はありません。“求めなければ”、官憲側にとって不利な証拠は(言い換えれば裁かれる側にとって有利な証拠は)開示されないのです。検察官は、弁護人から請求があれば、原則として証拠調請求した証拠以外の証拠であっても開示する義務があります。
この2つのニュースから言えることは、検察は、国は、何十年もの長い間、“真犯人”を世の中に放置していたということになります。真犯人を国家ぐるみで守ったのです。
真犯人を捕まえてよ、真犯人の国家ぐるみの隠匿かよ、国や検察はいったい何を守りたかったのよ…という声が聞こえてきます。
もはや日本は先進国とは言えない…
経済の中心で起こったこと、行政の劣化、司法の劣悪さ、国民との信用の上に成り立つはずの、国家として根幹の部分が大崩壊しています。
今回は触れませんでしたが、入管における人権無視の対応もとても先進国で起こっていることとは思えないですね。
もはや日本は先進国ではない。いや民主主義をかかげる近代法治国家とは到底、言えなくなってしまいました…。
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