非日常な雰囲気に価値を感じる欧米人、高い技術そのものに価値を見出す日本人。ラグジュアリーと匠の違いはココだ!

日本人の世界観
非日常な雰囲気に価値を感じる欧米人、高い技術そのものに価値を見出す日本人。ラグジュアリーと匠の違いはココだ! - まぐまぐニュース!
皆さん、こんにちは。私にはパリ在住の友人がいて、彼からブランドについて学んできました。一緒に日本企業のブランディングの手伝いをしたこともあります。その中で感じたのは、日本人と欧米人ではブランドの概念が異なることです。今日はそんなお話です。(坂口昌章氏のメルマガ『j-fashion journal』2024年9

非日常な雰囲気に価値を感じる欧米人、高い技術そのものに価値を見出す日本人。ラグジュアリーと匠の違いはココだ!

皆さん、こんにちは。私にはパリ在住の友人がいて、彼からブランドについて学んできました。一緒に日本企業のブランディングの手伝いをしたこともあります。その中で感じたのは、日本人と欧米人ではブランドの概念が異なることです。今日はそんなお話です。(坂口昌章氏のメルマガ『j-fashion journal』2024年9月14日号より)

ラグジュアリーと匠の関係

1.ラグジュアリーブランドは非日常

西欧のラグジュアリーブランドは、単に高級ブランドというわけではない。西欧の上流階級のリゾートライフに根ざした非日常のブランドである。

例えば、どんなに金持ちでもビジネスシーンでは時間がないので、昼食をサンドイッチで済ませることはある。ビジネスの時間はオンタイムであり、合理性を重視する。

しかし、長期休暇のリゾート地となると話は別だ。お気に入りのワインがなければ、ホテルをキャンセルすることも辞さない。徹底的に我がままで贅沢になる。

日本で高級ホテルというと、帝国ホテルのような利便性とサービスに優れた高級なビジネスホテルを指す。しかし。世界では、高級ホテルとはリゾートホテルだ。とことん贅沢に非日常の生活を楽しむオフタイムのホテルだ。

日本では休暇は仕事のための充電期間だ。だから、余暇という。休暇は余った暇なのだ。しかし、リッチな欧米人は休暇を楽しむ時間が本当の自分の時間であり、仕事はそのための手段に過ぎない。仕事より休暇の時間が大切なのだ。

リゾートこそ上流階級のライフスタイルであり、それに対応したのがラグジュアリーブランドだ。高価格だからと言って、機能性や耐久性を追求しているわけではない。あくまで、非日常の気分を演出してくれるツールなのだ。機能より気分が重要なので、ショップにも非日常性を感じさせるための多額な投資を行う。その分、商品が高額になるのだから、商品本位で考えればバカげた話である。

日本人が得意な真面目で機能的な製品はラグジュアリーとは言えない。例えば、宇宙服は凄い技術の結晶で高額な製品だがラグジュアリーではない。ラグジュアリーという概念には、遊び心や芸術性が不可欠なのだ。

2.技術そのものに価値を感じる日本

日本人は技術を尊重し、高く評価する。しかし、優れた技術を持つ匠でも高所得とは限らない。それでも、日本人は匠を尊重する。日本では技術そのものに価値を見出しているからだ。

韓国や中国などの儒教の国では、頭脳労働が肉体労働よりステイタスが高いとされ、手工業の職人を一段低く見る傾向がある。そのため、独自技術が根付かないのだ。

西欧の発想では、匠の技術で何を創造するかが問われる。技術そのものの価値ではなく、作品の価値が問題なのだ。技術を伝承しても、それだけで価値を認めることはない。

日本のメーカーが西欧の展示会に出展し、自社の技術を強調しても、実はあまり響いていない。出展した商品が、西欧人の生活の中で活かせないなら価値はないとされる。

同様に、高い原料を使っても評価されない。高い原料を使えば、商品の価格も高くなる。価格を含めた商品の魅力が問われるので、顧客が買えないような商品には魅力は感じない。

どんなに高級な素材のキャンバスや絵の具を使っても、絵画そのものの価値は上がらない。ラグジュアリーブランドでも、高価な素材を使うとは限らない。素材や技術に依存せずとも、デザインやブランドで商品の魅力を訴求することが出来るからだ。

ラグジュアリーブランドのデザイナーが日本の工芸品を活用して商品化することはある。コレクションのテーマに合えば、日本の素材にも意味が出てくる。ただし、テーマが変われば使ってくれないだろう。

3.インバウンド需要と海外展出展

日本が好きで、日本に観光に来る西欧人は、日本の商品を購入する。これは、思い出のための購入だ。したがって、外国人観光客に積極的にアプローチするのは正しい。

しかし、インバウンドの増加は日本人気が高まったこと、日本製の商品の輸出が増えるに違いないと考えるのは安易だ。

例えば、日本ではハワイ観光が人気だが、アロハシャツの着用には結び付かない。また。アロハシャツを購入するときに、ハワイで生産しているか否かを気にする人は少ないだろう。商品としての魅力が優先されるからだ。

同様に、欧米からのインバウンドが日本で商品を購入しても、それが日本製でも中国製でも気にしないだろう。

本気で欧米市場を攻略するなら、欧米人のライフスタイルや嗜好を理解し、現地の顧客が生活の中で使用できる商品でなければならない。リサーチも市場分析も行わず、日本の商品を輸出しようというのは余りにも無謀である。

確かに日本には素晴らしい技術がある。その技術を駆使してどんな商品を開発すべきかが問われるのである。

■編集後記「締めの都々逸」

「どんなに凄い 技術としても それを活かせぬ こともある」

産地に行くと、「うちの技術は世界一だ」という人がいますが、意外に世界を見ていません。そう思いたいのは分かるし、確かに凄い技術ですが、それで凄い商品ができるわけではありません。

生産中止になった古い機械を自慢する人もいますが、やはり最新の機械の方が儲かる商品が作れたりします。最終的には商品が勝負を決します。

技術を自慢する人は危ないのです。商品を自慢してください、と思います。そして、商品を作るのは機械だけではありません。優秀なデザイナーやスタッフが不可欠です。(坂口昌章)

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