民間の軍事会社の存在は一般にはあまり知られていませんでしたが、ウクライナ紛争にロシア民間軍事会社ワグネルが介入している、という報道が流され、私達にもその存在が知れ渡ることになりました。
もちろん、ウクライナにも民間軍事会社、傭兵が紛争に参加しています。
このような国家の管理を離れた軍事力の存在に警鐘を鳴らす記事の紹介です。
この記事のまとめ
「戦争民営化」- 民間軍事会社(PMC:戦争代行業)は新世界秩序への布石か?
- 民間軍事会社(PMC)の別名は戦争代行業
- PMCのマーケットは2030年には50兆円以上とも
- 21世紀初頭のイラク戦争で爆発的な需要拡大
- PMC拡大により、戦争民営化の懸念も拡大
- PMCオーナーが個人で国家と対決できる時代に
- 国家の管理を離れた軍事力はそもそも危険
- PMCが新世界秩序の構築に利用される可能性
「戦争民営化」- 民間軍事会社(PMC:戦争代行業)は新世界秩序への布石か?
現代の戦争で欠かせない「サービス」となった戦争代行業。日本では馴染みがないので 議論にすらならないが、実は大変危険な可能性を秘めている。
ある日 我が国を軍事侵攻するのは、隣の国家ではなく とある個人かもしれない。
戦争代行業(PMC)とは?
元軍人たちの受け皿ともなる民間軍事会社(PMC:Private Military Company)。戦争代行業とも呼ばれている通り、立派な軍事力を保有。
アメリカ政府やヨーロッパ富裕層に利用され、この数十年でその規模はぐんぐん成長。国家ではない 一介の “民間企業” が軍事力を持つという不気味な存在だ。
- 世界で約300社
- 市場規模は10〜26兆円以上
(2030年には50兆円以上とも)
代表的なPMC
- アカデミ社
(旧ブラックウォーター社*) - コントロール・リスク社
– フィリピン日本人誘拐事件で解放に協力 - STTEP社
– PMC業界のカリスマ、イーベン・バーロウが創設 - KBR社
– 故ディック・チェイニー米元副大統領が元CEO
*ブラックウォーター社 – 不祥事後に社名変更し、現在はアカデミ社。食糧メジャーであるモンサント社の子会社。モンサント社の大株主はビルゲイツ。BW社には ウクライナ最大の政商 コロモイスキーの私兵集団 アゾフ大隊の支援を指摘する声も。
必殺仕事人集団?
元米海兵隊Sealsを始め、世界中の退役軍人が民間軍事会社に転職。ゴルゴ13のような凄腕もいるかもしれない。
最近では米特殊部隊グリーンベレーの訓練さえも、PMC従業員が指導するという。グリーンベレーOBなのだから、技術面では確かに可能なのだろう。
戦争代行業 – 闇の仕事
PMCの需要は国家であることが多い。内政不干渉の原則に抵触するなど、立場上表立って介入しにくい紛争地域へは、自国の正規軍でなく 民間軍事会社を利用するのだ。
例えば2014年オレンジ革命後のウクライナ東部で、ブラック・ウォーター社の社員と見られる数百人規模の武装部隊目撃情報が発生。オバマ政権による関与を疑う声も。
法律で縛られた国軍よりも、民間企業の方がダーティーな仕事を遂行しやすいとの指摘もある。ビジネスはより簡単に国境を超えられるからだ。
民間軍事会社の問題点
- 管理不足でブラックウォーター社が民間人虐殺をするなどの不祥事
- カルロス・ゴーンの日本国外逃亡を手助けするなど、違法行為でも請負うケース
- 軍人でも民間人でもない、曖昧な法的立場
- 戦争を混乱・拡大しかねない
当然ながら 戦争が泥沼化・長期化すると、民間軍事会社の需要が拡大。この点も大きな懸念材料。利益最大化のために、あえて戦争の泥沼化工作をしかねないからだ。
傭兵の曖昧な法的立場
また、民間軍事会社の戦闘員の立場が非常に曖昧なことも問題。軍人・民間人のいずれでもない*。彼ら自身は「傭兵」と呼ばれることを嫌う傾向があるようだが、実際の線引きも難しい。
特に外国人傭兵の立場は不透明で、警備会社社員にすぎないと解釈されれば、非戦闘員が戦争に参加したことになる。
すると単なる犯罪者であることから、捕虜を丁重に扱うジュネーブ条約も適用されない。
*傭兵と民兵の違い – 傭兵は主に金銭目的で戦闘に参加。民兵は正規軍人はではなく 普段は別の職業に従事しているが、大義・信仰・愛国心のために戦闘に参加する。義勇兵、自警団など。
PMCの歴史
かつて欧米列強は、東インド会社に植民地統治をするための戦争を許可していた。
国家としても 遠隔地に 正規軍を派遣するコストを削減できたわけだ。
民間軍事会社の成立
その後も一部の大富豪が軍事力を私有する例はあった。ロックフェラーは自身所有の工場でストライキが発生した時に、会社軍で制圧。射殺までしたという。
さすがにヘレンケラーなど良識ある方々からの非難を浴びたことで、会社軍の継続は困難に。やがて警備会社を自称する民間軍事会社へと変化していった。
冷戦崩壊であぶれた軍人たち
米ソ冷戦崩壊や軍縮傾向で、90年代には多くの優秀な軍人が退役。その後、民間軍事会社が次々と誕生。
イラク戦争で需要爆発
21世紀初頭のブッシュ米大統領によるイラク戦争は、内外から歓迎されなかった。そのため、米国の正規軍人を戦地に大量派遣することが困難に。
ラムズフェルド国防長官*が小規模な部隊派遣による迅速な敵地制圧にこだわったこともあり、結果として 戦争のアウトソーシングが一気に拡大。
民間軍事会社が大きな注目を浴びた。以降そのマーケットが大きく拡大。
あれ? ラムズフェルドはこれを狙ったのか?
*ドナルド・ラムズフェルド – ブッシュ政権の国防長官としてイラク戦争を主導したネオコンの重鎮。製薬メジャーの経営者として開発したインフルエンザ特効薬タミフルで、巨万の富を築いた。
PMCはウクライナでも需要
PMCは欧米において一定の地位を確立しており、ウクライナ危機でも求人広告が出たと小さな話題も。
内容は依頼者家族の救出で、一日最大2000ドルでの兵士募集という。
戦争の「民営化」
民間軍事会社の仕事は多岐に渡る。
- 要人警護
- 戦闘行為
- 諜報活動・戦争を煽る工作活動
- 捕虜の尋問・人質交渉
- 戦闘エリアでの物流
- 軍事訓練の指導
以前ならCIAがしていた仕事をアウトソーシング。これはもはや戦争の民営化。
これを進めると、民間企業・私人が国家と対決できるわけだ。
国防軍は弱体化 ↔︎ 民間軍事会社は強大化
国防をアウトソーシングすることで、徐々に国家の軍事力そのものは弱体化。反比例して、民間軍事会社は強大化。
兵士たちにしても、兵役で国家に奉仕してばかりより、高額報酬に目が眩む者がいて当然。
国家が私企業の言いなりに?
やがて民間軍事会社に守られた国家は、その言いなりにならないとも限らない。
民間軍事会社は私企業である。株式を取得すれば、軍事力を私有できる。
例えば大富豪たちから、ビジネス上の理由で 領土を他国に引き渡すよう迫られた時。国防を人質に取られた国家はNOと言えるのか?
国家権力を離れた民間軍事力
これは国際秩序を守る上で許されるのか?
国家の管理を離れた軍事力、テロリズムと戦争していたのはアメリカ自身ではなかったのか?
個人 vs 国家?
例えば、イーロン・マスクの個人資産は約27兆円(2,190億USドル)。これは油田大国サウジアラビアの国家予算をも上回る資産額。
極端な話、民間人が私兵をもってよいなら、イーロン・マスクは国家を軍事力で圧倒できるわけだ。
ウクライナ危機にマスクが参戦?
世界長者番付1位のイーロン・マスク
実際にマスクは民間人でありながら、自身が経営するスペースX社の宇宙衛星を、ロシアと交戦中であるウクライナに提供。
ウクライナのフェドロフ副首相が、マスクにこう泣きついたのだ。
あなたが火星に植民地を作ろうとしている間、ロシアはウクライナを占領しようとしている。
民間軍事力を批判しないメディア
マスクはSNSで、軍事大国ロシアのプーチン大統領へ 一騎討ちの挑発。しかし、メディアが 民間人の思い上がりを 非難することはなかった。
メディアの報道によると、プーチンは核兵器を持つ狂った独裁者のはずだ。一介の民間人が挑発して本当に良かったのか?
民間の軍事力を称賛?
人類滅亡の窮地に、独裁者を倒す民間のヒーローが登場したら 私たちは熱狂しないだろうか?
危機を乗り越えるために、私たちは自らそのヒーローたちに、私たちの管理を委ねないだろうか?
個人が国家を凌駕する時代
1992年、金融では民間人ジョージ・ソロスがイングランド銀行を打ち負かした。次は戦争で個人が国家に勝つのか?
無人兵器 – マネー支配の布石?
無人攻撃ドローン MQ-9リーパー
人間からロボットへ
テクノロジーの大幅な進化により、今や無人兵器が登場する時代。
- 人間を訓練する労力
→ 不要 - 兵士の家族たちへの遺族年金
→ 不要 - 大量生産
→ 可能
無人兵器はボスニア、アフガニスタンなどで既に実戦配備済み。タリバン司令官の暗殺にも成功。
理論上、オペレーターは1万km離れた戦地に出向く必要はなく、自宅から出勤OK。
大幅なコスト削減
無人・MQ-1プレデター | 450万ドル(5.4億円) |
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有人・F22ステルス戦闘機 | 3億5000万ドル(420億円) |
無人機と有人機では 80倍弱の価格差。低コストで軍事力を増強するには魅力的な選択肢だろう。
また、兵士を育成するのには莫大なコストがネック。航空自衛隊の戦闘機パイロット養成には 一人当たり5年間で5億円。
ロボット兵器は人間の兵士よりもコストパフォーマンスが良いようだ。
無人兵器の行き着く先は?
AIの登場で、人間の命令なく攻撃する自律型致死兵器システム(LAWS)も完成。映画ターミネーターの世界は絵空事ではない。
近頃はスーパーの入り口ですら設置されている顔認証システム。外国のサーバが私たちの顔を記憶しているのは、一体何のためだろうか。
ロボットの実験は繰り返すごとに進化する。人類が倫理的な議論を進めるスピードよりも 遥かに早く。
大富豪がロボット軍を所有したら?
ますます一部の大富豪たちが、軍事力を私有しやすい社会が近づいてきている。
マネーで国家を凌駕する軍事力の獲得が可能な時代。気がつけば、一部 大富豪のロボット軍隊が地球を支配していかねない。GAFAが国境をこえた支配力を手にしたように。
新世界秩序 – 軍事力私有化とデジタル管理社会
中国大陸では、国民全員の思想・行動・履歴をポイント化して管理する「社会信用システム」が既に誕生。支配層にとって思わしくない人物の行動は、未然に予防管理される。
住所、家族、DNA、健康状態、通信記録、脳波 に至るまで。すべてデジタル管理された社会で 管理者への抵抗は非常に困難。
しかも彼らが軍事力をも所有していたら厄介だ。
我々全員の顔を認識したロボット兵器を、マネーが支配するとどうなるか?
NWO(新世界秩序) – 1%が99%を管理
ウクライナ危機という世界次元でのパニックを利用して、強引に戦争の民営化が進められないか注視が必要だ。いわゆるショックドクトリンである。
戦争民営化の先には新世界秩序が待っているのかもしれない。
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