「核の傘」という虚構にすがりつく岸田政権の憐れ…!日本はいつまで「対米従属」を続けるつもりなのか

現代の日本

〈核戦略の中で、核の傘はじつは極めて危うい存在である。米国が日本に核の傘を提供することによって、米国の都市が攻撃を受ける可能性がある場合、米国の核の傘は、ほぼ機能しない。重要なのは、ロシア・中国などが米国の核の傘があると思うか否かである。…もし、ロシアや中国がキッシンジャーの理論を信ずれば、日本には核の傘はない。日本は完全な核の傘の下にはないことを前提に安全保障政策を考えねばならない〉

日本は核抑止力を求めるなら、米国に依存するのではなく、独自開発の可能性を含めて、核保有の道を探らなければならない。当然、憲法改正も課題になる。

そうなれば、左翼勢力は猛烈に反発するだろう。そこで、左翼についても一言、触れよう。

米国は朝日新聞のような左派マスコミを含めて、日本の左翼を「役に立つバカ(useful idiot)」とみているに違いない。米国は長らく、日本の核武装を避けたい、と考えてきた。安全保障を米国の核に頼っている限り、日本は永遠に「米国の子分」にとどまるからだ。それは、米国にとって都合がいい。

「核の傘」という虚構にすがりつく岸田政権の憐れ…!日本はいつまで「対米従属」を続けるつもりなのか(長谷川 幸洋) @gendai_biz
米国が日本に約束している「核の傘」は、本当に存在しているのか。両国が最近の閣僚会合で「核抑止力の強化」を誓い合ったのは、多くの人が「存在しない」と疑っている証拠だ。嘘を嘘で塗り固めたところで、真実にはならない。むしろ、日本の自立を遠ざける。

「核の傘」という虚構にすがりつく岸田政権の憐れ…!日本はいつまで「対米従属」を続けるつもりなのか

本当に「核の傘」は存在するのか?

米国が日本に約束している「核の傘」は、本当に存在しているのか。両国が最近の閣僚会合で「核抑止力の強化」を誓い合ったのは、多くの人が「存在しない」と疑っている証拠だ。嘘を嘘で塗り固めたところで、真実にはならない。むしろ、日本の自立を遠ざける。

日本と米国は7月28日、東京で外務・防衛閣僚による安全保障協議委員会(2+2)を開いた

自衛隊が2024年度末に陸海空の部隊を一元的に管理する「統合作戦司令部」を発足するのに合わせて、米側は部隊運用の権限を持つ「統合軍司令部」を新設する。

同時に、米国が日本に提供している「核の傘」に関する初めての閣僚会合も開いた。両国は年内をめどに、中国や北朝鮮などを念頭に、核攻撃や核による威嚇に対する抑止力を強化する狙いで共同文書を作成する見通しだ

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いわゆる「核の傘」とは、日本など同盟国に対する核攻撃があった場合に、米国が核で反撃する枠組みだ。抑止力の適用範囲を米国だけでなく日本にも拡大する、という意味で「拡大抑止(extended deterrence)」と呼ばれている。

問題は「本当に核の傘=拡大抑止は存在するのか」である。

いくら同盟国とはいえ、自分自身が相手に再反撃されるリスクを犯してでも「米国による核の反撃はありえない」という指摘は、かねて専門家の間で指摘されてきた。

「核の傘」提供で米国が負うリスク

たとえば、河野克俊元自衛隊統合幕僚長はロシアによるウクライナ侵攻後の2022年11月、講演で、次のように語っている

〈『米露の兵隊が角を突き合わせたら、核戦争に発展する可能性があるので、軍事介入はしない』とバイデン大統領は明言した。これを日本の安全保障に移し替えてみるとどういうことになるか。日本が核の脅しをかけられたときには、アメリカの核に全面的に依存する。その時はアメリカが日本に対して、必ず核の傘をかけてくれるはずなのです〉

〈しかし、日本人の誰もアメリカが絶対に核の傘をかけてくれる、と言い切れるはずがない。なぜなら安保条約にも一行も書いておりません。アメリカが『大丈夫だ』と言っても本当かな、という疑念がかすめる〉

これよりはるか前、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官は1958年の著書「核兵器と外交政策」のなかで、こう指摘していた

〈全面戦争という破局に直面したとき、ヨーロッパといえども、全面戦争に値すると(米国の中で)誰が確信しうるか、米国大統領は西ヨーロッパと米国の都市50を引き換えにするだろうか。西半球以外の地域では、あえて争う価値がないようにみえる危険が大きい〉

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つまり、キッシンジャー氏は「米国の大統領は西半球以外の国である日本は守る価値がない、と判断するだろう」と指摘したのだ。同様に「核の傘は虚構」を指摘した専門家は、著名な国際政治学者であるハンス・モーゲンソー氏をはじめ、枚挙にいとまがない。

外交評論家の孫崎享氏は、2009年の著書「日米同盟の正体」で「筆者は日本の核兵器保有に否定的である」と断りながら「では、米国の核の傘の下で万全か。これも万全ではない」と、次のように指摘した。

〈核戦略の中で、核の傘はじつは極めて危うい存在である。米国が日本に核の傘を提供することによって、米国の都市が攻撃を受ける可能性がある場合、米国の核の傘は、ほぼ機能しない。重要なのは、ロシア・中国などが米国の核の傘があると思うか否かである。…もし、ロシアや中国がキッシンジャーの理論を信ずれば、日本には核の傘はない。日本は完全な核の傘の下にはないことを前提に安全保障政策を考えねばならない〉

嘘がバレそうになっている

私も河野氏や孫崎氏と同じように「日本に米国の核の傘はない」と考える。米国がワシントンDCやニューヨークが攻撃されるリスクを犯してでも、東京を守るとは思えないのだ。

岸田文雄政権が今回、米国との2+2会合で拡大抑止について閣僚会合を開いたり、共同文書の発出を検討しているのは、多くの人が「核の傘はフィクションだ」と感じているからにほかならない。嘘がバレそうになっているから、さらなる嘘で真実を覆い隠そうとしているのである。

だが、嘘に嘘を重ねても、真実になるわけではない。嘘が壮大になるだけだ。岸田政権と米国のジョー・バイデン政権は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領によるウクライナへの度重なる核の威嚇という現実を前に、虚構の強化に必死になっている。

そもそも拡大抑止という枠組みは、米国が主導権を握っている。日本に核の傘を提供するかどうかは、米国が決める話であって、日本はお願いする立場だ。米国が提供してくれなかったとしても、日本はどうすることもできない。

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日本は何もできないのか、と言えば、そんなことはない。日本の政策である「核を作らず、持たず、持ち込ませず」という非核3原則の見直しはできる。そうであれば、米国に「核の傘を提供してくれ」と言う前に、日本は自ら「核を持ち込ませず」を見直すべきだ。

核の持ち込みを拒否しながら、核の傘だけは提供してくれ、というのは、どう考えても矛盾している。岸田政権の「核兵器なき世界を目指す」方針もおかしい。日本は米国に「核の傘」を求めているのに「核兵器はなくそう」というのは、ご都合主義もいいところだ。

左翼は「役に立つバカ(useful idiot)」

7月29日付の読売新聞は社説で「米軍が日本周辺で核兵器を運用するにあたって『核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず』という非核三原則との整合性が問われる。特に核搭載の原子力潜水艦の日本への寄港と『持ち込ませず』の関係が問題となる」と指摘した。だが「撤廃しろ」とは言っていない。

産経新聞も30日付の社説で「日米が合意したエスカレーション管理に加え、日本や近隣地域へ米国の核戦力を配置する必要はないのか」と指摘しつつも、非核三原則については「見直しの議論も求められる」と書くにとどまっている。日本の新聞は、相変わらず「核アレルギーの呪縛」にとらわれている。

日本は核抑止力を求めるなら、米国に依存するのではなく、独自開発の可能性を含めて、核保有の道を探らなければならない。当然、憲法改正も課題になる。

そうなれば、左翼勢力は猛烈に反発するだろう。そこで、左翼についても一言、触れよう。

米国は朝日新聞のような左派マスコミを含めて、日本の左翼を「役に立つバカ(useful idiot)」とみているに違いない。米国は長らく、日本の核武装を避けたい、と考えてきた。安全保障を米国の核に頼っている限り、日本は永遠に「米国の子分」にとどまるからだ。それは、米国にとって都合がいい。

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いずれ中国との対決が避けられないなら、日本とその周辺が最大の戦場になる。その際、日本が全力で戦ってくれれば、米国の負担が少なくなる。米国は日本を身代わりにして、戦いに振り向けることができるのだ。日中両国が疲れ果てた局面で、米国が参戦すれば、米国は最終的な勝者になる。

したがって、核武装に反対し、日本を米国の従属国にとどめる役割を果たす左翼勢力は、米国にとって「役に立つバカ」なのだ。

日本の左翼は米国から、そんな目で見られていることを自覚しているか。まったく、していないだろう。日本の自立には「拡大抑止という虚構」にしがみついている岸田政権だけでなく、左翼勢力も整理する必要がある。

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7月29日に配信したYouTube番組「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」は、私の1人語りで「まだ嘘を言い続けるのか⁉ 核の拡大抑止」について解説しました。

30日には「米国の本音は政権交代で変わるか⁉」について、同じく1人語りで解説しました。

8月1日には「カマラ・ハリスの正体は⁉」について、私の1人語りで解説しました。

いずれも、ぜひご覧ください。

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