日本のミッションは何か。世界とどのように向かい合っていくのか。世界を支配したいのか。友好国を増やし、英連邦ならぬ日本友好国連邦を組織化し、それらの国を支援すればいいのか。あるいは、海外と関わらず、独自の文化を守り、静かに暮らしていくのか。
トランプが大統領に就任すれば、日本は自立を余儀なくされる。チャンスでもあり、重い課題を背負うことにもなるだろう。
「守ってほしければカネを払え」世界の警察から“保険会社”転換目指すトランプ再選で求められる日本の自立
バイデン氏の撤退で風向きは変わったものの、依然トランプ氏の優勢が囁かれるアメリカ大統領選。前大統領の「返り咲き」は、国際社会にどのような影響を及ぼすのでしょうか。今回のメルマガ『j-fashion journal』ではファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんが、「当選後」のトランプ氏がどのような政策を実行に移すのかを予測。さらに日本に突きつけられる課題を考察しています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:確トラで日本はどうする?
確トラで日本はどうする?
トランプ暗殺未遂で、バイデンとの対比が鮮やかになり、バイデンは大統領選から撤退しました。民主党はカマラハリス擁立でまとまりましたが、私はトランプ再選を予想しています。
その場合、日本はどうすればいいのか。きちんと対応できるのか。そんなことを考えてみました。
1.アメリカを取り戻す
トランプは「アメリカを取り戻す」と言った。
その一つが「中国から製造業を取り戻す」ことだった。中国が世界の工場になったのは米国の支援があったからだ。クリントンが中国のWTO加盟を認め、ウォール街の国際金融資本が中国に投資し、米国市場に上場させた。トランプはこの金の流れを止め、中国からの輸入を制限し、同盟国との連携を強め、中国を孤立させた。
更に「不法移民の流入を防ぎ、雇用を取り戻す」とも言った。雇用を取り戻し、景気を回復するために、シェールオイルの採掘を復活させ、EV優先政策を終了させるとしている。
更に、米国は世界のお警察を辞め、世界の保険会社を目指すようだ。守ってほしいのなら金を払えということだ。
米国は中国への資金流入を止め、中国からの輸入品に高い関税をかけることで、一気に製造業を崩壊させた。同様に、米国からの資金を止めることで戦争を止めるつもりではないか。
米国がウクライナへの支援を中止すれば、ウクライナは戦争を継続することができない。もちろん、ウクライナにしてみれば、ロシアが撤退しない停戦など望まないだろう。
イスラエル・ハマス戦争も米国がイスラエルへの資金援助を凍結すれば、戦争の維持は困難になる。
言い換えれば、常に戦争の裏には米国の軍産複合体が存在しており、米国が戦争の種を蒔き、米国が資金援助しているのである。そして、世界が不安定になれば米国の武器が売れる。
トランプは、国際金融資本、軍産複合体、巨大IT企業、グローバリズムと対立している。戦争経済も止めようとしている。
これら巨大な既得権と全面戦争することは、現体制を危機に陥れることでもある。
2.米国、国連依存でいいのか?
戦後の日本政府は、米国と国連に従ってきた。自国のビジョンを語る政治家がいないのは、米国と国連に従っていればいいと考えているからだ。しかし、米国も国連も時代と共に変化している。
米国内は民主党勢力と共和党勢力に分断されている。米国の力は弱体化し、世界の警察として機能することはできない。
国連も中枢に中国勢力が入り込み、自国に有利な政策を推進しようとしている。WHOは中国から多額の資金提供を受け、新型コロナ感染症の初期段階に、「人から人への感染はない」「中国への観光旅行は制限すべきではない」などと発言していた。国連が言うことだから間違いはないと判断するのは危険である。
安部首相は、トランプ大統領と信頼関係を結んでいた。岸田首相は、バイデン大統領の政策を全面的に支援している。どちらも米国の政策に追随するという戦後日本の暗黙のルールに従っていたのだ。しかし、トランプ氏にとって、バイデン大統領は大統領選挙の敵であり、バイデン大統領を支持する岸田首相も敵なのだ。
多分、日本の次期首相は岸田首相の政策を批判し、トランプの政策を支持するだろう。ルール通りではあるが、何とも主体性がなく、恥ずかしい限りである。
3.日本の問題は日本で解決する
問題は今後のことだ。トランプが大統領になれば、日本は自立が迫られるだろう。米国は自国ファーストで行くので、日本も自国ファーストで行けといわれるかもしれない。
トランプは長期的に米軍の海外基地を整理したいと考えている。日本や韓国から米軍が撤退するかもしれない。NATOからも脱退するかもしれない。
トランプがロシアのプーチン大統領と関係改善すれば、日本とロシア、日本と中国、日本と北朝鮮とも独自外交が必要になるだろう。
既に米国が弱体化し、世界は不安定になっている。安部元首相は「台湾有事は日本有事」と言ったが、米国にとって台湾有事の優先度は低いだろう。中国が台湾進攻しても、すぐに米軍が動くかは分からない。議会で支援の内容を決めなければならないからだ。
では、日本は自衛隊を動かせるのか。台湾進攻と共に沖縄の一部が攻撃されれば、憲法改正ができていれば、軍を差し向けることは可能かもしれない。しかし、その意思決定は誰が行うのか。
これまでならば、米国にお伺いを立てれば良かった。しかし、トランプ政権では、「日本の問題は日本で解決しろ」と言われるかもしれない。
4.日本のミッションは何か?
米国は世界をリードする、というミッションに基づいて行動していた。しかし、現在は国家より巨大な力を持つ企業が存在している。国家予算以上に資産を持つ企業があり、グローバルな経済活動を行っている。その財力で政治家をコントロールし、グローバル企業が利する政策を決定しているのだ。
トランプは、グローバル企業から国家の支配権を取り戻そうとしている。
中国は、世界に共産主義を広め、世界共産革命をミッションとしている。そのため、安定より混乱を望み、軍備を増強し、隣国を恫喝している。迷惑至極な話だが、ミッションは明確なのだ。
日本のミッションは何か。世界とどのように向かい合っていくのか。世界を支配したいのか。友好国を増やし、英連邦ならぬ日本友好国連邦を組織化し、それらの国を支援すればいいのか。あるいは、海外と関わらず、独自の文化を守り、静かに暮らしていくのか。
トランプが大統領に就任すれば、日本は自立を余儀なくされる。チャンスでもあり、重い課題を背負うことにもなるだろう。
編集後記「締めの都々逸」
「口は悪いが 戦争しない 不死身の男だ トランプだ」
私、トランプのTシャツを買ってしまいました。星条旗の下でこぶしを振り上げているイラストのTシャツ。あれで、大統領はトランプと確信しました。
マスコミも知識人もトランプが大嫌いという人が多いようです。かく言う私も最初の頃はトランプが嫌いでした。攻撃的だし、品がない。しかし、米国の景気が上向き、製造業回帰の可能性が見えてきた段階で「トランプは公約を守ってるじゃん」と気が付きました。
さわやかな弁舌でノーベル平和賞まで受賞しながら、戦争を引き起こしたオバマとは豪い違いです。そして、マスコミも知識人もオバマは好きなんです。不思議ですな。洗脳されているんじゃないか、なんて思ってしまいます。ということで私はトランプ支持。いずれにせよ、いばらの道です。頑張りましょう。(坂口昌章)
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