「平和評議会」設立でトランプの「最終的野望」が分かった!

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「平和評議会」設立でトランプの「最終的野望」が分かった!
2026年1月22日、35カ国がスイスで「平和評議会憲章」に合意し、トランプ米大統領が主導する新たな国際機関の設立が示唆された。この機関は国連に代わる可能性があり、ガザ和平のための枠組みとして機能するが、広範な地域に適用される可能性もある。平和評議会は加盟国に対し、トランプが選定した国が参加する形で構成され、国際法に基づき平和構築を目指す。

「平和評議会」設立でトランプの「最終的野望」が分かった!

1月22日、少なくとも35カ国がスイスのダボスにおいて「平和評議会憲章」(Board of Peace Charter)に合意した(下の写真を参照)。中央に座るドナルド・トランプ米大統領の満面の笑みからわかるように、平和評議会はトランプ主導で設立されたものであり、今後、国連に代替する組織に変貌する可能性を秘めている。そこで、今回はこの評議会について深堀りし、その深謀遠慮について考えたい。

ドナルド・トランプが平和評議会のメンバーに囲まれて、組織の憲章調印式に出席している様子                         

2026年1月22日 Gian Ehrenzeller / EPA / Scanpix / LETA                           

(出所)
https://meduza.io/feature/2026/01/22/tramp-sozdal-sovet-mira-a-vse-taki-chto-eto-takoe

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平和評議会設立までの物語

国連安全保障理事会は昨年11月17日、米国が支持する「ガザ紛争終結のための包括的計画」を承認した。同計画に基づく平和委員会の設置を歓迎するとともに、同委員会およびこれと連携する加盟国に対し、ガザに暫定的な国際安定化部隊(ISF)を設置することを承認した。この決議第2803号に付属文書として添付された「ドナルド・J・トランプ大統領のガザ紛争終結に向けた包括的計画」の9項目に、「平和評議会」が登場する。

「ガザは、技術官僚的で非政治的なパレスチナ委員会の暫定的な移行統治のもとで統治される」としたうえで、「この委員会は、有資格のパレスチナ人と国際専門家で構成され、新たな国際的移行機関である『平和評議会』による監督と監視を受ける」という形に位置づけられたのである。この決議は安保理の賛成13、反対なし、棄権2(中国、ロシア)の賛成多数で採択されたのであった。なお、決議第2803号の8項目には、平和評議会が2027年12月31日まで評議会としての権限を維持すると定められている。

平和評議会は、あくまでガザ地区の和平のための国際組織であるという特徴をもつ。ただし、こうした機関の設置の必要性を最初に説いたのはトランプではない。2002年にサウジアラビアのジェッダで開催された国際経済フォーラムで発表された「プリマコフ・プラン」というものがある。

プリマコフとは、ロシア首相を務めたエフゲニー・マクシーモビッチ・プリマコフだ。彼はスピーチのなかで、「パレスチナとイスラエルの和解を達成するための計画」を打ち出し、パレスチナとイスラエルが二国間で合意することができないという事実を考慮しつつ、和平合意スキームを彼らに押しつけるべきだとした。プリマコフはその時、トップダウンの動きさえ手で示したという(ロシア誌「モノクル」を参照)。つまり、紛争当事者はまず一定の枠組みのなかに置かれ、その枠組みのなかで最終的に和解の詳細について合意しなければならないというものだ。

実際の平和評議会憲章

実は、このプリマコフ・プランをもとにしている以上、平和評議会の枠組みはウクライナ和平などにも適用できるかもしれない。当事者間の激烈な対立がありながらも、和解達成計画を上から双方に押しつける方法がとりえる可能性があるからだ。

だからこそ、実際に1月に署名された平和評議会憲章をみると、ガザへの言及はない。逆に言えば、国連安保理決議第2803号の趣旨から逸脱している印象を受ける。そう、トランプがガザには限定されない新しい国際機関を模索しているニオイがする。

平和評議会の目的と機能を定めた第1条には、「平和評議会は、紛争の影響を受ける、またはその脅威にさらされている地域において、安定の促進、信頼性のある合法的な統治の回復、そして持続的な平和の確保を目指す国際機関である」と書かれているにすぎない。そのうえで、「平和評議会は、国際法に従い、かつ本憲章に基づき承認される範囲内で、平和構築の機能を実施するものとする」というのである。

第2条において、平和評議会の加盟国は、議長から参加を要請された国に限られ、第11条に従い、当該国が本憲章に拘束されることに同意したとの通知をもって開始されると定められている。第 3.2条で、トランプが平和評議会の初代議長を務め、同議長は、第 3 条の規定にのみ 従い、別途、米国の初代代表を務めるものとすると規定されている。

つまり、トランプのやりたい放題できる機関として平和評議会が構成されているようにみえる。この規定に従い、トランプは加盟申請を求める文書を、彼が恣意的に選んだ国に、1月22日以前に送っていた。

たとえば、インドのヒンドゥー・グループが所有するインドの英語日刊紙「ヒンドゥー」は、「トランプは少なくとも60カ国の指導者をガザ平和委員会への参加に招待した」と報じている。

スカイニュースも「約60カ国が評議会への参加を招待されている」と書いている。あるいは、ブルームバーグは情報源やソーシャルメディアの投稿に基づいてまとめられた49カ国のリストを公開した。他方で、Axiosは情報源を引用して、トランプが58カ国の指導者を評議会に招待したと報じている。

平和評議会への参加状況

カナダのCBCは、「1月22日の午前現在、イスラエル、トルコ、エジプト、サウジアラビア、カタールなど中東地域の主要国を含む約 35 カ国が評議会への参加に合意している」と報じた。23日付の更新情報に基づいて作成された下図からわかるように、中国、ロシア、インドはまだ態度がはっきりしない。

なお、日本は「招待なし」に分類されているが、実際には参加要請を受けているものの、態度は未定だ。カナダについては、トランプは一度招待を出しながら、それを取り消すと22日遅くになって自身のSNSで発表した。トランプは、カナダへの招待を取り消した理由について明らかにしなかったが、マーク・カーニー首相が世界経済フォーラム(ダボス会議)で、米国主導の国際秩序は「終焉を迎えた」とのべ、他の「中堅国」に対して、新たな同盟を結成してこの変化に対応するよう呼びかけた演説が、トランプを怒らせたであろうことは容易に想像がつく。

「ワシントンポスト」は、22日の署名には、19カ国の首脳が参加したが、欧州連合(EU)加盟国からはハンガリーとブルガリアの2カ国しか参加しなかったと伝えている。

トランプの平和評議会を受け入れた国々と拒絶した国々                

(出所)
https://www.cbc.ca/news/world/board-of-peace-gaza-trump-list-of-countries-9.7055866?utm_source=copilot.com

平和評議会の陣容

憲章の第2.2項 加盟国の責務(c)において、「各加盟国は、本憲章発効後、議長による更新を条件として、最長3年の任期を務めるものとする。ただし、憲章発効後1年以内に平和評議会に対し現金資金として10億ドル以上を拠出する加盟国については、この3年の加盟国任期は適用されない」と定められている。

興味深いのは、参加するよう要請を受けたウラジーミル・プーチン大統領の反応だ。1月21日に開催された安全保障会議の席上、「平和評議会については、ドナルド・トランプ米大統領から個人的なアピールを受けた」と認めたうえで、「この点に関して、私はまず、この提案に対するアメリカ大統領に感謝したい」とのべた。そのうえで、「平和評議会への参加については、ロシア外務省に、受け取った文書を検討し、この問題について戦略的パートナーと協議するよう指示した」という発言にとどめた。

だが、「平和評議会の構成と活動への参加という問題を決定する前であっても、ロシアとパレスチナの人々との特別な関係を考えれば、前米政権下で凍結されたロシアの資産から10億ドルを平和評議会に送金することは可能だと思う」と話した。さらに、「米国で凍結された資産の残りの資金は、ロシアとウクライナ間の和平条約が締結された後、敵対行為によって被害を受けた地域の復興にも使うことができる。我々はまた、この可能性について米国政権の代表と話し合っている」とした。

どうやら、プーチンは平和評議会の常任理事国入りの可能性を示唆しているようにみえる。先に指摘したように、平和評議会がプリマコフ・プランに基づいているとみなせば、今後、ガザ以外の地域でも和平実現のための機関になりえるかもしれない。その意味で、プーチンはトランプ主導の平和評議会について、無碍(むげ)にはしないように感じられる。

ロシアからみた平和評議会

ロシアからみた平和評議会のメリットは、第一に、トランプの描く世界政治に参画することで、ロシアの孤立を解消可能となることだ。第二のメリットは、創設時に理事会に参加することで、国連に代替する可能性のある平和評議会において、内部から一定の影響力を確保できる点だろう。

他方で、デメリットも多い。「モノクル」の記事によれば、第一に、そもそも国連安保理の常任理事国であるロシアにとって、平和評議会は自らの既存の影響力を弱めるのではないかという疑問がある。第二に、平和評議会がこれまで中国とともに構築してきた上海協力機構(SCO)やBRICSといった国際的な機関の役割を毀損(きそん)しかねないデメリットが考えられる。

その意味で、中国とインドの平和評議会への出方を見極める必要があるだろう。第三に、平和評議会の枠組みを認めると、米国がこれまでロシアの既得権益圏とみなしてきた中央アジアやコーカサスに積極的に介入するようになるのではないかという懸念が生まれる。

逆に言うと、平和評議会の将来性は、中国やインドの平和評議会への反応に大いにかかわっているということだ。もしこの二カ国が参加しなければ、ロシアも見送り、結局、平和評議会は矮小(わいしょう)化へと向かうだろう。ロシアだけが参加しても、その将来性は展望しにくい。

他方で、EUの主要国や英国の反応は冷たい。とくに、平和評議会憲章が署名されたダボス会議では、米国によるグリーンランド領有の問題で激論がかわされていた。このため、トランプ主導の平和評議会への欧州側の風当たりは強かった。たとえば、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は参加を拒否したが、トランプは即座にフランスワインに200%の関税をかけると脅した。

平和評議会を巡る深謀遠慮

ここまでの分析を、まったく別の米国の戦略と結びつけてみよう。それは、昨年12月に公表された国家安全保障戦略(NSS)だ(詳しくは「知られざる地政学」連載(120)の拙稿「アメリカの「国家安全保障戦略」を読み解く」[上、下]を参照)。

といっても、公表されたものを取り上げるのではない。実は、NSSには長い「別のバージョン」があり、そこに提示された内容はNSSと異なっているという話があるのだ。

米国家安全保障戦略       

(出所)
https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2025/12/2025-National-Security-Strategy.pdf       

(備考)2025年11月公表予定であったが、実際には、ホワイトハウスは2025年12月4日夜になって公表した。

この話を伝えた報道によると、トランプの長いバージョンの国家安全保障戦略は、G7のような裕福で民主的に統治された国という条件に縛られない、新しい大国の集まりを作ることを提案している。具体的には、米国、中国、ロシア、インド、日本(人口1億人以上の国)からなる「コア5」(C5)が提示されている。C5は、G7と同じように定期的に会合を開き、特定のテーマに沿ったサミットを開催するという。さらに、C5が提案する最初の議題は、中東の安全保障であるとされ、 中東の安全保障、具体的にはイスラエルとサウジアラビアの関係正常化であるとまで記されている。

ただし、ホワイトハウスはオンラインで公開されているもの以外の国家安全保障戦略の存在を否定している。また、「C5構想」と平和評議会との関係はまったく不明である。ただ、この報道には、「中国やロシアが米国のリーダーシップに取って代わることは許されない」が、「戦略では、安定を維持するために『地域のチャンピオン』と提携することを提案している」とある。

つまり、米国というヘゲモニー国を取り囲むように、中国、ロシア、インド、日本という大国による「力による平和」が指向されているようにみえる。

その実働機関として、平和評議会が一定の役割を果たすことをトランプは期待しているのではないか、との見方が成立するかもしれない。これは、欧州軽視のトランプの安全保障戦略にも符合する。

ただし、ここでの議論は深謀遠慮にすぎない。この憶測がより実現可能性をもつかどうかは、今年11月に実施される中間選挙の結果によってよりはっきりするだろう。

【こちらも読む】『「トランプのベネズエラ攻撃」を非難する中国、だがその裏で描く深謀遠慮』

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