現代の世界各国

尹錫悦弾劾訴追案を可決

尹錫悦弾劾訴追案を可決12月14日午後、韓国の尹錫悦(ユン・ソニョル)大統領に対する弾劾を求める決議案が採択され、可決された。投票結果は賛成 204反対  85棄権   3無効   8だった。尹大統領の職務は停止され、韓悳洙(ハン・ドクス)首相が大統領の職務を代行する。今後180日以内に、憲法裁判所が弾劾の妥当性を判断する。裁判所が弾劾を認めれば尹大統領は罷免され、新たに選挙で大統領が選出されることになる。尹大統領による突然の非常戒厳発令から混乱に陥っている韓国政治はとりあえず、最初のヤマ場を越えた。憲法裁判所は国会の法制司法委員長や当局者から口頭弁論を通じて意見を聴取する。同裁判所は大統領を罷免するかどうかを6カ月以内に決定しなければならない。罷免には裁判官(定数9人)のうち6人以上の賛成が必要だが、現在、憲法裁判所の裁判官は現在6人で、3人が空席になっている。弾劾訴追案を可決した議会議長は議会が選出する3人の憲法裁判所裁判官を選出し、憲法裁判所が9人の裁判官で審理する見通しを示した。憲法裁判所が大統領罷免を決定する場合、新たな大統領を決める選挙を60日以内に実施しなければならないこ...
現代の世界各国

戦争を引き起こす可能性があった尹大統領の戒厳令宣言と米国の役割

戦争を引き起こす可能性があった尹大統領の戒厳令宣言と米国の役割 韓国の尹錫悦大統領に対する弾劾決議案が12月14日に議会で可決、大統領の職務は停止、憲法裁判所がこの問題を審議することになるようだ。 弾劾決議の理由は尹錫悦大統領の戒厳令宣言だが、これに絡み、呂寅兄中将が注目されている。この宣言で重要な役割を果たした金龍顯は当時大統領警護室長を務めていたが、この金は大統領や呂寅兄中将と今年の初夏頃に食事を共にし、そこで戒厳令を話題にしたとされている。その後、金龍顯は9月に国防部長官(国防大臣)となる。3名とも冲岩高校の出身だ。 戒厳令によって国会、地方議会、政党の活動、そして政治的結社、集会、デモなど一切の政治活動を禁じ、すべてのメディアと出版は戒厳司令部によって統制されると尹錫悦は宣言しているが、こうしたことを個人的な問題のために行うという説明は説得力がない。韓国とアメリカの関係を考えれば、アメリカ政府が関与していないとも思えない。 戒厳令が宣言された直後から抗議活動が始まり、宣言から数時間後に議員300人のうち190名が議会へ入り、戒厳令を撤回させる動議を全会一致で可決した。その際、体...
現代の世界各国

日本はパレスチナ国家承認にどう向き合うべきか(下) 現代イスラム研究センター理事長・宮田律

日本はパレスチナ国家承認にどう向き合うべきか(下) 現代イスラム研究センター理事長・宮田律ニューヨーク・ブルックリンのウィリアムズバーグで、シオニズムに反対してイスラエル国旗を燃やす正統派ユダヤ教徒たち(11月11日)宮田律氏イギリスとパレスチナの国家承認 既述【前号】したように、イギリスは現在にいたるパレスチナ問題の原因をつくった国だ。 イギリスのサッチャー首相(在任1979~1990年)は、イギリスのユダヤ人に対する共感やソ連のユダヤ人に対する支持を表明したものの、中東の不安定化がソ連をはじめとする共産主義の影響がこの地域に及ぶ原因になることを懸念した。そのため彼女は、パレスチナ問題の進展を目指し、イスラエルによる戦争の終結とパレスチナ自治政府の樹立、また和平交渉でPLO(パレスチナ解放機構)が代表することを求めた1980年の「ヴェニス宣言」(中東に関する欧州理事会宣言)を他の欧州8カ国とともに発表した。 ヴェニス宣言は、パレスチナ問題の公正な解決とパレスチナの民族自決権が全面的に行使されるべきだと説き、エルサレムに関する一方的な変更を認めず、聖地のアクセスを妨害してはならないこと...
現代の世界各国

日本はパレスチナ国家承認にどう向き合うべきか(上) 現代イスラム研究センター理事長・宮田律

日本はパレスチナ国家承認にどう向き合うべきか(上) 現代イスラム研究センター理事長・宮田律イスラエルの攻撃により破壊されたガザ地区北部のジャバリア難民キャンプ(11月) パレスチナ人民連帯国際デー(国連パレスチナ分割決議の採択日)の11月29日、京都大学吉田キャンパスで現代イスラム研究センター理事長の宮田律氏を招き、「日本はパレスチナ国家承認にどう向き合うか」と題する講演会が開かれた。主催は、アムネスティ・インターナショナル京都四条グループ、パレスチナ人民と連帯する京大有志の会(学生団体)。昨年10月7日のハマスの襲撃に端を発したイスラエルのパレスチナ・ガザ地区への攻撃は現在も続き、ガザでは少なくとも4万4000人が死亡し、攻撃の矛先はレバノンやイランにも拡大している。この間、国際刑事裁判所(ICC)がジェノサイド(大量殺戮)の罪でイスラエルのネタニヤフ首相や閣僚の逮捕状を発行するなど国際世論の包囲網は強まり、長年主権を侵害されてきたパレスチナを国家として承認する動きが世界的に広がっている。一方、日本を含むG7各国はイスラエルを擁護・支援し、パレスチナ国家承認の動きを見せていない。宮田...
現代のロシア

今後のシリアとイスラエル

今後のシリアとイスラエル2024年12月12日   田中 宇アルカイダ系のHTS(レバント解放機構)がアサド政権を転覆した直後のシリアを、イスラエル軍が空爆・地上侵攻した。イスラエルは350発のミサイルを撃ち込み、シリア各地にあったアサド政権の軍事基地、兵器庫などを破壊した。シリア政府軍の軍備のほとんどが破壊された。ラタキアの海軍基地もミサイル攻撃し、シリア海軍の装備をすべて破壊した。(Israel’s frenzied reality: When destroying an enemy navy isn’t the top news story - analysis)(Israel conducts more than 300 air strikes across Syria)イスラエルは、1960年代にシリアから奪って占領しているゴラン高原から、シリア内部に10キロ侵攻し、クナイトラまで幅10キロの地域を緩衝地帯として半永久的に占領する。イスラエル軍は一時、緩衝地帯からさらに内部のダマスカス近郊まで侵攻し、シリア側の軍事拠点などを破壊した。イスラエルは、これまでいずれ返すと言ってい...
現代のロシア

米国がウクライナを使ってロシアの港湾都市を攻撃、露国はオレーシニクで報復へ

米国がウクライナを使ってロシアの港湾都市を攻撃、露国はオレーシニクで報復へ ​ウクライナ軍は12月11日にロシア南部ロストフ州の港湾都市タガンログをミサイルで攻撃、同州で知事代行を務めるユーリー・スリュサルによると、死傷者はいなかったものの工業地帯が被害を受けた​という。 アメリカ製のATACMSが使用されたようだが、ウクライナ軍が独力で使うことはできない。ターゲットの選定や情報の収集、ミサイルを誘導するための衛星からの情報、オペレーターなどアメリカ/NATO軍の協力が必要。ウクライナから発射されても、攻撃の主体はアメリカ/NATO軍だということだ。そうした攻撃を放置しないとウラジミル・プーチン露大統領は11月27日に警告している。 その前、11月19日にウクライナ軍は6発のATACMSでロシア深奥部を攻撃、また11月20日にはイギリス製ストームシャドウとHIMARSミサイルで複合攻撃した。いずれの場合もミサイル供与国は攻撃を許可しているはずだ。 それに対し、ロシア軍は11月21日、ウクライナのドニエプルにある兵器工場を新型中距離弾道ミサイルのオレーシニクで攻撃した。このミサイルは極超...
現代の中国

中国半導体最前線PartⅣ 半導体微細化「ムーアの法則」破綻の先を狙う中国

中国半導体最前線PartⅣ 半導体微細化「ムーアの法則」破綻の先を狙う中国米アマゾンのラボAIチップ開発など研究(写真:ロイター/アフロ) 半導体の微細化に関して「半導体の性能が18ヵ月で2倍になる」という経験則「ムーアの法則」は実際上かなり前から破綻しているが、人々は「3nm、2nm…」と競い合っている。ならば、「3nm、2nm…」の実態は何かと言えば、それは商品番号にすぎず、実際TSMCでも、たとえば「TSMC 3nm」チップとは言わずに、TSMC「3N」と、「こっそりと商品番号に置き換えている」ことに気が付かなければならない。その意味では製造者側は、実は良心的に「ムーアの法則」の破綻を認識していると言っていいだろう。 多くの研究者は、物理学的には「3nm」辺りから事実上それ以上の微細化はできないとする「ムーアの法則」限界理論を10年以上前から展開はしている。しかしビジネス界はわかっていながらも、互いに「騙し騙され」、「3nm、2nm…」を唱えてきたのである。投資家に気付かれるのを避けるためだろう。 いま現在は、既に「ムーアの論理」は破綻していると見る専門家は多く、中国もその中の一...
現代の日本

「年収106万円の壁」撤廃で年間9.6万円の負担増に…働き控え解消の先に待つのは「雇い控え」

「年収106万円の壁」撤廃で年間9.6万円の負担増に…働き控え解消の先に待つのは「雇い控え」パートの従業員の人たちまで負担増の網にかける(C)共同通信社「年収106万円の壁」が撤廃される運びだ。厚労省の社会保障審議会が10日に大筋で了承。この壁は厚生年金に加入する年収要件を指す。現状パートなどで働く短時間労働者(学生除く)の加入要件は月収8万8000円以上、年収換算106万円。そのため、労使折半の保険料負担を避けようと労働時間を調整し、働き控えを招く要因となっていた。 政府は来年の通常国会に改正法案を提出。2026年10月に年収要件の撤廃を目指す。勤務先の従業員数の要件(51人以上)もなくし、週の労働時間が20時間以上ならば、年収を問わず厚生年金に加入することになる。「加入対象者は約110万人。うち80万人は主に会社員に扶養される配偶者や60歳以上の高齢者で、これまでの保険料はゼロ。新たに負担が生じます」(厚労省年金局数理課) 厚労省の試算によれば、新たな本人負担は年収106万円で月額8050円、年間9万6600円に上る。急激な手取り減の緩和措置として保険料の企業負担率を増やし、応じた...
現代の日本

トゥルシ・ガバードは日本に関する近代史の授業を受ける必要がある

トゥルシ・ガバードは日本に関する近代史の授業を受ける必要がある元米国下院議員のトゥルシ・ガバード氏は日本について読むことを検討すべきだ。画像: ウィキメディア・コモンズ2023年12月7日、現在次期大統領ドナルド・トランプ氏が国家情報長官に指名しているトゥルシ・ギャバード氏がXに次のように書いた。日本の太平洋侵略を思い起こすとき、私たちは自分自身にこう問いかける必要がある。現在進行中の日本の再軍備は本当に良い考えなのだろうか?近視眼的で利己的な指導者たちが、私たちを再び再軍備した日本と直面させることにならないよう、私たちは注意する必要がある。ギャバード元下院議員は、別の日本について語っているようだ。ニューヨークタイムズの記者リチャード・ハロランはかつて私に、日本人は「自分自身を説明する」能力に関して、これまで出会った中で最悪だと言ったことがある。それは今も変わっていない。だから私は挑戦してみようと思う。誰が日本を恐れているのか?まず、「現在進行中の日本の再軍備」についてですが、えっ?日本は随分前に再軍備しました。少なくとも50年前です。日本の自衛隊(JSDF)は25万人の兵力を有し、装...
科学論

この地球で「いつ」「何が」起きたのか、「世界で最も正確に」わかる…「奇蹟の湖・水月湖」から見つかった「超精密データ」の正体

この地球で「いつ」「何が」起きたのか、「世界で最も正確に」わかる…「奇蹟の湖・水月湖」から見つかった「超精密データ」の正体天災の「前例」と「想定」2011年3月11日、日本列島北東部を巨大な地震と津波が襲った。町が丸ごと水に呑み込まれて流されていく様子は、デジタル家電とインターネットを通して多くの人の目にリアルタイムで刻まれ、自然災害と人間の生活について、災害慣れしているはずの日本人の価値観まで揺さぶる議論を巻き起こした。この地震には「前例」があったらしいことが、その後の報道によって一般にも知られるようになった。西暦869年の夏に、おなじく東北地方を襲った貞観地震である。津波は、海から大量の土砂を運びあげて陸上に特殊な地層を残す。貞観地震の津波の地層は、記録に残るいかなる津波よりも内陸にまで分布していた。まだ記憶に新しい東日本大震災による津波被害。1150年前にも同様の津波被害があった。 photo by gettyimagesつまり、現代人が忘れてしまった規模の津波が、今から1150年ほど前にはじっさいに起こっていたのである。このことをきっかけに、東日本大震災ほどの災害であっても、事...
現代の日本

意外と多い日本とドイツの共通点。米トランプ元大統領の当選でどう変化するのか?

意外と多い日本とドイツの共通点。米トランプ元大統領の当選でどう変化するのか?日本とドイツには多くの共通点があるのをご存じでしょうか。アメリカ大統領選で次期大統領にトランプ氏が当選したことにより、日本とドイツはどうなっていくのか。今回のメルマガ『j-fashion journal』ではファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんが、その未来予想を語ります。トランプ再選後の日本とドイツ1.日本とドイツの共通点日本もドイツも第二次世界大戦の敗戦国だ。そして、どちらも工業国。機械、化学、自動車等、多くの分野で世界をリードしている。米国、英国は戦勝国であるにも関わらず、工業技術については日本、ドイツに及ばない。しかし、金融面では、米国、英国が世界を支配している。そして、金融の力で世界をコントロールしている。戦後の日本経済は奇跡的な成長を遂げた。世界第二位の経済大国となり、米国、ヨーロッパも危機感を感じたほどだ。日本経済に対抗するために、ヨーロッパは連帯し、EC、後のEUに発展した。多くの日本人はそう考えているが、EUの狙いはそれだけだったのか。現在から振り返ると、ドイツを囲い込み、ドイツ経済...
現代の日本

見せかけ詐欺減税に騙されるな

見せかけ詐欺減税に騙されるな基礎控除の額等を引き上げて課税が発生する水準を引き上げること。いわゆる「103万円の壁引き上げ」が検討されている。この水準を178万円にまで引き上げると7~8兆円の税収減になり、その財源を確保する必要があると財務省が主張する。財務省は歳出拡大を決定する際に常に財源確保を言っているわけではない。2020年度から23年度の4年間に政府は補正予算で154兆円の財政支出を追加した。その全額が国債発行で賄われた。1年あたり39兆円だ。4年で154兆円の財政支出追加を計上したときには「財源論」が一切論議もされず、減税案が提示されると突然「財源論」が強調される。財務省は信頼できない。大蔵省で勤務した経験からこれを断言できる。税収については次に事実を把握しておくことが必要不可欠。2020年度の一般会計税収は60.8兆円。23年度の一般会計税収は72.1兆円。税収は3年間に11.3兆円増えた。11.3兆円の「税負担増加=増税」が実現したということ。課税最低限103万円を178万円に引き上げて生じる税収減は7~8兆円。11.3兆円よりも小さい。知らぬ間に税収が激増したときには何...
現代の中国

中国半導体最前線PartⅢ AI半導体GPUで急成長した「中国版NVIDIA」ムーア・スレッド

中国半導体最前線PartⅢ AI半導体GPUで急成長した「中国版NVIDIA」ムーア・スレッド出典:ムーア・スレッドの発表会 生成AIの出現によって世界のトップに躍り出たアメリカNVIDIA(エヌビディア)のAI半導体GPU(Graphics Processing Unit、画像処理演算装置)の右に出る者はいないが、中国のスタートアップ企業ムーア・スレッド(Moore Threads, 摩尔线程)が製造したAI半導体GPUが注目を集めている。NVIDIAの前世代レベルではあるものの、ムーア・スレッドのAI半導体GPUはNVIDIAが開発したCUDA(クーダ)対応のプログラムを簡単に変換するだけで使えるので、NVIDIAとの互換性に優れている。 12月2日のコラム<中国半導体最前線PartⅡ ファーウェイのスマホMate70とAI半導体>で触れたように、2025年初めに量産すると言われている「ファーウェイのAI半導体Ascend 910C」にはNVIDIAとの互換性が低いなどさまざまな懸念がある中、「ムーア・スレッドのAI半導体GPU MTT S4000」が注目されている理由は、この互換...
現代の世界各国

いつまでも戦争止めないゼレンスキー…それは止めたら自分が追放されるから

いつまでも戦争止めないゼレンスキー…それは止めたら自分が追放されるからウクライナの大統領であるウォロディミル・ゼレンスキーなる人物を支援する欧米や日本の国民は、大きな誤解をしている。それは、彼が戦争をつづけようと躍起になっている好戦派であるという事実を知らないところに起因している。しかも、戦争をつづけたがっているゼレンスキーを、一部の欧州諸国の指導者が支援しようとしている。ウクライナでも、欧州諸国でも、世論調査の結果は、過半数が戦争終結と和平を求めている。それにもかかわらず、そうしないというのがいまの現状なのだ。こんな状況に民主主義はあるのか。しかも、日本の伝統メディアはこうした奇妙な現状をまったく報道しない。戦争終結を求める国民ロシアの大規模侵攻がはじまって以来初めて、ウクライナ国民の52%が戦争終結に向けた交渉をできるだけ早く開始することに賛成していることが、米ギャラップ社の世論調査でわたった。今年8月と10月に実施したウクライナに関する最新の調査では、ウクライナ人の平均52%が、自国が一刻も早く戦争終結に向けて交渉することを望んでいることがわかったというのである。他方で、 ウクラ...
現代の世界各国

シリアの死後:テロ、占領、そしてパレスチナ

シリアの死後:テロ、占領、そしてパレスチナダマスカス陥落を喜ぶNATOとイスラエルの陰謀団は、予想以上の事態に見舞われることになるだろう。それぞれが利益を狙う地域や外国のさまざまな勢力に支援されている過激派民兵と市民社会の間での権力闘争と内紛だ。写真提供: ザ・クレードルシリアの突然の急速な終焉を予測した短い見出しは、私たちが予想していた通り、「エルサレム、新オスマン主義と遭遇」。副題は?西側諸国にとってはウィンウィン、そして抵抗枢軸にとっては致命的な打撃。しかし、いまだに浸透しているアメリカのポップカルチャーを引用すると、フクロウは見た目通りではないのかもしれません。まずはシリアのバッシャール・アル・アサド前大統領の降伏から始めよう。カタールの外交官は非公式に、アサド大統領は数日前にアレッポから大規模な軍事攻勢を開始し、その後急速に南下してハマ、ホムス、そしてダマスカスを目指していた武装反政府勢力と権力移譲の交渉を試みたと主張している。これは先週末、ロシア、イラン、トルコの間でドーハで密室で詳細に話し合われた内容で、シリア非武装化に向けた停滞した「アスタナ・プロセス」の最後の一息のと...
現代の世界各国

シリアのアサド政権崩壊でトルコはロシアを裏切ったのか、両国は連携したのか

シリアのアサド政権崩壊でトルコはロシアを裏切ったのか、両国は連携したのか バシャール・アル・アサド一家はロシアへ到着したと伝えられている。ロイターは12月8日、アサド大統領を乗せた航空機が墜落したと伝えていたが、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官はそれを誤報だと主張し、撤回を求めていた。 2021年8月にアフガニスタンの首都カブールが陥落した際にはアメリカ軍を含めて大混乱だったが、今回のアサド政権崩壊は穏やかに推移しているように見える。ダマスカスを制圧したハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)だけでなくシリア政府側も落ち着いているようだ。HTSが攻め込んだ際、シリア軍は戦わなかったとも伝えられている。政権が「崩壊するスピードの速さ」を生み出した原因はそこにあるのだろう。 アメリカ軍は油田地帯を含むシリア東部をクルドと共同で支配しているが、ロシア軍も地中海沿岸にタルトゥス海軍基地とフメイミム空軍基地を置いている。HTSはこうしたロシアの基地を攻撃する動きは見せていないだけでなく、防衛態勢に入っている。 HTSはアル・カイダ系のアル・ヌスラ戦線を改名した組織だとされ、そのアル・ヌスラ...
現代の世界各国

シリア・アサド政権は崩壊間近…ウクライナの泥沼にハマったプーチンが迫られる「究極の選択」と、その後に襲う「深刻な打撃」

シリア・アサド政権は崩壊間近…ウクライナの泥沼にハマったプーチンが迫られる「究極の選択」と、その後に襲う「深刻な打撃」シリア・アサド大統領の「モスクワ逃亡」?シリアの反政府勢力がここ数年で最大の攻撃を開始し、シリア内戦が大きな転換点を迎えた。シリア主要都市であるアレッポがあっという間に陥落した。シリアは南部のダマスカスが首都だが、北部のアレッポは南部にある首都ダマスカスに次ぐ第二の都市で、日本でイメージすれば、大阪があっという間に制圧されたという感じだ。そんな重要都市を取られようとしているのに、アサド政権の政府軍はほとんど抵抗らしい抵抗を行わずに逃げ出した。日本のメディアでは、シリア北部だけでなく、シリア中部においても反政府勢力が攻勢を強めていると報じられているが、現実には反政府勢力の攻勢はもっと進んでいる。政府軍の最重要拠点であるシリア南部の首都ダマスカスにおいてでさえ、すでに激しい銃撃戦が繰り広げられているのだ。主流派メディアは報じていないが、すでにアサド大統領がモスクワに脱出したという情報が出ている。私はこれは確実だと見ていいのではないかと考えている。というのは、ロシア大統領府の...
現代の世界各国

シリア政権転覆の意味

2024年12月9日   田中 宇12月8日、シリアのアサド政権があっさり転覆された。アルカイダ系の反政府組織HTSは、イスラエルがヒズボラを制圧してレバノンが停戦した翌日の11日28日に今回の決起を開始し、わずか11日で強かったはずのアサド政権を倒し、アサド大統領をモスクワ亡命に追いやった。この間の戦闘での死者は兵士772人、市民138人にすぎない。激戦でなく、ダマスカスもホムスもほとんど無血開城だった。アサド政権は徹底抗戦して負けたのでなく、あまり戦わずして負けを認めた。(What's next for Turkey in Syria)(War monitor says 910 killed, including 138 civilians, since Syrian rebel offensive)独裁者のアサドが亡命していなくなる代わりに、その下のジャラリ首相以下、軍や治安組織を含む政府は丸ごと残り、今後の新政権ができるまでの暫定政府として機能することになった。HTS指導者のジャウラニは、1年半の政権移行期を設け、その間は暫定政府を機能させると言っている。アサドは、負けが見えた...
現代の世界各国

ATOがシリアでアサド体制を倒し、多元社会は窮地

ATOがシリアでアサド体制を倒し、多元社会は窮地 イドリブに立てこもっていたイスラム教スンニ派の武装集団ハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)がダマスカスを制圧、バシャール・アル・アサド政権は倒されたようだ。崩壊するスピードの速さに驚いている人が少なくないが、現地からの情報によると、シリア軍が負けたのではなく戦わなかったと見られている。 HTSは11月27日、レバノンでの停戦開始に合わせてシリア軍を奇襲攻撃した。HTSはカタールからの支援で購入した最新の兵器とウクライナのオペレーターが操作する多数のドローンを保有、アレッポを制圧した後、支配地域を広げていると伝えられている。ウクライナ本国ではアメリカ/NATOに支援されたネオ・ナチ政権が風前の灯だが、シリアではロシアにダメージを与えることに成功したと言えるかもしれない。 こうした攻撃の際、シリア軍の一部は戦わずに逃亡したと伝えられているが、2011年からバラク・オバマ政権が始めた侵略戦争の際にもシリア軍は兵士の3分の2は逃げたとされている。シリア軍の大半がスンニ派だということも影響しているのだろう。 HTSが攻撃を始める前、イスラエ...
現代の中国

中国半導体最前線PartⅡ ファーウェイのスマホMate70とAI半導体

中国半導体最前線PartⅡ ファーウェイのスマホMate70とAI半導体HUAWEI(ファーウェイ)(写真:ロイター/アフロ) 中国半導体最前線のPartⅡとして、ファーウェイのケースを考察する。アメリカが対中半導体制裁を始めたのはトランプ1.0政権が、習近平が発布した「中国製造2025」の衝撃に気付いたからだ。これを習近平に実行されたらアメリカはハイテク分野において中国に負け、アメリカ経済も中国に負けるという恐るべき未来が待っている。その最悪シナリオを圧し潰すために対中制裁を始めた。 「安全保障上の理由から」というのは常套句にすぎず、日本の「日の丸半導体」を沈没させる時にもアメリカは日本に対して同じく「アメリカの安全保障を脅かす」という言葉を使った。 アメリカの対中制裁の最初のターゲットとなったのはファーウェイだ。スマホ関連の半導体開発を潰されたファーウェイは今、どのような形で立ち直ろうとしているのだろうか。◆スマホMate70に搭載したKirin9020の性能はTSMC4nmプロセスに相当 今年11月26日にファーウェイは新しいスマホMate 70シリーズを発表した。そのハイエンド...