「ロシアの選挙介入」疑惑すらも「情報機関による捏造」だった⋯?2016年米大統領選「情報操作の闇」を検証した衝撃レポートの中身

実は前々回から
7月8日公開の「FBI長官はなぜもみ消したのか~中国から『ニセ運転免許証』が大量に届いて…アメリカ大統領選『不正選挙』を裏づける『爆弾証言』の中身」では、2020年の米大統領選挙において、中国政府が絡んでいると見られる大きな不正があった疑惑が浮上したことを扱ったが、さらに4年前の2016年の米大統領選挙についても最近疑惑が浮上している。
この時の選挙においては、ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプが戦い、最終的にはトランプが勝利したが、トランプ勝利の背後にロシアの選挙介入があったという疑いが掛けられ、トランプ政権発足後もモラー特別検察官によるトランプ大統領に対する厳しい取り調べが行われたことを覚えている方も多いだろう。このトランプ政権追及の根拠に利用されたCIAによってまとめ上げられた文書が、民主党の党派的利益を優先して作り上げられていた疑惑が浮上したのである。
当時のジョン・ブレナンCIA長官、ジェームズ・コミーFBI長官、ジェームズ・クラッパー国家情報長官の手によって、この文書が意図的に作られたものだったというレポートが、このたびCIAから発表されたのだ。
現在はトランプ政権であるから、トランプ政権の意向を汲んでCIAが新たな調査を行ったのは間違いない。したがってこの調査結果がトランプ色に染められている可能性も考える必要はあるだろう。
ただ、この調査レポートを見る限りにおいては、オバマ政権下でまとめられた文書が党派的なものだった疑いは、極めて濃厚だと私は思う。
スティール文書のごり押し
2016年当時の評価を調査し直したCIAの分析官たちは、当時の評価について、部門長たちの過剰な関与や極端に短い提出期限などの様々な手続き上の欠陥を列挙した。
部門長たちの過剰な関与とは、ブレナンCIA長官、コミーFBI長官、クラッパー国家情報長官の口出しによって、あらかじめ方向性が決められたことを伝えている。この3人の中で最も中心的な役割を演じたのは、ブレナンCIA長官だった。
ブレナンCIA長官は、ロシア関与の有力な証拠として当初扱われたスティール文書を、ロシア専門家たちの反対を押し切って評価の根拠として入れることをゴリ押しした。
スティール文書とは、イギリス情報機関MI6で20年近く働いた経歴のある、ロシア問題の専門家であるクリストファー・スティール氏が作成したものだ。トランプがモスクワにあるリッツカールトンホテルのスイートルームに複数の売春婦を呼んで乱痴気騒ぎを行ったなどと書かれていた文書だといえば、思い出す人も多いだろう。そんな乱痴気騒ぎの様子をロシアが隠し撮りをしていて、それを弱みとして付け込んで、ロシアがトランプを操っているなどということが、2016年の大統領選挙期間中に盛んに言われた。
ところがこのスティール文書は一体誰が作らせたものかは疑問だったが、その後ヒラリーを当選させるべく活動していた米民主党全国委員会が資金源となって作成されていたことが発覚した。
こうした話の情報源となったのは、イゴール・ダンシェンコというロシア人だが、スティール氏はこのロシア人の話の裏取りすらしていないのだ。こういう文書を評価の根拠にすることにロシア専門家たちが反対したのは当然だろう。今やあのスティール文書の信憑性を信じている人はいない。
CIAの分析担当副長官は、ブレナン氏宛ての電子メールで、「いかなる形であれこの文書を掲載することは『報告書全体の信頼性』を損なうリスクがある」として、反対する意向を示していた。だがブレナン氏は、「私の結論としては、この情報は報告書に掲載する価値があると考えている」と表明して、強引に推し進めたのだ。
そしてこのブレナン氏の暴走にコミー氏、クラッパー氏も同意をし、スティール文書の2ページの要約を評価文書に添付することを決定した。
異常な承認プロセス
評価文書をNIC(国家情報会議)に上げる前に、ブレナン氏、コミー氏、クラッパー氏の3人が準備された草稿を事前にレビューして承認を与えるという異例なプロセスを辿っていたことも明らかになった。
そもそもブレナンCIA長官は、この評価をまとめるCIAの分析官の人選を自ら行った。自分が狙う結論に従ってくれそうな分析官ばかりを意識的に集めた疑いが濃厚なのだ。さらに当時17あったアメリカの情報機関のうち13機関を除外し、ODNI(国家情報局)、CIA、FBI、NSA(国家安全保障局)の4機関のみしか関与させなかった。慣行的には必ず評価に加わるはずのDIA(国防情報局)やIBIR(国務省情報研究局)すら排除していたことも明らかになった。多くの機関が関われば、それだけ異論が出てくる可能性が高まる。これを嫌った処置であることは、容易に想像できるだろう。
こうして見た場合に、不当に疑惑を作り上げることで、2017年に発足したトランプ政権の自由度を大きく引き下げたいと考えていた疑惑が濃厚なのだ。そして実際、トランプ政権は当初の2年間をこの問題で忙殺されることとなった。
メディアを使った情報操作
こうした部門長たちの過剰な関与に加えて、もう一つ指摘されていた大問題は、提出期限が極端に短かったことである。
情報機関の評価は通常は数ヶ月を要するのが普通なのだが、評価の草稿作成に1週間も与えられず、情報機関の仲間との正式な調整に2日も掛けられなかったというのだ。
オバマ大統領からこうした評価をまとめるように指示されたのは2016年12月6日のことだが、指示から2週間後の12月20日には、CIAで正式な審査プロセス入りしたのである。情報機関の分析官たちが連携できた会議は一度しか設けられなかったのも異例だ。
しかもその会議の前日に、ブレナン氏はCIA分析官たちに異例のメモを送っている。クラッパー氏やコミー氏と既に会談し、「最近の大統領選挙におけるロシアの干渉の範囲、性質、そして意図について、3人の間で強いコンセンサスが得られている」と、そのメモを通じて伝えているのだ。要するに、この3人のコンセンサスに異論は許さないという圧力を示していたのは明らかだろう。
しかも評価がまとめられる前から、評価に関しての情報リークが進められていた。例えば、オバマ大統領から評価のまとめを指示された3日後の2016年12月9日には、ワシントン・ポスト紙とニューヨーク・タイムズ紙は、ロシアがトランプ氏の選挙勝利を支援するために介入したことについて、情報機関は高い確信を持って結論付けたと報じた。ワシントン・ポスト紙は、匿名の米国当局者の声として、この結論は情報機関内部でコンセンサスの取れた見方だと表現した。
ロシアがトランプを勝たせようという工作があったと主張するには、あまりにも杜撰な証拠だったと言わざるをえないが、最初からそう思わせようとする結論は決まっていて、その結論を当然のことだと人々に思わせるような情報操作が、既にこの段階で始まっていたのである。
「ただただ唖然とした」
現トランプ政権のラトクリフCIA長官は、検証作業に携わったCIAの専門家たちがこの検証を踏まえて “just appalled”(ただただ唖然とした)と表現している。
本来政府の仕事には、共和党寄り、民主党寄りという党派性を持ち込んではいけないはずだが、こうした原則がアメリカの政治においてはかなり崩れているのだ。
アメリカでは教育機関において、いわゆるリベラル派が圧倒的に主流派となっている。ハーバード大学の教員に、リベラル派か保守派かを尋ねたアンケートでは、99対1でリベラル派が圧勝したとの報告もある。ただし、このアンケートでは、どちらでもないとの回答を無視した結果であるので、読み方には注意が必要だが、それでも保守的な考え方を持っていると有名大学の教員になかなかなれないようになっていることは、注目しておくべきことではないかと思う。
こうしたアカデミズムの偏向傾向の中で、政府職員の中にもリベラル派=民主党支持派が圧倒的に多くなっており、こうした偏向工作が行いやすくなっているという側面は、注目しておくべきところだろう。
アカデミズムの偏向傾向はマスメディアにも重大な影響を与え、こうした米民主党の影響を強く受けた工作は、メディアによって大問題視されることはない。
こうしたメディアによって、トランプに対する否定的な報道が過剰に作られているというところも、アメリカ政治を見る上では押さえておきたいポイントである。



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