ベールを脱ぐマヤ

世界各国の歴史

現代の「人類史」を代表する「四大文明史観」が崩れつつあることは既にお伝えしています。
今回は「メキシコのユカタン半島にあるツィバンチェ遺跡がLiDARというレーザー技術により、この都市が20平方キロにわたって広がっていたことが示された」という記事の紹介です。

マヤ文明だけではなく、北米や中南米の古代文明に関する新たな発見が続いており、今後はアフリカ大陸やアジアでも同様な知見が示されることが期待できます。

日本においても縄文文明が見直されており「人類史」全体が見直される時が近いと思います。

ベールを脱ぐマヤ
マヤの遺跡は何世紀もの間、ジャングルに覆い隠されてきた。しかし今、革新的な技術によって、真の姿が明らかにされつつある。

ベールを脱ぐマヤ

最新技術「LiDAR」の登場で謎が解き明かされようとしている

2024.02.29

メキシコのユカタン半島にあるツィバンチェ遺跡。空から見ただけでは実際の規模がわからないが、LiDARというレーザー技術により、この都市が20平方キロにわたって広がっていたことが示された。(PHOTOGRAPH BY RUBÉN SALGADO ESCUDERO)

メキシコのユカタン半島にあるツィバンチェ遺跡。空から見ただけでは実際の規模がわからないが、LiDARというレーザー技術により、この都市が20平方キロにわたって広がっていたことが示された。(PHOTOGRAPH BY RUBÉN SALGADO ESCUDERO)

この記事は雑誌ナショナル ジオグラフィック日本版2024年3月号に掲載された特集です。定期購読者の方のみすべてお読みいただけます。

マヤの遺跡は何世紀もの間、ジャングルに覆い隠されてきた。しかし今、革新的な技術によって、真の姿が明らかにされつつある。

 古代マヤ文明は数千年にわたり繁栄した後、不可解にも密林の下に埋もれてしまった。ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーであり、米テュレーン大学の研究者でもある二人の考古学者、マルセロ・カヌートとフランシスコ・エストラーダ゠ベリは合わせて数十年の歳月をマヤの研究に費やしてきた。マヤの遺跡を探し出す調査には、厳しい暑さと湿気だけでなく、危険な野生動物や武装した盗掘者との遭遇がつきものだった。

 ところが皮肉なことに、そんな彼らがこれまでで最大の発見をしたのは、米国ニューオーリンズの空調の効いた研究室でコンピューターの周りに集まっているときだった。カヌートは、グアテマラ人の同僚エストラーダ゠ベリが見ている前で、グアテマラ北部の森の一角を空撮した画像を開いた。初めは、モニターに映っているのは樹木の頂の部分だけだった。この画像は「光による検知と測距」を意味する英語の頭文字を取って「LiDAR(ライダー)」と名づけられた技術を使って作成されたものだ。航空機に搭載されたLiDARの機器は、無数のレーザー光を地面に向けて照射し、その反射を計測する。パルス光の一部は林冠を通り抜け、ジャングルの林床の画像を構成するのに十分なデータポイントを取得する。

 カヌートはキーボードを数回打ち、デジタル処理によって樹木を取り去り、地面の3次元画像を表示させた。彼らが見ているこの地域は、いかなる人口密集地からも遠く、1100年以上前のマヤ文明の最盛期にさえ、ほぼ無人だったと考えられてきた場所だった。

 ところが突然、何の変哲もない丘の斜面に見えていた場所に、人工の貯水池や段々畑、灌漑(かんがい)用の水路などがあった形跡が表示された。小さな山々のように見えていたのは、実際には、頂上に儀式用の建造物を備えた大型のピラミッド群だった。考古学者たちが長い間、地域の中心地だと考えてきた数々の集落は、コロンブス到来以前から存在した、いくつかの大都市の郊外に過ぎなかった。そして、誰も存在を知らなかったこれらの都市と集落は、かさ上げされた舗装道路で結ばれていたのだ。

 ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーであり、このプロジェクトの共同研究者のトマス・ガリソンは、次のように話す。「私たちが感じた気持ちは、初めてハッブル宇宙望遠鏡をのぞき、何もないと思っていた宇宙空間が恒星や銀河でいっぱいだったことを知った天文学者と同じだと思います。この広大なジャングルも、ほぼ何もない場所だと考えられていましたが、デジタル処理で樹木を取り除いてみると、至るところで人工建造物の跡が見つかったのです」

マヤ研究を一変させたLiDAR

 LiDARを使った調査は、マヤ文明研究の考古学に大変革を起こしている。研究者たちにとっては、遺跡がありそうな場所へ導いてくれるうえに、古代の景観の全体像をつかむのにも役立つのだ。数十回に及ぶLiDARを使用した調査によって、居住に適さない地域で繁栄したと考えられていたマヤ文明に関する長年の印象は覆された。ニューオーリンズのチームがグアテマラのマヤ文化自然遺産財団 (Pacunam、以下パクナム財団)の資金提供を得て実施した2018年の画期的なプロジェクトも、そうした調査の一つだ。

「LiDARがマヤの考古学をどれほど活気づけたかという点は、どれだけ強調しても大げさではありません」と、グアテマラ人考古学者のエドウィン・ロマン゠ラミレスは話す。「こうした建造物を造った人々を理解するためには、今後も現場に行って、発掘を行うことが必要でしょう。しかしLiDARは、どこをどのように掘ればいいのかを、私たちに正確に示してくれるのです」

 LiDARの画像は、いくつかの自治的な都市国家が散在する過疎地域だったという、マヤの低地に関する従来の見解を覆した。マヤは目もくらむほどの規模と複雑さを備え、相互につながりをもつ文明だったのだ。そこは何百万人もの農民や戦士、そして従来の想像をはるかに超える高度なインフラの建設者が暮らす超巨大都市圏だった。

都市を支えた郊外

都市を支えた郊外

ティカルの周縁部には、住居や炊事場、菜園に囲まれた広場を備えた集落がいくつもあった。こうした社会的、行政的、商業的な拠点において、人々は市場で品物を売ったり、地域の支配層に貢ぎ物をささげたりした。現地の考古学者やその他の専門家の研究に基づいて描かれたこの場面は、このような近隣のネットワークが、都市で必要な資源の流れをいかに支えていたかを示している。(イラスト:SAMSON J. GOETZE, 出典:FRANCISCO ESTRADA-BELLI AND MARCELLO CANUTO, TULANE U.; NICHOLAS DUNNING, U. OF CINCINNATI; JESSICA J. CHRISTIE, EAST CAROLINA U.; KAZUO AOYAMA, IBARAKI U.; MARCO ANTONIO CERVERA OBREGÓN, NATIONAL SCHOOL OF ANTHROPOLOGY AND HISTORY OF MEXICO; TRACI ARDREN, U. OF MIAMI; SIMON MARTIN, U. OF PENNSYLVANIA)

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