
古代アメリカ原住民は100種類以上の野生植物を栽培化・改良しました。その努力の賜物は、コロンブスのアメリカ大陸上陸によって世界に広がり、今も私たちの生活に大きな恩恵をもたらしています。
中でもトウモロコシの活躍は「食」にとどまりません。
【※本記事は、青山和夫編『古代アメリカ文明 マヤ・アステカ・ナスカ・インカの実像』(12月14日発売)から抜粋・編集したものです。】

私たちの「体格」を大きく改善
私たちの生活と深く関わっている例として、トウモロコシを見てみよう。
トウモロコシは、小麦、米とともに世界三大穀物を構成し、世界の穀物生産の一位を占める。それはメソアメリカだけでなく、東南アフリカ諸国の主食になっており、世界各地で広く食されている。
トウモロコシの強みは、水田のような手間がかからないことである。平地だけでなく傾斜地でも栽培でき、森を焼いて種を蒔くだけで高い生産性が望める。
栄養面では炭水化物だけでなく、リノール酸、食物繊維、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンEなどのビタミン群、カルシウムやマグネシウムなどをバランスよく豊富に含んでいる。
焼きトウモロコシやポップコーン、コーンスープだけじゃない
トウモロコシと言うと、「焼きトウモロコシやポップコーンを時々食べて、コーンスープをたまに飲むだけ」と勘違いされている方がいるかもしれない。
トウモロコシはそのまま食べるだけではない。コーンスターチ(デンプン)は、ビール、発泡酒、ちくわやかまぼこなどの練り製品、冷凍食品、揚げ物、麺類、食肉製品、粉末食品、アイスクリーム、プリンや杏仁豆腐などの冷菓、菓子、清涼飲料、乳性飲料、スポーツドリンク、佃煮、漬物、パン、ジャムや製薬にも活用される。
私たちは、毎日トウモロコシの栄養を直接的・間接的に摂取している。コーンオイルは、サラダドレッシング、マヨネーズや天ぷら油、マーガリンの材料として欠かせない。
地球温暖化防止にも
特に注目すべきは、トウモロコシがウシ、ブタ、ニワトリなど家畜の飼料として世界各国で利用される点である。その結果、家畜頭数が飛躍的に増加し、肉、卵、牛乳、乳製品の供給量が増えた。タンパク質の摂取量が増え、私たちの栄養状態や体格が大きく改善されたのである。
それだけではない。コーンスターチは製紙、段ボール接着剤、事務のり、洗濯のり、乾電池、繊維、印刷材料、鋳物砂粘結剤、建材ボード剤にも使用される。またトウモロコシは、地球温暖化防止対策の再生可能燃料バイオエタノールの原料としても重要である。
古代アメリカ先住民の「贈り物」トウモロコシは、私たちの毎日の生活に欠かせない。
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ヨーロッパ人「発見」以前の新大陸の歴史を私たちは軽んじていないか?
人類史の常識に再考を迫る最新知見がおもしろい!
「多くの人が生贄になった!? 」「大河の流域でないと文明は生まれない!? 」「 無文字社会にリテラシーは関係ない!?」「 王は絶対的な支配者だった!?」
――「常識」の嘘を明らかにし、文明が生まれる条件を考える、青山和夫編『古代アメリカ文明 マヤ・アステカ・ナスカ・インカの実像』は12月14日発売です!
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