
古代アメリカの栽培植物は、コロンブスがアメリカ大陸を「発見」したことで、世界の食文化に革命を起こしました。
現代に生きる私たちの食生活も、古代アメリカ文明の大きな恩恵を受けています。
【※本記事は、青山和夫編『古代アメリカ文明 マヤ・アステカ・ナスカ・インカの実像』(12月14日発売)から抜粋・編集したものです。】

数千年にわたり100種類以上の野生植物を栽培化
古代アメリカ文明は、栽培植物という生活基盤から世界の歴史を変えたという点で、今日の私たちの社会や世界観にまで多大な影響を与えている。
私たちは、古代アメリカ文明の大きな恩恵を受けて生活してきた。コロンブスによるアメリカ大陸のカッコつきの「発見」が、世界の食文化革命を引き起こしたからである。
先住民の「贈り物」が旧大陸の人々を救った
アメリカ大陸の先住民は、前8000年頃から100種類以上の野生植物を栽培化・改良した。これは数千年にわたる先住民の努力の賜物であり、世界各地の社会の発展に大きく貢献した。アメリカ大陸原産の栽培植物は、世界の栽培種のじつに6割を占める。
ヨーロッパ人が略奪し尽くした先住民の「贈り物」が、結果的に旧大陸に住む大勢の人の命を救った。トウモロコシは、メソアメリカの人びとの主食でありつづけている。トウモロコシやアンデス高地原産のジャガイモは、旧大陸原産の小麦やイネを栽培できない、痩せた土地でも高い収穫量をもたらした。南米で栽培化されたキャッサバ(マニオク)は熱帯アフリカの主要産物になっており、何度かブームになったタピオカの原料でもある。
ジャガイモは寒冷な気候にも耐え、土中に育つので鳥の害もなく、小麦より何倍も収穫量が多い。ビタミンC、ビタミンB2、ビタミンB6やナイアシンといったビタミンやカリウムなどのミネラル類に富み、栄養価も高い。飢饉と戦争が頻発していたヨーロッパの人びとを救い、人口増加をもたらしたのがジャガイモであり、明治時代の北海道開拓にも大きく貢献した。ジャガイモは、トウモロコシ、小麦、米に次いで栽培面積が世界第四位を占める。
クリスマスに人気のポインセチアも
イタリア料理の必需品トマトやズッキーニ、インド、タイ、韓国や四川料理に欠かせないトウガラシ、さらにカボチャ、サツマイモやバニラも先住民が栽培化した。果物類ではパイナップル、パパイア、カカオやアボカド、豆類ではインゲンマメや落花生もそうである。
アメリカ大陸原産の栽培植物なくして、私たちの豊かな食生活は成り立たない。
アメリカ大陸原産のタバコやゴムは、世界的な商品作物になった。秋の代名詞コスモス、クリスマスに人気のポインセチア、ダリア、サルビア、マリーゴールドなど、アメリカ大陸原産の花や観葉植物も多い。
このように古代アメリカ文明は、現代の私たちの日々の暮らしと深く関わっているのである。
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ヨーロッパ人「発見」以前の新大陸の歴史を私たちは軽んじていないか?
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