コロンブスのアメリカ大陸への上陸は、侵略と先住民虐殺・虐待の先駆となり、さまざまな悲劇の始まりとなりました。
「コロンブスの交換」と言われるきわめて不均衡かつ不平等な交流はいったいどんなものだったのか。そして、世界史をどのように変えていったのか。
【※本記事は、青山和夫編『古代アメリカ文明 マヤ・アステカ・ナスカ・インカの実像』(12月14日発売)から抜粋・編集したものです。】
世界の生態系までも大きく変えた
さて、コロンブスのカッコつきの「発見」は、世界史のきわめて大きな転換点であった。
コロンブスは、アメリカ大陸侵略と先住民虐殺・虐待の先駆となった。その後ヨーロッパ列強は、アメリカ大陸だけでなく、アフリカ、アジアやオセアニアの侵略・植民地化を推し進め、経済的搾取、政治的支配や深刻な文化変容をもたらした。
ヨーロッパ人の大航海と植民地支配によって、旧大陸とアメリカ大陸の間で人間(植民者や奴隷など)、食物、動植物、物質文化や思想だけでなく、病原体のウイルスや細菌などがグローバルに行き交うようになった。
それはヨーロッパ人の都合を優先した、きわめて不均衡かつ不平等な交流であった。教科書には「コロンブスの交換」と紹介されるが、決して平等な「交換」ではなかった。その結果、世界の社会、文化、農業、生態系が大きく変わった。
先住民人口は激減、17世紀には10分の1以下に
コロンブスのいわゆる「発見」は、先住民には人類史上稀にみる悲劇の始まりを意味した。先住民の都市や町は、スペイン人によって破壊され、富や土地が略奪された。
スペイン人が家畜を連れて植民すると、新たな感染症(天然痘、はしか、水疱瘡、チフス、ジフテリア、ペスト、おたふく風邪、百日咳、マラリア、新種のインフルエンザなど)が持ち込まれた。
感染症は免疫力のない先住民の間で大流行した。数多くの先住民が戦死ではなく、「目に見えない敵」によって病死した。
コロンブス(GettyImages)
さらにスペイン人による大量虐殺、過酷な強制労働や虐待などによって先住民人口は激減し、17世紀には10分の1以下になった。
その後、人口は回復していったが、先住民は植民地社会の最底辺に置かれ、服従と搾取を強いられつづけた。
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ヨーロッパ人「発見」以前の新大陸の歴史を私たちは軽んじていないか?
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