「従業員には朝礼で破産を告知」「日本の縮図」…地方で相次ぐ閉店で「百貨店業界」が直面している「悲惨な現実」

現代の日本

「都市型百貨店は円安の影響もあり、インバウンド効果が顕著に現れている。反対に地方の百貨店はその恩恵も薄く、また人口減少により、売上は下降の一途を辿っている。この構図は百貨店に限らず日本経済の縮図でもあります。その場所の人口が減れば、当然ながら経済活動が弱まる。都市部の一極集中が加速し、地方の弱体化が進む日本のなかで、百貨店がその現実を浮き彫りにしているとも言える」

「従業員には朝礼で破産を告知」「日本の縮図」...地方で相次ぐ閉店で「百貨店業界」が直面している「悲惨な現実」(週刊現代) @moneygendai
百貨店業界の苦境が続いている。今年8月、青森県に本社を置く「中三」が破産を公表。負債額はおよそ9億円。中三は130年の歴史を誇り、全盛期には415億円の売上を叩き出していた老舗デパートだ。かつては全国に300店舗以上が軒を連ねた百貨店だが、現在残っているのは180あまり。専門家は「デパートも二極化状態にある。百貨店の衰退は業界だけの話ではなく、日本経済の縮図だ」と説明する。悲鳴をあげる地方百貨店と生き残りをかけて奮闘する都市型百貨店の実情を詳しく報じる。

「従業員には朝礼で破産を告知」「日本の縮図」…地方で相次ぐ閉店で「百貨店業界」が直面している「悲惨な現実」

突然の破産発表

百貨店の苦境が続いている。

今年8月、青森県に本社を置く「中三」が破産申請を行ったことが判明。寝耳に水だった関係業者や行政が対応に追われる事態となっている。

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「同社が破産申請の手続きに入ったのは先月29日。負債総額は現時点で約9億円です。破産については従業員らも周知されておらず、朝の朝礼で事実を告知されています。関係業者も品物の引き上げに訪れるなど現場は混乱状態が続いていました。

スタッフの雇用については今後、弘前商工会議所がハローワークや行政が情報共有しながら相談を行う予定です。ここ近年、中三は納品業者への支払い遅れが指摘されるなど閉店の噂は絶えずありました。しかし、あまりにも突然すぎた破産劇に地元では動揺が広がっています」(経済紙記者)

呉服屋から出発した中三の創業は1896年で、約130年の歴史を誇る老舗百貨店だ。最盛期となる1998年には415億円の売上高を記録するなど栄華を極めた。弘前店は62年にオープンし、長年地元で愛されるデパートとして知られていた。

店舗数は全盛期から4割減

だが、百貨店の衰退は青森だけには限らない。

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「今年1月には広島県の『尾道福屋』や島根県の『一畑百貨店』が相次いで閉店。7月には岐阜県唯一の百貨店だった『岐阜高島屋』も老朽化や売上減少を理由に休業を決定。岐阜は島根に続き、百貨店のない県として4例目となります」(前出・経済紙記者)

全盛期には全国に311店舗も建ち並んでいた百貨店も今年に入って180を割り込むペースで減少を続けている。百貨店事情に詳しい消費経済アナリストの渡辺広明氏はその理由についてこう語る。

「かつて百貨店はスーパーと同じ役割を担っていました。しかし、70年代にかけて『イトーヨーカードー』『ダイエー』といったデパートよりも安い総合スーパーが台頭し、百貨店は宝飾品を扱ったり、デパ地下を拡大するなどより高級路線へとシフトしていった。その結果として消費者が日常的に足を運ぶ場所ではなくなってしまった側面がある」

さらに渡辺氏は百貨店苦戦の要因についてカテゴリーの細分化を挙げる。

「特に厳しくなったのがアパレル部門です。平成デフレによって『ユニクロ』などのファストファッションが人気を博した。これが徐々に百貨店が衰退していった原因の一つに数えられる。さらにおもちゃ屋、家具・生活雑貨店、家電量販店など続々と大型専門店が登場し、百貨店で扱っていたカテゴリーが先鋭化されていったのも衰退化に拍車をかけました」

百貨店は日本経済の縮図

こうした理由によって閉店を余儀なくされる百貨店だが、ここ2年ほどは全体の売上は好調をキープ。全国百貨店協会が発表した今年7月の全国の百貨店売上高は5011億円を記録。これは前年同月比の5.5%増の数字となり、29ヵ月連続でのプラスとなった。牽引しているのがインバウンド効果だ。

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「とりわけ免税での売上高は前年月の約2倍の伸びとなり633億円を記録。7月時点での今年の免税売り上げは3978億円で、すでに昨年の総売上額の3484億円を超えています。売り上げの主な内訳もラグジュアリーブランドとされるバッグや鞄、時計、宝飾品などが目立っています」(前出・経済紙記者)

閉店ラッシュが続いているが、業界全体の売り上げは好調。そこにあるのが都市型と地方の百貨店の二極化だ。渡辺氏はその現状をこう指摘する。

「都市型百貨店は円安の影響もあり、インバウンド効果が顕著に現れている。反対に地方の百貨店はその恩恵も薄く、また人口減少により、売上は下降の一途を辿っている。この構図は百貨店に限らず日本経済の縮図でもあります。その場所の人口が減れば、当然ながら経済活動が弱まる。都市部の一極集中が加速し、地方の弱体化が進む日本のなかで、百貨店がその現実を浮き彫りにしているとも言える」

「地方は縮小の一途を辿るしか…」

では今後、百貨店はいかに生き残りをかけていくべきか。渡辺氏はこう提言する。

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「今はインバウンド需要で売上高は好調ですが、円安がいつまでも続くわけではありません。より安く購入できる国が出てくれば、そこに取って代わられるだけです。そのため各百貨店が推し進めているのが有田焼などメイド・イン・ジャパンに関する商品の販売です。

他にも日本の百貨店の物産展は世界でも有数の規模を誇ります。好調を維持するデパ地下部門と合わせて、日本の食文化の商品価値を高めれば訪日客の需要を呼び込む大きな武器になり得る。都市型は駅直結の百貨店も多く、立地条件は申し分ない。売り出し方次第で勝機はいくらでもあります。一方、地方の百貨店は売り上げを見込める人口もおらず、残念ながら縮小を一途を辿るしか道はないのかもしれない」

都市部と地方で明暗がはっきりと分かれた百貨店業界。そんななか、秋田県では2020年に臨時休業して以来、4年間にわたり沈黙を続けている伝説的老舗デパートが存在している。

つづく後編記事『《秋田の三越》「お釣りはピン札、消費税は取らない」「休業後もネオン看板は灯り、草抜きも…」地元住民から「伝説」と呼ばれる「木内百貨店の謎」』では地元住民も「不思議」と呼ぶ木内百貨店を詳しく報じる。

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