浴槽のあふれるお湯で「2000年以上にわたる原理」を発見…!喜びで「思わず裸のまま街に飛び出した逸話」も2000年以上残ってしまった天才の実名

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浴槽のあふれるお湯で「2000年以上にわたる原理」を発見…!喜びで「思わず裸のまま街に飛び出した逸話」も2000年以上残ってしまった天才の実名

科学と技術を結びつけた最初の人物

古代ギリシャの科学と技術は、アルキメデス(前287〜前212)抜きには語れない。

アルキメデスは、イタリア南端のシチリア島南東部に位置した古代ギリシャの都市国家の一つ、シラクサ(シラキュース)出身の数学者、物理学者、天文学者、技術者、発明家である。現代につながる科学、技術は、このアルキメデスからはじまったといっても過言ではない。

アルキメデスはまた、科学と技術を結びつけた最初の人物といわれる。古代世界における第一級の科学者にして、技術者である。

数学の分野におけるアルキメデスの業績は少なくないが、特に私が驚くのは「球とそれに外接する円柱との体積および表面積の比は、いずれも2対3になる」ことの発見と証明である(図1)。

球と、その球に外接する円柱との体積および表面積の比はいずれも2対3となる

私は単純に、面積(2次元)と体積(3次元)という次元が異なるものが、いずれも同じ2対3という比になることに驚く。

アルキメデスの墓碑に刻まれていたもの

アルキメデスが紀元前212年、第二次ポエニ戦争の最中にローマのマルケッルス将軍の兵士に殺害されてから137年後に、アルキメデスの墓を訪ねたローマの哲学者・キケロ(前106〜前43)によれば、アルキメデスの墓は、この「球とそれに外接する円柱」がデザインされたものだったという。

アルキメデスの偉大さを熟知していたマルケッルス将軍は、彼の安全確保を全軍に周知していた。それにもかかわらず、無知な一人の兵士によってアルキメデスが殺されてしまったことを知ったとき、マルケッルスは大いに失望した。

彼は世界で最も裕福な都市の一つを攻略し、地中海のローマ支配を確保したが、すべての中で最も価値あるものーーすなわち、「アルキメデスの知性」を手に入れることができなかった。マルケッルスは、アルキメデスを丁重に葬ったという。

マルケッルス将軍 photo by gettyimages

余談ながら、数学に関する賞では最高の権威を有し、ノーベル賞に数学賞がないことから「数学のノーベル賞」ともいわれるフィールズ賞のメダルの表面にはアルキメデスの肖像が、裏面には上述の「球とそれに外接する円柱」が描かれている。

物理学におけるアルキメデスの業績も少なくないが、彼の物理学に対する関心の持ち方には、一つの際だった特徴がある。

“動き”に興味を示さなかったアルキメデス

物理学における業績の中でも、特に流体静力学の基礎はアルキメデスによって確立されたものであり、静力学の考察は「梃子(てこ)の原理」にまで及んだ。

ギリシャ哲学思想、あるいはギリシャ精神が「安定や静止、永続」を好み、「変化や運動、発生と消滅」を嫌悪したこととも大いに関係すると思われるが、アルキメデスの静的状態、つまり、運動を含まない力学上の諸問題に対する関心と理解が非常に深いことと対照的に、動力学や弾道学など“動き”がある現象に対しては驚くほど不完全であったことは興味深い。

アルキメデスのもっぱらの興味は、運動が発生する前の状態と運動が止まった後の、いずれにしても“動き”がない状態に限られていたのである。

ともあれ、流体静力学分野における「流体中の物体は、その物体が押しのけた流体の重さ(重力)と同じ大きさの浮力を受ける」という「アルキメデスの原理」は、現在でもさまざまな分野で応用されている。

流体中の物体は、その物体が押しのけた流体の重さ(重力)と同じ大きさの浮力を受ける illustration by gettyimages

この「アルキメデスの原理」を使えば、どのように複雑な形状の物体の体積でも簡単に求めることができるのであるが、私自身、「古代瓦の科学的研究」(拙著『古代日本の超技術〈新装改訂版〉』参照)や「オカリナの科学的研究」を行った際に、瓦やオカリナの比重(重さ/体積)を求める段階で非常にお世話になった。

「世界最初のストリーカー」

「アルキメデスの原理」発見の逸話は有名で、アルキメデスを「世界最初のストリーカー(街頭など、人前を全裸で駆けまわる人)」にしたことでも知られる。

当時、シラクサを支配していたヒエロン2世(在位前269〜前215)はアルキメデスの親族であり、庇護者でもあった。

優れた数学者であり、技術者でもあったアルキメデスは、ヒエロン2世から、彼が黄金の王冠の製作を命じた金細工職人が、金の代わりに銀を混ぜてごまかしていないかどうかを確認するよう依頼された。現在のように、蛍光X線分析などの非破壊化学分析法が利用できれば話は簡単だが、もちろん彼らの時代に化学分析法は存在しない。

金と銀の密度(単位体積の質量)は2倍ほど異なるので(金:19.3グラム/立方センチメートル、銀:10.5グラム/立方センチメートル)、王冠の密度を調べれば一目瞭然ではあるが、密度を知るには王冠の正確な体積を知る必要がある。

もちろん、王冠を融かして定形に加工すれば体積は簡単に求められる。王冠を融かさずに、その体積を知るにはどうすればよいか?ーー難問である。

ユリイカ! ユリイカ!

アルキメデスがこの難問を解決するヒントを得たのは、入浴中に彼が浴槽に身体を沈め、浴槽の水面が高くなることに気づいたときだった。

王冠を水に沈めれば、同じ体積分だけ水面が上昇し、その体積を容易に測ることができると考えたのである。王冠の体積がわかれば、密度は簡単に求まる。

リンゴが木から落ちるのを見て「万有引力の法則」を思いついたニュートンといい、浴槽に浸かって「アルキメデスの原理」を思いついたアルキメデスといい、歴史に名前を遺(のこ)す人物はやはり常人とは違う。木から落ちるリンゴを見た人や、浴槽の湯を溢れさせた人は、私自身も含め無数にいたはずなのに。

難問を解決したアルキメデスは狂喜のあまり、そのまま全裸で浴室を飛び出して「ユリイカ! ユリイカ!(わかった! わかった!)」と叫びながら、シラクサの町中をストリーキングしたといわれる。

歓喜のあまり、そのまま全裸で町中を走り回ったアルキメデスの様子を描いた17世紀頃の絵画 photo by gettyimages

14金と純金、「見た目」だけで区別がつきますか?

金に銀や銅を混ぜる合金の技術は、当時すでに知られていた。金を主成分とする合金は、他の金属をかなりたくさん混ぜたあとでも十分に豪華な金色を呈している。

たとえば、純金は24金とよばれるが、装飾によく使われるのは純度58パーセントの14金である。14金には42パーセントもの“混ぜもの”が含まれているわけであるが、十分に金色であるのは周知のとおりであり、見た目だけでは純金との区別がほとんどつかない。

はたしてヒエロン2世の黄金の王冠を製作した金細工職人に、“ごまかし”はあったのか。

アルキメデスによる発見のおかげで、確認作業は簡単に行われ、王冠には銀が混ぜられていることが発覚した。そして、不正直な金細工職人は早速、裁判にかけられて処刑されたという。

アルキメデスは、シラクサでたくさんのものを発明しているが、その多くは当時、幾多の戦に直面していたヒエロン2世の要請に応じた兵器に関係するものである。人類史が明瞭に示しているように、いつの時代においても、結果的に、戦争が技術の飛躍的発展をもたらすのである。

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続いては、「世界最古のコンピュータ」。20世紀最初の年、すなわち1901年に沈没船から回収された「謎の機械」の正体についての開示をお届けしましょう。

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