NATOの存在意義が薄れていく流れは誰がアメリカ大統領になっても変化はない:アメリカの下働き組織として存続していくだけのことだ

現代の欧州
NATOの存在意義が薄れていく流れは誰がアメリカ大統領になっても変化はない:アメリカの下働き組織として存続していくだけのことだ : 古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ
古村治彦です。  NATO(北大西洋条約機構、North Atlantic Treaty Organization)は、1949年に北米大陸にあるアメリカとカナダと西ヨーロッパ諸国で結成された軍事同盟気候である。加盟国のいずれかに対する攻撃を全加盟国への攻撃と見なして対処するとする集団的自

NATOの存在意義が薄れていく流れは誰がアメリカ大統領になっても変化はない:アメリカの下働き組織として存続していくだけのことだ

 古村治彦です。

 NATO(北大西洋条約機構、North Atlantic Treaty Organization)は、1949年に北米大陸にあるアメリカとカナダと西ヨーロッパ諸国で結成された軍事同盟気候である。加盟国のいずれかに対する攻撃を全加盟国への攻撃と見なして対処するとする集団的自衛権(right of collective self-defense)を行使する同盟である。具体的には、東西冷戦が激化する中で、ソ連からの侵略にアメリカが率いる西側諸国で対処するというものであった。ソ連を中心とする東ヨーロッパ諸国は、NATOに対抗して、1955年にワルシャワ条約機構(Warsaw Treaty Organization)を結成した。冷戦終了後の1991年にワルシャワ条約機構は解体された。しかし、冷戦で勝利し、仮想敵であるソ連が消滅して以降も、NATOは存続し、加盟国を増加させていった。その様子は以下の通りだ。このいわゆる「東方拡大(eastward expansion)」は、対ロシア封じ込めのために実施された。ソ連時代に比べて、国力を大きく落としたロシアを「挑発(provocation)」し、ロシアを虐める行為だった。

1949年:アイスランド・アメリカ・イギリス・イタリア・オランダ・カナダ・デンマーク・ノルウェー・フランス・ベルギー・ポルトガル・ルクセンブルク(原加盟国、12か国)

1952年:ギリシャ・トルコ

1955年:西ドイツ(1990年に東西ドイツ統一)

1982年:スペイン

1999年:チェコ・ハンガリー・ポーランド

2004年:ブルガリア・エストニア・ラトビア・リトアニア・ルーマニア・スロバキア・スロベニア  

2009年:アルバニア・クロアチア   

2017年:モンテネグロ

2020年:北マケドニア

2023年:フィンランド

2024年:スウェーデン

そして、NATO東方拡大の焦点は、ウクライナとなった。ウクライナはNATOにもEU(ヨーロッパ連合、European Union)にも加盟申請をしながら長年にわたってほったらかしされながら、同時にアメリカを中心とする西側諸国から軍事援助を受けて、ロシアとの衝突要因として育成されてきた。ロシアは昔の勢力圏であった東ヨーロッパのNATO加盟までは隠忍自重してきたが、ウクライナの軍事力強化は自国の安全保障に対する深刻な脅威と判断し、緩衝地帯を作るということもあり、2022年2月にウクライナに侵攻した。ウクライナ戦争は、ロシアにとっての「自存自衛(self-sufficiency and self-defense」のための戦争である。私がこの言葉を使うのは、太平洋戦争の開戦となった、日本軍によるハワイ州パールハーバーの奇襲攻撃と同じだと言いたいためだ。太平洋戦争はアメリカの圧力のために開戦にまで追い込まれた訳だが、当時の日本とロシアは同じであり、攻撃に誘い込まれたと言いたいためだ。当時の日本とロシアの違いは、ロシアは戦争に引き込まれて苦境に陥りながら、中国やインドなどの間接的な支援を受けて、持ち直しているというところだ。

NATOはロシアがいてくれて、暴れてくれなければ存在意義はない。そして、新たな存在意義を求めて、アジア太平洋地域に進出しようとしている。イギリスやドイツなどが対中国のために、選管などを派遣する動きを見せている。また、NATOの事務所を東京に設置しようとして、フランスのエマニュエル・マクロン大統領の反対にあった。こうした動きは、対中国封じ込めをアメリカ単独では不可能なので、防衛費をGDP2%まで増加させるように厳命した、NATO諸国を使って、手伝わせようということである。

 しかし、NATOとは文字通り、北大西洋地域の軍事同盟だ。その主敵はロシアである。中国を仮想敵として想定しないし、そのための組織構成にはなっていない。NATOはロシアの暴発(攻撃)を抑えるための組織でありながら、ロシアを挑発したことで、かえって、状況を悪化させる結果になった。NATOこそがヨーロッパの安全保障にとっての不安定要因になっている。そして、NATOがアメリカのための下働き組織になっていることが露(あら)わになっている。NATOの存在意義は薄れている。そして、この動きは止められない。それでも、一度できて、ここまで肥大化した官僚組織としてのNATOは存続していくために、危機をこれからも演出し続けることになる。これが世界にとっての大きな危険ということになる。

(貼り付けはじめ)

今回は、NATOは本当に危機的状況に陥っている(This Time, NATO Is in Trouble for Real)

-長年にわたる誤った警告が発せられた末に、西側の軍事同盟はついに崖っぷちに立たされてしまうようになっている。

スティーヴン・M・ウォルト筆
2024年7月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

Stephen M. Walt

July 8, 2024, 4:19 PM

This Time, NATO Is in Trouble for Real
After years of false alarms, the Western military alliance is finally approaching a precipice.

大学、企業、シンクタンク、あるいは夫婦など、どのような機関であれ、創立75周年を迎えると、その支援者たちはその功績や美徳、目覚ましい長寿など、バラ色の要素を列挙するのを耳にすることになる。ワシントンで開催されるNATOサミットも例外ではない。 NATOの過去の実績を称え、大西洋横断関係の礎石としての役割を称賛するスピーチが数多く行われるに違いない。

しかしながら、NATOのラブ・フェスティバルに不吉な影を落とす暗雲を無視することはできない。ドナルド・トランプは、2025年に米大統領に返り咲く可能性が高い。フランスの極右である国民連合(National Rally)は今やフランスで最も強力な政治運動となり、ハンガリーのヴィクトール・オルバンは、依然として破壊的な力を持っている。イスラエルとハマスの戦争、中国、デジタル技術の規制、苦境を深めるウクライナを助ける最善の方法などをめぐってヨーロッパ人とアメリカ人の意見は分かれている。

ヨーロッパ人とアメリカ人の意見の違いについては、今に始まったことではないと言う人もいるだろう。米欧同盟はその歴史を通じて深刻な危機に直面してきたし、(私自身を含め)その終焉が差し迫っているという見立ては、常に時期尚早であることが判明してきた。1956年のスエズ危機は深刻な亀裂だったし、ヴェトナム戦争もそうだった。軍事ドクトリン(特に核兵器の役割)をめぐる論争は、冷戦期を通じて米欧同盟を緊張させた(ユーロ・ミサイル論争を覚えているだろうか)し、1999年のコソヴォをめぐる戦争では、同盟内の不和が明らかになった。ドイツとフランスは、2003年のジョージ・W・ブッシュ政権のイラク侵攻決定に公然と反対し、ドワイト・D・アイゼンハワーからトランプまで歴代のアメリカ大統領は、ヨーロッパのアメリカの保護にただ乗りする傾向(Europe’s tendency to free-ride on U.S. protection)に対して、苦言を呈してきた。今日の問題は同じことの繰り返しに過ぎず、2029年にまた盛大な誕生日を迎えるために、皆で計画を立て始めるべきなのかもしれない。

こうした見方を軽々しく否定すべきではない。一度創設された機関は、その創設時の状況が消滅した後も長く存続することが多い。イギリスとフランスが今でも国連安全保障理事会の常任理事国であるのはそのためだ。 NATOの継続性は、ブリュッセルの大規模で確立された官僚組織と、あらゆる場面でNATOを擁護する元当局者、親大西洋主義の専門家、そして潤沢な資金を集めたシンクタンクからなる、周辺部からの支援によって強化されている。幅広いエリート層の支持を考えると、来週のサミットがNATO最後のサミットとならないことは間違いない。

しかし、今日の状況は、これまでの同盟内緊張の瞬間とは著しく異なり、NATOの将来を脅かす勢力は、トランプやマリーヌ・ルペンといった個々の指導者の個人的な傾向を超えている。実際、彼らの見解 (そしてそれらの受け入れの広がり) は、独立した原因であると同時に、これらのより広範な勢力の兆候でもある。

緊張の最も明白な原因は、世界における力の分布の変化である。NATOが1949年に設立されたとき、ヨーロッパの加盟国は第二次世界大戦からの回復途上にあり、ソ連は、アメリカの積極的な支援なしでは、ヨーロッパ単独が対処できない脅威であると考えられた。ヨーロッパは世界の工業力の重要な中心地の一つでもあったため、特に戦略的に価値のある存在であった。各国は主に共通の脅威に対処するために同盟を形成しており、アメリカがヨーロッパの防衛に専念し、そこで大規模な軍事プレゼンスを維持することは理にかなっているものとなった。

そんな日々はもう遠い昔のことになった。ソ連とワルシャワ条約機構はもはや存在せず、ロシアにはもはやヨーロッパ大陸を征服し征服する能力はない。確かに、ロシアはウクライナで違法な戦争を仕掛けており、いつかバルト三国の小国を脅かすかもしれないが、ロシア軍がポーランドに電撃戦(blitzkrieg)を仕掛けて英仏海峡まで進もうとしているという考えは滑稽だ。たとえ、ウラジーミル・プーティン大統領がそのような野心を抱いていたとしても、小さくて弱いウクライナに対して手いっぱいのロシア軍では、急速な領土拡大の手段にはならないだろう。

一方、中国はアメリカ(およびプーティン率いるロシアのシニア・パートナー)と肩を並べる競争相手、手強い技術的挑戦者、そして世界最大の貿易国として台頭してきた。現在、世界経済に占めるアジアの割合(54%)は、ヨーロッパ(17%)を大幅に上回り、世界経済成長への貢献度も高くなっている。中国はまた、安全保障環境を根本的に変える可能性のある領有権の主張を強めている。したがって、純粋に構造的な理由から、今日、アメリカが注目する割合はアジアに対して賀高く、ヨーロッパが低くなっているのは当然だ。ヨーロッパがもはや重要でないということはないが、アメリカの戦略的関心の中で、ヨーロッパが占める位置はもはや高いとは言えない。最近、NATOがインド太平洋地域でより大きな役割を担うという話がよく聞かれ、今回のNATOサミットにはアジア諸国からもオブザーバーが出席するが、NATOの欧州加盟国がアジアの勢力均衡(balance of power)に影響を与えようと思っても、それほどのことはできないだろう。

NATOの目的についての疑問は、ソ連が崩壊するとすぐに始まり、年が経つにつれて新たな理論的根拠と使命を考え出した加盟諸国を称賛しなければならない。しかし、問題は、これらの新しい試みのほとんどがそれほどうまくいかなかったことだ。 NATOの拡大により、新たな安全保障要件が追加されたが、それらを満たすための追加の能力は追加されず、費用がかからなかったのは、ロシアが弱く、従順であり続ける限りのことであった。東方への際限のない拡大(pen-ended expansion eastward)が「完全で、自由で、平和な(whole, free, and at peace)」ヨーロッパをもたらすだろうという予測は、ウクライナで激化する残忍な戦争と極度の凍結状態にあるロシアとの関係により、今日ではかなり空虚に見える。NATOは、1999年のコソヴォ戦争で部分的な成功を収めたと主張できるが、あの戦いは同盟内の結束を証明するものではなく、バルカン半島の政治は依然として微妙な状態にある。 NATO加盟国は911のテロ攻撃後、初めて第5条を発動して、アメリカを支持するために結集したが、その後のアフガニスタンにおけるいわゆる国家建設における同盟の取り組みは多大な犠牲を払いながらも、失敗に終わった。NATOは2011年にリビアに介入したが、その目的は民間人保護であったが、同時にリビアの指導者ムアンマル・アル・カダフィの打倒を支援することでもあった。しかし、その結果は再び国家の破綻を招いた。NATOが、ウクライナが初期のロシア侵攻から生き残り、領土の大部分を防衛できるよう支援してきたことは明らかだが、明らかな勝利で戦争が終わり、NATOがそれを祝福できる可能性は低い。こうした実績を考えれば、ヨーロッパの安全保障環境が悪化しているにもかかわらず、NATOの価値に対する疑問が高まっているのも理解できるだろう。

最終的に、NATO が苦境に陥っているのは、まさにそれがあまりにも長く続いており、共通の価値観や大西洋を越えた連帯に関するよく知られた常套句が、特に若い世代にとってかつてほど強力に響いていないためである。ヨーロッパ系アメリカ人の割合は減少しており、「故国(old country)」との感情的なつながりはより薄れており、第二次世界大戦、ベルリン空輸、ベルリンの壁崩壊などの出来事は、成人した若者にとっては古い歴史となっている。テロとの世界的な戦争や2008年の金融危機のさなか、その政治意識は権力政治よりも気候変動に集中していた。当然のことながら、若いアメリカ人は、これまでの世代ほどアメリカの例外主義の主張に説得力を持たず、積極的な国際主義者(internationalist)の役割を支持する傾向が低い。これらはいずれも、池の向こうで問題が発生するたびに、アメリカが初期対応者として行動することに依然として大きく依存している安全保障パートナーシップにとって良い兆しではない。

繰り返しになるが、たとえトランプが再び大統領になり、より多くのNATO懐疑論者がヨーロッパで権力を握ったとしても、NATOが崩壊するということに私は疑いを持っている。しかし、ヨーロッパとアメリカを徐々に引き離す強力な構造的力が存在しており、11月にアメリカで、そして、ウクライナで、あるいはヨーロッパ自体で何が起きようと、こうした傾向は続くだろう。よって、NATO結成75周年を祝うのは良いが、大西洋を越えた団結に関する充実した声明を耳にしても、それについてあまり真剣に受け止めない方が良い。ヨーロッパとアメリカは、徐々に離れて言っているが、唯一重要な問題は、その乖離がどれくらいのスピードで起こり、どこまで広がるかということだ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt
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