なぜ日本は「世界でただ一ヵ国」の異常な「主権喪失状態」になってしまったのか

現代の日本

日本にある「米軍基地」の特権性を紹介する記事の続きです。

>しかしその一方で、そこから切り出された「基地権密約」文書と「朝鮮戦争・自由出撃密約」文書は、すぐに「別の場所」へと運ばれ、そこで「金庫の中の経典」のまるで分身のようにして、現実世界で猛烈な活動を開始することになったのです(その姿は私に、伝説上の陰陽師が操る「人形」の動きを連想させます)。

>その「別の場所」こそ、米軍の論理が日本の官僚や政治家たちを支配する「究極の密室」——日米合同委員会と日米安保協議委員会だったのです。

なぜ日本は「世界でただ一ヵ国」の異常な「主権喪失状態」になってしまったのか(矢部 宏治)
アメリカによる支配はなぜつづくのか?第二次大戦のあと、日本と同じくアメリカとの軍事同盟のもとで主権を失っていたドイツやイタリア、台湾、フィリピン、タイ、パキスタン、多くの中南米諸国、そしていま、ついに韓国までもがそのくびきから脱し、正常な主権国家への道を歩み始めているにもかかわらず、日本の「戦後」だけがいつまでも続く理由とは?

アメリカによる支配はなぜつづくのか?

第二次大戦のあと、日本と同じくアメリカとの軍事同盟のもとで主権を失っていたドイツやイタリア、台湾、フィリピン、タイ、パキスタン、多くの中南米諸国、そしていま、ついに韓国までもがそのくびきから脱し、正常な主権国家への道を歩み始めているにもかかわらず、日本の「戦後」だけがいつまでも続く理由とは?

シリーズ累計16万部を突破した『知ってはいけない』の著者が、「戦後日本の最後の謎」に挑む!

本記事は〈知ったら誰もが青ざめる…「やがてすべての自衛隊基地を米軍が使用することになる」という「驚愕の事実」〉にひきつづき、「全自衛隊基地の米軍共同使用」計画についてくわしくみていくみていく。

※本記事は2018年に刊行された矢部宏治『知ってはいけない2 日本の主権はこうして失われた』から抜粋・編集したものです。

辺野古ができても、普天間は返ってこない

そしてこの「全自衛隊基地の米軍共同使用」計画について考えるたび、私はいつも非常に不吉な予感に襲われるのです。なぜなら現在、日本への返還が正式に決まっていながら、そこに駐留する米軍の司令官たちが口を揃えて、

「いや、オレたちはここから出ていく予定はない」
「最低でもあと25年は駐留する」

などと言っている不思議な米軍基地がひとつあるからです。

沖縄の普天間基地です。

辺野古の米軍基地が完成しても、緊急時の民間施設〔那覇空港〕の使用など、いくつもの付帯条件が整わなければ普天間基地は返還されないということは、すでに稲田朋美防衛大臣(当時)が明言していますし(*1)、たとえ一度返還されたとしても、その土地が民間利用ではなく、そのまま自衛隊基地となり、さらには先の地位協定「第2条4項b(ニー・ヨン・ビー)」によって、富士演習場のような事実上の米軍基地となる可能性は非常に高いと私は思っ ています。

(*1)2017年6月15日、参議院外交防衛委員会での答弁

自衛隊の訓練空域は、すべて米軍との共同使用が可能

「そんなこと、あるはずないだろう」

という人は、次の日本の空の地図をご覧ください。

実はこの図のほとんどは自衛隊の訓練空域なのですが、急速に進む日米の軍事的一体化によって1971年以降、米軍は事実上すべての自衛隊の訓練空域を「自衛隊との間で調整して」演習に使えるようになっているのです。(*2)

つまり日本の「空」ではすでに、自衛隊の訓練空域は、すべて米軍との共同使用が可能になっているのです。

日本における米軍の権利拡大は、つねに住民の抵抗が少ない「空」から始まります。「空」で起きたことは、そのうち「地上」でも起きると考えておいて、まずまちがいはないのです。(*3)

なぜふたつの方程式は生まれたのか

ではなぜそのような、世界でただ一ヵ国だけの異常な主権喪失状態が、敗戦からすでに70年以上たった日本で、いまだにつづいているのでしょう。

実はその最大の原因こそ、『知ってはいけない2』第二章で説明した下のふたつの方程式にあるのです。

「討議の記録・2項A&C」+「基地権密約」 =「基地の自由使用」
「討議の記録・2項B&D」+「朝鮮戦争・自由出撃密約」=「他国への自由攻撃」

このモザイク状の方程式は、なぜ生みだされる必要があったのか。

そもそもなぜ、「討議の記録」に書かれていた4つの密約条項(ABCD)の内容を、「A&C」「B&D」とたすき掛けの形で分割したような、独立したふたつの密約文書(「基地権密約」文書と「朝鮮戦争・自由出撃密約」文書)を新たにつくる必要があったのか。

藤山とマッカーサーが1960年1月6日にサインしたこの3つの密約文書のうち、「討議の記録」はその後、まちがいなく外務省北米局(アメリカ局)の金庫の奥深くに隠され、1968年以降は「東郷メモ」と一体となるかたちで、外務省のなかでもほんのひと握りの超エリート官僚しか知らない「密教の経典」となっていきました。

しかしその一方で、そこから切り出された「基地権密約」文書と「朝鮮戦争・自由出撃密約」文書は、すぐに「別の場所」へと運ばれ、そこで「金庫の中の経典」のまるで分身のようにして、現実世界で猛烈な活動を開始することになったのです(その姿は私に、伝説上の陰陽師が操る「人形」の動きを連想させます)。

その「別の場所」こそ、米軍の論理が日本の官僚や政治家たちを支配する「究極の密
室」——
日米合同委員会と日米安保協議委員会だったのです。

さらに連載記事〈なぜ日本だけが「まともな主権国家」になれないのか…アメリカとの「3つの密約」に隠された戦後日本の「最後の謎」〉では、日本が「主権国家」になれない「戦後日本」という国の本当の姿について解説しています。

本記事の抜粋元『知ってはいけない2 日本の主権はこうして失われた』では、かつて占領下で結ばれた、きわめて不平等な旧安保条約を対等な関係に変えたはずの「安保改定」(1960年)が、なぜ日本の主権をさらに奪いとっていくことになったのか?「アメリカによる支配」はなぜつづくのか?原因となった岸首相がアメリカと結んだ3つの密約について詳しく解説しています。ぜひ、お手に取ってみてください。

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