日本にある「米軍基地」の特権性を紹介する記事です。

アメリカによる支配はなぜつづくのか?
第二次大戦のあと、日本と同じくアメリカとの軍事同盟のもとで主権を失っていたドイツやイタリア、台湾、フィリピン、タイ、パキスタン、多くの中南米諸国、そしていま、ついに韓国までもがそのくびきから脱し、正常な主権国家への道を歩み始めているにもかかわらず、日本の「戦後」だけがいつまでも続く理由とは?
シリーズ累計16万部を突破した『知ってはいけない』の著者が、「戦後日本の“最後の謎”」に挑む!
※本記事は2018年に刊行された矢部宏治『知ってはいけない2 日本の主権はこうして失われた』から抜粋・編集したものです。
日本に在韓米軍基地が移される可能性
実は沖縄返還(1972年)の直前、駆け込みで本土から沖縄に米軍基地を移したように、朝鮮半島での緊張緩和と併行して、日本に在韓米軍基地が移される可能性がある。
そういうと、
「そんなことできるはずないじゃないか。沖縄にこれ以上新しい基地をつくれるものか。本土なんて、それ以上に無理だろう」
とあなたは思うかもしれません。
ところがそれができるのです。そうした魔法のような方法が現実に存在する。
というより、ちょうど半世紀前から、そのプロジェクトはすでに始まっているのです。それが「全自衛隊基地の米軍共同使用」計画なのです。
富士山にある米軍基地
下の図を見てください。これは富士山の平面図なのですが、 現在その東側のふもとには、広大な自衛隊基地(北富士演習場と東富士演習場)が広がっています。

ところが現実には、これらはすべて事実上の米軍基地なのです。
そのことを、いったいどれくらいの日本人が知っているでしょうか。
この広大な自衛隊基地は、戦後すぐ米軍に接収された旧日本軍の演習場が、1968年(東富士演習場)と73年(北富士演習場)に返還されてできたものです。
ところがなんとそのウラ側で、日米合同委員会における密約によって、米軍が「年間270日間の優先使用」をする権利が合意されているのです。(*1)年間270日、つまり1年の4分の3は優先使用できるのですから、これはどう考えても事実上の米軍基地なのです。
おそらく、すぐには信じられないかもしれません。けれどもそれはアメリカ政府の機密解禁文書によって完全に証明された、まぎれもない事実なのです。
やがてすべての自衛隊基地を米軍が使用することになる
米軍およびアメリカの軍産複合体がなぜ、こうした使用形態を今後すべての自衛隊基地に拡大したいと考えているかといえば、
○「自衛隊基地」という隠れ蓑によって、「米軍基地」への反対運動を消滅させることができる。
○ 同じく、基地の運用経費をすべて日本側に負担させることができる。
○ 今後海外での戦争で自衛隊を指揮するための、合同軍事演習を常に行うことができる。
○ 危険を察知したときは、すぐに撤収して日本国外へ移動することができる。
米軍にとって、いいことずくめだからなのです。
現在、日本の外務省の見解では、こうした米軍による自衛隊基地の使用は「地位協定・第2条4項b(ニー・ヨン・ビー)(*2)」によって認められた、正当な権利だということになっています。
したがって現在の自民党政権がつづくかぎり、今後もし、この形が全国に広がって、 すべての自衛隊基地を米軍が共同使用するようになったとしても、法的・政治的に抵抗する方法は、ほとんどないということになってしまうのです。
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さらに連載記事〈なぜ日本だけが「まともな主権国家」になれないのか…アメリカとの「3つの密約」に隠された戦後日本の「最後の謎」〉では、日本が「主権国家」になれない「戦後日本」という国の本当の姿について解説しています。
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本記事の抜粋元『知ってはいけない2 日本の主権はこうして失われた』では、かつて占領下で結ばれた、きわめて不平等な旧安保条約を対等な関係に変えたはずの「安保改定」(1960年)が、なぜ日本の主権をさらに奪いとっていくことになったのか?「アメリカによる支配」はなぜつづくのか?原因となった岸首相がアメリカと結んだ3つの密約について詳しく解説しています。ぜひ、お手に取ってみてください。
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