「新・ミスター円」神田財務官が退任直前に口を開いた「国民の皆様に伝えたかったこと」

現代の日本
「新・ミスター円」神田財務官が退任直前に口を開いた「国民の皆様に伝えたかったこと」(週刊現代) @moneygendai
このままいけば日本経済は衰退するだろう。その瀬戸際だからこそ、指摘しておかなければならないことがある—神田財務官が最後に残した報告書に書かれた、日本への処方箋を読み解いていく。

「新・ミスター円」神田財務官が退任直前に口を開いた「国民の皆様に伝えたかったこと」

’21年に財務官に就任して以来、荒れ狂う円相場を沈静化するため何度も介入を決断し「新・ミスター円」として注目を集めた神田眞人氏(59歳)が、7月末で退任する。退任前に神田氏が開いていた勉強会の報告書が、さしづめ氏の「卒業論文」にあたるとして注目を浴びている。日本経済の今後に継承を鳴らす部分が大きいその内容について、前編記事『このままでは日本経済はダメになる…「財務省の宇宙人」が退任前に残した「報告書」のヤバすぎる中身』より続けてお伝えしよう。

神田財務官の本音

どれも一朝一夕では解決できない「難問」ばかり。だが、神田財務官はただ絶望するために勉強会を開いたわけではない。〈残された時間は少ないが〉と前置きした上で、報告書には「日本経済を救うための提言」も記されている。

具体的に挙げられているのが、

○労働者の賃金を上げて、日本を魅力的な労働市場とすること
○持続性が見込めない低収益・低賃金企業を退出(廃業)させること
○人的資本に積極的な投資を行うこと
○デジタル分野での日本の競争力を上げること
○(台湾の半導体企業TSMCが熊本に工場を建てたように)日本への直接投資を促進させること

などだ。勉強会メンバーで、東短リサーチ・チーフエコノミストの加藤出氏が説明する。

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「これまで日本政府は、国内企業がつぶれないように金融緩和や資金繰りの支援策で支えてきましたが、結果的に労働市場が硬直して、新しい産業や企業に優秀な労働者が移動しなかった。競争力を失った企業を支援するのではなく、競争力のある企業に人材が移動しやすくするための制度を拡充することが、いま求められているのです。

その一方で、デジタル産業やバイオ産業などで活躍できる高度人材を育てるために、政府がもっと教育やリスキリングに投資をすることが、報告書では提言されています。これらが実現すれば、国内外の企業が日本市場を見直し、日本にもっと投資をするようになることが期待されます」

日本の伸びしろ

さらに、勉強会の出席者の一人は、「報告書で明言されてはいないが、海外の企業が日本に製造拠点を作りたいと思えるような安価な電力と安定的な労働力も必要で、原発再稼働や移民の受け入れという賛否の分かれる問題についても、正面から議論すべきことが、勉強会では示唆されていた」とも明かした。

賃上げ、人材投資、海外企業の誘致、原発再稼働……どれも決して目新しい対策ではない。これをやればすぐに日本が劇的に変わるという一手でもない。

それでも、報告書は〈こうした改革を着実に実施し、市場経済のダイナミズムを強化すれば、競争力のある日本経済を取り戻すことは十分に可能である〉という言葉で締めくくられている。

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退任間近の神田財務官に、改めて本報告書の意義について尋ねると、次のように返ってきた。

「日本の現状について危機感を醸成することは本勉強会の重要な目的の一つでしたが、同時に日本の伸びしろは大きく、現状に過度に悲観的になるべきではないこともお伝えしたい。健全な危機感を持ちつつも、前向きに改革を実施していくことが何よりも重要です。これが、本勉強会を通じて国民の皆様にお伝えしたかった私の思いなのです」

宇宙人の「最後の提言」を、日本人は真っ向から受け止めることができるだろうか。

「週刊現代」2024年8月3日号より

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