2025年は「日経平均3000円」と予測…森永卓郎氏に日本経済と株価の行方を聞いた

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2024年2月22日、東京株式市場は日経平均株価がバブル期の1989年12月につけた史上最高値(3万3957円)...

2025年は「日経平均3000円」と予測…森永卓郎氏に日本経済と株価の行方を聞いた

2024年2月22日、東京株式市場は日経平均株価がバブル期の1989年12月につけた史上最高値(3万3957円)を34年2カ月ぶりに更新しました。7月11日には終値で4万2224円まで上昇し、最高値に。一方で、8月5日には1日の下落幅が過去最大の4451円となるなど、株価は異例の状態が続きました。今回は、「25年には日経平均が3000円となる」と予測した経済アナリストの森永卓郎氏に改めて、今年の日本経済と株価の行方を聞いた。(聞き手=児玉一希/投資家)

  ◇  ◇  ◇

 ――昨年は円安・株高でしたが、改めてその要因とは何だったのでしょうか。

 今の状況は「人類史上最大のバブルが世界を覆っている」と見ています。株式市場はほとんどが投機的で、経済実態と関係なく株価が動くのは日常茶飯事です。ただ今回のバブルは前例がない規模で、”経済が非常に順調であると見せかけている”というのが24年の特徴だと思います。

 ――実体経済と株価が乖離している事例について教えてください。

 こ10年で最初に起きたのはドットコムバブルです。AmazonやGoogle、Microsoft、AppleなどのIT企業の株が高騰しました。次に「EVバブル」が始まりましたが、EVは充電の不便さや高価格、環境への悪影響が明らかになり、メルセデスはEV化を撤回、日産も経営危機に陥りました。

 さらには自動運転にテーマが移り、「AIが必要」という流れでAIバブルに。これも高値がつきすぎた。続いて「AIを動かす半導体」が注目され、米半導体メーカーNVIDIA(エヌビディア)が牽引していますが、NVIDIA一社で日本のGDPに匹敵する時価総額なんてあり得ません。この半導体市場は価格競争が激しいので、NVIDIAも数年で命運が尽きるでしょうね。

 現在は、宇宙開発バブルという妄想まで広がっています。「月に水や農産物を作る」というものですが、そんなことをしなくても、都心から2時間離れた土地なら100万円台できれいな水と空気と畑が手に入りますからね。

 経済学者ケインズは、株価を「美人投票」に例えていました。本当に美人かどうかは関係なく、みんなが美人だと思う人に票が集まり、それが株価だと説明しました。しかし、実態とかけ離れた評価が続くと、矛盾が膨らみ、一気に崩壊することになります。

 これまで人類が経験した大きなバブルは約70回ありますが、今回のバブルは史上最悪。24年の株高は史上最大のインチキによるものであり、何の裏付けもない砂上の楼閣です。

 少しでも足元を突かれれば、崩壊時の被害は非常に大きくなるでしょう。24年8月に日経平均株価が4000円以上下落した時も悲劇的でしたが、次の崩壊はそれ以上に深刻だと感じています。

 ――もしバブルが崩壊すれば、アメリカも同じ状況になるということでしょうか?

 アメリカは一歩遅れて影響を受けると考えています。トランプ氏が目指す近隣窮乏政策、「自国優先」の方針により、円高ドル安を日本に強要し、中国や日本に高関税を課す可能性があります。一時的にはアメリカ産業が好調になるかもしれませんが、他国が苦境に立ち不満が高まるでしょうね。1920〜30年代の近隣窮乏政策が世界戦争を招いたように、再び世界的な混乱を引き起こす可能性があります。私は、まず日本が壊滅的な不況に陥り、その影響が世界戦争と経済失速を招くシナリオが一番ありえると考えています。

 ――主要先進国のGDPや、雇用の好調さ、賃金の増減など、さまざまな尺度がありますが、森永さんが懸念している点は?

 24年に日本はG7で唯一マイナス成長が予想され、25年にはさらに深刻な事態が起こると考えています。その一つが円高です。日銀は利上げを見送りましたが、トランプ氏が再任されれば、ドル安・円高誘導のために利上げ圧力をかけるでしょう。

 為替の99.6%は投機で、実需はわずか0.4%です。投機筋が円高に動けば、急激に進行する可能性があります。購買力平価、つまり同じものが同じ値段で買える均衡為替は、現在のIMF(国際通貨基金)推計では円ドルレートは91円が妥当ですが、投機により150円台に。購買力平価までは一気に動きます。さらにはオーバーシュートで70円台になるリスクもあります。

 これにより、S&P500などのアメリカ投資資金は為替の影響で半減する恐れがあり、NISAを利用している人たちは、真っ青になり資産が溶けてなくなる可能性があります。

 ――為替が購買力平価から見て大きく売られすぎているという印象はありますが、短期間で半分になるような動きは本当に起こり得るのでしょうか?

 もし為替が実需中心だったら、そんな極端な動きは起きません。でも投機だと時にとんでもないことが起きるんです。24年8月の株価暴落もそう。一瞬で坂道を転げ落ちるような下落でした。同じことが為替市場でも十分に起こり得ます。

「資本主義とは何か?」これは岩井克人先生が述べていることですが、資本主義とは投機を主体にした経済システムだということです。つまり世の中の取引の大部分は投機で成り立っています。投機が増えたかどうかではなく、資本主義そのものが投機なのです。株式市場はほぼ100%が投機であり、為替市場に至っては、さらに投機そのものといえるほどです。

■「日経平均3000円」の悲観シナリオが現実になるサインは?

 ――森永さんは「日経平均は3000円になる」とかなり悲観的なシナリオを描いていらっしゃいますが、もしそれが現実になるとすれば、崩壊のサインや進行の過程でどんな動きが起こると考えますか?

 そこがね、誰にも正確には分からないんです。経済学者のガルブレイスは生涯をバブル研究に捧げたんですが「バブルがいつ崩壊するかを正確に当てることはできない」というのが彼の結論でした。例えば1929年10月24日の「暗黒の木曜日」の暴落も、ゼネラルモーターズの株に大量の売り注文が入ったことがきっかけだったんですが、誰が何の目的で仕掛けたのか、未だに分かってないんです。

 有名な話として、ジョン・F・ケネディの父、ジョセフ・ケネディがウォール街で靴磨きの少年に「今日の相場はどう動きますか?」って聞かれて、「子どもまで株をやっているなんて危険だ」って直感して、全ての株を売り払ったら、その直後に大暴落が始まった。

 きっかけは色々あります。戦争、自然災害、政治的な要因、何が引き金になるかは誰にも予測できない。ただ、今の市場っていうのは、尖った山の上にボールを置いているようなものなんです。誰かがちょっと押すだけで、一気に転がり落ちるような不安定な状態にあるのは間違いないと思いますよ。

 ――バブルとしての過剰評価は確かにありますが、日経平均が3000円になるにはEPS(1株当たりの利益)が大きく減少する必要があります。企業の利益がそこまで変動することは考えにくいのでは?

 ロバート・シラー教授の研究によれば、バブル時には利益自体も過大評価されます。PER(株価収益率)は意味をなさなくなり、バブル崩壊後には利益が本来の水準に戻り一気に1/3、1/4、1/10にまで落ちることがあります。

 経済理論では、株価は将来の配当金を現在価値に割り戻して決まりますが、配当金の原資は企業の利益です。完全競争下では企業利益がゼロになり、株式は無価値になるという理論もあります。それでも投機的に株価がつけられているんです。

 みんなが投機的に値をつけている点では、昔の仮面ライダーカードと同じです。突き詰めると、それは単なる印刷物、紙切れに過ぎません。しかし、ピーク時には1枚で何十万円、何百万円の値がつき、それが株式も同じで、ポケモンカードが今300万円しているものが、10円になっても何もおかしくないと思います。

 ――確かに、日経平均株価はバブル時の高値から2003年の安値まで約8割下落しています。長期的にはそのような動きがありますが、もし森永さんの予測のような暴落が起きた場合、逆に考えれば、お金を増やす空前のチャンスともいえますか?

 その通りです。ヨットは逆風でも進むように、下げトレンドではショート(売り)に切り替えれば良いんです。今は「日経ダブルインバース」(日経平均株価が下がると、その2倍の値動きで利益を得る指数)を使えば、通常の投資信託と同じ手順で簡単にショートの効果を得られ、価格は2倍で動きます。

 私は24年7月に資産を処分し、試しに「日経ダブルインバース」を購入しました。8月の暴落時には基準価格が急上昇し、その効果を実感しました。今は少し損をしていますが、小額なので気にしていません。要は下げトレンドが確定したら勝負すれば良いんです。1年で資産を10倍以上に増やすことは不可能ではありません。リスクはありますが、絶好のチャンスが近づいていると言えます。

 ――「山高ければ谷深し」というように、現在はダウンサイドのリスクも大きい状況です。これまで以上に、常にマーケットの情報に触れておくことが重要ということですよね。

 その通りです。暴落が始まるとスピードが速いので、数日間マーケットを見ないことは避けるべきです。できれば1時間おきに確認しないと、乗り遅れる可能性があります。今はSNSで情報が一気に流れる時代なので、どう判断するかが重要です。
特に新NISAを始めたけど「よく分からないまま手続きをした」「解約や売却方法が分からない」といった人が非常に多いのが気になります。これは危険です。一度は売却を経験しその意味を理解しておくべきです。

 ――個人投資家の皆さんや投資が初心者の方にも向けてアドバイスは?

 金融業界の人たちに直接聞いてみると、過半数が「来年の相場は下がるだろう」と言っています。しかし、私がそれをメディアで公言しようと言うと、誰も応じてくれません。理由は、言ったら「会社に戻れなくなる」からだそうです。

 暴落が始まったときにすぐ逃げられるフットワークを鍛えておくことが、今の最大の課題です。地震の避難訓練と同じで、普段から準備しておかないと、いざというときに対応できません。そのため、少しでも売却を経験しておくことをお勧めします。それが私のアドバイスです。

※森永卓郎氏へのインタビューは、児玉一希氏が主宰するYouTubeチャンネル「Trade Labo」の動画で詳しく紹介しています。

▽森永卓郎(もりなが・たくろう) 1957年生まれ。東京都出身。東京大学経済学部卒業。経済アナリスト。主な著書に「年収300万円時代を生き抜く経済学」「長生き地獄にならないための老後のお金大全」「ザイム真理教」など。

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