エプスタイン文書がぶち壊してしまった「スキャンダルまみれのリベラル派」の偽善

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エプスタイン文書が破壊した「スキャンダルまみれのリベラル派」の偽善
ウクライナ戦争の4年を経て、リベラル派の偽善がエプスタイン文書の公開によって暴露された。トランプ前大統領は、リベラル派の国際秩序に疑問を呈し、リアリズムに基づくアプローチを強調している。リベラル派が主導したウクライナの政権交代は、正統性に欠けるとの見解が強まり、彼らの道徳的立場が揺らいでいる。これにより、国際政治の見方も変化が求められる状況となっている。

エプスタイン文書がぶち壊してしまった「スキャンダルまみれのリベラル派」の偽善

揺らぐ「ウクライナ戦争」

ロシアによるウクライナへの全面侵攻開始から、2月24日で丸4年が経過する。2022年2月24日にはじまった戦争を、同年3月24日付の主要7カ国(G7)首脳による声明では、「ウクライナの独立および主権に対する、ロシアの不当な、いわれのない、不法な侵略およびプーチン大統領の選択により始められた戦争」と位置づけている。

だが、ドナルド・トランプ大統領が昨年1月に登場したことで、ウクライナ戦争に対する見方が揺らいでいる。その証拠に、昨年6月にカナダで開催されたG7(主要先進国)首脳会議では、ウクライナ支援に関する共同声明が見送られたほどだ。

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大雑把に言うと、トランプはこれまでリベラル派が主導してきた国際秩序に対する見方を一変させて、リアリストとしてまったく別の「力による平和」という観点から、ウクライナ戦争を停止・和平へと導こうとしている。こんなトランプに対して、リベラル派はトランプを厳しく批判しているが、いま、リベラル派の「偽善」(hypocrisy)が暴かれつつある。

性犯罪者で失脚した金融業者ジェフリー・エプスタインに関連する文書が公開されたことで、ビル・クリントン元大統領をはじめとするリベラル派の重鎮が、エプスタインと密接な関係をもっていたことが明らかになりつつあるからだ。エプスタインと友人関係にあったトランプは、リベラル派の民主党の追及に屈して関連文書の公開に踏み切らざるをえなかった。

ところが、いまのところ、民主党の評判を大いに傷つけている。リベラル派の偽善が暴かれたことで、リベラル派が主導してきたウクライナ戦争に対する見方も徐々に変わろうとしている。

長い「物語」の序章

この話を理解してもらうには、長い「物語」(ナラティブ)をしなければならない。まず、序章として、世界がどのように統治されてきたかについて説明しなければならない。

これまで80年間以上、世界は米国主導の「リベラルデモクラシー」(liberal democracy)と呼ばれる考え方をもとに統治されてきた。自由を守るためには民主的に選ばれた政府による規制が必要だとみなし、こうしたリベラル(自由)で、デモクラティック(民主的)な国が増えれば、世界平和も実現できると信じて疑わない見解である。

具体的には、多国間機関(国連、世界貿易機関[WTO]、北大西洋条約機構[NATO]など)における国際協力を重視し、同じ制度やルールのもとでの経済的相互依存により、平和の維持をはかろうとする。ただし、リベラルデモクラシーを広げるためには、必要とあれば、武力行使も厭(いと)わないし、脅しによる統治をやむなしと考える主張でもある。ここでは、こうした考えを信奉する人たちを「リベラル派」と呼ぶ。

リベラル派は、リベラルデモクラシーをできるだけ多くの国々に支持してもらうために、人権尊重、人道支援、医療・保健環境の向上、気候変動対策などに専心してきた。これを支えていたのは、高い倫理観や道徳心であったと言えるだろう。自分たちの信念が高潔であると信じて、他者にもそうふるまうことで信奉者を増やせば、平和が訪れるとみなすのである。

そう、リベラル派はどこか、異教徒にキリスト教を布教しようとした「宣教師」(missionary)に似ている。だからこそ、高潔さが求められているのだ。

このリベラルデモクラシーは、何やら崇高にさえ感じられる理念だから、民主党出身の大統領であろうと、共和党出身の大統領であろうと、リベラルデモクラシーを世界統治のための外交戦略の基本に据えてきた。ただ、共和党出身のジョージ・W・ブッシュ大統領の政権下では、他国に民主主義を広めるために武力を行使することも厭わない、新保守主義者(ネオコン)が重用され、大量破壊兵器の開発・保有を理由にイラク侵攻を行うような暴挙がなされた。この名目が「大嘘」であったから、大義名分が失われ、ブッシュ政権の偽善はいまでも批判されている。

「アラブの春」が「アラブの冬」に

バラク・オバマ政権下では、「アラブの春」というかたちで、2010年末から2012年にかけて中東・北アフリカ地域で発生した、民主化と自由を求める大規模な反政府運動が支援された。チュニジアでの民衆蜂起がきっかけとなり、エジプト、リビア、イエメンなどで独裁政権が打倒される。しかし、多くの国で混乱や内戦に陥り、いつの間にか「アラブの冬」に陥ってしまう。

民主主義を安易に輸出しようとするやり方は、明らかに失敗であった。幅広い中間層が育っていないと、安定的な世論形成ができず、統治が不安定化するからだ。それにもかかわらず、リベラル派は反省することなく、ウクライナなどにも支援を継続した。宣教師的なリベラル派にとって、民主主義の輸出は使命(mission)だったから、それ自体を反省する必要などまったくなかった。何しろ、それは神と結んだ盟約(covenant)なのだから。

その結果、ウクライナでは、2004~2005年にかけて「オレンジ革命」と呼ばれる親米政権の誕生に成功する。だが、ウクライナは腐敗にまみれ、多少なりとも民主化はされたものの、2010年2月には、親ロ派と目されるヴィクトル・ヤヌコヴィッチが大統領に就任する。彼は、2004年11月の選挙でいったん大統領に選出されながら当選を無効とされ、再選挙で敗れた人物であった。

このヤヌコヴィッチ政権に対して、オバマ政権は露骨なリベラルデモクラシー外交を展開した。ウクライナ西部でウクライナ語しか話せずに虐(しいた)げられていた若い失業者らにナショナリズムを教え込み、ときに武装闘争の方法まで叩き込んだ。「米国際開発庁」(USAID)や「全米民主主義基金」(NED)などがカネを出し、その裏で中央情報局(CIA)が暗躍したのだ。

そして、ついに2014年2月に、民主的に選ばれて大統領に就任していたヤヌコヴィッチをロシアに追い出すことに成功する。リベラル派は、この政権交代を「マイダン革命」と称して称賛する。だが、それは、「アラブの春」が「アラブの冬」に暗転したように、戦争へと向かってしまうのである。

リアリズムの世界観

この2013~2014年の出来事を冷静に見つめて、2014年2月の政変が、米国政府の支援した武力闘争による「クーデター」であったと主張するのが、安全保障分野の権威であるジョン・ミアシャイマー・シカゴ大学教授や私の見方である。この主張は、国際政治において、現実を冷徹に観察し判断することに力点を置く「リアリズム」(realism)に根差している。

このリアリズムは、国際システムの中核に「力と安全保障」が位置するとみなす。もちろん、この学派にはさまざまな流派が存在するが、ほぼすべてのリアリストは、以下のように考える。

① 国家は主に安全保障と生存によって導かれる、②国家は原則(principle)ではなく、国益(national interest)に基づいて行動する、③国際システムは無政府状態(anarchy)によって定義される。

だからこそ、第二期トランプ政権は、世界保健機関(WHO)、パリ協定、国連人権理事会から米国を脱退させ、国連パレスチナ難民救済機関(UNRWA)への資金提供を禁止する政令に署名している。今年1月7日には、トランプ大統領は、もはや米国の利益に資さない66の国際機関からの脱退を指示する大統領覚書に署名した。まさに、アナーキーな国際システムに戻すことで、リアリズムに回帰しようとしているようにみえる。

大雑把に言ってしまえば、リアリズムは、国家間の関係は本来、無秩序であり、権力と安全保障によって動かされ、国益を追求するとみなす。道徳的主張は、利益に資する限りにおいてのみ考慮されるにすぎない。別言すれば、民主主義と道徳はしばしば利益に従属する。

なお、アテネはメロスを包囲戦で破ると、島の男性を虐殺し、女性と子供を奴隷とした。そのように、古典的リアリズムの典型は、「力によって支配された世界」を認める立場だ(下の絵を参照)。ここではリアリズムを信奉する人々を「リアル派」と呼ぶ。

(出所)https://www.nytimes.com/2026/02/11/opinion/donald-trump-pagan-king.html

NYTの「異教の王、トランプ」という記事に掲載された「トランプ王」 Brandon Celi

「バイデンの戦争だ」

トランプはもちろん、リアル派である。昨年12月に公表された米国の「国家安全保障戦略」(NSS)には、「柔軟なリアリズム」(Flexible Realism)という言葉が一度だけ使われている。「米国の政策は、他国との取引において、何が可能で、何を求めるのが望ましいかについて、現実的であろう」と説明されている。

そのリアリズムの柔軟性は、「我々は、世界の諸国との良好な関係と平和的な商業関係を求めつつ、それらの国々の伝統や歴史から大きく異なる民主主義その他の社会的変革を押しつけることはしない」という文章によって語られている。別言すれば、リベラリズムの特徴である「民主主義の輸出はしない」と言っていることになる。

リアル派のトランプは、ウクライナにおける紛争について、「バイデンの戦争」と称している。有名なインタビューを紹介しよう。昨年4月に公表された、トランプのTime誌とのインタビューである(下の写真)。そのなかで、ウクライナ戦争の終結に時間がかかっている理由を尋ねられたトランプは、つぎのように答えた。

(出所)https://time.com/7280114/donald-trump-2025-interview-transcript/

2025年4月22日、ホワイトハウスにて、昨年7月にペンシルベニア州バトラーで起きた暗殺未遂事件の余波を描いた絵の前でドナルド・トランプ大統領 Martin Schoeller for TIME

「いや、そんなに長くはないと思うよ。だって、俺がここに来たのは3カ月前だ。この戦争は3年も続いている。俺が大統領だったら絶対に起こらなかった戦争だ。バイデンの戦争だ。俺の戦争じゃない。俺には関係ない。俺がいたらこんな戦争は絶対に起こらなかった。この戦争は決して起きなかった。プーチンは決してそんなことはしなかった。この戦争は決して起きなかった」

「民主主義の輸出」の裏側

この発言を、国際政治理論に関連づけてみよう。問題の核心は、リアル派からみると、ウクライナでの紛争は、「民主主義の輸出」という名目で他国に干渉し、政権転覆によってそれを実現しようとしてきたリベラル派に端を発することにある。民主的に選ばれたヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領を、クーデターによってロシアに追い出して誕生したウクライナの新政権およびその流れをくむ政権は、本来、正統性のないものなのだ。

リアル派のトランプは、リアリズムを信奉する立場から、ウクライナ戦争がはじまったのが現実には、2022年2月24日ではなく、2014年であったことを知っているのかもしれない。同年2月にヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領がロシアへ逃亡せざるをえなくなったクーデター、その後のクリミア半島のロシア併合、さらにドンバスでの紛争といった出来事がウクライナ戦争のはじまりであったとみなすのが、より現実的である――そうトランプは考えているのではないか。

この立場からみると、当時の副大統領で、ウクライナを担当していたバイデンの責任は重い。彼および彼の配下のヴィクトリア・ヌーランド(当時の国務省次官補)のような人物がクーデターを支援し、ヤヌコヴィッチを追いだす暴挙に出たという現実に、リベラル派の「いざとなると『敵』をつくり、平然と武力行使を容認する」姿勢が投影されている。

このとき、たしかにクーデターの裏で糸を引いていたのは米国政府であり、このクーデターが起きなければ、2022年2月からのロシアによるウクライナへの全面侵攻は起きなかっただろう(詳しくは拙著『ウクライナ・ゲート』や『ウクライナ2.0』などを参照)。

ただし、第一期トランプ政権は2017~2021年だから、2014年にウクライナ戦争がはじまったと断じると、それを放置した自身の政権の無力さが問われかねない。このため、トランプは、2022年2月24日からの全面侵攻の前の段階で、当時のバイデン政権下において、ロシアへの挑発が繰り返され、それがウラジーミル・プーチンによる全面侵攻の引き金を引いたと考えているのかもしれない。なぜなら、リベラル派のバイデンはウクライナをNATO(北大西洋条約機構)陣営に引き入れるべく、プーチンを怒らせる戦略をとっていたからだ。

具体的には、2021年5月に、バイデンが、先に紹介したヌーランドというユダヤ人を国務省次官補に任命したことが決定的だった。彼女は、民主主義と西側の価値観を海外に広めることに力点を置き、これを強い道徳的使命のもとに行うために、他国に民主主義を広めるために武力を行使することも厭わない、新保守主義者(ネオコン)だからだ。

心あるリアル派は、彼女の任命を大いに心配していた。私自身もその一人であった(関心のある読者は2021年12月の段階で「論座」に公表した拙稿「米ロ首脳会談をどう解釈すべきか:ウクライナをロシアにとっての「台湾」とみなすと見えてくる真の構図」を参照してほしい)。

残念ながら、この懸念は現実になった。ヌーランドは、先住民たちの「魂の救済」を心から願い、異国での殉教(じゅんきょう)も厭わないばかりか、それを望みさえしながら、布教活動を推し進めた宣教師像のように、絶対的に正しいと信じて疑わない信念に裏づけられているリベラリズムを実践しようとした。国務省次官補時代の自分の失政で併合されてしまったクリミア半島を奪還すべく、プーチンを挑発しつづけたのだ。まさに、復讐しようとしたのである(拙著『復讐としてのウクライナ戦争』を参照)。

リベラル派の偽善

いまや、リベラル派の偽善が相次いで明らかになっている。冒頭に紹介したエプスタイン文書の公開の結果だ。

リアル派にとって、道徳心や倫理は二の次だから、エプスタインとの長い友情(噂によれば、エプスタインがトランプを将来のファーストレディであるメラニアに紹介したとされる)に結ばれていたトランプにとっては、その関係が知られても大きな打撃にはならない。たとえば、同じく、エプスタインのもてなしを受けた著名人には、イーロン・マスク(スペースXやテスラなどのCEO)、スティーブ・バノン(第一期トランプ政権で主席戦略官)などのリアル派に属する人物がいるが、すでに「札付き」であり、彼らにとっても打撃は少ないだろう。

これに対して、本来、リベラル派は高い倫理観を前提としている。つまり、リベラル派が実はエプスタインと深い関係にあったことがバレると、その高潔な主張全体が揺らぎかねない。ウクライナで言えば、「マイダン革命」は、本当は民主的に選出されていた大統領を武力で追い出したクーデターにすぎず、そんな正統性のない政権を支援する正当な理由がないというリアル派の主張が真実味を増している。

ビル・クリントンとヒラリー・クリントンは、今月下旬に米下院監視・政府改革委員会で証言する予定だ。下の写真を見れば、クリントンが何をしてきたかは想像がつく。何しろインターンの女学生からオーラルセックスを受けた人物なのだから。

夫妻はこれまで、エプスタインが最初にセックス・スキャンダルの対象となったのと同時期か、その少し前に、エプスタインとの関係を断っていたと主張してきたが、それは真実なのだろうか。ハーバード大学の経済学者ローレンス・H・サマーズ(クリントン大統領の下で財務長官[1999~2001年])が、長くエプスタインとの関係を継続してきた事実からみると、どうも疑わしい。リベラル派は嘘ばかりついているようにみえるからだ。

エプスタイン自身が法的手続きの対象となったのは2005年のことで、億万長者の性的虐待を告発した14歳の少女の証言に基づいて、フロリダ警察が捜査を開始した。後に、そのような少女が何十人もいたことが判明する。集められた証拠は、エプスタインを60件の暴力、売春の勧誘、人身売買の組織化で告発するのに十分なものだった。

だが、2007年に当時のアレックス・アコスタ連邦検事との司法取引の一環として、エプスタインは州から直接、より軽い罪状で有罪(売春勧誘罪による18カ月の服役)を認め、郡刑務所にわずか13カ月間服役しただけだった。この取引によってエプスタインは連邦裁判を避けることができたため、被害者の多くは結局、証言に呼ばれることすらなかった。だが、「ニューヨークタイムズ」(NYT)は2008年7月1日付でエプスタインについて報道し、多少なりともエプスタインの悪事が暴露された。

エプスタインは2019年7月に再逮捕され、8月には奇妙な状況下で、マンハッタンの連邦拘置所の独房で死亡しているのが発見された。刑事事件は終結したが、彼の長年の仲間であり友人ギレーヌ・マクスウェルだけが処罰された。2021年、彼女は10代の若者と若い女性の人身売買ネットワークを組織するためにエプスタインを援助した罪で有罪となり、懲役20年の判決を受けた。

(出所)https://monocle.ru/monocle/2026/08/pokhot-i-politika-chego-bolshe-v-dele-epshteyna/

これがビル・クリントンの本当の姿だ DEPARTMENT OF JUSTICE/ZUMA

バラク・オバマ元大統領もまた、リベラル派の代表格である。彼本人には、エプスタインとの直接的な関係はないようだが、彼の周辺には、偽善者が多くいた。たとえば、オバマ大統領の下でホワイトハウスの顧問弁護士を務めたキャシー・レムラーは、エプスタインの過去を知りながら、2017年、エプスタインは彼女がアパートを探すのに同行していた(NYTを参照)。2月3日、彼女は代理人を通じて、「私は彼が現在進行形で犯罪行為を行っていることはまったく知らなかったし、彼が明らかになったような怪物であることも知らなかった 」とのべた。だが、2月12日、彼女はゴールドマン・サックスの最高法務責任者兼法律顧問を辞職した。

別の報道では、今回の文書によって、彼女は、ホワイトハウスの職を退職後、エプスタインから エルメスのハンドバッグや フォーシーズンズ・ホテルでのスパの日などの 贈り物を受け取っていたことも明らかになった。つまり、偽善者がオバマ政権を支えていたと言える。

プリツカー家の偽善

本当は、そもそも、オバマも、オバマ政権下で副大統領を務め2021~2025年まで大統領だったジョー・バイデンも偽善者であると、私は考えている。この二人のリベラル派の代表格を結びつけているのが「プリツカー家」である。ハイアット・ホテルを世界中に展開する富豪一族だ。

その一族のルーツはキーウであり、ウクライナにもつながっている。本拠地はシカゴであり、そこでアメリカ系ユダヤ人となった彼らは、リベラル派人脈を広げてゆく。その好例が、シカゴのあるイリノイ州で上院議員となり、頭角を現したオバマとの間で、密接な関係を築き上げたことである。

ハイアットの共同創設者ジェイ・プリツカーの息子トーマスはこの度、ハイアット・ホテル・コーポレーションのエグゼクティブ・チェアマンを辞任した。2月17日、トーマスは、エプスタインとマクスウェルとの接触をつづけたことについて「ひどい判断を下した」とのべたという(NYTを参照)。

最近公開された文書によると、トーマスはエプスタインと2008年以降も定期的に連絡を取り合っており、両者は食事や面会の確認を頻繁にやり取りしていた(別のNYTを参照)。その中には、エプスタインのマンハッタンにあるタウンハウスでの会合も含まれていた。

同じくハイアットの共同設立者ドナルド・プリツカーの娘ペニーは、2013~2017年までオバマ政権下で商務長官を務め、2023年9月からは、ウクライナ経済復興担当米特別代表の職に就いた。岡倉天心賞を受賞した拙著『帝国主義アメリカの野望』において、「ペニー・プリツカー物語」(51~53頁)として、主にペニーとオバマの関係について説明したので、そちらを読んでほしい。

ペニーとエプスタインとの関係はいまのところ、知られていない。だが、リベラル派の代表格である二人の代表格であるオバマとバイデンがプリツカー家を優遇してきたのは現実だ。プリツカー家に偽善があったとすれば、高潔さを売り物としてきたリベラル派には打撃となるだろう。

リベラル派の偽善は世界に広まる

2009年のノルウェー・ノーベル委員会委員長は、トルビョルン・ヤーグランだった。彼は、オバマにノーベル平和賞が授与される過程を主導し、核兵器のない世界に向けたオバマの構想と取り組みを顕彰した。ヤーグランの委員長任期は2009~2015年まで続き、その後は一時的に委員長職を退いたものの、委員としての地位は維持した。

このリベラル派の人物もまた、エプスタインとの関係が問題視され、今月12日、エプスタインとの関係をめぐる「重大な汚職」で起訴された。Eメールによれば、2010年代、エプスタインはヤーグランを通じてロシアのプーチン大統領との面会を何度も手配しようとしていた。

こんな穢(けが)れたリベラル派の人物がノーベル平和賞の選考に絡んでいるのだから、リアル派のトランプが嫌われるのは当然かもしれない。

エプスタイン文書は英国にも飛び火している。元駐米英国大使のピーター・マンデルソンは、2月初旬に労働党を辞職し、その後、エプスタインとの関係が改めて調査されるなか、貴族院を辞職した。2月6日、英国警察はエプスタインとの関係に起因する不正行為の調査の一環として、マンデルソンに関連する二つの不動産を捜索した 。

昨年9月、マンデルソンは、エプスタインとの関係が、マンデルソンが認めていた以上に親密であったことを示す通信が出たため、キア・スターマー首相によって駐米英国大使を解任された。だが、すでにこの不可解な人事をめぐって、スターマーの首席補佐官モーガン・マクスウィーニーは辞任した。もはやスターマー自身も風前の灯火状態にある。

以上、どうだろう。リベラル派の相次ぐ偽善発覚は、リベラル派自体の主張にも疑念を呼び覚ますのではないか。

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