秋の土用は土用食を。先ずは甘味ですが、重労働をするときだけに。
季節が目まぐるしく変わる漢方の世界。4季の変わり目に18日間程度の「土用」が入りますから、細かく分けると、8季に区分されます。
8月7日頃の立秋に始まった秋は10月19日頃に終わり、10月20日頃から立冬(11月8日頃)の前日までが「秋の土用」です。2024年は10月20日から11月6日までとなります。
年4回訪れるこの土用、たいてい「土」に「用」がある時期でして、秋の土用は、ちょうど稲の収穫シーズンとなり、農繁期です。加えて、冬野菜の最終手入れ、春野菜の種蒔きや苗植え付けもせねばなりません。
こうして、丸1日、空気は乾燥しているものの、土の湿気を浴びながら、田畑で重労働を強いられ、食事の量が増えます。
夏の土用の記事でも述べましたが、秋の土用も同様にして、漢方では、土用は脾(ひ)の季節です。脾は「消化吸収の要となり、水分代謝を調節する役割を担う働き」を指し、脾に密接な臓器は胃となります。
よって、土用の時期は、「消化吸収・水分代謝」に特に気を付けねばなりません。
まず消化吸収ですが、食欲の秋でもありますから、大食しかねません。そして、忙しいからと早食いすると、胃に負担がかかり過ぎます。加えて、この時期は、胃が高ぶっていますから、胃を壊す原因になり、くれぐれも過食にはご注意を。
その対策としては、早食いは禁物で、ゆっくり、よーく噛むしか方法はなさそうです。これで、大食いも防げます。
次に、水分代謝ですが、涼しくなっていますから、水分補給は控えめにしたいです。日中に水分補給し過ぎますと、その全てが汗とはならず、体に溜まりがちとなって、脾に負担がかかり過ぎます。
本題の秋の土用食ですが、これも夏の土用と同じになります。
注目すべき五味ですが、脾が欲しがるものは、甘味で、それに塩味を足し、辛味を添えれば満点です。この三味の組み合わせが肝腎です。
甘味とは、砂糖を使った饅頭などを指すのではなく、よく噛んで甘味を感ずるものをいうと考えてください。ご飯がその代表的なものです。そして、肉(魚を含む)です。
夏の土用は、鰻の蒲焼が理にかなっていますが、秋の土用は、この時期に美味くなるサンマ(今年も不漁であまり口に入りませんが)あるいはサバということになります。
脂が乗ったサンマなりサバに塩を振り、焼き絞めます。ここで重要なのが、焼くときに脂を十分切ることです。脂は胃に負担がかかり過ぎますからね。
これについては、“ 秋ナスと秋サバは嫁に食わすな!”で記事にしたとおりでして、サンマについても、本来なら串刺しにして、炉辺焼きにするのが本当の焼き方です。
その昔、農家では藁を燃やして炉辺焼きにして脂を切っていました。表面が真っ黒になりますが、これが一番美味しいと言われたものです。なお、はらわたも食べましたし、頭と骨は、後でまた焼いて、丸ごと全部いただいたものです。
塩焼きに添えるのは辛味が良く、サンマであれば「大根おろし」、サバであれば「おろし生姜」です。なお、大根は、残念ながら、今では品種改良されてピリッとくるものが少なくなりましたが、この時期、望ましいのは辛味があるものです。
こうした添え物があると、味がグーンと良くなるから不思議なものです。
残りの2味は、酸味と苦味です。夏の土用と同様に、酸味を控え、苦味はほどほどに、ということになります。
五行配当表
(下図) 各ブロックの端に味が表記されています。
「水」・「冬」のブロックの左端が味の「鹹」ですが、塩のことです。
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