もはや敗色濃厚!それでも兵力増員を図るゼレンスキーの愚

一旅団でウクライナ兵1700人が欠勤
1月16日になって、親バイデン派として知られた英誌『The Economist』でさえ、フランスで訓練を受けたウクライナの第155旅団について、「旅団の約3分の1に当たる1700人が無断欠勤し(一部は元の部隊に戻った)、50人がフランスで脱走した」と報じた。「第155旅団の費用は約9億ユーロ(約1400億円)にのぼると言われる」とも記述されている。
ウクライナの『キーウ・インディペンデント』は、ウクライナ地上軍司令官のミハイル・ドラパツィイが1月6日の記者会見で、フランス軍の訓練を受けた第155旅団が「高い離職率や組織力の低さなど、重大な課題を抱えていることを認めた」と報じた。1月23日には、「第155旅団の元司令官も拘束され、その翌日から裁判がはじまった」という情報も報じられた。
1月27日、『The Economist』はついに「停戦話のなかで、ウクライナの前線は崩れつつある」という記事を公表した。1月2日の拙稿で、ネツク州のポクロフスク近郊にあるコークス用炭鉱が陥落したことで、ウクライナが大打撃を受けたことを書いたが、この記事はようやく、「ポクロフスクでの戦闘によって、ウクライナ側はすでに、国内の冶金産業の需要の半分を供給していた重要な石炭炭鉱を放棄している」とした。
空軍兵を陸軍に回すウクライナ軍
ウクライナ軍のカニバリズム(人食)とも言える現象まで起きている。ウクライナ軍では、空軍の兵士を陸軍に移行させて戦わせるという現象が起きているのだ。
『キーウ・インディペンデント』は、「空軍から地上軍への約5000人から6000人の兵士の移籍は今年1月に始まった」と報道している。『ウクライナ・プラウダ』(1月14日付)は、最高司令官オレクサンドル・シルスキーからの人員移籍に関する最新の命令が1月11日に空軍部隊に届き、「5000人以上の兵士が陸軍に移籍することになった」と伝えている。1月16日付の『キーウ・インディペンデント』は、「『不条理な現象』――ウクライナ空軍弱体化という脅威をもたらす人員問題」と題したタイトルの記事のなかで、14日に公開された動画で兵士が明らかにした話を伝えた。
この時点までに、ウクライナ軍司令部は、ビデオ公開時点で218人の専門家を歩兵部隊に異動させようとしており、それより前に、すでに250人が異動したというのである。
これは、せっかくコストをかけて訓練した専門の知識や技能を有する空軍兵士の能力を陸軍に投入することで、空軍の能力を低下させる。その一方で、陸軍は数合わせに走るだけという、いまのウクライナ軍の末期症状を示している。
動員延期政策が2月28日に終了
劣勢にあるウクライナは、兵員増強によって巻き返しをはかろうとしている。昨年11月22日、ウクライナ閣僚会議は決議第1332号を採択した。これによって、本決議発効前に経済省の決定によって兵役義務者に付与された、動員中の兵役召集の延期は、今年2月28日まで有効とすることになった。わかりやすく言えば、動員対象者であっても、重要企業の従業員や国家公務員を適用除外としてきた動員延期政策をいったん、2月28日で終了し、3月1日から新しい制度のもとで仕切り直しとするものである。
そのねらいは、もちろん、動員延期対象者を減らし、少しでも多くの兵員を確保することにある。これまで重要企業(エネルギー産業・食品産業・公益事業など)の必須基準は、
(1)民間企業の従業員の平均給与が2万フリヴニャ(約7・3万円)を下回らない、(2)税金および統一社会保険料の滞納がない――であったが、これらに加えて、(3)年間150万ユーロ(約2・3億円)以上の税金および関税を納付している、(4)年間3200万ユーロ(約50億円)以上の外貨収入がある(貸付金および借入金を除く)、(5)戦略的に重要な国家施設のリストに含まれている――
などの追加条件が付与された。ほかに、国および地方政府機関(国の統治を確保するため)の職員や国防契約を結んでいる企業(たとえば、軍事装備や資源の供給業者)の従業員も対象となる。
ただし、従業員の動員を予約できる職種と専門職のリストがある。すべての従業員を動員猶予できるのは、特定の企業・機関に限られている。
たとえば、国防産業と燃料・エネルギー部門の従業員がそれである。ただし、一般に重要企業に雇用される動員猶予される被雇用者の数は、その組織における兵役義務のある被雇用者総数の50%を超えてはならないとされている。
動員猶予中の150万人の命運
当初、2月28日以降、重要企業の経営者は「ディアポータル」(下の写真)を使って72時間以内に従業員を再び動員延期とすることが可能となるとされていた。
ところが、1月中旬になって、閣僚会議は2月28日を待たずにディアポータルを通じて、従業員の動員猶予の再予約をすることを企業に許可したことが明らかになった。このルールは、重要企業に対して、1月22日から3月1日まで有効である。
この結果、何人の動員対象者の動員猶予の延長が認められなくなるかは判然としない。一説には、猶予労働者の数を100万人減らすという目標が設定され、動員猶予を失った労働者はさらなる動員のために地域採用センター(TCC)に送られるという。ある情報によると、動員最低年齢が27歳から25歳に引き下げられた昨年5月以降、これまで動員猶予されてきた労働者数は約150万人と言われているから、これらの動員猶予者のうち、3分の2は動員されてしまうかもしれない計算になる。
(出所)https://strana.news/news/475239-pravitelstvo-obnovljaet-kriterii-bronirovanija-ot-mobiliatsii.html
狙われる地域採用センター
TCC(地域採用センター)は、動員を集めている国防省の下請け機関である。昨年12月11日に公表した拙稿「いつまでも戦争止めないゼレンスキー…それは止めたら自分が追放されるから」では、「バス化」(TCC将校が街頭で男性を拘束し、軍隊に送り込むこと)と呼ばれる現象まで引き起こしていると紹介した。
すでに敗色濃厚でありながら、無理やり動員して戦場に送り込もうとする行為はどうみても非道であり、TCCのやり方に対する憤怒がウクライナ国内で高まっている。だからこそ、これを利用して、ロシアはTCCをねらった攻撃を相次いで仕掛けているらしい。
2月5日、フメリニツキー州のカミャネツ=ポドリスキー市のTCCが襲撃された(下の写真)。一説によると、1人が死亡、4人が負傷した。2月1日には、リウネ州でも、TCCが爆破され、1人が死亡、6人が負傷したとの報道がある。
18~25歳の自発性に賭ける
1月24日にAP通信が伝えたところによると、ウクライナは、「動員が免除されている18歳から25歳までの若者を徴兵するべく、徴兵改革の最終段階にある」という。
大統領府副長官のパブロ・パリサ大佐がインタビューで語ったものだ。ゼレンスキー大統領は、18歳からの義務的動員実施に断固として反対しているため、新制度はあくまで自発的な兵員募集を18歳から契約に基づいて行うという。
しかし、劣勢にあり、しかも和平が近いかもしれないウクライナで、自ら兵士になろうとする若者がどれほどいるのかは判然としない。
戦争忌避者が急増か
開高健の自伝『破れた繭(まゆ)』には、太平洋戦争で日本が次第に劣勢になる様子をつぎのように書いている。
「中学生の制服が木綿からスフになり、ボタンが金属から瀬戸物になった。靴が皮革からサメの革になり、たちまち布製になった。食物一切が配給制になり、切符を支給されて求める様になったけれど、誰もそんなものではやっていけないので、田舎へ、農村へ物々交換に走るようになった」
「御飯は急速にまぜ飯となり、はじめのうちはイモ、フキ、マメなど、まともで風雅なものであったが、そのうち米そのものがなくなってきたので、手あたり次第の物をまぜるようになった。おかずは肉や魚がたちまち姿を消し、ヨメナ、ノビル、イモの葉、イモの蔓など、七草粥が常食となった」
それでも、日本人は大本営発表による情報統制下に置かれていたために、本土爆撃が増えたことで、日本が劣勢にあったことは気づいたとしても、国民は本土決戦に備えて竹やり訓練をまじめにやっていた。
しかし、いまのウクライナ人は違う。
すでに、彼らはウクライナが敗色濃厚であることをよく知っている。さらに、ドナルド・トランプ米大統領の登場で、ウクライナ戦争の終結が近づいていることにも気づいている。そうであるならば、わざわざ戦地に赴(おもむ)こうとするウクライナ人がどれほどいるだろうか。
もうすぐ戦争が終わるのであれば、戦争忌避者になっても生き抜こうと考える人が増えることが十分に予想される。つまり、動員猶予政策の変更で、動員対象となっても、動員逃れを選択し、闇に紛れることで、戦争終結と待とうとする人が急増する可能性がある。
ゼレンスキー大統領の問題
こうした事態は、もはや負けが濃厚な戦争をつづけようとするウォロディミル・ゼレンスキー大統領への批判につながらなければならない。
はっきり言えば、これから動員されて兵士になって死んでゆく人々は犬死だ。一刻も早く戦争を終結させなければならない。たとえ、それがウクライナにとって「負け」を意味していても、もはや戦争を継続する大義名分などないからだ。
1月22日、トランプ大統領はFOXニュースの司会者ショーン・ハニティとの独占インタビューに応じた。翌日、FOXニュースは、「トランプ、ゼレンスキーは『天使ではない』と発言」という見出しを立てて報道した(下の写真)。それにはビデオがついていて、10分過ぎのところで、たしかにトランプは “He is no angel”とのべた。『Newsweek』は24日になって、「ドナルド・トランプ、ゼレンスキーを攻撃
『彼は天使ではない』」というタイトルの記事を報道した。そう、トランプ自身、もはやゼレンスキーが「善」ではないことをよく知っているのである。
(出所)https://www.foxnews.com/video/6367602293112?msockid=1c714e17947d622e3ab1438095ec639e
2月2日、ロイター通信は、トランプ大統領のウクライナ・ロシア担当特使であるキース・ケロッグが、ロシアとの戦争中に中断されたウクライナの大統領選挙と議会選挙を「実施する必要がある」とインタビューで語ったと報じた。さらに、別のインタビューでも、たしかにケロッグが、選挙を実施できることが「健全な民主主義の証」だと語っていることが確認できる(ビデオの3分過ぎの箇所を観てほしい)。
現在、有力となっているのは、「停戦-選挙-新政府による和平協定調印」という3段階のスキームだ。もはや、何が何でも戦争を継続しようとするゼレンスキーは「善人」ではなく「悪人」ですらある。
NATOがゼレンスキーを追い出す?
実に興味深いのは、ロシア連邦対外情報庁(SVR)が2月3日、「SVR報道局は、SVRが入手した情報によると、北大西洋条約機構(NATO)本部はウクライナの政権交代を検討する姿勢を強めていると報じた」ことである。
それによると、NATO本部はゼレンスキーの信用を失墜させる大規模な作戦を準備している。具体的には、ゼレンスキー大統領とそのチームのメンバーが、弾薬購入のための資金から個人的に15億ドル(約2300億円)以上を横領したことに関する情報を公開することが計画されているという。
さらに、ゼレンスキーとその側近が、ウクライナの軍人13万人分の手当を海外に流出させるという計画を明らかにする予定であるとも記されている。また、ウクライナに寄贈された大量の西側軍事装備を、アフリカ諸国のさまざまな団体に売却する事件が繰り返されるなかで、ウクライナの最高司令官が関与している事実を公表することも計画されているとしている。
もちろん、このSVRの報道がまったく根拠のない情報かもしれない。それでも、ウクライナ情勢をよく知る人々は、敗色濃厚にもかかわらず、戦争を停止しようとしないゼレンスキーに手を焼いているようにみえる。
どうだろうか。日本国民が知るウクライナ情勢とはまったく違う状況が展開されていることに気づいてほしい。フジテレビだけでなく、NHKも含めて、日本のテレビ局はウクライナ戦争の「現実」を伝えていないと断言できる。そして、それは国民を騙すことにつながっている。だからこそ、岡倉天心記念賞受賞作『帝国主義ロシアの野望』の「あとがき」の文頭に、つぎのように書いておいた。
「私はいま、『戦前』を生きているのかもしれないと感じている」
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