「明らかな憲法違反」なのに、日本で「米軍の危険な軍事訓練」が行われている「驚愕の理由」

現代の日本

「日米安保条約」と「日米合同委員会」とは何か?に関する記事です。

「明らかな憲法違反」なのに、日本で「米軍の危険な軍事訓練」が行われている「驚愕の理由」(矢部 宏治)
アメリカによる支配はなぜつづくのか?第二次大戦のあと、日本と同じくアメリカとの軍事同盟のもとで主権を失っていたドイツやイタリア、台湾、フィリピン、タイ、パキスタン、多くの中南米諸国、そしていま、ついに韓国までもがそのくびきから脱し、正常な主権国家への道を歩み始めているにもかかわらず、日本の「戦後」だけがいつまでも続く理由とは?

アメリカによる支配はなぜつづくのか?

第二次大戦のあと、日本と同じくアメリカとの軍事同盟のもとで主権を失っていたドイツやイタリア、台湾、フィリピン、タイ、パキスタン、多くの中南米諸国、そしていま、ついに韓国までもがそのくびきから脱し、正常な主権国家への道を歩み始めているにもかかわらず、日本の「戦後」だけがいつまでも続く理由とは?

シリーズ累計16万部を突破した『知ってはいけない』の著者が、「戦後日本の最後の謎」に挑む!

本記事では〈戦後の日米外交の「最大の闇」…日本はいつ、アメリカに「軍事特権」を与えてしまったのか?〉にひきつづき、日米安保条約についてくわしくみていく。

※本記事は2018年に刊行された矢部宏治『知ってはいけない2 日本の主権はこうして失われた』から抜粋・編集したものです。

世界一簡単な日米安保条約の解説

それでは私がここで、六〇年安保の担い手だった大先輩のみなさまに捧げるべく、「世界一簡単な日米安保条約の解説」をしてみることにいたします(原文→『知ってはいけない2』66ページ)。

まず1952年に占領が終わると同時に発効した旧安保条約。その条文はたった五条しかなく、しかも本当に意味のある条文は下の3つだけでした(以下、著者による要約)。

第1条 アメリカは米軍を日本およびその周辺に配備する権利を持つ。
第2条 日本はアメリカの事前の同意なしに、基地とその使用権、駐兵と演習の権利、陸軍、空軍と海軍の通過の権利を他国にあたえてはならない。
第3条 米軍を日本およびその周辺に配備する条件は、日米両政府のあいだの行政上の協定で決定する。

ひとつずつ、英語の条文を見ながら説明していきましょう。

まず第1条には、アメリカは、
「米軍を日本およびその周辺に配備(デイスポーズ)する権利を持つ」
と書かれています。

これこそが日米安保におけるもっとも重要な条項であり、占領期から現在までを貫く日米関係の本質なのだということを、私はこれまで自分の著書のなかで繰り返し述べてきました。

つまりアメリカは日本の国土のどこにでも基地を置いて、そこから自由に国境を越え て軍事行動ができるということです。それこそが、米軍を「日本およびその周辺(in and about Japan)に配備する権利」という言葉の意味なのです。

三つの特権

次が第2条です。

ここではいまご説明したアメリカの軍事特権、つまり第1条の「米軍を配備する権利」という言葉がいったいなにを意味しているのかが、「それを他国(第三国)にあたえてはならない」という逆説的な表現によって説明されています。それが次の3つです。

1「日本に基地を置き、それを独占的に使用する権利」
2「日本に兵士を置き、軍事演習を行う権利」
3「米軍の部隊(陸海空軍)が日本を通過(トランジツト)する権利〔=日本の国境を越える権利〕」

ちなみにこのような、
「基本原則〔第1条〕」→「その具体的な内容の列記〔第2条〕」
という条文の構成は、アメリカ側が法的文書をつくるときのお得意のパターンであり、このあと何度も登場しますのでよく覚えておいてください。

「米軍と日本の官僚の合意」

そして第3条。

「米軍を日本およびその周辺に配備する条件は、日米両政府のあいだの行政上の協定で決定する」(日本語の条文では「両政府間の行政協定で決定する」)

これも非常に重要な条文です。なぜならここでは、アメリカが第1条と第2条で確保した米軍の軍事特権については、今後、国会〔立法府〕をいっさい関与させず、すべて政府〔行政府〕と政府〔行政府〕による「行政上の協定(administrative agreements)(*1)」という形で、具体的に運用していくのだという基本方針が宣言されているからです。

明らかに日本の憲法に違反する米軍の危険な軍事訓練が、現在なぜ日本でなんの規制もなくどんどん行われているかといえば、両国の政府さえ合意すれば議会を通さずなんでもできてしまうという、この法的な構造が原因なのです。

しかも日本の場合は、そこにさらに重大な問題が隠されています。

この条文に書かれた「政府と政府の合意」というのは、日本の場合は他の国とは違って、「米軍と日本の官僚の合意」を意味することになるからです。

その舞台となっているのが、占領期の日米関係をそのまま引き継ぐ形で誕生した、問題の「日米合同委員会」なのです。

(*1)アメリカ政府の通常の用語では、“executive agreement”。行政府の長であるアメリカ大統領が、議会を通さず他国と結べる法的な取り決めのジャンルを意味しています

日米合同委員会という“最大の病根”

すでに多くの方がご存じのとおり、この「日米合同委員会」という米軍と日本の官僚 との非公開の協議機関こそが、「戦後日本」の“最大の病根”となっているのです。

世界には、米軍の駐留する国が数多くあります。そうした米軍の活動について、両国の政府が協議するための「合同委員会」も、それぞれの国に存在します。

けれども、日本以外の国の合同委員会のアメリカ側代表は、すべて外交官であるアメリカ大使館の公使が担当しています(その多くは大使館のNo.2である首席公使)。そして原則として、基地を提供する国の国内法が駐留米軍に適用され、それが適用されない特別なケースだけが、例外的な特権として地位協定に定められている。

ところが日本の日米合同委員会だけは、アメリカ側の代表や代表代理、各委員会のメンバーが、ほぼすべて在日米軍の軍人だというきわめて異常な状態にあるのです。

加えて日本の外務省は現在、世界でただ一ヵ国だけ、
「駐留外国軍(米軍)には原則として、受け入れ国(日本)の国内法は適用されない」
という理解不能な立場をとっているため(*2)(『知ってはいけない2』→198ページ)、日米合同委員会の密室で 米軍と日本の官僚が合意したことが、すべてそのままノーチェックで実行される。しかもその合意事項と議事録は非公開となっているため、そこで本当はなにが合意されたのかさえ、まったくわからない。(*3)

そのような、レトリックではない現実としての「占領体制」が、いまだに継続している状況にあるのです。

以上が旧安保条約の骨格であり、その後「改定」されてできたはずの新安保条約のなかに、ほぼそのまま受け継がれて現在までつづく、日米関係の本質だといえるのです。

さらに連載記事〈なぜ日本だけが「まともな主権国家」になれないのか…アメリカとの「3つの密約」に隠された戦後日本の「最後の謎」〉では、日本が「主権国家」になれない「戦後日本」という国の本当の姿について解説しています。

本記事の抜粋元『知ってはいけない2 日本の主権はこうして失われた』では、かつて占領下で結ばれた、きわめて不平等な旧安保条約を対等な関係に変えたはずの「安保改定」(1960年)が、なぜ日本の主権をさらに奪いとっていくことになったのか?「アメリカによる支配」はなぜつづくのか?原因となった岸首相がアメリカと結んだ3つの密約について詳しく解説しています。ぜひ、お手に取ってみてください。

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