大企業じゃ真似できない!中小零細だからこそピリリと辛い「小粒の山椒」を目指すべき理由

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私たちには「大企業は進んでいる」「大企業のやることは正しい」という思い込みがあるようです。中小零細企業は遅れているから大企業のようにできない、と考えてしまう。しかし、大企業にもできないことは山ほどあります。大企業は損益分岐点が高く、大量生産、大量販売が基本です。ですから、面白い商品は作れないし、売れない。つま

大企業じゃ真似できない!中小零細だからこそピリリと辛い「小粒の山椒」を目指すべき理由

私たちには「大企業は進んでいる」「大企業のやることは正しい」という思い込みがあるようです。中小零細企業は遅れているから大企業のようにできない、と考えてしまう。しかし、大企業にもできないことは山ほどあります。大企業は損益分岐点が高く、大量生産、大量販売が基本です。ですから、面白い商品は作れないし、売れない。つまらないのです。それに比べると、中小零細企業の方が柔軟だし、少量でも作れます。これは、進んでいるとか、遅れているという問題ではありません。そのあたりを考えてみました。(坂口昌章氏メルマガ『j-fashion journal』2024年11月4日号より)

大企業にはできない発想と商品を

1.大企業ビジネスの特徴

大企業には高学歴の優秀な人材が揃っている。従って、大企業の企業戦略に間違いはない。大企業をお手本にすれば、中小零細企業も間違いはないはずだ、そう思っている人は多いだろう。

しかし、大企業と同じ発想では大企業に負ける。中小零細企業には独自の戦略が欠かせないのだ。

まず、大企業と中小零細企業の違いについて考えよう。大企業と中小零細企業の採算分岐点は大きく異なる。大企業は間接部門が分厚い。多くの大企業のほとんどの社員は間接部門で働くホワイトカラーだ。多くは管理者で、生産管理、販売管理、物流管理、人事管理等を行っている。工場で商品を作ったり、店頭で販売する社員はごく少数だ。

一人の大企業の社員を雇用するためには、年俸の何倍もの売上が必要だ。大企業の社員の給料を確保するために、生産や販売現場のコストカットを行う。現場社員の給料が上がらないのは、大企業や管理部門に支配されているからである。

大企業は大規模なビジネスを目指す。選択と集中、効率化を目指す。大量生産、大量販売できないビジネスは基本的に行わない。どんなに顧客が望んでも、一定以上の売り上げが見込めなければ手を出さない。

2.グローバルビジネスの発想

アパレル製品でいえば、最も売れる素材、最も売れるカラー、最も売れるサイズ、最も売れる価格に集中する。そして、最も人気のある商品を購入することが正しいと消費者を洗脳する。

世界の人々は、国の違い、宗教の違い、文化の違いにとらわれず、世界共通の価値観を持つべきだ。国境なんて意味がない。世界は一つだ、と。これが、グローバルビジネスの発想だ。

グローバルビジネスは、世界を一つのサプライチェーンと考え、世界を一つの市場と考える。グローバルビジネスの担い手は、巨大資本と巨大企業だ。世界各国の自立した経済圏をグローバル経済圏に呑み込み、世界各国の自立した企業を淘汰する。それにより、世界の富をごく少数の支配者が独占する。

ファッションのグローバル化で生まれたのが、ファストファッションだった。世界共通トレンドの商品を、世界で最も安く生産できる国で生産し、世界中で販売する。こうしたグローバルビジネスは大企業にしかできない。これにより、欧米や日本のアパレル産業、繊維産業は大量に淘汰された。

3.中心から外れた要素

大企業は多数派のためのビジネスを行う。大量生産が可能で、効率が良いからだ。グローバル展開ができない企業でも、この基本は変わらない。

しかし、少数派の市場が存在しないわけではない。日本の婦人服ブランドは、サイズ展開が少ない。Sサイズ、Mサイズ、Lサイズの3サイズ展開が主流だ。この3サイズで9割近く供給しているのではないか。

実際には、3サイズ以外の顧客はどれほど存在するのか。正確な数字ではないが、少なくても3~4割程度はいるだろう。

主流の3サイズは供給過剰であり、それ以外のイレギュラーサイズは供給不足という状態が長年続いている。

これは、サイズばかりではない。カラー、素材、価格等、あらゆる要素でも同様だ。売れ筋は集中しており、中心から外れた要素を持つ製品は供給不足である。

この隙間を埋めるのが、デザイナーブランドであり、ファストファッションのデザイナーコラボだ。デザイナーブランドは高額であり、他ブランドとの差別化を特徴としている。デザイナーコラボは、期間限定、数量限定で市場ニーズに対応している。しかし、どちらもサイズの特徴はない。

4.少数派のためのブランド

例えば、サイズの切り口を考える。一般的に大型サイズは、オバサン風のデザインが多い。反対に、小型サイズは、子供っぽいデザインが多い。

大型サイズでは、若いデザイン、可愛いデザインが供給不足が続いている。

小型サイズでは、大人っぽいデザイン、セクシーなデザインが不足している。

どちらも供給者側が、「サイズさえ合えばいいだろう」という安易な姿勢が見え透いているのだ。

ここにニーズがある。

例えば、「特定の時代や地域では、大きな体の女性こそ美しい、という価値観があった。私は、体が大きいことは美しい、という価値観を広めたい」というコンセプトも考えられる。体の大きな人は、大きくて派手なプリントが似合う。アクセサリーも大振りなものが良い。

店のイメージは、南国風、リゾート風にして、販売員も大柄な人限定とする。

あるいは、「体の大きさと内面は関係ない。小型サイズは店頭にないので子供服のほうがサイズは合うが、デザインが子供っぽくて着られない。小型サイズでも成熟した大人のイメージを与えるような服を提供したい」というコンセプトも考えられる。できれば、実際にサイズ問題に悩む人が自分の体験を元に企画を組み立てるのが良いだろう。

カラーも、店頭に出てこないものがある。例えば、紫色である。古来より高貴な色の代表だが、少量しか売れず、必ず売れ残る色だ。好きな人は大好きだが、多くの人は敬遠する。

したがって、「紫好きの、紫好きによる、紫好きのための店」というコンセプトは成立する。

少数派のための店、ブランドこそ大企業と張り合えるのである。

■編集後記「締めの都々逸」

「一寸法師は 小さいけれど 鬼を倒して 姫娶(めと)る」

山椒は小粒でぴりりと辛い、と申しますが、あれは辛いからいいのですな。小粒で旨いとか、甘いと言っても物足りないものです。

企業も同じですな。小さい企業はひりりと辛い企業を目指しましょう。大味な大企業の中で、ひりりと辛い存在感。そして、山椒があるから、大企業も生きる。それが理想です。

ところが、大企業は自分が偉いと思っているので、山椒を無視します。そうすると、なんとも締まらない味ばかりが増える。間が抜けた味になりますな。(坂口昌章)

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