
いつまでも戦争止めないゼレンスキー…それは止めたら自分が追放されるから

ウクライナの大統領であるウォロディミル・ゼレンスキーなる人物を支援する欧米や日本の国民は、大きな誤解をしている。それは、彼が戦争をつづけようと躍起になっている好戦派であるという事実を知らないところに起因している。しかも、戦争をつづけたがっているゼレンスキーを、一部の欧州諸国の指導者が支援しようとしている。
ウクライナでも、欧州諸国でも、世論調査の結果は、過半数が戦争終結と和平を求めている。それにもかかわらず、そうしないというのがいまの現状なのだ。こんな状況に民主主義はあるのか。しかも、日本の伝統メディアはこうした奇妙な現状をまったく報道しない。
戦争終結を求める国民
ロシアの大規模侵攻がはじまって以来初めて、ウクライナ国民の52%が戦争終結に向けた交渉をできるだけ早く開始することに賛成していることが、米ギャラップ社の世論調査でわたった。
今年8月と10月に実施したウクライナに関する最新の調査では、ウクライナ人の平均52%が、自国が一刻も早く戦争終結に向けて交渉することを望んでいることがわかったというのである。
他方で、 ウクライナ人の10人に4人近く(38%)が、自国は勝利するまで戦い続けるべきだと考えている(図1を参照)。

https://news.gallup.com/poll/653495/half-ukrainians-quick-negotiated-end-war.aspx
脱走兵の増加
この厭戦(えんせん)気分は、脱走兵の増加によっても示されている。12月1日付のFT(フィナンシャルタイムズ)は、「ウクライナ検察当局は今年1月から10月にかけて、持ち場を放棄した罪で兵士らに対して6万件の事件を起訴した。これは2022年と2023年に起訴された件数の合計のほぼ2倍にあたる」と報じている。有罪判決が下されれば、最大12年の実刑判決を受けることになる。
他方で、ウクライナは徴兵にも苦労している。そこで、「ウクラインスカヤ・プラウダ」の報道によると、つぎのような恐ろしい事件が起きている。

7月10日午後、国境警備隊(SBGS)は地域採用センター(TCC)に、海外逃亡を図っているとされる市民を発見したと通報した。SBGSからの通報を受け、地元TCCの隊長と少佐が駆けつけた。彼らはすぐに、データを明確にするために被留置者をTCCに招き入れたが、召喚状は引き渡さなかった。その男は彼らの車に乗ることを拒否した。警官たちはこの行為を快く思わず、彼を地面に投げ倒し、バスに押し込んだ。
これは、まさに違法行為である。その証拠に、「地方裁判所は職権濫用の罪でTCCの職員2人にそれぞれ1万7000フリヴニャ(約410ドル)の罰金を科した」、と記事は伝えている。記事は、「2024年上半期に、市民から、TCCによる権利侵害について1190件の訴えが寄せられたとの報告」があり、「これは198件であった2023年の同時期の6倍である」と報じている。いまでは、この職権濫用は、「バス化」(TCC将校が街頭で男性を拘束し、軍隊に送り込むこと)と呼ばれるまでになっている。
ただし、「バス化」という用語は、「ロシア側がプロパガンダのために積極的に広めているものだ」という見方もある。それでも、ウクライナにおいて、動員がうまく進んでいないのは事実であり、そのために、米国は、ウクライナ政府に対して、緊急に法律を見直し、動員徴兵の年齢を25歳から18歳に引き下げるよう求めている。
今年春に採択された現行法により、動員徴兵年齢は27歳から25歳に引き下げられた。 兵役に適していると判断された18~25歳の男性は動員されないが、強制兵役には召集される。
ゼレンスキーの魂胆
こうした現状にもかかわらず、ゼレンスキーはウクライナ戦争の継続で躍起になっている。その方法は、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)への即時加盟によって戦闘終結をめざすものだ。それはNATO加盟国がウクライナ戦争に巻き込まれるリスクを伴うから、その実現可能性はない。つまり、戦争終結をもともと考えていないのだ。
なぜか。理由は簡単だ。自分の権力維持のためである。まず、ゼレンスキーの大統領任期が今年5月20日に切れていることを思い出す必要がある。国会議員の任期も同年7月に過ぎている。
ウクライナ憲法第83条では、「戒厳令または非常事態が発令されている間にウクライナ最高会議(議会)の任期が満了した場合、その権限は、戒厳令または非常事態が解除された後に選出されたウクライナ最高会議の最初の会合の初日まで延長される」と明確に規定されている。
だが、憲法には、戒厳令が発令されている間に大統領の権限が失効した場合の明確な規定がない。これが最大の問題であり、だからこそ、憲法裁判所に判断を仰ぐべきだとの意見が国内にもある。しかし、権力の喪失を恐れるゼレンスキーはずっと無視してきたのである。

第108条には、「ウクライナ大統領は、新たに選出されたウクライナ大統領が就任するまで、その権限を行使する」とあるだけだ。他方で、憲法第112条によると、大統領の権限が早期に終了した場合は、ウクライナ最高会議議長が国家元首の職務を代行する。
つまり、本当は国会議長が大統領代行に就くべきだとの憲法解釈が可能なのである。だからこそ、ゼレンスキーは憲法裁判所の判断を仰がないまま、大統領の座に居座っているのだ。
こんな不適切な状態が認められてきたのは、米政府の支持があればこそだが、トランプ新政権になれば、法的根拠があるとは言い難いゼレンスキーを大統領として扱うかどうかも再検討されるだろう。
国内に掲げられた反旗
だからこそ、ゼレンスキーは戦争を継続し、戒厳令を出しつづけることで、ともかくも「大統領職」にとどまろうとしている。しかし、「ストラナー・ウクライナ」の報道によると、「ウォロディミル・ゼレンスキーのチームに反対するサークルの活動が急激に増大している」。
その一例が2023年9月から公判前勾留されている「オリガルヒ」(寡頭資本家)のイーホル・コロモイスキー(下の写真)によるゼレンスキーへの非難である。彼は自分の所有するUNIAN通信社とのインタビューで、大統領府が軍を使ってウクルナフタとウクルタトナフタ(ともに石油会社)の支配権を強奪し、会社の株式を返還する能力を制限するために獄中に置かれたと主張した。

議会野党(ペトロ・ポロシェンコ元大統領とユーリア・ティモシェンコ元首相の政党)も活動を活発化させている。ティモシェンコはほぼ毎日、国内情勢について何らかのコメントを発表し、それがメディアやテレグラム・チャンネルで広く流布されている。ポロシェンコの仲間もゼレンスキーを激しく批判しつづけており、同時に、戦争を一刻も早く止める必要性を一貫して訴えつづけている。
そう、政治家の多くは選挙が近いことにうすうす気づいているのだ。だからこそ、ゼレンスキーは米政府による動員年齢引き下げに反対している(国民は喜ぶだろう)。
一方、10月25日、ウクライナ国民全員に1000フリヴニャ(約24ドル)を配布するプログラムの開始を発表した。彼は、このような「寛大さ」について、非常に困難になるかもしれない冬への備えのためと説明したが、戦時下においてカネをばら撒く(といっても「ウクライナのキャッシュバック」カードに振り込まれる)のは別の目的、すなわち選挙が近づいているためではないかとの憶測が生まれている。
ただし、12月3日付の「ストラナー・ウクライナ」の記事は、「ほとんどの世論調査では、現職大統領が大統領選に出馬すれば、ヴァレリー・ザルジニー元ウクライナ国軍トップに敗れるだろうとしている」と報じている。
さらに、「政界の非公式な議論では、(ポロシェンコを含む)野党勢力のかなり多くのリストが、選挙でザルジニーを支持する用意があると表明している」という。また、「世論調査によれば、大統領の政党は議会選挙でも敗北し、ザルジニーの仮想政党に敗れるだろう」とも予測している。
この事実を知るゼレンスキーは、すぐにはウクライナ戦争を終わらせたくないのだ。戦争終結は戒厳令解除、大統領選および議会選へとつながり、ゼレンスキーも彼の政党も一敗地に塗(まみ)れるからである。
欧州指導者は民主主義を冒涜?
戦争を止めようとしないゼレンスキーであっても、欧州の一部の国の指導者は支援を継続しようとしている。
『フォーリン・アフェアーズ』に12月3日に公表された、エリー・テネンバウム(フランス国際関係研究所の安全保障研究センター所)とレオ・リトラ(キーウのニュー・ヨーロッパ・センターの上級研究員)による共著論文では、ハンガリーやスロバキアなどは対ロ宥和を主張しているが、「ドイツ、ギリシャ、イタリア、スペインの現政権をはじめとする他の国々は、少なくとも米国主導の早期終戦合意には反対する姿勢をみせている」と書いている。
加えて、「ウクライナと欧州の安全保障の利益のために断固とした姿勢を取ることを望む国々」として、フランス、ポーランド、英国、バルト三国、北欧諸国を挙げている。
これらの国々は、「チェコ共和国、ルーマニア、さらにはベルギーやオランダさえも味方につける可能性がある」とものべている。「とくにフランスと英国は、2015年のイランとの核交渉でそうしたように、外交および軍事能力を活用し、原則に則った妥協のない欧州の立場を主張することができる」、と指摘している。
欧州外交評議会(ECFR)が今年5月行った、EU加盟14ヵ国とウクライナの回答者総計1万9566人を対象にした調査結果によると、「ウクライナ戦争についてどうすべきか」を問うと、「一刻も早く戦争を終わらせたい」と願う人々(「平和派」)と、「ウクライナがロシアを打ち負かしてほしい」と願う人々(「正義派」)、そして、「中間派」に分かれた。
図2に示されたように、具体的には、ブルガリア、ギリシャ、イタリアが「平和派」、エストニア、スウェーデン、英国、ポーランド、ポルトガルの5カ国が「正義派」、そしてチェコ、スイス、ドイツ、フランス、スペイン、オランダの6カ国が「中間派」ということになる。
この調査はウクライナ戦争の終結を公約とするドナルド・トランプの米大統領当選前のものであり、現段階では、「平和派」が増えているのは間違いない。
これだけ、各国の国民の見方が割れているにもかかわらず、欧州は全体としてウクライナ支援の継続、すなわち、戦争継続に傾いているようにみえる。それは、民主主義への冒涜(ぼうとく)とさえ映る。

ウクライナでの情報統制
当のゼレンスキーが民主主義を冒涜していることは事実である。それは、いまもテレビのニュース報道が一本化して報道されていることによく現れている。
ウクライナのジャーナリストたちは、ディスインフォメーション(騙す意図をもった不正確な情報)と闘うために、テレビマラソン「ユナイテッド・ニュース」という統一形式で放送することを決定したのだが、戦争勃発から2年半を経過してもまだ「大本営発表」しか放送しないことに大きな疑問符がついている。

米国際開発庁(USAID)からの資金援助を受けてInMind社が実施した、ウクライナのメディアに対する意識と信頼に関する最新の調査によると、回答者の45%が統一放送を終了し、各チャンネルを独自のプロジェクトに戻すことに賛成し、32%が反対した(11月12日付の「ストラナー・ウクライナ」の記事を参照)。
10月30日に公表された欧州委員会の「ウクライナ報告」でも、ウクライナの統一テレビマラソンをはじめて批判した。報告書には、「これは、ウクライナ国民の自由な意見交換を可能にするための最善のプラットフォームであるかどうか、再評価する必要がある。議会メディアチャンネルの主な目的は、議会活動に関する情報を共有することであり、野党議員の活動も含まれるべきである」と明記されている。
日本でも同じ:民主主義が冒涜されている!
残念ながら、日本でも状況は同じようなものだ。本稿で紹介した内容を日本の読者はご存じだっただろうか。ウクライナの現実からみると、本当は、ウクライナ戦争の終結、和平締結を阻(はば)んでいるのはゼレンスキーその人なのだ。
それにもかかわらず、いまでもゼレンスキーが「正義」であるかのように報道しつづけている日本のメディアは日本国民を騙していると言えるだろう。

国家指導者と主要メディアが結託して国民を騙すという構図は、ロシアや中国だけでなく、ウクライナでも欧米諸国でも、日本においても、存在する。
民主主義を標榜(ひょうぼう)する国々がいかに民主主義を冒涜しているかを知ってほしい。そして、騙されないだけでなく、騙す側に加担しないように気をつけていただきたいと願うばかりだ。
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