次の金融危機は日本発?「高市ショック」と「日本のウクライナ化」を警戒する海外勢=高島康司

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次の金融危機は日本発?「高市ショック」と「日本のウクライナ化」を警戒する海外勢=高島康司 | マネーボイス
いま海外のメディアでは「高市ショック」なる言葉が流通している。高市政権の拡大財政政策が、世界的な金融危機の引き金になるのではないかという懸念だ。(『』高島康司) 【関連】今ここが人工知能「人間超え」の出発点。米国覇権の失墜、金融危機、大量辞職…2025年には劇変した世界が待っている=高島康司 世界で高まる「高

次の金融危機は日本発?「高市ショック」と「日本のウクライナ化」を警戒する海外勢=高島康司

いま海外のメディアでは「高市ショック」なる言葉が流通している。高市政権の拡大財政政策が、世界的な金融危機の引き金になるのではないかという懸念だ。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)

【関連】今ここが人工知能「人間超え」の出発点。米国覇権の失墜、金融危機、大量辞職…2025年には劇変した世界が待っている=高島康司

※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2025年12月19日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

世界で高まる「高市ショック」の懸念

日本ではまったく報道されていないが、いま海外では「高市ショック」なる言葉が拡散している。

高市政権の発足後、円安と長期金利の上昇に歯止めが効かなくなっている。それというのも、財政出動と金融緩和のアベノミクスを継承する高市政権は、経済対策で約21兆3,000億、そして補正予算では約17兆7,000億円の予算を計上し、その財源の6割を国債の発行で賄うとしているからだ。

国債の発行で市場への通貨供給は増加する。このため円安が進んでいるのだ。さらに、すでに借金がGDPの260%に達する日本が国債を新たに大量発行することは、日本の財政懸念を深化させ、国際金融市場では日本国債の売りが加速している。その結果、長期金利が急速に上昇している。12月16日には1.94%に上昇した。これは実体経済を収縮させる効果が大きい。

金利上昇がもたらす影響

金利上昇は、経済活動に対して「ブレーキ」と「正常化」の2つの側面を持つものの、いまの時点ではマイナス効果のほうが大きい。

まず住宅ローン負担の増加だ。日本の住宅ローン利用者の約7割が変動金利を選択している。金利が上昇すれば、月々の返済額が増加する。可処分所得が圧迫され、特に高レバレッジの世帯では消費意欲が減退する恐れがある。

そして企業では、借入コストの増加が負担になる。企業の資金調達コストが上昇するのだ。これで損益分岐点が高くなるため、低収益体質のまま生き延びてきた企業の倒産が増加する可能性がある。もちろん、中長期的には労働力や資本が成長産業へ移動し、日本経済全体の生産性が向上する契機となる可能性はあるが、短期的にはマイナスの影響が大きい。

一方、長らく「死に金」となっていた預金に利息がつくようになる。特に金融資産を多く保有する高齢者層にとっては所得増となり、これが旅行や高額消費を刺激する可能性がある。家計全体では、借入超過の若年層から資産超過の高齢層への所得移転が進むとの観測もある。

このように、高市政権の拡大財政政策がもたらした高金利にはプラスの側面はあるものの、住宅ローン金利や企業ローンのコストを引き上げることで、実体経済にマイナスの影響を与える可能性のほうが高い。

円安によるインフレと実質賃金の低下

さらに、円安のマイナス効果も大きい。財政規模の拡大から通貨の発行量が増加するとの懸念から、円安が急ピッチで進んでいる。年内に1ドル=160円前後になるのではとも懸念されている。日銀の利上げで円は少し高くなったものの、思ったような効果は出ていない。円安状態は脱却できていない。

この結果、インフレは一層昂進し、賃金の伸びを上回ることになる可能性は高い。実質賃金はさらに低下する可能性が高い。

一方、サナエノミクスには指定された17の産業分野に投資をする成長戦略がある。これらの指定された17の産業分野で成長が加速すると、労働力の需要の増大から賃金の上昇率はインフレ率を越えて実質賃金は上昇する。また設備投資の増大から周辺産業を刺激し、景気は上昇する。さらに、設備投資の活発化で労働生産性が上昇し製品価格は下がるので、インフレ率も穏やかになる。

この結果、日本経済全体の国際的な信任は高まるので、国債は買われて金利は下がる。

だが、そうなる現実的な可能性は低い。高市政権はインフレと高金利を容認しつつも、成長によってその負の影響を吸収する戦略だが、現時点では円安とインフレ、そして金利上昇のペースは早く、これが実現する見込みはほとんどない。

海外が指摘する「高市ショック」と日銀の利上げ

これが、いわゆるサナエノミクスの実施で懸念されているマイナスの影響だが、海外のメディアが最近になってさかんに主張している「高市ショック」の危険性はこれだけではない。こうした危険性が指摘される中、日銀は利上げを実施し、政策金利を0.75%に引き上げた。これは、1997年以来の高さである。サナエノミクスとあいまって、これが下手をすると世界的な金融危機の引き金になるのではと懸念されている。これがどういうことなのか説明しよう。

<エンキャリトレードの巻き戻し>

周知のように、ヘッジファンドがほとんどゼロ金利に近い円でローンを借りて、金利の高い他の国々の証券や債権で運用するのがエンキャリトレードだ。これで円建てのローンが世界の金融商品に投資され、金融商品の相場を世界的に押し上げる要因になっていた。

しかし、今回日銀が政策金利を引き上げたことで、エンキャリトレードの巻き戻しが始まっている。ヘッジファンドなどは、円建てローンを返済するために、手持ちの資産の売りを加速させている。この結果、米国債や暗号通貨を始め、あらゆる資産の売りが加速している。巻き戻しは始まったばかりだが、この傾向が継続すると、米国債の売りも加速し、アメリカの長期金利は上昇する。これはドル高の要因となり、円安はさらに加速する。

<日本の機関投資家の本国回帰と悪循環>

しかし、影響はこれだけではない。過去30年間、国内の債券がゼロ金利に近かったため、日本の生保などは米国債や欧州のソブリン債などの外債を購入してきた。しかし、日本の40年物国債利回りは史上最高の3.7%以上に急上昇している。

この結果、大手生保(大地生命、日本生命、富国生命など)は、外国債券の保有を減らし、国内の超長期国債を積み増す計画を公言している。

これは金融市場に甚大な影響を及ぼす。米国債の需要が失われ、米国債利回りが上昇するのだ。すると、米国債利回りは上昇し、その結果、ドル高と円安を助長することになる。

一方、円安は日銀にさらなる引き締めを検討させることになるだろう。日銀の引き締めは日本国債の利回りをさらに押し上げる結果になる。

この繰り返しにより、悪循環は雪だるま式に加速する。世界の資本は、サーキットブレーカーなく着実に市場から流出していく。

G7の放棄からコア5へ、日本のウクライナ化

これが、いま世界のメディアが懸念している「高市ショック」の内容だ。要するに高市政権の国債発行による財政出動と日銀の利上げによって、円安、そして米国債を始めとした債権の売りが加速し、それがまたドル高と円安を促進させるという悪循環に入りつつあるというのが、「高市ショック」で懸念されている危険性なのだ。もちろんこの悪循環で日本のインフレか加速し、実質賃金はもっと下落する。停滞からさらなる停滞へと向かうプロセスの始まりだ。日本の危機はさらに深化することになる。

しかし、さらに問題なのは、この悪循環が起こっている地政学的な環境の変化である。この対応を誤ると、高市政権が引き起こす日本の危機はさらに深いものになる。

この地政学的な環境の変化とは、トランプ政権がG7を放棄し、新たにコア5というグループを作り、これにこれまでG7が果たしていた役割を担わすという構想が提起されていることだ。

トランプ政権は米外交の基本方針となる「国家安全保障戦略(NSS)」を発表したが、実はこれは発表用の短縮版であったことは明らかになった。いずれ発表になるだろが、その内容は、G7を廃止して、コア5という集合体を新たに創設し、それが世界の安全保障や経済の枠組みを作るというものだ。ちなみにコア5とは、アメリカ、中国、ロシア、インド、そして日本の5カ国である。欧州やカナダは排除されている。これが、G7に代わる役割を果たすことになる。

ちなみに「国家安全保障戦略(NSS)」では、アメリカはロシアを政治的・経済的なパートナーとして認め、欧州の安全保障は、アメリカがロシアと協力して欧州との関係を仲裁し、実現することになっている。このようにして決まった安全保障の枠組みは、ウクライナに受け入れを迫ることになる。ウクライナの発言権はほとんどない。

コア5のメンバーは、基本的にBRICS諸国である。アメリカはこれらの国々とパートナーとなることで、東アジアの政治的、経済的、そして軍事的な安全保障の枠組みを決めようとしている。

これを見ると、いまアメリカはロシアをパートナーとしながらウクライナ戦争の終結を図ると同じ枠組みが、東アジアにも適用される公算が強い。つまり、アメリカが中国をパートナーとして協力し、東アジアの安全保障上の枠組みで合意し、それを日本に受け入れるように迫るという構図だ。これはまさに日本のウクライナ化だ。

アメリカにはもはや依存できない

このような状況になると、日本はこれまでのように中国と対峙するための安全保障上の支えとして、アメリカに依存することは基本的にできなくなる。トランプのアメリカは、欧州ではロシアをパートナーとしたように、東アジアでは中国をパートナーとする公算が非常に高い。むしろ日本には、最大限の妥協が迫られることになるだろう。

このような状況に向かいつつあるにもかかわらず、周知のように、高市首相の不用意な存立危機事態の発言から、中国とは厳しい緊張状態にある。一方、上で解説したように、サナエノミクスと日銀の利上げから、海外のメディアが「高市ショック」と呼ぶような停滞と危機の悪循環に入りつつある。

はっきり言って、これは国力の低下である。こうした状況で、アメリカの安全保障には依存できなくなるのだ。日本が国益を守るためには、なんとしてでも中国と関係の改善を図り、アメリカと中国が日本の頭ごなしに安全保障の枠組みを作ってしまう前に、日本が独自の外交を展開できる余地をなんとしてでも作らなければならないだろう。

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