「原子」と「元素」は何が違うんだっけ…?大人も意外と知らない「決定的な違い」

ものの個性は「原子」で決まる
素粒子のことを考えると、もはや最も基本的な存在とは呼べそうもない原子ですが、それでも原子は重要です。というのも、ものが原子よりも細かくなると、ものとしての個性を失います。原子の種類によって、重さや他の原子とのくっつきやすさ、壊れやすさ、沸点・融点などといった性質が変わってきます。ものを燃やす酸素やかたい鉄といった性質を決めているのは、原子です。原子に現れる性質によって分子がつくられ、化学反応を起こすようになり、私たちの体や身の回りのものになっていきます。
ですから、原子がものの基本的な単位であるというのは間違いではありません。私たちになじみのある性質が現れるのが原子という単位からで、私たちの目に触れるすべてのものは118種類の原子の組み合わせなのです。

118種類の原子は、性質が似ているいくつかのグループに分けることができます。原子をグループ別にまとめたものが「周期表」です。
原子を重さが小さなものから順番に見ていくと、似たような性質のものが周期的に現れることから、そう呼ばれています。
電子のふるまいは、まるで「かごめかごめ」⁉
この周期を生み出すもとになっているのが、それぞれの原子をつくっている電子の配置です。原子の中では原子核を中心にして、いくつかの電子が何重にも取り囲んで回っています。子供の遊び「かごめかごめ」は一重の輪をつくるだけですが、原子の中では電子が何重もの輪をつくって、「かごめかごめ」をやっているようなものです。
一番外側の輪(最外殻)を回っている電子の数が、原子の化学的な性質に大きく関わっています。一番外側の輪を回っている電子を「価電子」と呼び、その数が同じ原子同士は似たような化学的性質をもつようになります。周期表では縦の列に似ているものが並ぶように配置されているので、縦のグループにどのような原子があるのかが重要です。周期表の縦の列を「族」と呼びます。
周期表の一番左の列に位置する水素やナトリウムなどが属する第1族は、価電子が1個しかなく、電子は他の原子に移りたがります(「図:原子の電子配置図」)。

逆に、右の方の列に位置するフッ素や塩素が属する第17族の原子は、電子があと1個入ってくれれば一番外側の輪を満員にできるので、なんとか満員にしようと、他の原子から電子を引っぱり込もうとします。
このように、ある原子では電子が他の原子に移りたがり、別の原子では電子を入れたがっています。このような原子たちが出会い、電子をやり取りすることで化学反応が起きます。だから、周期表を見るだけで、その原子がどのような化学的性質をもつかがわかるのです。
「原子」と「元素」は何が違う?
これまでずっと「原子」という言葉を使ってきましたが、周期表では「元素」という言葉を使います。実は、同じ水素や酸素の中にも兄弟のような原子がいる場合があります。
佐藤さんに兄弟がいたとすると、同じ佐藤さんでも、見た目や性格はちょっと違いますよね。兄弟の関係にある原子は、陽子と電子の数は同じですが、中性子の数が異なります。電子の数が同じなら化学的性質は同じですが、中性子の数が異なれば物理的性質が違ってくるので、違う原子です。原子といった場合、その兄弟は厳密に分けて考えるのですが、元素という場合には、同じ家族の一員とみなします。

ここでまた、おさらいをしましょう。原子をより細かくして、素粒子にまで分けてしまうと、もう原子の性質はまったく無関係になります。例えば、水素原子から取り出したものであろうが、酸素原子からのものであろうが、電子は電子。見た目も性質も変わらない素粒子になってしまいます。こうなってしまうと、私たちになじみのある性質はなくなり、日常生活での感覚からは遠くなります。
コメント