いまさら聞けない、「クォーク」とはいったい何なのか…「厄介な素粒子」と呼ばれる理由

科学論
いまさら聞けない、「クォーク」とはいったい何なのか…「厄介な素粒子」と呼ばれる理由(高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所)
誰も見たことがない「宇宙の起源」をどのように解明するか…最新研究にもとづく、スリリングな宇宙の謎解きをお届けする。

いまさら聞けない、「クォーク」とはいったい何なのか…「厄介な素粒子」と呼ばれる理由

陽子・中性子の質量はどこに?

前の記事で、原子の中の質量は原子核に集中していると紹介しましたが、これがわかったのはラザフォード博士の実験によってでした。原子の中に粒子ビームを撃ち込み、それがどう跳ね返ってくるかを見る実験でした。その結果、多くの粒子は素通りする一方で、ごく少数の粒子は大きく跳ね返されることがわかったのです。つまり、原子の中には何かもっと小さいものがあって、それが粒子を跳ね返しているに違いないのです。

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陽子・中性子の中に質量がどう分布しているのかについても、同じようにして調べることができます。陽子に粒子ビームを撃ち込んで、跳ね返ってくる様子を見るわけです。その結果は?中心に何かあるのか。あるいは全体に何かが分布しているのか。それとも……?

この実験の結果は驚くべきものでした。陽子の中には、やはり何か小さなものがあることがわかりました。ただし、その電荷は陽子の電荷の3分の1や3分の2といった変な値でした。しかも、この小さなものは、粒子ビームをぶつけるたびに、そのエネルギーが異なったのです。陽子全体の何分の1とかいうはっきりした値ではなく、ぶつけるたびに変わり、ぶつかった何かのもつエネルギーは連続的に分布していました。この妙な「何か」こそ、クォークと呼ばれるようになった素粒子です。

クォークは実在するか

陽子・中性子の中に分布していると思われるクォーク。さまざまな実験結果を組み合わせると、どうやら陽子・中性子はそれぞれ3つのクォークでできているらしいのです。ただし、質量を3分の1ずつ仲良く分け合うのではなく、個々のクォークがおよそ3分の1のエネルギーをもちました。でも正確に3分の1ではなく、測るたびにかなり違っているという不思議なことになっていました。

さらに不思議なのは、いくら探しても単独のクォークが見つからないことでした。クォークは陽子・中性子の中には存在しますが、そこから取り出すことができません。「クォークの閉じ込め」と呼ばれるこの性質のおかげで、クォークは実在する粒子なのかどうかさえ怪しいと思えてきます。

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誰も見たことのないクォークでしたが、その存在を仮定した理論と実験とはあらゆるところで一致しているので、その存在を疑う専門家は少ないです。ただし、閉じ込めという性質も含めて理解する必要があり、クォークはやはり厄介な素粒子には違いありません。

「質量の起源」は迷宮入り?

単独で取り出せないクォークの質量を、直接測定することはできません。陽子・中性子の中に粒子ビームを撃ち込む実験である程度調べることはできるはずですが、やるたびに変わるという問題がありました。これでは質量の起源の探求は迷宮入りではないのか……。

こういうときには、別の角度から考えてみるべきでしょう。まずは、素粒子標準理論の一部であるクォークの基礎理論から考えてみることにしましょう。

クォークに働く力は、4つの基本的な力のうちの1つで、「強い力」あるいは「強い相互作用」と呼ばれます。他の3つとは、重力、電磁気力、弱い力です。強い力は、文字通り力が強いので、電磁気力による反発をものともせず複数の陽子をつなぎとめて原子核をつくることができます。もともとは、陽子や中性子に働く力を強い力と呼んでいました。現在では、クォークに働く強い力が少しだけ陽子・中性子の外にまで漏れ出したものが、陽子・中性子の間に働いていると理解されています。

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クォークに働く強い力。その基礎理論は「量子色力学」と呼ばれています。クォークがもつ「色」という、ある種の電荷に働く力です。ここで登場する「色」は、私たちが見る色とは関係ありません。クォークがもつこの特別な電荷には3つの成分があって、その混ぜ合わせでできているので、光の三原色との連想でそう呼んでいるにすぎません。

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