米国は、2024年4月24日にウクライナ支援法、イスラエル支援法、台湾支援法、TikTok制裁法を可決しました。
このウクライナ支援法は、米大統領にロシアの資産を接収して売却し、ウクライナの再建を助ける用途に使える権限も付与しています。
同法のこの条項は、米国内のロシアの資産を凍結を越えて接収できるという内容であり、今後、他の国に対する制裁の先例になりうる、と言うことで、米国金融界からも、既存の国際金融秩序を損ないかねず、外国からの米国への投資を萎縮させる可能性があると懸念する声も出ています。
・・・戦争の当事者でもない国が一方の国の資産を凍結するだけではなく、没収出来る、そして支援する国に使うと言うことは、あまりにもむちゃくちゃだと思います。
同時に、ロシアは米国のこのような措置に対抗し、自国内にある米国などの西側諸国の資産も没収する相応の措置を取ることを明らかにしています・・・当然の対抗措置でしょうね。
そして、米国内にはロシアの対外資産は少なく、そのほとんどは欧州にあるようです。米国は欧州にこの措置を実行するよう要求しています。
ロシアの対抗措置も当然予測できたモノであり、実際、ロシアの米国・欧州にある対外資産より、ロシア国内にある米国・欧州の資産の方が多く、ロシアの方が得るものが多いようです。
このように、この法律の内容は、あまりにも稚拙なように思います。
結局、この法律可決の背景には以下の二つの状況があるように思います。
1,何故6カ月にわたり遅延していたこの法律が可決されたのか?(共和党、トランプ?が許したのか?)
・・・今年11月の大統領選に向けての措置か?
・米国内の厭戦気分が高まっており(米国内の大学での反戦運動が活発化している)、ここでさらに支援を増やすことで国内世論が反バイデンに大きく流れることを見越しての共和党戦略である。
2,このような法律で資金を得ないとウクライナ支援が出来ないのは何故か?
・・・米国の財政は危機的状況であり、もう既に予算支出は出来ない。
・米国財政も国際金融資本も資金が枯渇しており、外国の資産を略奪するしかない状況である。
★西側の最後の資産保有国は日本であり、最近の日米関係の動きも日本の資産略奪に躍起になっている米国の姿が浮かび上がってくるように思います。
米国、「ウクライナ兵器支援」法案可決…ロシア資産の接収・売却も可能に
ブラッドレー装甲車を含め、まずは10億ドル分を支援
ロシアの資産を売却してウクライナ再建に使用も可能に
ウクライナ支援法案が米議会で可決された23日、ワシントンの議会議事堂の前で1人の活動家が自転車にさしていた米国の星条旗とウクライナの国旗がはためいている/AFP・聯合ニュース
6カ月にわたり遅延していた米国のウクライナ支援法が、米議会で最終的に可決された。米国のウクライナに対する兵器支援がふたたび本格化する。
米上院は23日夜(現地時間)、下院から送付されたウクライナ支援法を賛成79、反対11で可決した。また、ウクライナ支援法とパッケージ法案の形で上程されたイスラエル支援法、台湾支援法、TikTok制裁法もあわせて可決した。
ジョー・バイデン大統領は直後に声明を出し、「この法律が私の机に来ると同時に署名し、私たちは今週にもウクライナに兵器と装備を送り始めることができるようになったと米国民に伝える」と明言した。バイデン大統領が24日に署名すれば、同法律は成立する。
米議会で通過したウクライナ支援法はまた、米大統領にロシアの資産を接収して売却し、ウクライナの再建を助ける用途に使える権限も付与した。同法律のこのような条項は、米国内のロシアの資産を凍結を越えて接収できるという内容であり、今後、他の国に対する制裁の先例になりうる。金融界は、米国のこのような措置は既存の国際金融秩序を損ないかねず、外国からの米国への投資を萎縮させる可能性があると懸念している。ロシアは米国のこのような措置に対抗し、自国内にある米国などの西側諸国の資産も没収する相応の措置を取ることを明らかにしてきた。
米国防総省は、大統領の署名でウクライナ支援法が成立すれば、数日以内にウクライナにブラッドレー装甲車をはじめとする軍用車両、スティンガー対空ミサイル、高速機動砲兵ロケットシステム用のロケット、155ミリ砲弾、TOW対戦車ミサイルなど、10億ドル規模の兵器を送るための準備を進めていると、ロイター通信が報じた。特に今回の支援には、これまで米国が支援に消極的だったブラッドレー装甲車が含まれている。
ロシア下院議長、西側資産の即時接収を要求 米法案可決に反発
[モスクワ 22日 ロイター] – ロシアのウォロジン下院議長は22日、米下院で凍結したロシア資産のウクライナへの移転を可能にする法案が可決されたことを受け、西側資産を差し押さえる根拠ができたと述べた。
ウォロジン氏は「米政府は欧州連合(EU)にも同様の措置をとるよう促すために法案を可決したが、これは欧州経済に壊滅的な影響を及ぼすだろう」と警告。
「ロシアは他国資産に関して釣り合いの取れた決断を下す理由がある」と語った。
同氏によると、国外で凍結されたロシア資産2800億ドルのうち、米国にあるのは50億─60億ドル程度で、2100億ユーロ(2240億ドル)はEU域内にある。
ロシアの報復措置は西側経済を直撃する=露上院議長
ロシア上院のワレンチナ・マトビエンコ議長は、スプートニクを傘下に加えるメディアグループ「ロシア・セボードニャ」のドミトリー・キセリョフ代表からのインタビューで、西側諸国が凍結露資産を没収すればロシアより失うものが大きいと警告した。
マトビエンコ議長の発言要旨
上院はウクライナ支援のための露資産没収に対する、報復措置法案を即時に審議する準備ができている。それは欧州にとって痛い打撃となるだろう。
ウクライナを「テロ国家」に認定することはできない。国際法にはそんな定義はないし、国家は権力だけでなく一人ひとりの国民だからだ。一方でキエフ政権とはいうと、これは紛れもなくテロ政権だ。
ウクライナが米国から借りている債務は、ウクライナ人の血で支払われている。
米ミサイル「エイタクムス」は特別軍事作戦の状況に根本的な影響を与えるものにはならない。
露イズベスチヤ紙の戦場ジャーナリスト、セミョン・エレミン氏の殺害はテロ行為であり、これを組織した者は報いを受けることになる。
ウクライナでロシアに敗北したアメリカ/NATOは核兵器を持ち出してきた
ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領は4月22日、ポーランドの日刊紙に対し、アメリカの核兵器をポーランドへ持ち込む問題について話し合ってきたと認め、受け入れる用意はできていると語ったが、ドナルド・トゥスク首相はこの件についてドゥダと早急に話し合う必要があると述べている。それに対し、ロシア政府はポーランドへアメリカ軍の核兵器が配備された場合、必要な措置を講じると述べた。
アメリカ/NATOの内部には、自分たちの代理人としてロシアと戦ってきたウクライナが敗北したことに危機感を抱き、パニックになっている人たちがいる。フランスのエマニュエル・マクロン大統領はNATOの地上軍をウクライナへ派遣すると口にし、フランス軍部隊約1000名がオデッサへ入ったと伝えられている。さらに同程度の部隊が送り込まれる予定だともいう。
2014年2月にクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権が倒された直後から西側の傭兵がウクライナへ入ったと言われているが、フランスからも「傭兵」という形で戦闘員が派遣されている。
ロシア軍は今年1月16日にウクライナのハリコフを攻撃し、軍事施設のほか旧ハリコフ・パレス・ホテルを破壊した。この旧ホテルは西側の情報機関や軍関係者に使われていて、爆撃された際、200人近くの外国人傭兵が滞在していたと言われている。その攻撃で死傷した戦闘員の大半はフランス人傭兵で、そのうち約60名が死亡、20人以上が医療施設に搬送されたと伝えられている。
ドイツ軍もロシアとの戦争に積極的で、3月1日に公開された音声によると、ドイツ空軍のインゴ・ゲルハルツ総監、作戦担当参謀次長のフランク・グレーフェ准将、そして連邦軍宇宙本部のフェンスケとフロシュテッテ幹部が2月19日にリモート会議で「タウルスKEPD 350」ミサイルによるクリミア橋(ケルチ橋)攻撃について話し合っている。ゲルハルツらは昨年10月の時点で計画の内容を太平洋空軍司令官だったケネス・ウイルスバックに伝えているという。
4月23日には「ステッドファスト・ディフェンダー 24」の一環として「グランド・クアドリガ2024」がリトアニアで始まった。その軍事演習へドイツ軍は3000人以上を派遣している。
しかし、アメリカ/NATOはウクライナでの敗北が決定的。4月23日にロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は2022年以来、ウクライナ軍は約50万人の兵士を失ったと述べているが、これは常識的な見方。兵士や兵器の補充がままならない状況になっている。そこでテロ攻撃を始めたが、限界がある。残された手段は核戦争だ。
アメリカ政府は停戦を実現するため、核兵器を脅しに使ったことがある。ハリー・トルーマン政権が中国で成立した共産党政権を倒すために始めた朝鮮戦争が思惑通りに進まず、1953年1月に新大統領となったドワイト・アイゼンハワーは早期停戦を目指した。そこで、新大統領は中国に対して休戦に応じなければ核兵器を使うと脅したとされている。休戦は同年7月に実現した。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017)
アイゼンハワー政権で副大統領だったリチャード・ニクソンはベトナム戦争から抜け出すため、カンボジアに対する秘密爆撃を実行しながらアイゼンハワーの手法、つまり核兵器で恫喝した。(前掲書)
しかし、ロシア相手にこの手段は通じないだろう。
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