
アメリカを戦争に駆り立てるのは誰か?迫る第三次世界大戦…背後に「ネオコン」の暗躍も=高島康司

まさにいま、欧米は第三次世界大戦とも呼べるような大戦争に向かって、夢遊病者のように突き進んでいる状況だ。なぜか日本ではまったく報道されない、この状況を詳しく伝える。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)
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※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2024年12月6日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
夢遊病者のように大戦争に突き進む世界
いま欧米は、それこそ夢遊病者のように大戦争に突き進んでいるかのような状況だ。いま世界のあらゆる地域でたがが外れてしまったのように、不安定になっている。
シリアでは、隣国レバノンの停戦合意の直後からイスラム原理主義の武装テロ組織が攻勢を強めている。先月30日までに北部の主要都市アレッポの大部分を制圧し、さらに中部の要衝ハマの周辺に迫っていて、これに対し、シリア軍は2日、支援にあたるロシア軍とともにアレッポやハマの周辺で武装テロ組織への空爆を行った。シリアは長い内戦の時期を乗り越え、いくつかの局所的な地域を除き、アサド政権がシリア全土を掌握している。北部のクルド人勢力は、2019年にアサド政権と提携した。ロシアの後ろ盾でシリア全土が安定に向かう中、今回のイスラム原理主義勢力による攻撃は大きな驚きであった。
しかし、今回の攻撃には、ウクライナ、そしてそれを支援する欧米が関与していた。ウクライナの主要紙、「キエフ・ポスト」はシリア北部アレッポ県を攻撃したイスラム武装組織の一部は、「ウクライナ軍情報局(HUR)」の特殊部隊から訓練を受けていたと報じた。ウクライナ側は、ロシアとの進行中の紛争中に開発された戦術、ドローンの使用などについてテロリストを教育することに重点を置いていると報じた。
この攻撃の動機の一つにはイスラエルが絡んでいる。いまレバノンの「ヒズボラ」はイスラエルと停戦中だが、「ヒズボラ」はシリア経由で武器を輸送している。この補給路を遮断することだったようだ。この攻撃は、イスラエルのレバノン侵攻が始まったときから話し合われ、計画されてきた。いまシリアには、「ヒズボラ」を再武装を支える武器の補給路と製造施設がある。
また、イランからイラク、シリアを経由してレバノンに物資を運ぶ輸送ルートもある。ヒズボラの再武装を恐れたイスラエルが、ウクライナの特殊部隊が訓練したイスラム原理主義勢力を使ってシリアを攻撃したようだ。これには、シリアのクルド人勢力と敵対しているトルコも協力している。もちろんこの動きは、バイデン政権の承認のもと行われた可能性が高い。
またジョージアでは、EUとの加盟交渉の中断を発表した政府に抗議する野党支持者と警察との衝突が続いている。親ロシアのコバヒゼ首相は、野党側とは一切交渉しないとの姿勢を崩しておらず、事態が収束する見通しは立っていない。EU加盟を目指す野党側やズラビシビリ大統領は、ロシアに融和的な与党が過半数の議席を獲得した10月の議会選挙で不正があったと主張し、選挙のやり直しを求めている。
1982年からアメリカは、CIAではなく、「全米民主化基金(NED)」のような政府系NGOを使ってアメリカにとって都合の悪い国の政府を民主化要求運動を画策することによって打倒してきた。今回も、親ロシアのコバヒゼ政権を打倒するために、バイデン政権が画策した可能性は十分にある。
さらに、すぐに不発に終わったものの、韓国でも大きな変化があった。ユン大統領が非常戒厳令を宣言したのである。最終的には韓国国会の全会一致で戒厳令の解除要求が可決され、その後、ユン大統領は閣議で実際に解除した。この動きにアメリカがかかわっていたのかどうかはまだ分からないが、世界が不安定になっていることを強く印象づけることになった。
危険度が増す欧米とロシアの対立
このように、世界的ではいま不安定感が増しているわけだが、そのような状況でもやはりもっとも危険な事態に陥る危険性がもっとも高いのは、ロシアと欧米との関係である。
前回の記事では、バイデン政権が使用を許可した長距離ミサイル、「ATCMS」をウクライナが使ってロシア国内を攻撃したことを伝えた。11月21日、ロシアはこれの報復として、衝撃波で標的を破壊する新兵器、「アヴァンガード」を搭載した極超音速ミサイル、「オレシュニク」をウクライナ東部の軍事工場に向けて発射した。これは核兵器なみの破壊力を持つ新兵器だった。
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この報復が実施された後、プーチン大統領はカザフスタン訪問を総括する形で声明を出し、ウクライナと欧米を脅した。それは次のようなポイントだった。
・西側の兵器がロシア領土を攻撃するリスクはある。だがこれに対し、ロシアは報復する。
・「オレシュニク」の威力は小惑星に匹敵する。
・ウクライナの意思決定センターの攻撃に、ロシアが「オレシュニク」を用いることはありうる。
・ウクライナ問題で設定されたのは、交渉のための条件ではなく、和平のための条件である。ロシアは以前の条件で交渉する用意がある。
さらに、トランプについては次のように言い、暗殺の可能性があることを示唆した。
・トランプは頭のいい、経験豊かな政治家だ。
・トランプを狙った暗殺未遂は数回起きており、未だに完全に安全とは言えない。
そして、次のように語った。トランプの暗殺を示唆する不気味な発言である。
「私の意見では、彼はいま、安全ではない。残念ながら米国の歴史において様々な事件が起きている。トランプ氏が賢明であり、用心深く、このことを理解していることを願っている」
ロシアの警告を無視する米国とNATO
「オレシュニク」に搭載された「アヴァンガード」は放射線を発しない核兵器なみの破壊力を持つ新兵器だとも言われている。「オレシュニク」の発射でロシアは、ウクライナと欧米に、長距離ミサイルでロシア国内を攻撃しないように強い警告を発したのだ。もし今後も攻撃が続くようであれば、「ウクライナの意思決定センター」、つまりウクライナ政府そのものが攻撃対象になり得るとしたのだ。
これは、プーチンの最大限の警告である。
しかし、ウクライナをはじめ、アメリカを中心としたNATO諸国は「オレシュニク」と「アヴァンガード」の脅威を完全に無視し、「ATACMS」によるロシア領土の攻撃を平然と継続している。11月24日、戦術航空機が配備されているロシア西部クルスク州の「クルスク・ボストーチヌイ飛行場」が2発の「ATACMS」の攻撃を受け、クラスター弾頭の一部である子爆発体2発が飛行場で爆発した。
これは明らかに、アメリカとNATOはロシア領内の長距離ミサイル攻撃を続けるという意思表示であることは間違いない。
もちろんこうした攻撃は、ロシアの報復を招く。そのときは、衝撃波兵器の「オレシュニク」と「アヴァンガード」が使われることだろう。そして、ロシア国営メディアの報道では、「ATACMS」を運用するNATO軍の指令センターがポーランド国内にあることから、ポーランド国内の基地が攻撃目標になることもあるとしている。
ポーランドはNATO加盟国なので、もしこの攻撃が実施されると、NATOは集団安全保障条約なので、ロシアとNATO諸国は戦争状態になる。第三次世界大戦と呼べる規模になるかどうかは分からないは、大戦争に発展することだけは確かだ。
トランプ政権の頓挫を狙うバイデンと「ネオコン」
さて、いまこのような非常に危険な状況だが、やはりこうした一連の出来事のきっかけは、バイデン政権がウクライナに長距離ミサイルでロシア国内の攻撃を許可したことである。
前回の記事にも書いたように、バイデン政権は大戦争の引き金を引くことで次期トランプ政権を巻き込み、トランプ政権が本来意図している連邦政府の縮小などの内政改革の実行を阻止しようとしているように見える。
これを行っているのは、バイデン政権の背後におり、次期トランプ政権から排除されることが決まったブリンケン国務長官やサリバン補佐官などを含む「ネオコン」の勢力だろう。
彼らは、あらゆる地域で戦争を拡大して世界を不安定にして、トランプ政権を混乱に巻き込み、トランプの革命的な内政改革を頓挫させる構えなのだろう。
無能な欧米の指導層と危機の拡大
一方、このような危機の拡大に対して、ヨーロッパの主要国の指導層は、危険なバイデン政権に追随するばかりで何もできない状態にある。
最近「西洋の敗北」を書きベストセラーになっている歴史学者のエマニュエル・トッドは大戦争に至る可能性を持つ現在の危機の基本的な原因は欧米、特にヨーロッパの指導層の無能さにあるとしている。以下にトッドの批判をまとめた。
・欧米の指導層は、ロシアは経済制裁ですぐに弱体化すると思った。これは完全に間違っていた。欧米の指導層はロシアの現実を認識することができなかった。
・これは、欧米の指導層が決定的に無能であることの証左である。これは、ウクライナ戦争だけではなく、すべての分野でそうだ。彼らはあまりに無能で統治能力がない。
・欧米では格差のあまりの拡大によって、もはや国民という概念が存在しなくなった。異なった価値観と世界観を信じる個人と小集団に分化した。エリートもそうした小集団として、彼らの世界観と価値観を妄信している。現実認識ができない決定的な無能さを示すようになった。また、おそろしく傲慢だ。プーチンや習近平との能力差があまりに巨大だ。
このように欧米の指導層、特にヨーロッパのそれは自分のイデオロギーと価値観で構築した世界に引きこもり、そのフィルターを通してしか現実を見ることができなくなっている。その非現実的な認識が、現在の危機の正しい認識を阻み、状況を悪化させているということだ。
「ネオコン」はトランプ政権にも入っている?
しかしもし、トランプが大統領に就任する来年の1月20日まで、バイデン政権が仕掛けた危機の発生を回避っできれば、ウクライナ戦争やガザ戦争の停戦と和平の実現を約束しているトランプ政権が成立し、最悪の事態は回避できる。これに期待する声は非常に強い。「ネオコン」を排除し「キリスト教ナショナリスト」が中心であるトランプ政権であれば、戦争は回避できるとの期待だ。
だが、本当にそうなるかどうかは、注意して見なければならない。すでにトランプが指名した閣僚に「ネオコン」の系列の人々が紛れ込んでいるからだ。それらの人物は、次のような発言をしている。
・セバスチャン・ゴルカ(大統領補佐官兼テロ対策担当上級ディレクター)
「プーチンは元KGB中佐だ。彼のイデオロギーは民主主義ではなく共産主義だ。大統領就任後のプーチンの行動を見ると、それはモスクワが運営する帝国秩序を復活させようとする試みであり、過ぎ去った時代への郷愁を追っている」
・マイケル・ウォルツ(国家安全保障担当補佐官)
バイデン大統領の国家安全保障担当大統領補佐官ジェイク・サリバンと会談し、政権移行期間中、両政権は国家安全保障問題に協力して取り組んでいることを証し、次のように述べた。
「ジェイク・サリバンと私は話し合い、会った。いまがチャンスだ、政権同士を対立させられると考えている敵対者たちがいるが、それは間違いだ」
このように、セバスチャン・ゴルカはプーチンをロシア帝国の復活を夢見る独裁者だと主張する。これは、バイデン政権の「ネオコン」の主張と一緒だ。ウクライナ戦争はアメリカが主導したNATOの東方拡大の結果、ロシアが安全保障上の脅威を感じたことが原因で始まったが、「ネオコン」系のブリンケン国務長官やサリバン補佐官はそのような見方を否定する。
反対に、ウクライナ戦争は、ロシア帝国の復活を目標にする独裁者、プーチンの野望が原因だと主張する。ロシアとの和平交渉による戦争の終結は、この野望を欧米が認めることになってしまうので、断固拒否しなければならない。ウクライナ戦争は、ロシアの完全な敗北で終わるしかない。これはまさに、セバスチャン・ゴルカの立場と一緒だ。
そしてマイケル・ウォルツは、このようにウクライナ戦争を見ているバイデン政権のサリバン補佐官と認識、および政策を共有しているというのだ。ウォルツもまさに「ネオコン」的なイデオロギーを信じる人物だと言ってもよいだろう。
誰が背後で動かしているのか?
もちろん次期トランプ政権の高官の多くは、「キリスト教ナショナリスト」のイデオロギーに親和的な人物が多いのは事実である。しかしそのような流れに逆らって、「ネオコン」系の人物たちが入ってきているのも事実だ。この結果、戦争を終結させるというトランプの公約の実行が阻止される可能性もある。
しかしそれにしても、具体的には誰がアメリカを大戦争が避けられない方向に誘導しているのだろうか?いま、トランプにもっとも近い位置にいる元「FOXニュース」の看板キャスターのタッカー・カールソンはインタビューで次のように語っている。
「Q:あなたはトランプにもっとも近い人物だが、バイデン政権は大戦争をしかけるつもりだ。誰が仕掛けているのか?
A:実は私にもよくわからないのだ。ワシントンの戦争屋はあらゆる手を使ってトランプをつぶそうとしてきた。2回の弾劾裁判、膨大な数の訴訟、そして二度の暗殺未遂だ。
そのどれも失敗した。そこで彼らは大戦争を引き起こし、トランプ政権を巻き込み、彼らの改革を阻止しようとしている。
アメリカは帝国崩壊の末期的な状況にある。そのようなとき、これまで管理されていた支配勢力の闇が一斉に放たれたのだ。私はそのように見ている」
このように、誰が戦争への道を仕掛けているのか、内部にいる人間でも分からないというのだ。
戦争回避のための動き
バイデン政権の「ネオコン」勢力が大戦争の引き金を確実に引くという危機感は非常に強い。そのため、バイデン政権の外交政策を強く批判し、トランプと比較的に近い関係にある人々が、いま一斉に動き出している。
タッカー・カールソンはいまロシアにいる。カールソンはプーチンとの2時間のロングインタビューを行い、プーチンの思想と考えをアメリカに伝えた。カールソンは戦争を回避するためにロシアに行き、今度はラブロフ外相にロングインタビューし、ロシアの考えをアメリカ人に伝えるという。カールソンは次のように言う。
「2月にウラジーミル・プーチンにインタビューした後、現在いるモスクワを離れてから数ヶ月、私たちはバイデン政権が世界最大の核戦力を保有するロシアとの核紛争に米国を追い込んでいく様子を米国から見てきた。世界最大の核戦争保有国であるロシアとの核紛争に近づきつつある。
トランプは次期大統領になった。その数週間後、バイデン政権は、ウクライナは米軍の操作するミサイルをロシア本土に発射し、少なくとも10人のロシア人兵士を殺害した。ほとんどのアメリカ人が知らないうちに、私たちはロシアとの戦争に巻き込まれている。その戦争のせいで、米軍がいまロシアでロシア人を殺害しているせいで、私たちは歴史上最も核戦争に近づき、キューバ・ミサイル危機の時よりもはるかに近づいている。
ワシントンの舞台裏で、この紛争が核によるホロコーストにならないように努力している人物がいるはずだと思ったが、実際には誰もいないことがわかった。
ブリンケン国務長官が米ロ両政府の連絡を遮断したのである。一方、ほとんどのアメリカ人は、「NBCNews」や「New YorkTimes」が提供する以外の視点を知る機会がない。
私たちの税金で賄われているキエフのアメリカ大使館は、ゼレンスキーの政府に対し、「カールソンとのインタビューには応じるな」と伝えてきた。そこで昨日、私達はモスクワに戻り、世界で最も長く外相を務めているロシアのセルゲイ・ラブロフ外相にインタビューした。
ロシアを東側や中国から引き離し、西側に戻す方法はあるのだろうか?その同盟関係は永久に続くのだろうか?この戦争は世界経済、米国経済、世界経済を破滅させ、地球上のすべての人々の生命を危険にさらす」
タッカー・カールソンは強い危機感のもと、一人で行動することにしたのだ。
このような動きは拡大している。元国連の主任核査察官のスコット・リッターは、パウエル元国務長官の補佐官だったラリー・ウィルカーソン元大佐などと協力して、戦争回避のためにバイデン政権に圧力をかける運動をスタートした。
こうした動きに見られるように、いま大変な危機感を持つトランプの周囲にいる人々が増えている。1月20日まで危険な時期は続く。どうなるだろうか?
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