トランプ圧勝がもたらす分断と変革…本当に内戦は起こるのか?2030年まで混乱が続く可能性

現代の米国
トランプ圧勝がもたらす分断と変革…本当に内戦は起こるのか?2030年まで混乱が続く可能性=高島康司 | マネーボイス
米大統領選は共和党のドナルド・トランプ氏が圧勝し、政権と議会の過半数を制する「トリプルレッド」の実現が視野に入った。国内ではトランプ支持者と反対派の間に不安が高まり、一部には内戦への懸念さえ広がっている。米国社会は、この新たな政権下で大きな変革と混乱に向かうのか。その背景と可能性を探る。(『』高島康司) 【関

トランプ圧勝がもたらす分断と変革…本当に内戦は起こるのか?2030年まで混乱が続く可能性=高島康司

米大統領選は共和党のドナルド・トランプ氏が圧勝し、政権と議会の過半数を制する「トリプルレッド」の実現が視野に入った。国内ではトランプ支持者と反対派の間に不安が高まり、一部には内戦への懸念さえ広がっている。米国社会は、この新たな政権下で大きな変革と混乱に向かうのか。その背景と可能性を探る。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)

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※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2024年11月8日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

大統領選挙後、内戦になる可能性はあるのか?

おおかたの予想に反して、トランプがあっさりと圧勝してしまった。11月6日の夜の段階で、トランプ295、ハリス226の選挙人の獲得数だ。総得票数でもトランプが50.8%、ハリスが47.5%とトランプが上回っている。2016年の選挙では、トランプは選挙人の獲得数では勝利したものの、総得票数ではクリントンが300万票上回っていた。選挙人の数でも総得票数でも今回はトランプがハリスを圧倒した状況だ。

そして、民主党のハリス陣営は敗北を早々に認め、トランプの勝利を祝福した。バイデンはトランプをホワイトハウスに招待し、トランプもアメリカを統合するために努力することを約束した。さらに、上下両院でも共和党が過半数を制する勢いだ。ホワイトハウスと合わせて、共和党が議会も独占するトリプルレッドになる可能性が高い。

また、トランプの勝利に伴い、アレックス・ボールドウィンやウーピー・ゴールドバーグなど42人の著名人がアメリカを出国するとしている。

このようにトランプの圧勝が確定しただけに、前回の記事で紹介した、民主党が「合衆国憲法第4条4項」を適用して、政権の委譲を拒否するという手はもはやないことになる。

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もし、本当にぎりぎりの接戦でトランプが勝利していたら、こうした方法の適用もあったかもしれないが、トランプが圧勝し、ハリスが敗北宣言したこの状況では、これはあり得ない。その点、混乱は避けられた状況だ。

トランプの圧勝は予測されていた

ところで、日本や欧米の主要メディアでは、トランプとハリスは接戦になると散々喧伝されていたが、実はかなり以前からトランプの圧勝の可能性は予想されていた。

データ分析サイトの「リアルクリアポリティックス」のシミュレーションでは、トランプ287対ハリス251とトランプの圧勝が予測されている。また、選挙専用のオンライン賭けサイト、「Poly Market」の賭けのオッズではトランプが62.9%、トランプは37.1%とトランプが圧倒的に優勢だ。

さらに、世論調査の著名な専門家によると、トランプが主要7州で勝利し、地滑り的勝利を収める可能性は21.4%で、カマラ・ハリスは12.6%だった。トランプの地滑り的勝利となる可能性は、ハリスよりもかなり高いとされていた。

このように、トランプの地滑り的勝利は予測されていた。

大接戦になるというイメージは、やはり民主党寄りのリベラルな主要メディアが喧伝したものであった可能性が高い。

反対陣営の勝利を受け入れない人々

しかし、トランプがスムーズに大統領に就任し、国内の混乱が回避されたのかと言えば、かならずしもそうではない。なぜなら、反対陣営が勝った場合、それを絶対に受け入れないとする人々も多いことも事実だからだ。

選挙後に大きな混乱があるとすれば、それはそのような人々が主導する可能性もが高い。「シカゴ大学」の世論調査機関が行った結果では、両党とも自党の候補者が大統領選に勝利すると予想している人々は、共和党で87%、民主党では90%もいる。

そして、共和党の38%、民主党の28%の少数派は、選挙が接戦になることすら予想しておらず、自分の陣営が圧勝すると信じている。もし結果が予想と違えば、彼らは激しい抗議運動を展開する可能性はある。

共和党員の80%が、「民主党は無許可の移民を入国させ、彼らに投票権を与えることで選挙に勝とうとしている」という、トランプとその同盟者の主張を支持している。特に共和党員の間では、有権者や選挙における不正の蔓延について、共和党員は強く信じている。

また、ハリスとトランプの両陣営で、自分たちが圧勝すると信じる専門家も実は多い。ノースウェスタン大学のデータサイエンティスト、トーマス・ミラーは、独自の予測モデルを使い、ハリス圧勝の可能性もあるとしている。

一方、これはトランプ陣営も同じだ。世論調査の第一人者、ネイト・シルバーによると、ドナルド・トランプが主要7州で勝利し、地滑り的勝利を収める可能性は十分にあるとしている。世論調査の第一人者、ネイト・シルバーによると、ドナルド・トランプが主要7州で勝利し、地滑り的勝利を収める可能性はあるとしていた。実際にそうなったのだが。

激しい暴力の応酬を予想させる数値

さてこのように、トランプにしろハリスにしろ、両陣営には、自分たちの候補は圧勝すると信じて疑わない人々が一定数いる。彼らは自分の陣営が負けた場合、これを認めず、選挙結果を覆す行動に出る可能性がある。

「シカゴ大学」の「CPOST」という研究所は、「政治的暴力の支持を理解する、アメリカにおける暴力」という調査レポートを出した。これは今年の9月12日から14日にかけて行われた世論調査の結果に基づき、自分が支持する候補が敗北した場合、暴力的に選挙結果を覆すための行動をどのくらいのアメリカ国民が支持しているのか調査したレポートだ。

このレポートによると、米国民の6%がトランプが敗北すると暴力による選挙結果の変更を支持するとし、また反対に、8%の国民がトランプが勝利して大統領に就任するようであれば、暴力で阻止するのを支持するとしている。

6%の国民は1,500万人である。また、8%の国民は1,800万人だ。3,300万人が、政治的暴力を容認しているのだ。

アメリカには、3億丁の銃があり、米軍で訓練された軍務経験者が300万人いる。自分の推す候補が敗北したり、トランプが就任することにでもなれば、暴力的な抵抗が拡大する可能性も十分にある。

内戦が始まる条件

では、内戦のような状況になるにしても、それはどのように始まるのだろうか?

これを詳しく予測した本がある。2022年に元CIIAの分析官で世界の内戦分析の権威であるバーバラ・ウォルターが著した「どのように内戦ははじまるのか?」という本だ。

この本によると、内戦を始める勢力や人々は、社会から疎外された集団ではないという。つまり、怒った貧困者や白人至上主義者、またネオナチなどの社会の周辺にいる集団ではない。2021年1月6日の米連邦議会議事堂乱入事件では、乱入した人々の45%が40代から50代の専門職の人々であった。会社経営者、会社役員、弁護士、医師、米軍将校などの人々が実は多かったのだ。

こうした特徴を見ると、選挙の結果をどうしても受け入れられない社会の中間層や専門職の人々が、銃を取って反乱する可能性があるということだ。

またこの本では、世界で起こった過去の内戦には、さらに特徴的なパターンがあるとしている。政権を失い、これまでの既得権益を奪われた層が選挙の結果を覆すために内戦を始めることになるという。このパターンを今回の大統領選挙に当てはめると、政権与党である民主党が敗北した場合、その支持者が暴力的な抵抗をする可能性があることになる。

前回の記事では、ハリスが僅差で敗北した場合、民主党は「合衆国憲法第4条第4項」を適用し、トランプを独裁者として規定して、政権の委譲を拒否するシナリオを紹介した。民主党が敗北を認めずこれを本当に実行するのであれば、これが引き金となり、暴力の応酬がはじまったのかもしれない。すると、トランプのコアの支持者は、銃を手にして戦うことになったかもしれない。

しかし、今回トランプが地滑り的に圧勝したので、このようなシナリオはなくなったと見てよい。トランプの圧勝は、トランプが正当な大統領としてアメリカ国民から認知されたことを意味する。

この状況では、いくらトランプが独裁的だとしても、それを民主共和制に対する脅威だとして、トランプを排除できる正当性は選挙に大負けした民主党にはない。したがって、このシナリオの適用は回避されたと見る方が妥当だ。

アメリカの将来の予測

しかし、内戦に至るかもしれないような混乱が完全に回避されたのかというとまったくそうではないように思う。

もしトランプが、このメルマガで紹介した「プロジェクト2025」のプランを本格的に実行するのであれば、民主党とその支持者の反発はとてつもないはずだ。

基本的に「プロジェクト2025」は、連邦政府を大幅に縮小し、州政府と地域コミュニティーが政治と経済を運営する18世紀的な国家にアメリカを引き戻すためのプランだ。また、キリスト教の価値観と倫理観で社会は統治されるべきだと強く主張し、公教育にこの倫理観を導入するとしている。

トランプは、このような理念に基づいてアメリカという国家を確実に変革するさまざまな政策を実行するはずだ。もしそれを実行するなら、リベラル派の大変な反発があるに違いない。このように見ると、内戦のような極端な状況になるかどうかは分からないものの、大きな政治的な混乱がはじまるのは避けられないように見える。これから始まるこの混乱の過程で、アメリカという国家は本質的に変わってしまう可能性もあるだろう。

では、この混乱期はいつ終わるのだろうか?そしてその先には、なにが待っているのだろうか?アメリカの動向は世界的に影響するので、その見通しを立てることは大変に重要だ。

実は、それを見るための――

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