日米安保に不満のトランプが知らない、日本側の“見えないコスト”。私たちは本当に「守られるだけ」なのか?=斎藤満

現代の日本
日米安保に不満のトランプが知らない、日本側の“見えないコスト”。私たちは本当に「守られるだけ」なのか?=斎藤満 | ページ 3 / 3 | マネーボイス
米国のトランプ大統領は6日、日米安保条約について「片務性」を指摘。その前の4日には、国防総省ナンバー3のコルビー氏が、日本に防衛費をGDPの3%に引き上げるよう求める発言をしています。関税問題に続いて今度は日米安保への不満を述べ、日本に相応の負担を求める意向を示しました。 トランプ大統領はさらに「日本は米軍に

日米安保に不満のトランプが知らない、日本側の“見えないコスト”。私たちは本当に「守られるだけ」なのか?=斎藤満

米国のトランプ大統領は6日、日米安保条約について「片務性」を指摘。その前の4日には、国防総省ナンバー3のコルビー氏が、日本に防衛費をGDPの3%に引き上げるよう求める発言をしています。関税問題に続いて今度は日米安保への不満を述べ、日本に相応の負担を求める意向を示しました。

トランプ大統領はさらに「日本は米軍に守ってもらう間に、経済的発展を実現し、ついには米国に巨大な貿易黒字を出すようになっている」として、貿易不均衡の背景に、この日米安保の片務性を結び付けようとしている節も見られます。(『 マンさんの経済あらかると 』斎藤満)

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※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2025年3月11日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

日米安保の「片務性」指摘

米国のトランプ大統領は、改めて日米安保条約の片務性に不満の意を示しました。

6日、記者団からNATO加盟国の防衛問題を問われた際、「日本とは非常に興味深い取り決めがある。」と切り出しました。そして「私は日本を愛し、米国と日本は非常に良い関係にあるが、日本は何があっても米国を守る義務はない。誰がこんなことを決めたのか」と不満を述べました。

これは第一次トランプ政権時にも指摘され、安倍総理が憲法を拡大解釈し、安保関連法案を通過させました。2016年に施行された安保関連法によれば、日本の領域外であっても米国が攻撃されれば日本は米国とともに戦うことをうたいました。従来、日本国憲法では集団的自衛権の行使を認めていなかったのですが、安倍総理は憲法の解釈を変えました。

それでもトランプ大統領は再び日米安保を問題視する発言をしました。この圧力によって、米軍の駐留経費の負担を増やすことか、コルビー氏が求めるよう、日本の防衛予算をさらに増やして米国から兵器や防衛装備品をより多く買えとの圧力にする可能性があります。

必ずしも片務的ではない

トランプ大統領は、いったい誰がこんなことを決めたのか、と述べていますが、確かにこれは日米の政府間で取り決めたものではありません。日本政府と米軍司令部との間で交わされたもので、公にされていない「密約」もあったと言われます。

そして実際にはトランプ氏が言うような「米国は日本を守るが、日本は米国を一切守る義務はない」という一方的な「片務性」はありません。そもそも米国は日本を守ると言っていますが、米国はNATO加盟国や中南米諸国との間には集団的自衛権のもと、加盟国のどこかが攻撃を受ければ、米国はともに戦うことを規定しています。

ところが、日本との安全保障条約では、もともと日本が攻撃されても、米国には日本を守る義務はありませんでした。それでは不安だとして安保改正案でなんとか「義務」をかきこませたのですが、その分「密約」で表に出ない約束をさせられました。そもそも米国軍は命を懸けてまで日本を守ろうという意識はないといいます。

一方で米軍は日本国内のどこでも自由に基地を置くことができ、ここには治外法権が認められ、さらに日本は米軍基地周辺では自由に動けません。例えば羽田離発着の飛行機は横田基地があるために、高度制限や飛行ルートの制限があり、迂回を求められますが、米軍は自由に飛行できます。

米国は日本に基地を置いていますが、日本が期待するような「日本を守るための基地」ではありません。あくまで中国や北朝鮮など、アジアで不穏な動きがあれば米軍がすぐに出動できるよう、日本に基地を置いているにすぎません。

そして沖縄などで米軍兵士が日本人を殺害したりしても、日本に捜査権がないなど、多くの問題を抱え、石破総理も総裁選時には日米地位協定を見直すと意気込みを見せていました。

この「守る・守らない」とは別の形で米軍に大きな便宜を供与しているわけで、これをとらえれば決して片務的ではなく、むしろ米軍に有利な条件になっています。

トランプに文句を言われる筋合いはありません。

石破政権の強み

トランプもマッカーサー司令部からの情報を知らないのかもしれませんが、石破チームは、安倍政権と比べると防衛の専門家を随所に配置しています。

石破総理自身が防衛畑ですが、外務大臣・防衛大臣のそれぞれに岩屋・中谷という防衛の専門家を据えました。小野寺政調会長も防衛畑です。基本認識で米国に言いこまれる心配はありません。

むしろ日本における米軍の位置づけが戦後の平和な世界では異常な形になっており、世界標準から米国寄りの米軍駐留、防衛体制を見直すチャンスでもあります。トランプ氏自身が秘密文書の公開に積極的なので、核持ち込みなどの安保条約にまつわる「密約」もここでオープンにし、世界の常識内での安保体制に修正することも考えてみる必要があります。

米軍依存を漸減へ

トランプ大統領は米軍が世界の警察機能を果たす余力はなくなったので、在外米軍を漸次引き揚げたいといいます。一方で米国の貿易赤字を米国の敗北と捉え、米国の得意分野である武器兵器産業の利益のために、各国に防衛費を拡大させ、米国の武器兵器を買わせたい意向です。

これを利用し、日本としても米軍に過剰なまでに依存するのでなく、ある程度自前で日本を守れる体制を整え、そのために米国製の武器・兵器をしばらく買うとしても、米軍には徐々にグアムや米国に帰還してもらう形を進めるチャンスでもあります。

トランプ大統領は北朝鮮や中国が核武装しているために、日本と韓国にも核武装を認める意向と言いますが、日本人は核兵器に強い拒否感を持ちます。

日本が独自の兵器を開発する場合は、電磁波兵器の路線が有望で、核兵器のスイッチ破壊、核の自爆誘導機能を持てば、核保有国は自爆リスクを抱えることになり、核廃絶につながりやすくなります。米国に漏れないよう、日本が独自の情報で開発する必要があります。

米国とは二度と戦争をしないという意味では日米同盟を維持する必要はありますが、それ以上のサービスをする必要はありません。地理的に「お隣」の条件を変えられない中国・ロシア・北朝鮮とも「お隣さん」としての付き合いが必要で、これらの国とも戦争はできません。

かつて石橋湛山が提唱した「日米中ロ」平和条約か不可侵条約の締結に向けて準備を進める必要があります。

パックス・アメリカーナが崩れ、世界が多極化に向かう中では、日本の外交・安全保障も多極化世界に沿ったものにする必要があります。いつまでも米国依存ではすみません。

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