
No.1419 左翼という認知バイアス
現実を歪んだ目で見てしまう「認知バイアス」が左翼を生んでいる。そこから、子供たちを救うには?
■1.「自衛隊の訓練は人殺しの訓練」という「認知バイアス」
伊勢: 先日、滋賀県の共産党県議が県議会で、陸上自衛隊の訓練について「人殺しの訓練」と繰り返していた事が報じられたね[産経]。
花子: えーっ、そんなとんでもない事を言う人がいるんですか!
伊勢: どうも左翼の人たちは現実を色眼鏡で見ていて、我々普通の国民とは違う光景が見えているらしい。その色眼鏡を心理学では「認知バイアス」と呼んで、学問的に究明しつつある。「バイアス」とは「偏(かたよ)り」とか「歪(ゆが)み」という意味なんだ。
花子: 確かに自衛隊の訓練を「人殺しの訓練」などと呼ぶこと自体が、私たちには信じられないほど歪んだ見方ですね。
伊勢: 共産党では、こうした偏見は昔からあった。一番ひどいのは、昭和44(1969)年の参院本会議で「国民の税金でまかなわれている自衛隊が、こともあろうに国民を殺す訓練をしている」などとトンデモ発言をした国会議員がいた。平成28(2016)年には、当時の共産党政策委員長がNHK番組で防衛予算について「人を殺すための予算」と言い放っている。
花子: それは自衛隊も軍隊ですから、戦争になったら国民を守るために、侵略してきた敵兵を殺す場合もありますよ。でもウクライナの例を見れば、ウクライナ軍が敗退した処では、ロシア軍がウクライナ国民を虐殺したりしてますよね。「自衛隊=人殺し」などと言う人は、そういう事実を見ていないのでしょうか?
伊勢: 認知バイアスの一種に「信念バイアス」というのがある。自分の信念に反する情報は、無意識のうちに遮断してしまうんだね。「見れども見えず」という状態になってしまう。
花子: 自分の信念に都合の悪い情報を遮断してしまうなら、その誤った信念は、いつまでたっても改められませんね。
伊勢: そう、そして、その事自体にも気がつかない。それが認知バイアスの恐ろしいところだ。人間は誰でも何かしらの認知バイアスを程度の差こそあれ持っているけど、左翼の人間には一般市民とは全く違った、強力な認知バイアスに罹っているので、論理的な議論ができないんだね。
■2.自分の信念に都合の良い情報ばかりが目につく「確証バイアス」
伊勢: 信念バイアスの対称形で「確証バイアス」というのもある。自分の信念に都合の良い情報ばかりが目につく、という性向だ。
花子: 信念バイアスは、自分の信念に都合の悪い情報は遮断し、確証バイアスは逆に都合の良い情報ばかり見つける、ということですか。
伊勢: その通り。たとえば、昭和60(1985)年の日航123便墜落事故で、「海上自衛隊の護衛艦が訓練中に発射したミサイルが事故機に衝突した」などという陰謀論が広がっているね。それが事実無根である事はそのうちここでも取り上げるけど、「自衛隊=人殺し」という信念を持った人は、こういう陰謀論に飛びつくだろうね。
花子: 自分の信念に合致した情報ばかりを集めて、「確証」にするという意味ですね。
伊勢: そう、それも自分では自覚がないままに、都合のよい情報が目に飛び込んでくるのだから、たちが悪い。
花子: ということは、本人も気がつかないまま、「自衛隊=人殺し」という信念に合致した情報ばかりが集まってきて、本人はいよいよ確証が貯まってきた、自分の考えは正しい、とますます信念が固まっていく、という悪循環に入りこんでしまうわけですね。
伊勢: そういう悪循環から、世に言う「狂信的」だとか、「○○は死ななきゃ治らない」という状態になってしまう。
■3.欧米人の強い認知バイアス
伊勢: 私はアメリカに留学していた時に、アメリカ人の特にインテリ層は、こういう認知バイアスが極めて強いと、よく感じていた。たとえば、クラス討論で私が誰かの主張を論理的に論破すると、時に相手は「そうだ、君の言うとおりだ」などと、こちらがビックリするほど、自分の負けをあっさり認めてしまう事があった。
花子: 日本では議論に負けても、なかなか負けを認めずに、負け惜しみを言う人が多いですけど、それとは全く違うんですね。
伊勢: そうなんだ。日本人には「世間は理屈だけでは割り切れない」という健全な世間智があって、論理の暴走には結構、警戒心が働く。
それに対して、欧米のインテリ層はそういう世間智をあまり持っていなくて、理屈がすっきりと通った体系に陶酔する性向が強いようなんだ。欧米人がキリスト教神学から近代的な科学や哲学まで、壮大な論理的体系を築いてきたのは、彼らのこの理屈好きがあると思ったね。
その理屈好きから一つの論理を押し通そうと思うと、上記の信念バイアスに罹ってしまう。論理に合致した情報ばかり目につき、不都合な情報は見えなくなってしまうからね。最近のアメリカでの異常なLGBTや黒人差別反対運動なども、この信念バイアスの結果だと思う。
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JOG(1364) 脅迫メールに屈せずに出版された「トランスジェンダー」本が訴えていること
少女たちが「自分は本当は男性かも」と迷うと、すぐに男性ホルモン注射や乳房切除を勧められるアメリカ社会の実態。
https://note.com/jog_jp/n/n35d77c5d1ff7
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花子: そんなふうに、認知バイアスに凝り固まった人々が社会を支配して、常識的な国民の自由な言論が許されない社会って、なんか怖いです。
■4.階級闘争史観は各種の認知バイアスで若者を洗脳
伊勢: 理屈好きの欧米で発達した、壮大な論理体系の極めつけが、マルクス主義の階級闘争史観だね。
花子: 「歴史は階級闘争の連続で、資本家階級が労働者階級を搾取してきた。労働者階級よ、立ち上がれ」という革命思想ですね。
伊勢: この階級闘争史観が戦後、日本でも多くの学生を魅了して、1960年代の学園闘争を引き起こした。この過激な革命思想に、なぜそんなに多くの学生が洗脳され、大規模な争乱まで起こしたのか、これも認知バイアスから説明できる。
まず「公正世界仮説」という認知バイアスがある。「公正な世界においてすべての正義は報われ、すべての罪は罰せられる」と考える。しかし、金持ちが安楽に暮らし、貧乏人は一生懸命働いても貧しいまま、という、かつての現実世界は、公正世界仮説で世の中を見る人にとっては、貧窮者への憐れみを生む。
そこに階級闘争史観が注入されると、本人たちは資本家が真犯人だったんだ、と思ってしまう。特に、怒りや憎しみの感情が強く喚起された時の記憶は鮮明に覚えている。これを「フラッシュバルブ記憶」という。
さらに若い頃から、自分で階級闘争史観を勉強して得心すると、それに対して強い愛着を感じる。この認知バイアスを「イケア効果」と呼ぶ。
花子: イケアって、あの組み立て家具を売っているイケアですか?
伊勢: そう、自分で組み立てた家具には、出来合いの家具よりも愛着が湧く。それと同じで、自分で勉強して自分のものとした考え方には、強い愛着を抱くんだ。
さらに「保有効果」というのもある。自分の思想として十年、二十年と抱いていると、それに愛着を感じて、なかなか手放そうとはしない。その人の人生の一部になってしまうんだ。
花子: そういう、いろいろな認知バイアスが積み重なって、左翼の活動家になっていくのですね。
伊勢: 学生運動の頃に左翼思想に染まった人達は、現在は70代後半以上のお年寄りになっているけど、未だに左翼思想から抜け出せない左翼老人がたくさんいるのも、若い頃から様々な認知バイアスを植え付けられた犠牲者だね。
■5.共産党が他者を激しく非難するのも認知バイアスから
花子: そういう認知バイアスの影響は、考え方だけでなく、行動面にも現れるのですか?
伊勢: そう、それがまた怖いところだ。「モラル・ライセンシング」という認知バイアスでは、「自分が正しいことをしていると思うと、他者の行動への批判が厳しくなる」[西、p270]。日本の共産党が他党を口汚く罵るのは、この現れだね。
それと共に働くのが「内集団バイアス」だ。「自分が属している集団にはやさしく、外の集団には厳しく評価する」という認知バイアスだね。
かつて、ジャーナリストの立花隆氏の著書『日本共産党の研究』に対し、日本共産党は「反共デマ宣伝」と呼び、組織を挙げて全国的なキャンペーンで徹底的な誹謗中傷を加えて攻撃した。それに対して、立花氏は「共産党は人のいうことを歪曲した上でこれに徹底的な誹謗中傷を加えて攻撃するという習性を持つ集団」と記している[公明党]。
「偶像バイアス」というのもある。偶像をつくり上げ、それを讃える、もしくは打ち負かすことで、正しい行ないをした」と感じる傾向だね。そして、それによって集団内の結束を高めていく。
花子: 安倍首相の在任中、よく「安倍が~」と猛烈な批判をして、「アベガー症候群」などと揶揄されましたけど、それも、この「偶像バイアス」の一つですね。
■6.「強引」「無礼」などの言葉を使うと「強引」「無礼」になる
伊勢: 認知バイアスが人間の行動にどのような影響を与えるのか、面白い研究が、ニューヨーク大学で行われた。そこでは被験者を二つのグループに分けて、それぞれ次の言葉を使った文章を作って貰った。
・Aグループ:「強引」「無礼」「困らせる」「妨げる」「邪魔する」などマイナスの言葉
・Bグループ:「尊敬する」「思いやりのある」「感謝する」「丁寧」などプラスの言葉
そして、文章作成後に別の部屋に行って、そこにいる人に自分がいま書いたことを話してくださいと頼んだ。しかし、その部屋に行くと、そこにいる人はほかの人と話をしていて、途中から割り込んで話しかけることがしにくい雰囲気になっていた。そこで、A,Bそれぞれのグループは、全く違った反応を示した。
・Aグループ: 平均5分程度で、2人の会話をさえぎった。
・Bグループ: 82パーセントの人が10分経っても会話をさえぎらなかった。
花子: 「強引」とか「無礼」という言葉を使っていると「強引」「無礼」な態度をとるようになり、その反対に「尊敬」「思いやり」などという言葉を使っていると、丁寧な態度をとるようになる、ということですか? どんな言葉に触れるかで、その後の態度も変わってしまうのですね。
伊勢: そう、これは「プライミング効果」と呼ばれる認知バイアスだ。「プライム」とは「最初の」という意味で、最初の経験が後の行動に影響を与える、という脳の特質だね。
ここで思い出したのが、中国の文化大革命での紅衛兵たちの乱暴狼藉だ。毛沢東の「造反有理(反乱には理がある)」という教えで、全国の学生たちが教師を吊し上げたり、暴行したりして、40万人ほどが犠牲になったとされている。
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JOG(110) 中国の失われた20年(下) ~ 憎悪と破壊の「文化大革命」
毛沢東が保身のために引き起こした「文化大革命」で、虐殺された者40万人、被害を受けた者は家族を含め1億人。
https://note.com/jog_jp/n/n233be3692dbc
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日本でも過激派学生たちは大暴れした。昭和44(1969)年1月、東大の安田講堂を占拠する過激派を排除するために、警視庁の機動隊8500人が向かったが、学生側は上部階から火炎瓶や大きな石、硫酸などの劇物を投下し、機動隊側で負傷者710人、うち重傷者31名もの被害が出た。
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JOG(916) 戦後左翼の正体
「安倍に言いたい。お前は人間じゃない! たたき斬ってやる!」と言う人々の正体を探ってみれば、、、
https://note.com/jog_jp/n/n6b7f28ff906c
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■7.子供たちが認知バイアスに迷い込まないようにするためには
花子: 人間の脳にそういう性質があるなら、私たち中学生が、歴史の授業で「南京大虐殺」などというプロパガンダを教え込まれて、「虐殺」とか「暴行」というような言葉を聞かされること自体が、私たちの行動を悪い方向に引き寄せてしまいますね。
伊勢: まったくだ。それに中学生の頃は、まだ純真で「公正世界仮説」を抱いているだろうから、それだけ加害者とされた日本軍に対する憎しみを抱く。そういう強い感情を伴った記憶は「フラッシュバルブ記憶」として、より強く残る。中学生の頃から、そういう勉強を続けていると「イケア効果」で、その「軍隊=悪」の思想が自分にとっても大切なものとして維持される。
冒頭で話した「自衛隊の訓練は人殺しの訓練」と言い放った滋賀県の共産党県議などは、そうやって育ったんじゃないかな。そういう人は、「信念バイアス」や「確証バイアス」で、自分の認知バイアスをいよいよ強めていく。そうなると、もう正常に戻るチャンスはないだろうね。
花子: それは恐ろしい運命ですね。青少年の頃の偏向教育で、一生、歪んだ認知バイアスに支配されて生きていかなければならないなんて。子供たちをそういう歪んだ道に行かせないようにする方法はないのですか?
伊勢: 認知バイアスは理性の暴走だから、受験勉強ばかりする頭でっかちの生徒はかえって陥りやすい。頭だけでなく、人間らしい、素直な、思いやりのある心を育てる必要がある。そこで、さきほどの「プライミング効果」の出番だ。「尊敬する」「思いやりのある」「感謝する」という言葉に触れれば、そういう心が育っていく。
だから、青少年のうちに尊敬する先人を見つけさせて、その先人の生き方から「尊敬」「思いやり」「感謝」などを学ぶことで、子供たちは前向きに生きる、明るい、人間らしい心を育てていく。やはり歴史人物学習こそ、子供たちの健全な成長に不可欠なスタートなんだな、と改めて思ったよ。
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