
Surveillance Capitalism(監視資本主義)


無断で手に入れた個人情報を元に人々を操り巨利を得る違法なデジタルビジネス
ショシャナ・ズボフ(Shoshana Zuboff)ハーバード・ビジネススクール教授陣のなかでテニュア(終身在職権)を取得した最初の女性の一人であり、寄付講座を持った最も若い女性「Surveillance Capitalism(監視資本主義)」という言葉の生みの親
最も受動的なのに・・・逆に能動的と錯覚させるネットメディアの害悪
東京知事選に立候補したパワハラ疑惑の元広島県安芸高田市長の石丸伸二や、同じく数々の不祥事の結果兵庫県県議会100条委員会の結論を待たずに満場一致で不信任決議で失職したのに兵庫県知事に再選された斎藤元彦など不可解で不気味、困惑の騒動でテレビや新聞などは「オールドメディア対ネットメディア」云々で語られている。
しかし100%まったく逆の解釈を提供するのがショシャナ・ズボフの「監視資本主義」だった。
産業資本主義→金融資本主義→監視資本主義
イギリスで誕生した産業革命当時の「産業資本主義」は最も古い文明圏インドなど世界中を植民地化した挙句に、第一次世界大戦後の大恐慌やを経て第二次世界大戦後の世界帝国アメリカで「金融資本主義」へと進化(資本主義の根本的な腐敗堕落を隠すため、密かにメタモルフォーゼ)するが、ねずみ講と「花見酒」が合体した金融詐欺リーマンショック後には、さらに進化(実態は資本主義の腐敗堕落が極限まで達し、利益を目的とした組織的な極悪犯罪化)とうとう、最終形態の「監視資本主義」に行着いた。

日常のすべてが監視され、収益化される:『監視資本主義の時代』が警告する世界の危険性
2019.08.04 WIRED
産業資本主義では自然界の素材が商品に変えられた。あらゆるデータが人々を追いかけて収益に変える現代の『監視資本主義』においては、人間自身が素材となっていく──。ハーヴァード・ビジネス・スクール名誉教授のショシャナ・ズボフは最新の著書で「監視資本主義」という概念を提唱し、その世界の危険性を説いている。
2016年に「ポケモンGO」が登場したとき、人はこのアプリを「AR世界へのほぼ無害な入り口」であると捉えた。
ポケモンGOは、ヴァーチャルなポケモンが現実世界にリンクして出現するゲームだ。ユーザーはポケモンが出現する場所に実際に足を運び、捕まえることで経験値を積んでいく。その健康への効果やコミュニティ構築力についてメディアが連日報道したこともあり、アプリはリリース直後から大成功を収めた。
しかし同時にこのアプリは、人々から膨大なデータを集めるキュートでポップな方法でもあったのだ。
「監視資本主義」の始まり
ハーヴァード・ビジネス・スクール名誉教授のショシャナ・ズボフは、最新の著書『The Age of Surveillance Capitalism』(監視資本主義の時代)で、ポケモンGOを資本主義の新形態の一例として取り上げている。この新しい資本主義では、ユーザーがこれからどこへ行くのか、途中で何を目にするのか、目的地で何をするのかといった、一見すると何のこともない行動の予測情報が利益目的で取引されるのだ。
「改めて考えることはなくとも、誰もがこの問題にうすうす感づいているのではないかと思います」と、ズボフは語る。「テクノロジーや資本主義の世界に必然などありません。『デジタル監視は避けれない』という考え方には根拠がないのです。デジタル監視の進行を放置してはなりません」
「データ抽出と予測」というグーグル流の手法で身を立てたテック企業たちは、人間の行動を基に未来の行動を予測する方法を編み出した。テック企業たちがもつこの予測能力は他企業にも売られ、オンラインのみならずあらゆる場所での行動がどんどん予測の対象になっている。仕事帰りに行く場所、知り合い、服の好み、普段買うコーヒーまですべてだ。
つまり、わたしたちのあらゆる行動(プロポーズや流産のような非常にパーソナルな体験すらも)が、収益化可能な何か、あるいは特定の行き先や行動へと人を誘導するような何かに変換されてしまう
どんなイノヴェイションも利便性を売りにするのが常であり、それを歓迎する人は一定数いる
今回社会にもたらされる変化は世界を後戻りできないかたちで変え、人々は自分のあらゆる感覚が利益のために収集されているように感じるだろうという。インターネットに接続されたデヴァイスが四六時中ずっと人々の行動に関するデータを集めるような世界になれば、人々のプライヴァシーはおろか、自由意志さえ手放すはめになる。
「監視資本主義」では、人間のあらゆる体験が監視される。人々が所持するデヴァイスから集めた情報を利用して、企業の利益となるようユーザーの行動を予測したり誘導したりするのだ。
監視資本主義は人間を素材とする
グーグルからポケモンGO、モノのインターネット(IoT)、さらにその先の「監視資本主義は、インターネット上でユーザーをつけ回すターゲティング広告よりも大きな概念です」。「産業資本主義では自然界の素材が商品に変えられました。監視資本主義が素材として求めるのは、人間自身なのです」
家ではスマートスピーカーやキッチン家電、街では“スマート”歩道によって、常に何かに接続されていることが避けられなくなった世界のことだ(わたしたちがいま止めなければ、そんな未来がやってくる
監視資本主義の起源
監視資本主義が生まれた背景には多数の要因があるが、そのひとつはグーグルなどの企業がターゲティング広告の発明によって成長していったことだ。こうした広告がいかにして予測能力を手にし、デジタル領域から現実の世界へと勢力を拡大したか、いかに人間の体験が企業によってデータ化され、搾取・操作の対象となったか
テクノロジーやインフラから常時感じとれる「権力」が、いかにして消費者行動の予測から望ましい結果を引き出そうとする「手段主義的権力(instrumentarian power)」が目指すのは、オンラインの世界であろうとオフラインの世界であろうと(このような区別が今後も必要とすればだが)、社会を都合よく改変できるコントロール可能な場所にすることだ。
ケンブリッジ・アナリティカが浮き彫りにしたこと
「もしこの本が出たのが2015年だったとしたら、あるいは少し先の2016年であったとしても、読者の大半は本書の中心テーマや核となる主張に対してもっと懐疑的な視線を向けていたでしょう」。「当時であればパラノイアだと思われたかもしれません。しかし、いまはそういった心配をする必要はなさそうです。むしろ、状況は逆転したと言えます」。理由はケンブリッジ・アナリティカの件のようなスキャンダルが相次いだために、テック企業のやり口について危機感が高まっている
「ケンブリッジ・アナリティカのスキャンダルのときにわたしたちが見聞きしたことは、監視資本主義の世にあっては日常茶飯事のことです」。多くの人にとって、テック企業の悪事をあそこまではっきりと目の当たりにするのは、ほぼ初めてだったはずだ。「個人情報から行動に関するデータを余分に搾り取り、企業にとって都合のよい利益の出る方向へと消費者の行動を誘導する──これが監視資本主義の骨子です」消費者がどのような行動をし、何を信じるか決める能力に監視資本主義が恐ろしい影響を与えかねない
インターネット上のすべての情報を体系化し、アクセス可能にするというグーグルの野望は、わたしたちの社会をすっかり変容させ、インターネットの方向性を決定づけた
監視主義の魔手がSNSのアカウントを凍結するといった一般に言われているような範疇を優に越えて伸びてきており、個人でできることは非常に限られている(抜粋)

民主主義は監視資本主義に勝つ 米ハーバード大ズボフ氏
2022年1月21日 日本経済新聞
市民の利用履歴データを実質的に無断で収集し、収益化する企業の行動を「監視資本主義」と名付け、その弊害について警鐘をならすショシナ・ズボフ米ハーバード経営大学院名誉教授
デジタルとインターネットの時代に個人の権利を守る新しい法制度が必要だと強調「民主主義は実現能力を備えている。実際、欧米の議会は前進している」
――監視資本主義の原理
「20年前、米グーグルが個人のネット利用の履歴データを蓄積するという新しい行動を始めた。それから20年データ蓄積を収益化する理論と仕組みが世界を席巻する
産業資本主義は資源を原料に収益を生むが、監視資本主義の原理では人々の行動や関心を監視することで得られるデータを原料とする
「監視資本主義の特徴は、(データとそこから導かれる傾向や予測という)知識が少数の企業の手に集中することだ。知識の集中、知識の非対称性によって少数の企業が支配力を築いた。この体制は、価格や賃金、競争状況などをゆがめる経済的な害よりも、(プライバシーの侵害や民主主義への悪影響など)社会的な害をもたらすのが特徴だ」
個人の行動履歴情報を「無断」で収集、活用することを違法とすべきだ!
――オンラインサービス企業側は「利用規約」などで情報収集について利用者の合意を得ていると主張していますが
「ほとんどの人が規約を読まないことは誰でも知っている。ネット企業も重々承知のうえでもろもろの行為の許可を求めている。たとえ読んだとしても『合意』する以外に選択肢はない。
実際に起こっていることは『強制』であり、自発的合意というのはまやかしだ。これは正当ではない。金融商品の約款など、以前からこのような『付合契約』と呼ばれる供給者側が内容を一方的に定める合意の取り方は存在しており、(中身が常識の範囲内に収まっていることで)正当性を保っていた。監視資本主義が広がると、企業はこの制度を乱用するようになった。司法が前例踏襲に終始する間にテクノロジーがはるかに先を行き、法律も追いついていない」
「現在監視資本主義は『合法』だが、決して正当ではない。ある行為が合法かどうかは、時代や場所を基とする法制度で決まる。現在は監視資本主義を有効に規制する法制度がないため、たまたま合法になっている。我々はデジタル時代に機能する新しい権利の憲章と、それを具現化する法制度を打ち立てなければならない。同意のない一方的で不当な監視、情報抽出ははっきり違法とすべきだ」
――規制を強める立法は難しい
「時間はかかる。19世紀後半、寡占や独占を築いた巨大企業の力の乱用に対する民衆の怒りはとても強かった。しかし、そんな強い世論があっても、消費者や労働者の権利や安全を守る法律、行政組織などができて企業を適正に規制する体制は世界大恐慌後の1930年代、つまり問題が顕著になってから、解決する制度ができるまでに半世紀かかった」
「馬車しかなかった封建時代に作ったルールで自動車が走る道路を統治しようとしても無理だった。産業資本主義という新しい存在を前提にした制度を作るのに半世紀かかった。産業資本主義を管理する制度ではデジタルとインターネットなど仮想空間では、うまく権利保護の目的を果たせなくなった。
その点をよく認識しないまま私たちはこの20年、監視資本主義の企業を野放しにしてきた。実物社会では家宅侵入やのぞき見を許容しないのに、パソコンやスマートフォンで個人が何を見ているかについては、企業が勝手に監視・記録し、そのデータを収益に変える行為を許してきた。今こそ新しい時代に合った権利保護の制度を作るための民主主義のプロセスを、もう一度最初からやり直さねばならない」
――ESG(環境・社会・企業統治)投資やステークホルダー論が広がるなど「市場の力」が企業行動を是正する可能性はないのでしょうか。
「私がハーバード経営大学院で教え始めた81年ごろ、必修授業で株主至上型経営とステークホルダー型経営の比較分析をやっていた。その後、ミルトン・フリードマンやマイケル・ジェンセンの株主至上論(悪魔の碾き臼新自由主義)が世の中を席巻し、ステークホルダー型経営の分析はビジネススクールの授業から姿を消した。
しかも市場原理主義的が、コミュニティーや公的サービスをあちこちで破壊した後に出てきたので、そもそもが「遅きに失した」
「市場参加者や私企業によるルール設定は歓迎すべきことだが、市場環境が変わると一瞬にして消えてしまう。自主的規範は移ろいやすいもので、長期に安定して機能する法制度の役割を代替することは決してできない。私たちは80年代以降、市場が色々な問題を解決できると思い込んできたが、その結果が監視資本主義の増長だ。問題解決には制度が大事だ」
――新時代に最適な法制度は本当にできるのでしょうか。
「もうすぐ欧州で成立する『デジタルサービス法』と『デジタル市場法』は、ターゲット広告を規制するなど画期的な内容で、ゲームチェンジャーになる。ワシントンでも行動監視やターゲット広告を規制する立法に向けた真剣な議論が進んでいる」
「確かにワシントンはいつも絶望的にみえる。監視資本主義企業に慣れきった市民は行動を起こすまで至っていない。だから米国では本当に民主主義が危機に陥った」
「しかし、この状態を解決する能力を備えた唯一の仕組みが民主主義であることも確かだ。監視資本主義がもたらした民主主義の危機を民主主義自体が克服していく見通しについて、私はとても楽観的になっている」(抜粋)
(聞き手は編集委員 小柳建彦)

放任の弊害に気づき、欧米などで規制導入
米グーグルは「邪悪にならない」会社として支持者を増やした。
しかし創業から日が浅かった2000年「グーグル・ツールバー」と呼ばれるブラウザーに組み込んで使うソフトが、利用者が今どのウェブページを見ているのか逐一記録して保存する「監視」を、利用者から明示的な許可を取らずに始めていたことはあまり知られていない。
当時社内では、何をどう記録して何に使うのか、大書して説明し、許可を取るべきだという意見が浮上した
しかし、共同創業者らが「何も悪いことはしていないのだから、わざわざ懸念を呼び起こすような文言は不要だ」として却下したと、当時社員だったダグラス・エドワーズ氏が後に著書「I’m Feeling Lucky」で記録している。
「邪悪」な行為は草創期から始まっていたのだ。
インターネットは90年代に普及して以来、利用者の大部分が不正をしないという性善説と、不正があっても市場原理に淘汰されるという市場信奉によって、特定の統治者を置かない分散自律型のエコシステム(生態系)として発展した。
無料のグーグル検索やフェイスブック(現メタ)が「監視」(世論誘導や情報操作)で莫大な収益を上げても、牧歌的な性善説を疑う声は大きくならなかった
ここ数年ズボフが警告した弊害が具体化する出来事が次々と起こる
特にフェイスブック元従業員の内部告発は、利用者の安全確保や偽情報から民主主義を守ることよりも収益を優先してきた証拠がいくつも明るみに出てようやく、放任は弊害が大きいことに世界中の市民が気づいた。
多くのオンラインサービス企業は「機械による行動記録は、人間によるのぞきのようなプライバシー侵害には当たらない」と繰り返してきた。しかし、「トラッキング」と呼ばれる行動監視行為に対する世論は極めて厳しくなっている。(★注、時間と共に記憶が薄れるヒトの覗きとは違い、機械による記録は永久に残るので盗撮行為に近い)
欧米日本オーストラリアでの規制導入の動きの一方で、巨大IT(情報技術)企業の反規制ロビー活動もますます強力になっている。ズボフの言う通り、事態の行方は各国・地域の民主主義政治のプロセスに委ねられている。(抜粋)
日本はGAFAに支配される「デジタル小作人」

日本の「デジタル赤字」は2024年に6兆円超えへ、クラウド普及背景に増加の一途
2024.10.02 日経クロステック/日経コンピュータ
日本の企業や個人から海外の巨大IT企業に対する支払いが増え続けている。
いわゆる「デジタル赤字」は2023年に5兆5194億円。前年から16%の増加で2014年実績から10年で約2.6倍に膨らんだ。
デジタル赤字の増加基調は2024年も続いて、上半期(1~6月)の赤字額は3兆円を超えた。最新の月次実績から1年間遡った2023年8月~2024年7月の赤字額は6兆858億円に達する。
日本のデジタル赤字は世界の中で突出。経済協力開発機構(OECD)加盟国で最大で、実質的に世界最大のデジタル赤字国。一体、日本のどこが問題なのか。
海外への支払額は9.3兆円、受取額の約2.5倍
デジタル赤字の拡大は米IT大手への依存が強まっていることが主因だ。2023年は9兆2717億円の支払いに対し、受け取りが3兆7523億円。海外から稼ぐ約2.5倍もの金額を海外に支払っている。(抜粋)
国際IT資本を研究する夏目啓二によると、世界的に突出した日本の「デジタル赤字」とはグーグルなど巨大IT資本に利用料を支払うことで生まれる、国際収支の中のサービス収支のことで、GAFAに支配される「デジタル小作人」と言われる現状にあり、これは、日本からの価値流出を意味します。

巨大IT支配と民主主義的規制
龍谷大学名誉教授 夏目啓二さん
12月15日(日曜日)しんぶん赤旗
個人情報の違法な無断使用で巨利
人権を守る立法や独禁法で規制を
グーグルは検索エンジンの世界シェアで9割を占めています。検索サービスはアクセスするゲートになっており、グーグルはネットの個人データをすべて把握できるポジションにあります。つまり、検索を通じて年齢や性別はもとより、その人がどんな情報を得たいのか、いつ頃どういうものにアクセスしたのか、その人の好みとか感心、動機など、あらゆる個人情報を彼らは握ることができます。
問題なのは、グーグルは検索サービスを通じてユーザーの個人情報を無断で手に入れ、その膨大なデータを勝手に使って莫大な利益を得ていることです。これを「監視資本主義」と名付けたのはハーバード大学ビジネススクールのショシャナ・ズボフ名誉教授です。
―無断で手に入れた個人情報をもとにした人の心を操る広告で人権侵害や弊害が生まれ、規制の動きが広がっています
弊害と言う点では子供の被害は深刻で、ネットゲーム依存による健康被害や学力低下、肥満、摂食障害、自殺の増加など、社会問題になっています。
そもそも個人情報は基本的人権で、その情報を自分自身でコントロールする権利があります。これを無断で使用して利益を得るのは権利侵害で、違法です。
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