相互関税を言い訳に 消費税を下げたがる私を許して…自民党内で消費税減税の動き、財務省の反応は?参院選前の「トランプ外圧」奇貨に

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相互関税を言い訳に 消費税を下げたがる私を許して…自民党内で消費税減税の動き、財務省の反応は?参院選前の「トランプ外圧」奇貨に - まぐまぐニュース!
9日発動した「24%の相互関税」に日本経済が翻弄されている。直後にトランプ大統領が、報復措置を取らない日本などの国に対して全面発動を90日間停止すると発表したため、暴落していた東京株式市場は急反発したが、しょせんは猶予でしかなく安心できない状況だ。そのような中、トランプ関税という「外圧」を口実にして、今こそ「

相互関税を言い訳に 消費税を下げたがる私を許して…自民党内で消費税減税の動き、財務省の反応は?参院選前の「トランプ外圧」奇貨に

9日発動した「24%の相互関税」に日本経済が翻弄されている。直後にトランプ大統領が、報復措置を取らない日本などの国に対して全面発動を90日間停止すると発表したため、暴落していた東京株式市場は急反発したが、しょせんは猶予でしかなく安心できない状況だ。そのような中、トランプ関税という「外圧」を口実にして、今こそ「消費税の減税を打ち出すべきだ」との声が自民党内から噴出している。元全国紙社会部記者の新 恭氏が詳しく解説する。(メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:トランプ関税という外圧で「消費税減税」ついに封印解除か

支持率isオーヴァー 悲しいけれど 消費税下げよう 参院選負けるから

4月3日未明、ホワイトハウスから飛び出した“トランプ砲”は、日本外交の急所を撃ち抜いた。

「相互関税を導入する。日本には24%の関税をかける」

世界経済は震撼し、株式市場は開場と同時に暴落。日経平均は3日からのわずか3営業日で4589円も値を下げた。石破首相は4日、国会で「国難とも称すべき事態」と苦悩の表情を浮かべた。

トランプ関税。理不尽な外圧である。同盟国の日本になぜこんな高関税をと訝り、憤る声があふれる。だが、外圧がなければ容易に現状を変革できないのも日本だ。事実、“トランプ砲”が永田町の空気を変えつつある。“タブー”とされてきた「消費税減税」に、ついに与党内からも踏み込む声が上がり始めたのだ。

トランプ大統領が日本の消費税を「非関税障壁」と決めつけ、アメリカからの輸出品に日本が46%もの高関税をかけているという主張の根拠の一つにしていることが、その背景にある。

日本がアメリカから商品の輸入をする場合、商品価格と関税に加え、国内で消費税が上乗せされる。一方、日本国内で生産した商品をアメリカへ輸出するさいには、すでに支払った消費税分が日本企業へ還付される仕組みになっている。これをトランプ氏は非関税障壁とみているらしい。

「トランプは以前から“日本の消費税は米国企業を不利にしている”と言っていた。今回の関税攻勢もその延長線上だ。となれば、税制に手をつけることは『交渉の突破口』になり得る」と元通産官僚は語る。

トランプ側近の間にも「日本が消費税を引き下げれば、それは関税以上の成果だ」との声があるという。

こうしたなか、自民党内で“消費税タブー”に風穴を開ける動きが始まった。夏の参議院選挙の公約づくりに向けて、全国の都道府県連の政策責任者らが出席する会議が党本部で開かれ、そのさい出席者から「消費税の減税を打ち出すべきだ」という意見が噴出したという。

ある自民中堅議員は語る。「これは減税論者にとって、まさに“奇貨”だ。いまなら、減税を堂々と主張できる」。

参院選を前に、石破自民は「消費税減税」を実行できるか?

長らく聖域とされてきた消費税。かつて安倍政権でも、延期こそあれ減税には踏み込まなかった。だが、トランプというモンスターが日本の「国内問題」に口を出してきたことで、状況は一変した。

むろん野党では、「消費税廃止」を訴えるれいわ新選組をはじめ、国民民主党、共産党、さらには江田憲司氏ら立憲民主党の一部議員……と減税派が多数を占める。「減税」という誰もが歓迎するテーマに、「外圧」という“言い訳”が与えられたのだから、石破首相さえその気になれば、実現可能なはずだ。

石破首相はもともと「消費税減税」を参議院選挙を勝ち抜くための秘策として頭に置いていたフシがある。

3月28日、国会で川田龍平参院議員(立憲)が食料品の消費税率を引き下げるよう迫ったのに対し、石破首相は「物価高対策の1つの対応として考えられないことではない」と応じた。

その3日ほど前、公明党の斉藤代表と会談し、新年度予算案成立後に強力な物価高対策を打ち出す考えを示したと報じられており、いよいよ本気かと思わせたが、4月1日の記者会見ではそれを否定した。石破首相の揺れ動く気持ちが見て取れる。

消費減税について石破首相に直接取材した政治ジャーナリストの青山和弘氏は3月30日配信のアベマタイムズでこう語っている。

「物価高対策という意味もあって、軽減税率が今8%でさらにこれを下げる。多分、念頭にあるのは5%くらいで、それくらいに下げることでどれくらい効果があるのかを検討するし、石破総理本人もアリだということをはっきり言っている。周辺には『政権を失うことを考えたら安いものだ』と言っている」

「消費税減税」は一石二鳥、トランプ氏への“お土産”にもなるが…

たしかに、ここで減税を打ち出せば、参院選を前に国内の支持も得られるし、トランプ氏への“お土産”にもなる。

だが、財務省や財政再建派の議員は「赤字国債の膨張」「社会保障財源の崩壊」と強く反対する。消費減税を交渉カードとして提示するか否か、石破首相がギリギリの判断を迫られているのは確かなようだ。

4月7日夜。石破茂首相は、電話の向こうにいるトランプ大統領に語りかけた。

「日本は5年連続で米国への最大の投資国であり、同盟国として、雇用創出と経済成長にも貢献している」「アメリカの関税措置により、日本企業の投資余力が減退することを強く懸念している」

石破首相は切々と訴え、トランプ大統領に“例外措置”を求めた。しかし、その誠意が通じた様子はない。

むろん、石破首相は電話会談の成果を強調する。「今後も率直かつ建設的な協議を続けていくことを確認をいたしました。双方において、担当閣僚を指名し、協議を続けていくということにいたしました。こうした協議を通じて、アメリカ合衆国に対し、措置の見直しを強く求めていくものであります」

だが、このコメントに不安を覚えた人は多かったに違いない。担当者を決めて協議していくなどという形式的で中身のない合意は、ほとんど相手にされていないことに等しい。案の定、電話会談からわずか数時間後、トランプ大統領は自身のSNSにこう書き込んだ。

「日本は貿易でアメリカをひどく扱ってきた」「日本はアメリカの車を買わないのにアメリカは数百万台の日本車を買っている」

すべては振り出しに戻った。いや、それ以上に悪化したと言ってもよい。

“アメリカにとっての最大の投資国”という地位は、かつてなら外交カードとなった。しかしトランプ氏の目には、そうした数値は「当然の負担」でしかない。自らの選挙民に向けて、「いかに相手国から譲歩を引き出したか」が重要なのであって、どれだけ投資しても、それが“免罪符”になるとは限らない。

ましてや、「相互関税」という本質的にトランプ氏の国内向け政治パフォーマンスに過ぎない政策の前では、合理的説明や経済的整合性など、ほとんど意味をなさない。

財務省は反対しても、消費税を減税する絶好のチャンス

4月7日の電話会談直後、首相官邸の応接室では石破首相がメモを見つめながら、深いため息をついていたという。周囲には、「言葉が届かない相手に、何を伝えればよいのか」と漏らしたとされる。

米中の対立激化などによって米国の保護主義が強まり、その余波として対日強硬姿勢にも一層の正当性が与えられている。

石破首相は、追加投資・エネルギー輸入拡大という“安倍流”のカードをすでに切っており、それ以上の譲歩は内閣支持率に直結する。とくに夏の参院選を前に、地方経済を直撃する関税ショックへの対策は急務である。

いま日本政府がとるべき道は明確だ。消費減税を通じて、国内需要の下支えとトランプへの対抗策を両立させること。財務省にとっては受け入れ難い選択肢かもしれない。だが、それを躊躇している間に、トランプは次の“爆弾”を投下してくる可能性がある。

誠意を尽くし、筋を通して説明すれば相手もわかってくれる。そんな常識が、トランプ大統領にはまるで通じないという厳しい現実に、石破首相はいま直面している。彼が決断するのは……減税という名の“経済防衛”か、あるいはさらなる譲歩という名の“敗北”か。国の針路は、いま正念場を迎えている。

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