兵庫・斎藤知事に“正義のヒーロー”説が急浮上、「どうせネットのデマ」と言い切れないワケ

現代の日本

テレビをはじめマスコミの斎藤知事に対する批判には狂気を感じてしまいます。
冷静に事実を把握することが必要ではないでしょうか?

さて、このような「ヒーロー説」について否定的な話ばかりが続くと、「斎藤知事がんばれ!」と応援をされている方たちはさぞ不愉快なことだろう。ただ、実は筆者も皆さんと同じく「斎藤知事は潰されたのではないか」と考えている。

 ただ、その「動機」は「港湾利権」やら「天下り利権」というドラマチックな類のものではない。「兵庫県庁建て替え問題」である。

 こういう再開発事業が動き出せば、さまざまなカネが水面下で飛び交うのは言うまでもない。周辺の不動産売買が活発になる。大型工事なので入札をめぐる談合も始まる。下請けから孫請けまで準備に入る。再開発の影響がどれだけのカネを生み出すのが、幹部職員をはじめ、さまざまな人々が「皮算用」を始める。なにせ700億円のビッグプロジェクトだ。

 しかし、それらの人々の苦労はすべてパアになってしまう。

 そう、21年7月に就任した斎藤知事は計画を白紙にしてしまったのである。この計画を当初のまま進めたら費用が1000億にものぼるとして、県民の理解が得られないというのだ。

 もちろん、この政治決断は「県民のため」ということでは悪くない。ただ一方で、この巨大プロジェクトでひと稼ぎしようとしていた人たちをすべて「敵」に回すことにもなってしまったのである。それは、この巨大プロジェクトを井戸知事と共に主導していた県職員幹部も同じである。

 関係が深くなると、「○○市長を潰すためにこんなネタがあるんだけど、おたくの新聞に(スクープとして)抜かせてあげるよ」とストレートに持ちかけてくる「フィクサー」のような公務員もいる。実際、旧知の某自治体の幹部職員などは、実際にそのような「内部告発」をメディアにリークして、首長を辞任に追い込んで、自分の思い通りの行政改革を進める候補者を新たに擁立することに成功をした。その「武勇伝」を筆者に語っていた時、この幹部職員は「こっちがやりたいことをやるには、あいつは邪魔だった」と笑っていた。

 裏社会がからむ港湾利権というものがあるのならそれはそれで恐ろしい。公務員の天下り利権だって何年たっても壊滅できないのでこちらもまた闇は深そうだ。

 ただ、メディアの仕事をしていて本当に恐ろしいと感じたのは、これまで権力を握っていた者たちが失脚したときに生まれる、憎い政敵を地獄に突き落としたいという「怨念」である。今回がそうではないことを祈りたい。

日本政治堕落主因の欲得主義
欲得主義の対極にある哲学は利他主義、無私主義だ。日本政治が堕落しているのは利他主義、無私主義の政治家が絶滅危惧種になっていることにある。日本の政治に限らず、欧米西側諸国の政治、経済全体が【欲得主義】にまみれています。様々な勢力が国や社会を支配しているという事も事実ですが、これを成立させているのは、【欲得主義】です。ある方がネットで「今だけ・金だけ・自分だけ」の価値観が蔓延している、という言い方をされていましたが、平たく言えばこの表現になります。また、欧米では宗教を基盤とする「選民思想」「差別意識」もこの根底にあるように思います。日本政治堕落主因の欲得主義内外政治の惨状をもたらしている根源は「欲得主義」にある。自民党の裏金問題も根源は欲得主義。主権者のために政治に携わっていない。己の欲得のため、カネもうけのために政治にかかわっている。財務省が巨大な権力を保持しているのは、財務省が巨大な財政資金配分権を有しているから。カネにひざまずく者を支配するのは容易だ。カネを振り回せば瞬殺である。最大の行政権力は巨大な財政資金配分権。この行政事務を取り仕切るのが財務省。政治家は細目を把握できないから財...
兵庫・斎藤知事に“正義のヒーロー”説が急浮上、「どうせネットのデマ」と言い切れないワケ
ネットやSNSで「がんばれ」「負けるな」といった斎藤知事を応援する声が増えている。「斎藤知事=ヒーロー説」の背景を調べ、真偽を検証した。

兵庫・斎藤知事に“正義のヒーロー”説が急浮上、「どうせネットのデマ」と言い切れないワケ

パワハラ・おねだり疑惑の渦中にある兵庫県の斉藤元彦知事 Photo:JIJI

「斎藤知事=ヒーロー説」はなぜ生まれたのか

「あれ? あの人ってちょっと前まで『鋼メンタル』とか『サイコパス』だとかボロカスに叩かれていた人だよね。ちょっと見ない間に“巨大利権と戦うヒーロー”に変わってんだけど、どういうこと?」

 そんな風に困惑している方も多いのではないか。マスコミによって「職員パワハラ」「内部告発者潰し」「企業へのおねだり」などが連日のように大きく報じられ、「早く辞めるべき」と批判の嵐を受けていた斎藤元彦兵庫県知事に対して、ここにきてネットやSNSで「がんばれ」「負けるな」という応援の声が増えているのだ。

 なぜそのように評価が一変したのか。このような「説」がSNSを中心に拡散されたからだ。

「斎藤知事は港湾利権にメスを入れたことによって闇社会とそこに追随するマスゴミに潰された」

 Netflixの人気ドラマ「地面師たち」を彷彿とさせるクライムサスペンスの匂いがする「説」だが、根拠となっているのは、23年3月31日の「兵庫県公報」で公表された「令和4年度 包括外部監査結果報告書 テーマ 港湾事業に関する財務事務の執行及び事業の管理」である。

 この345ページにも及ぶ報告書の中には、兵庫県が管理する姫路港や尼崎西宮芦屋港など28港や県民局・県民センター、さらに「ひょうご埠頭」と「新西宮ヨットハーバー」という外郭団体の「問題」が指摘されている。例えば、こんな感じである。

「法の求める趣旨を十分に理解しないまま行われている事務や、過去の意思決定を踏襲し、その意義や目的について十分な検討が行われていない事務などが数多く発見された」(113ページ)

 ちなみに「監査」が入り、問題が指摘された県民局には、知事の「パワハラ」を告発した後に亡くなった職員が局長を務めていた西播磨県民局も含まれている。

 そのため、「斎藤知事=ヒーロー説」を唱える人々は、このような港湾事業の「闇」を明らかにした報復として、パワハラ疑惑が捏造されたと主張しているのだ。

 ただ、これはちょっとビミョーな話だ。自治体の包括的外部監査は、確かに知事と外部の公認会計士などが契約を結んで行われるが、知事の「指示」や「意向」が反映されるものではない。むしろ、知事は「監査される側」であり、「こんな問題があることに気づかないとはあなたの目は節穴ですか?」という批判も免れない立場だ。

 というのも、斎藤知事は21年12月の知事就任直後に外郭団体について「ゼロベースで見直すことが必要」と表明している。あれから1年4カ月がたって、「ひょうご埠頭」や「新西宮ヨットハーバー」について何を見直したのかという疑問はある。

 なので、これをもってして「港湾利権の闇を暴いたヒーロー」となるのはおかしい。例えば、外部監査によって不正が明らかになった企業の社長に対して、「不正を暴いたのは、社長の手柄だ!」と称賛するようなものなのだ。

 もっと言ってしまうと、本当にこれで闇組織が暗躍する港湾利権にメスが入ったというのなら、県職員が怪文書をつくってどうこうという以前に、港湾事業を外部監査する公認会計士らやその家族などに嫌がらせが入るはずではないか。

 という話をすると、「いやいや、そうではなく斎藤知事が潰されたのは天下りを厳しく規制していたからだ」というようなことをおっしゃる人も多いのだが、そちらの「説」もちょっと首を傾げざるを得ない。

 斎藤知事が就任する前、兵庫県は19年7月から21年6月という約2年の間に退職した本庁課長・室長級以上の職員で再就職した91人のうち外郭団体に44人が採用されていたことを発表した。つまり、幹部職員の5割は外郭団体に天下っているのだ。

 これを受けて、21年7月に当選した斎藤知事は同年11月に天下りの温床となっている「外郭団体の見直し」を神戸新聞のインタビューで表明した。そこから「県民のために天下り権力と戦ってきた」という話だが、実際のところその成果はどうなのか。

 兵庫県退職者人材センターによれば、22年7月から24年6月の同じく約2年に退職した本庁課長・室長級以上の職員で、再就職した85人のうち「密接団体」に再就職したのは40人。密接団体とは兵庫県のホームページによれば、「県からの財政的支援又は人的支援の関与を通じて県行政と様々なつながりをもつ公社等」だという。要は、外郭団体のことである。

 つまり、斎藤知事になってからも幹部職員の47%は外郭団体に天下っている。ストレートに言ってしまうと、「天下りを厳しく規制をした」というほどのことはしていないのである。

 もちろん、だからといって、斎藤知事が「天下り権力と戦っていない」などと言うつもりはない。例えば、斎藤知事の就任後の21年12月、兵庫県は外郭団体の役員などに就いている65歳以上の県職員OB56人に対し、本年度末までの退職を求めている。

 実際、斎藤知事も9月13日の会見で続投を表明した際、自身の改革の成果として「外郭団体役員に再就職した退職職員の年齢規制」を挙げている。

 ただ、これもちょっとビミョーなのは、この年齢規制というのはもともと兵庫県の内規で定められているもので、慣例的に延長をされていたものだ。斎藤知事はあくまで「ルールをちゃんと守ってください」という制度の適正化を進めただけに過ぎないのだ。

 もちろん、それも立派な改革ではあるのだが、厳しいことを言わせていただくと、「天下り利権側が全力で潰さなくてはいけないほど思い切った改革はしていない」のである。

斎藤知事が“潰された”本当の原因

 さて、このような「ヒーロー説」について否定的な話ばかりが続くと、「斎藤知事がんばれ!」と応援をされている方たちはさぞ不愉快なことだろう。ただ、実は筆者も皆さんと同じく「斎藤知事は潰されたのではないか」と考えている。

 ただ、その「動機」は「港湾利権」やら「天下り利権」というドラマチックな類のものではない。「兵庫県庁建て替え問題」である。

 日本人の多くは、よその県や市がどういう事業を進めているかなんて話にあまり興味がないだろうが、実は井戸敏三前知事の時代、県庁舎を高層ビルに建て替えるという巨大プロジェクトがあった。もともと県庁舎は耐震強度が不足しているという問題があったので、だったらそこでドカンと立派な建物を建てて、県庁周辺の元町界隈の活性化もしようというわけだ。

「老朽化が進む県庁1、2号館を建て替え、1号館に行政機能を集約するほか、2号館や県民会館の跡地に高級ホテルやオフィスなどを誘致してにぎわい創出を図る。事業費は650~700億円を見込む」(産経新聞 2019年5月21日)

 県政史上最長5期20年続いた井戸政権の総仕上げともいうべき大型公共事業ということもあって、県職員が一丸となって進めていた。19年9月17日、県庁舎建て替えおよび周辺整備の基本計画策定を支援する受託候補者に、日本を代表する建築家・隈研吾氏の「隈研吾建築都市設計事務所」と昭和設計、ウエスコ設計共同体を選定したと発表した。

 こういう再開発事業が動き出せば、さまざまなカネが水面下で飛び交うのは言うまでもない。周辺の不動産売買が活発になる。大型工事なので入札をめぐる談合も始まる。下請けから孫請けまで準備に入る。再開発の影響がどれだけのカネを生み出すのが、幹部職員をはじめ、さまざまな人々が「皮算用」を始める。なにせ700億円のビッグプロジェクトだ。

 しかし、それらの人々の苦労はすべてパアになってしまう。

 そう、21年7月に就任した斎藤知事は計画を白紙にしてしまったのである。この計画を当初のまま進めたら費用が1000億にものぼるとして、県民の理解が得られないというのだ。

 もちろん、この政治決断は「県民のため」ということでは悪くない。ただ一方で、この巨大プロジェクトでひと稼ぎしようとしていた人たちをすべて「敵」に回すことにもなってしまったのである。それは、この巨大プロジェクトを井戸知事と共に主導していた県職員幹部も同じである。

 民間からすれば、県の幹部職員はこの700億規模公共事業の「窓口」だ。決済者ともなればかなりチヤホヤされたはずだ。そんな我が世の春を謳歌していた人々が、斎藤知事になった途端、「苦情窓口」になり下がってしまったのである。

 では、そのように「天国から地獄」を味わった人は何を考えるだろうか。計画が白紙になってしまったものはしょうがないのであきらめて次へ、というポジティブシンキングの人もいるだろうが、多くは「復権」を狙う。つまり、斎藤知事を失脚させて、井戸県政を踏襲するような新知事を担ぎ上げるのだ。

 そのような「思惑」が透けて見えるのが、9月6日に開催された「百条委員会」で、片山安孝・前副知事の言葉だ。亡くなった県職員幹部が職務中に作成したパワハラなどを告発する文書を「不正」なものだと考えた理由について聞かれた片山氏は幹部職員のメール内に「クーデターを起こす」「革命」などの言葉があったと主張した(兵庫県議会インターネット配信)。

 もちろん、あくまで「失脚させられる側」の主張なので、全てを鵜呑みにすることはできないが、幹部職員が斎藤政権に強い不満を抱いていたのが「井戸政権の方針を踏襲していない」という点にある可能性は高そうだ。

 問題なった文書の中には、兵庫県の外郭団体である「ひょうご震災記念21世紀研究機構」の副理事長を、片山副知事が一方的に解任したことに触れ、「五百旗頭先生と井戸前知事に対する嫌がらせ以外の何ものでもありません」と述べたり、「とにかく斎藤氏は井戸(前知事)嫌い、年長者嫌い、文化学術系嫌いで有名」と批判している。井戸県政を否定する斎藤知事に対して、強い憤りを感じていることが読み取れるのだ。

 当事者がお亡くなりになっている今、これらはすべて筆者の勝手な想像でしかない。ただ、こういう「新旧政治勢力の権力闘争」というのは、国でも自治体でも非常にありふれた話でもある。

 一般の方はあまりご存じないだろうが、メディアが報道をする国会議員や自治体首長の「不正」や「スキャンダル」の大半は、「公務員のリーク」である。

 筆者も記者をやっていたとき、中央省庁・県庁の幹部職員からさまざまな「怪文書」をもらった。大臣や副大臣、あるいは知事を引きずり下ろすための「紙爆弾」だ。

「国民のためにはあいつは潰さないといけない」「県民を裏切ることをしているので許せない」と義憤にかられたマジメな公務員たちの告発を、経験の浅い記者は素直に聞き入れて記事にする。しかしベテランになってくると、これが「政敵を潰すためにネタを食わされているんだな」と気づくものなのだ。

 関係が深くなると、「○○市長を潰すためにこんなネタがあるんだけど、おたくの新聞に(スクープとして)抜かせてあげるよ」とストレートに持ちかけてくる「フィクサー」のような公務員もいる。実際、旧知の某自治体の幹部職員などは、実際にそのような「内部告発」をメディアにリークして、首長を辞任に追い込んで、自分の思い通りの行政改革を進める候補者を新たに擁立することに成功をした。その「武勇伝」を筆者に語っていた時、この幹部職員は「こっちがやりたいことをやるには、あいつは邪魔だった」と笑っていた。

 裏社会がからむ港湾利権というものがあるのならそれはそれで恐ろしい。公務員の天下り利権だって何年たっても壊滅できないのでこちらもまた闇は深そうだ。

 ただ、メディアの仕事をしていて本当に恐ろしいと感じたのは、これまで権力を握っていた者たちが失脚したときに生まれる、憎い政敵を地獄に突き落としたいという「怨念」である。今回がそうではないことを祈りたい。

(ノンフィクションライター 窪田順生)

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