拝啓高市総理 いまこそロシア凍結資産利用にNOを!

現代のロシア
拝啓高市総理 いまこそロシア凍結資産利用にNOを!
ウクライナ戦争の停戦に向けたトランプ政権の努力に対し、欧州の指導者たちはロシアの凍結資産をウクライナ支援に利用する方策を模索している。日本はこの動きに同調すれば、戦争継続派と見なされるため、慎重な対応が求められる。EUはロシア資産の無期限凍結を決定し、賠償ローンの実施を目指しているが、これは戦争の長期化や欧州情勢の悪化を招く可能性があるため、日本の明確な立場が重要である。

拝啓高市総理 いまこそロシア凍結資産利用にNOを!

10月25日付の拙稿「拝啓高市新総理、トランプとのパイプ作りの「秘訣」指南します!」以来ですね。

そのなかで、ウクライナ戦争の停戦・和平をめぐって、「どう考えても、米国の姿勢に同調して、「戦争継続派に属さず、トランプ政権につく」と明言すべきではありませんか」と書きました。

あれから2カ月ほどが経過するなかでも、ドナルド・トランプ大統領は一刻も早く停戦・和平を実現する努力をつづけています。他方で、戦争継続派の欧州の主要政治指導者たちは相変わらず、戦争継続のための工作に余念がありません。

その代表的な方法が、ロシアの凍結資産を活用してウクライナに融資するというものです。12月18~19日にベルギー・ブリュッセルで開催される欧州連合(EU)首脳会談において、この方策の行方が決まります。

日本政府もこれに同調しますか? もしそうなれば、日本も戦争継続派であることを世界中に示すことになります。そうした決断にならないように、高市総理に注意喚起を思い立ちました。なぜなら、日本のマスメディアの報道が、ディスインフォメーション(誘導する意図をもった不正確な情報)にあふれているからです。

Politicoのスクープ

この問題に関連して興味深い出来事がありました。12月8日、政治専門のニュースメディアであるPoliticoは、「日本はロシア資産凍結計画への参加要請を拒否」というニュースを公表しました。12月8日のG7財務相会合(下の写真)において、東京はブリュッセルからの要請、すなわち、ベルギーの証券預託機関ユーロクリアに保管されているロシア資産の現金価値をウクライナに送金するEUの計画に、日本も追随するよう求めたことに冷水を浴びせた、というのです。

オンライン形式のG7財務相会合に参加する片山財務相(8日夜、財務省)=同省提供(出所)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB101M50Q5A211C2000000/?msockid=30fb7330d4bb604638466145d5c86182

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具体的には、「日本が、自国に凍結されているロシア資産約300億ドル相当をウクライナへの融資に活用できない意向を示したと、協議内容を把握しているEU外交官2人がPoliticoに伝えた」と書かれています。さらに、「会合の内容を説明されたEU外交筋によると、片山さつき財務大臣は法的懸念から、ロシア資産の利用を排除した」と説明されています。

これが事実であれば、大変に結構なことである、と私は称賛したいと思います。ところが、12月9日、ロイター通信は、「日本政府は9日、EUがロシアの凍結された国家資産をウクライナ支援資金に充てる計画への参加を求めたが、これを拒否したという報道を否定した」、と配信しました。「全くの虚偽だ」と三村淳財務官が記者団にのべたと伝えています。

他方で、ロシアの有力紙「コメルサント」は10日付の紙面の第六面で、「日本は差し押さえに同意しなかった 東京は、凍結されたロシア資産の『自国分』をウクライナに没収させる用意がない」というタイトルの大きな記事を報道しています。Politicoの記事に基づいて書かれたものですが、「日本が、ロシアの資産を差し押さえるというリスクの高い計画への参加を、現時点では非公式ながら拒否したことで、EUがこのイニシアチブに対する幅広い国際的な支持を得るという期待は打ち砕かれた」、と太字で報じています。

EUの魂胆

いったい、Politicoの記事に信憑性があるのかどうか、よくわかりません。そこで、この問題について、わかりやすく整理してみましょう。

まず、ロシアによるウクライナへの全面侵攻に対して、欧米や日本は対ロ制裁として、ロシア中央銀行が海外に預託していた準備金を凍結しました。2024年6月のG7サミットで、G7首脳は、ウクライナが武器を購入し再建を開始するのを支援するため、500億ドルの融資を行う計画に合意しました。この融資は、凍結されたロシアの資産(約3000億ドル)から得られる利子を使って返済される予定とされました。

つまり、この段階では、ロシアの凍結資産自体に「手をつける」、すなわち、「没収」するようなことはありませんでした。もちろん、この凍結資産を押収したり、没収したりする行為は国際法上、大きな問題があります(詳しく知りたければ、拙稿「知られざる地政学」連載(20)「カナダの挑戦をどうみるか:ロシア資産の押収・没収問題を再論する」()」をご覧ください)。

戦争継続派の欧州の政治指導者たちは、自分の国のカネを使いたくないので、何とかして凍結ロシア資産そのものをウクライナ支援に使いたいと考えるようになりました。その結果、EUは「予算外」の資金源として、ロシアの資産自体をウクライナへの長期融資の基盤とするという目論見を具体化するようになるのです。2025年9月に欧州当局者は、ロシアの資産から1400億~1850億ユーロ(25.5兆~33.7兆円)を実際に差し押さえることで、ウクライナに対する「賠償ローン」の構想を具体化しました(「賠償ローン」については、10月9日付の拙稿「カネのためにウクライナ戦争継続を求める欧州指導者たちが躍進させた「チェコのトランプ」」を参照してください)。

何としても賠償ローンを実施したいEU

12月3日、欧州委員会は、2026~2027年のウクライナの資金調達ニーズを支援する二つの解決策を発表しました。(1)EU予算に依存するEUの借入れと、(2)欧州委員会が、固定化されたロシア中央銀行の資産を保有するEUの金融機関から現金残高を借り入れることを可能にする賠償ローンです。(1)は、欧州連合(EU)加盟国の融資によるもので、全会一致で承認される必要があるとされ、実現可能性はゼロのものでした。何しろ、ハンガリーをはじめとして、反対する加盟国が複数存在する以上、(1)は机上の空論にすぎません。つまり、こちらは解決策たりえません。

(2)は、ロシアの凍結された資産を、適格多数決(QMV)で決定し、リスク分散の保証と、ロシアの主張に関するEU域外裁判所の判決の受け入れ拒否を条件として差し押さえるものです。QMVとは、EU人口の65%を代表する加盟国15カ国以上の議決を意味します。EU条約第122条を行使して、EUは全会一致という通常の要件を回避して、適格多数決によって、ハンガリーなどの反対を押し切ることができるわけです。

すでに、(2)を実施するために、12月12日、欧州理事会は、適格多数決(QMV)によってロシアの資産を無期限に凍結する決定を下しました(27カ国中ハンガリーとスロバキアが反対)。ロシア資産の凍結はこれまで6カ月ごとに更新されてきましたが、このままでは、これを元にした長期の安定的な融資ができないため、無期限凍結として固定化したわけです。

さらに、EU加盟国以外の国の裁判所の判決を承認しないという決定によって、ロシアによる訴訟に備えようとしていることになります。こうして、最終的に、EUは18~19日のEUサミットで(2)を正式決定しようとしています。

米国は消極姿勢

先の「コメルサント」の記事には、下に示したように「凍結されたロシア資産の国別金額」が掲載されています。図からわかるように、日本にあるロシア資産は、ユーロクリアの所在地であるベルギーについで第二位です(金額はずっと少ないですが)。EUは、ロシアがベルギーだけに報復するリスクを減らすため、カナダ、英国、日本など、ロシア資産の一部を凍結しているEU以外のG7諸国にも、ウクライナへの融資に充てるよう要求しているわけです。

つまり、日本は、EUによる凍結ロシア資産を使ったウクライナ融資に協力するように、EUから要請されているわけです。ただし、要請に応じれば、日本も戦争維持派だと宣言するのと同じ意味をもちます(その理由は後述します)。

凍結されたロシア資産の国別金額(10億ユーロ)

(出所)
https://www.kommersant.ru/doc/8270880

(備考)左からベルギー、日本、英国、フランス、カナダ、ルクセンブルク、スイス、米国、ドイツ。

真剣に停戦・和平に向けた努力をつづけているトランプ政権は、戦争維持派ではありません。したがって、こうしたEUの凍結されたロシア資産の活用に賛成しているわけではありません。その証拠に、28項目の和平計画(詳しくは拙稿「決定版! 28項目ウクライナ和平計画に込められたヴァンス副大統領の「怒り」」をご覧ください)では、ウクライナを「再建するための米国の努力」に1000億ドルを割り当て、その利益の50%を米国が受け取り、未使用の資産は米露の投資ファンドに振り向けることが想定されていました。その後、ロシアの資産に関する項目は除外されたとされていますが、現在、米国がどうしようとしているかは判然としません。

前回のメールでは、「『賠償ローンに日本は米国と同じ歩調をとる』」と、しっかりと伝達すべきでしょう」と書きました。いまも同じ考えですが、しっかりと他国の動向を知っておくことも必要だと思います。

イタリアに学べ

12月12日の適格多数決に際して、イタリア、ブルガリア、マルタは、凍結されたロシア資産を活用したウクライナ向け2100億ユーロ(約38・2兆円)を使った融資計画の代替案を求めるベルギーの呼びかけに賛同しました(下の写真)。

EU理事会におけるイタリアのジョルジア・メローニ首相。(EU理事会写真)

(出所)
https://www.euractiv.com/news/italy-bulgaria-and-malta-join-belgium-in-push-for-alternatives-to-e210-billion-ukraine-loan/

つまり、ロシア資産を無期限凍結して固定化することには賛成しましたが、賠償ローンには反対する姿勢を鮮明にしたのです。声明のなかで、イタリア、ブルガリア、マルタ、ベルギーは、第122条の適用が「この特定の事例をはるかに超える法的、財政的、手続き的、制度的な結果を伴う」と警告し、全会一致というEUの大原則をご都合主義で毀損(きそん)する主要加盟国を批判しました。

賠償ローンに反対すべき理由

最後に、総理に賠償ローンに反対してほしい理由を説明します。

第一に、賠償ローンは戦争を長引かせるからです。10月17日から18日にかけて開催されたEUサミットでは、加盟各国は2026年から2027年にかけて「ウクライナの財政的・軍事的ニーズを確保する」ことを約束し、その費用は1357億ユーロ(約24.7兆円)に達する見込みです。つまり、最低でも1350億ユーロ(約24.6兆円)をウクライナ支援するために、今回の賠償ローンが想定されたことになります。

つまり、27年までの戦争継続が前提とされているのです。欧州委員会は、ウクライナ政府の民間部門と防衛部門の両方の機能に必要な資金の3分の2900億ユーロ(約16.4兆円 これこそ2100億ユーロを元に2年間無利子融資しようとしている金額です)をEU加盟国が負担し、残りの450億ユーロ(約8.2兆円)は、ウクライナの「その他の国際パートナー」が負担することを提案しているようです。そのため、日本もEUの戦争維持計画に無関係ではありません。

もちろん、もしウクライナが融資を受けられなければ、それ自体がウクライナ当局に圧力をかけることになります。「早く戦争を止めろ」というサインになります。ウクライナに譲歩を迫ることにつながるでしょう。

他方で、もし融資が認められれば、ウクライナが譲歩するインセンティブは大幅に低下してしまいます。結果として、ロシアはウクライナの人手が足りなくなることを望み、ウクライナはロシアが資金を使い果たすことを望み、戦争は不可逆的に長引くかもしれません。

第二に、賠償ローンは、戦争が欧州に拡大する可能性を急激に高めかねません。ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相は、「これはロシアに対する宣戦布告となるだろう」とすでに表明しています。賠償ローンが戦争を長期化させる呼び水となる以上、それは極度に緊張している欧州とロシアの関係をさらに悪化させるでしょう。

第三に、賠償ローンは、ウクライナの戦後復興のための資金を枯渇させてしまいます。賠償ローンの本質は、戦争継続のために復興資金に活用できるかもしれない原資をウクライナへの軍事支援として使い果たすことです。そうすることで、戦後の復旧復興のための資金が不足することになるでしょう。

それだけではありません。急膨張する支援資金が、腐敗のためにゼレンスキーおよびその周辺の人物らに横領されてきました(そのひどい腐敗状況については、拙稿「ついに暴かれた「腐敗で真っ黒」ゼレンスキー政権、それでも支持し続ける欧州3首脳の私利私欲」に詳述しました)。こうして支援が掠め取られることになります。

以上から、高市総理がPoliticoの報道のように、ロシア凍結資産利用に「NO!」と明言されることを、切に望みます。

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