日本経済の現状

現代の日本

円安が続き、日本経済が不調である、或いは没落するかのような報道が多く見られます。
(後段の日経新聞報道)
しかし、事実は違っています。
下記、吉田繁治氏のビジネス知識源無料版が事実を反映している分析だと思います。

〔結論〕国単位では日本経済は強い。その証拠に、毎年1347億ドル(21兆円)が、日本企業と銀行の受け取り超過になっている。日本の経常収支の黒字には、円が弱くなる要素はない。黒字続きであり、円が強くなる要素しかない。日本経済は、対外的には強い。

経済は強くても、国際金融に弱い日本は、ドル買いの一辺倒によって米国を富ませて、その分、日本人を貧困にしてきたのです。

収入の多い家(日本)が、赤字の隣の家(米国)に、円売り/ドル買いで貸し付けを続けた。家のキャッシュフローの増加がなくなった自分たち家族は、満足に食べず、貧困な生活をしているのと同じです。

こんなに理不尽なことがありますか?
日本人は米国人に経済では勝って、国際金融で負けたのです。

240512 ビジネス知識源無料版:増刊:異次元緩和マネーの、日本での利用が必要(1)より

ビジネス知識源 by systems research
cool-knowledge.com

4月29日に1ドル160円の超円安をつけ、その日から、財務省の8兆円と推計される「ドル国債売り/円買い」の介入が入って、5月3日には151円まで円高になりました。

その後、再び市場の「円売り/ドル買い」が勝ち、今日のレートは155.7円です(5月11日:土曜日)。介入後の傾向も、未だに円安です。(ドル・円:長期推移)
https://www.77bank.co.jp/kawase/usd_chart.html

長期的には、アベノミクスの量的緩和の前は、1ドル77円の超円高でした(2012年1月)。150円台の今は、「信じられない円高」でしょう。

12年前ですが、記憶にある人も多いはずです。海外旅行は、今の1/3くらいでした。アジアと米国の物価は、日本から見れば安かった。現在は逆転しています。米国の物価は、日本の2倍から3倍です。所得も2倍。東南アジアに比べても、日本の物価は安い。

民主党(野田政権)が惨敗し安倍首相が政権についた2012年の11月からは、・質的な金融緩和として、金利をゼロに下げ、
・量的な緩和として、日銀が国債を1年60兆円から80兆円も買うことで実行した円の増発が原因になって、円売り/ドル買いが増え、円売りのバーゲンセール、2013年には5割安の1ドル123円の円安。

2015年から2020年までは125円から105円の円高でしたが、コロナ危機の2020年からは、ドル・円は105円から150円台の「超円安」になっています。

日本の輸出入は、1990年代までの黒字ではなく、2011年以降は赤字の月も混じって均衡しています。輸出100兆円に預かる企業の利益率は上がった。

〔原理〕しかし、輸入100兆円に関係する企業の利益は下がっていて、全体ではプラスマイナスゼロです。貿易はマクロのISバランスで決まります。貯蓄-投資=政府財政の赤字+経常収支の赤字。経常収支=貿易収支+所得収支。簡単に言えば、日本の2000年代にように高齢化で世帯の貯蓄率が下がると貿易黒字はなくなっていく。

一方、ISバランスに関係がない通貨レートは、外為相場(世界の銀行の店頭)での通貨の売買によって決まります。
・世界から売りが増えた通貨は上がり(円)、
・買いが増えた通貨(ドル)は上がるという単純なものです。(注)通貨を売買する要因で一番大きいのは、「金利差」です。

現在、1)円の短期金利と預金金利はほぼ0%、10年債の金利は日本が0.8%付近、2)米国は短期金利が5.25%から5.50%、ドル10年債の金利は4.5%付近です。

ゼロ金利の円預金で、ネットバンキングでドルのMMF預金を買えば、4.84%の金利がついて、4.84%の利回りになります。

2013年から「インフレ目標を2%として、その手段として行われた量的緩和マネー」は目的であった国内の投資に向かうより、金利のつくドル国債買い・ドル株買いに向かった。

ドルの債券(国債、株、社債)を買うときは、銀行で「ドルへの交換(円売り/ドル買い)」をしなければならない。この円売り/ドルの買いが大きく増えて、ドル・円のレートは150円台の円安(ドル高)に
なったのです。

〔疑問〕それにしても、2012年から12年間の1ドル77円から155円への「2倍の円安=2倍のドル高」はすさまじい。ドルと米国経済2倍強くなって円と日本経済がドルに対して1/2に弱くなったという理由ではない。

〔回答〕2012年からの12年間の、日本の政府系及び民間の金融機関からの「円売り/ドル国債・ドル株を含む債券買い」がすさまじかったことの結果が、1ドル155円というレートです。

【国の経済の強さは何によって計るのか?】
強さ・弱さは、他国と比較した「感覚的」なものです。
その感覚を数理科したものが、「GDP(付加価値生産)の成長率と、対外的な取引の結果である経常収支」です。

米国の実質GDPの成長率は、2012年から24年まで平均では約2%です。
高くはない。日本の実質GDP成長は平均で1%付近です。GDPの成長では1ポイントの差しかない。ここからは、2012年からの12年間、この1ポイントの違いから「米国経済は強く日本経済は弱い」と言えば、言い過ぎです。ボクシングでも、1ポイントの差は、ジャッジによってどちらにも転ぶ僅差の判定です。

【日本の経常収支は円高、円安にかかわらず黒字を続けている】
経常収支ではどうか。
経常収支は、「輸出入の貿易収支+海外投資からの所得収支」です。
この経常収支が黒字の経済は強く、赤字の経済は輸出力の強さがないと言えます。つまり、経常収支が赤字の経済は弱い。

2012年から2024年は、日本は一度も経常収支が赤字になったことはない。2012年600億ドル、13年460億ドル、14年370億ドル、15年1360億ドル、16年1980億ドル、17年2030億ドル、18年1780億ドル、19年1760億ドル、20年1500億ドル、21年1960億ドル、22年840億ドル、23年1450億ドル、24年1430億ドルという黒字を続けています。(日本の経常収支:1980-2024)
https://ecodb.net/country/JP/imf_bca.html

13年間の合計の黒字は、1兆7520億ドル(271兆円)、1年平均で1347億ドル(21兆円)です。経常収支は、国のマネー収支です。

このマネーの収支では、13年で、1兆7520億ドル(271兆円)の世界のマネーは、日本に流入しました。年平均では1347億ドル(21兆円相当)が、海外(主に米国)から日本に、流入したのです。経常収支の黒字は、通貨の強さも示します。

〔結論〕国単位では日本経済は強い。その証拠に、毎年1347億ドル(21兆円)が、日本企業と銀行の受け取り超過になっている。日本の経常収支の黒字には、円が弱くなる要素はない。黒字続きであり、円が強くなる要素しかない。日本経済は、対外的には強い。

【米国の経常収支の赤字】
米国経済は強いのか。GDPでは世界ナンバー1です。

日本は3位。来年はドイツに続き、インドにも負けて4位になります。
1あたりの所得も示す1人あたりGDPでも、OECDでは最下位の34位。これは、国際通貨である米ドルベースです。ドルに対する円は、1/2の円安になっているので、GDPと国民の所得もドルベースでは1/2に下がったことが主因です。

一方で米国の経常収支は世界の黒字を吸収して、大きな赤字続きです。
(数値はマイナス)
2012年-4180億ドル、13年-3390億ドル、14年-3700億ドル、15年-4080億ドル、16年-3620億ドル、17年-3670億ドル、18年-4390億ドル、19年-4410億ドル、20年-5970億ドル、21年-8310億ドル、22年-9710億ドル、23年-8120億ドル、24年-7320億ドル。

(注)2020年のコロナ危機以降、米国の赤字は約2倍。コロナ危機の米国経済は、海外からの高金利のドル国債買い、上がるドル株買いの増加が支えてきたことを示しています。

13年間の累計では、6兆7870億ドル(1052兆円)という巨大赤字です。
1年平均では5220億ドル(81兆円)という大きな赤字です。

米国の経常収支の赤字とは、米ドルの海外への流出額を示します。
13年間で6兆7870億ドル(1052兆円相当)が、米国から経常収支が、黒字の日本、中国、東南アジア、産油国へ流出したのです。

通貨が海外に流出する経済は、本質的には、最悪がトルコのように「弱い経済」です。ところが米国経済は金融(ファイナンス)で強かった。

経常収支の赤字の分、国際金融では「国債の利回りが高く、株価も上がっているドル買い」が起こったのです。

◎米国は、利益(国では経常収支の黒字)ではなく、マネーの調達(=借り入れ)である高金利の社債と、上がる株の発行だけで成長した企業と同じです。

経常収支が赤字続きの米国経済は弱い。しかしドル基軸の金融(ファイナンス)で強い。これが、米国経済の実相です。

一方で日本は、経常収支が黒字続きの経済は、強い。
しかし金融(ファイナンス)では弱い。

日本からはドル買い(=米国への貸付金の)増加の一辺倒です。ドル
買いの超過は、円安になる。これが、日本のGDPを4位に、国民の所得をOECDで34位に下げた原因です。

13年間の米国の累積赤字、6兆7870億ドル(1052兆円)のうち、日本は経常収支の黒字1兆7520億ドル(271兆円)分の、ドル買い/円売りを超過させたのです。現在も1年平均で約20兆円のドル買いの超過(金融収支)があります。

では、日本は一体どうすればいいのか。「骨太の方向」があります。

日本政府が1.2兆ドルの外貨準備として、政府系の金融機関(GPIF・郵貯)がマネー運用として持っている「ドル国債(約8000億ドル)」を売ればいいだけです。
(注)1ドル105円付近のドル安になってからドル国債を売ると、円安・ドル高の為替利益はなくなります。

◎その方法と、国民を豊かにする効果については、「水曜の有料版正刊」で述べます。日本は、国家としてはドルが高いうちに「ドル国債売り」への転換を果たさねばならない。この機会に、有料版登録は、いかがでしょうか。(↓:有料版)
http://www.mag2.com/m/P0000018.html

経済は強くても、国際金融に弱い日本は、ドル買いの一辺倒によって米国を富ませて、その分、日本人を貧困にしてきたのです。

収入の多い家(日本)が、赤字の隣の家(米国)に、円売り/ドル買いで貸し付けを続けた。家のキャッシュフローの増加がなくなった自分たち家族は、満足に食べず、貧困な生活をしているのと同じです。

こんなに理不尽なことがありますか?
日本人は米国人に経済では勝って、国際金融で負けたのです。

【後記】
経常収支と国際金融については、知らない人が多い。NISAで世帯預金2200兆円からオルカン株、ドル株の買いを増やす間は「円安/ドル高」であり、国内の円マネーを減らして、日本国内を貧困にします。
世帯預金の多い家(日本)が、世帯預金が少ない赤字の隣の家(米国)に、「円売り/ドル買い」で貸し付けを続けることと同じです。

海外投資を増やす新NISAは、政府が作りました。日本政府は、円安の、5300万世帯に対する害は無視して、円売り/ドル買いを、推奨しています。「岸田政権は、乗っ取られた政府」です。

23年度の経常黒字、最高の25.3兆円 資源高一服で - 日本経済新聞
財務省が10日発表した2023年度の国際収支統計(速報)によると、海外とのモノやサービスなどの取引状況を表す経常収支の黒字は25兆3390億円だった。22年度から約2.8倍に増加し過去最高だった。資源価格の高騰が一服して貿易収支の赤字が改善したことが影響した。経常収支は輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支や、外国との投資のやり取りを示す第1次所得収支、旅行収支を含むサービス収支などで構成する。

23年度の経常黒字、最高の25.3兆円 資源高一服で

原油やLNGといった資源高の一服が収支の改善を後押しした

財務省が10日発表した2023年度の国際収支統計(速報)によると、海外とのモノやサービスなどの取引状況を表す経常収支の黒字は25兆3390億円だった。22年度から約2.8倍に増加し過去最高だった。資源価格の高騰が一服して貿易収支の赤字が改善したことが影響した。

経常収支は輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支や、外国との投資のやり取りを示す第1次所得収支、旅行収支を含むサービス収支などで構成する。

経常黒字が大きく増えた要因は貿易赤字の縮小だ。23年度の赤字額は3兆5725億円と22年度と比べて金額はおよそ8割減った。22年度は原油や液化天然ガス(LNG)といった資源価格の高騰に円安が重なり、輸入額が膨らんでいた。

為替相場は23年度の平均は1ドル=144円55銭で、22年度の135円43銭と比べると6.7%の円安となった。原油価格は1バレルあたり85.98ドルと16.3%下がっている。円建ては1キロリットルあたり7万7868円と10.7%下がった。23年度の輸入額はこうした要因から105兆4391億円と22年度と比べて10.3%減った。

輸出額は北米向けの自動車などが好調で2.1%増の101兆8666億円だった。100兆円を超えるのは初めてで過去最高となった。

海外からの利子や配当の収入を示す第1次所得収支は0.6%増の35兆5312億円の黒字だった。伸びは小幅だったが過去最大を更新した。

旅行収支などを含むサービス収支は2兆4504億円の赤字で、赤字幅は半分以下に縮小した。主な要因は訪日客の増加による旅行収支の黒字幅の拡大だ。23年度の旅行収支は4兆2295億円の黒字となり、前年度から3.6倍に増えた。

同時に発表した3月の経常収支は前年同月比44%増の3兆3988億円の黒字だった。

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