紹介したロイターの調査報道を後追いした「ワシントン・ポスト」は6月27日付社説において、こうした国防総省の工作を「重大なミス」と呼んだ。それにもかかわらず、アメリカ政府によるディスインフォメーション工作自体を断念せよと主張しているわけではない。むしろ、「米国はディスインフォメーションの世界的拡散との戦いを主導すべきである」と書いている。
アメリカ政府は今後も、中国やロシアなどと「戦う」ために、「でっち上げ」によって「敵」を欺き、騙すとための工作を継続すべきだと主張していることになる。
実は、アメリカ政府は海外に向けてディスインフォメーション工作を実施しているだけでなく、国内に対しては、海外からのディスインフォメーション工作への対策を理由に、「検閲」を実施している(詳しくは拙著『知られざる地政学』〈上〉を参考にしてほしい)。
このように、アメリカは「善」といった単純な見方では、真実に近づくことは決してできないのである。

やっていることはロシア以上⁉ 米国の「でっち上げ工作」の実態を明かそう
日本で暮らしていると、アメリカは「善」であり、ロシアや中国による「でっち上げ」に基づく情報工作の被害国というイメージしかないかもしれない。しかし、これはまったくの出鱈目である。アメリカもまた積極的に「でっち上げ」を流し、情報工作に従事してきた。
わかりやすくいえば、「敵」を欺いたり、騙したりする目的で不正確な情報を流し、「敵」を混乱に陥れようとするわけだ。これを、「ディスインフォメーション」工作という(詳しくは拙稿「「鉄腕アトム」も誤訳された…少し小難しい「危険な誤訳」という話をしよう」をぜひ読んでほしい)。
ロイターによる調査報道
6月14日付のロイター通信による調査報道が世界中に衝撃を与えた。それは、「米国防総省はパンデミック(世界的大流行)時に中国を弱体化させるため、極秘裏に反ワクチン・キャンペーンを実施した」という長文の記事だ。
米軍は新型コロナウイルス(COVID-19)危機の最中、中国のシノバック・バイオテック(科興控股生物化学)の開発した新型コロナウイルスワクチン「コロナバック」接種の信用を失墜させるために極秘プログラムを開始したというのである。「パンデミックの責任をアメリカになすりつけようとした北京への仕返しである」と、記事は書いている。そのターゲットはフィリピン国民であった。2020年と2021年に秘密情報キャンペーンが米国防総省によって実施されたのだ。

ロイター電は、「中国から供給されるワクチンやその他の救命支援物資の安全性と有効性について疑念を植えつけることを目的としていた」と報じている。国防総省は、請負業者であるゼネラル・ダイナミクスIT社を通じて、約300の偽のソーシャルメディア・アカウントを作成していたことがわかった。
ロイター通信によると、これらのアカウントはフィリピン人になりすまし、中国と「フェイスマスク、検査キット、(2021年3月から国内販売された)フィリピンで初めて使用可能となるワクチン(中国のシノバック接種)」の品質を批判するために使用された。「でっち上げ」によって、「敵」を騙す目的で、ディスインフォメーションをアメリカ軍が流していたのである。
「中国はウイルスだ」
実際の例として、タガログ語のアカウントが紹介されている。下のソーシャルメディア・プラットフォームX のアカウントをご覧いただきたい。「#中国はウイルスだ」の下には、「そうしたいのか? COVIDは中国から来た、ワクチンは中国から来た」と書かれている。当時のフィリピン大統領ロドリゴ・ドゥテルテの写真の横には、「中国よ!我々を優先してくれ。もっと島とPOGOと黒砂をあげよう」というつぶやきがある。
このPOGOとは、Philippine Offshore Gaming Operatorsのことで、ドゥテルテ政権時代に急成長したオンラインギャンブル会社のことだ。黒砂とは、採掘の一種を指している。ほかにも、「COVIDは中国から来た、ワクチンも中国から来た、中国を信用するな!」といったタガログ語で書かれたツイートがあったという。

トランプ・バイデン両政権下で「でっち上げ」
ロイターの報道によれば、米軍の反ワクチン活動は2020年春に始まり、2021年半ばに終了した。国防総省は、中央アジアと中東全域の現地の聴衆にプロパガンダ・キャンペーンを行い、イスラム教徒の間で中国のワクチンに対する恐怖を広めたという。この戦略の重要な部分は、「ワクチンには豚のゼラチンが含まれていることがあるため、中国の予防接種はイスラム法で禁じられているとみなされる可能性があるという論争を増幅させることだった」と紹介されている。
ロイターの調べによると、この「でっち上げ」プログラムはドナルド・トランプ前大統領の下ではじまった。実は、就任から2年たった2019年、トランプ大統領はCIAに対し、中国の世論を政府に敵対させることを目的とした、中国のソーシャルメディア上での極秘キャンペーンを立ち上げる権限を与えたことが知られている(ロイター電を参照)。
CIAは少人数の工作チームをつくり、偽のインターネットIDを使って習近平政権に関する否定的なシナリオを広める一方、海外の報道機関に中傷的な情報をリークしていたのである。おそらくこのCIAによるディスインフォメーション工作を国防総省にも広めたものと考えられる。
ジョー・バイデン大統領の時代になっても、アメリカ軍による「でっち上げ」プログラムは数カ月間つづいた。バイデン政権になってしばらくして、ホワイトハウスは、他のライバル会社が製造したワクチンを中傷する反ワクチン活動を禁止する命令を出した。なお、米軍はプロパガンダでアメリカ人を標的にすることを禁じられており、国防総省の影響力行使がそのようなことをした証拠はない、とロイターはのべている。

ただし、「中国製の予防接種に対する恐怖心を煽るような努力は、後に利用できるようになった米国製ワクチンを含む、政府の健康に対する取り組みに対する社会全体の信頼を損なう危険性がある」という意見もロイターは伝えている。
それだけではない。中国製ワクチンは、ファイザー社やモデナ社によるアメリカ主導の予防接種よりも効果が低いことが判明したが、いずれも世界保健機関(WHO)の承認を受けていたのだから、アメリカ軍の「でっち上げ」工作は大いに問題だったと言えるだろう。
「でっち上げ」で死亡者:「傷口に塩」
もっと大きな問題がある。それは、この「でっち上げ」に騙されて死亡した人がいるという深刻な事態だ。
軍が使用した偽アカウントには、プログラム期間中、合わせて数万人のフォロワーを抱えており、少なくともこの「でっち上げ」に騙されて中国製のワクチン接種を拒否し、その結果、COVID-19に感染して死亡した人がいたと考えられている(ロイターの記事は、そうした人数を特定したわけではない)。
問題をより深刻にしたのは、2021年6月、当時のロドリゴ・ドゥテルテ大統領がテレビ演説で、「ワクチンを打つか、刑務所に入れるか、どちらか選べ」と迫ったことだった。

当時、フィリピンは東南アジアで最悪の接種率だった。1億1400万人の国民のうち210万人しか予防接種を受けておらず、政府の目標である7000万人にははるかに及ばなかった。ドゥテルテが演説した時点で、COVID感染者は130万人を超え、2万4000人近くのフィリピン人がウイルスで死亡していた。「ワクチン接種の困難さが、この地域で最悪の死亡率につながった」、とロイターは指摘している。
このため、アメリカの宣伝活動は「傷口にさらに塩を塗るようなものだった」という声が紹介されている。
懲りないアメリカ
紹介したロイターの調査報道を後追いした「ワシントン・ポスト」は6月27日付社説において、こうした国防総省の工作を「重大なミス」と呼んだ。それにもかかわらず、アメリカ政府によるディスインフォメーション工作自体を断念せよと主張しているわけではない。むしろ、「米国はディスインフォメーションの世界的拡散との戦いを主導すべきである」と書いている。
アメリカ政府は今後も、中国やロシアなどと「戦う」ために、「でっち上げ」によって「敵」を欺き、騙すとための工作を継続すべきだと主張していることになる。

実は、アメリカ政府は海外に向けてディスインフォメーション工作を実施しているだけでなく、国内に対しては、海外からのディスインフォメーション工作への対策を理由に、「検閲」を実施している(詳しくは拙著『知られざる地政学』〈上〉を参考にしてほしい)。
このように、アメリカは「善」といった単純な見方では、真実に近づくことは決してできないのである。
ロシア側の反論
ロシア大使に単独インタビュー 小児病院攻撃について“反論” 日本と「対話の可能性ない」「敵対的な態度の撤去を」と主張

日本テレビは10日、駐日ロシア大使に就任後初めてとなる単独インタビューを行いました。ウクライナ侵攻以来、日露関係が冷え込む中、大使が日本に求めたこととは… ◇ 10日、私たちが話を聞いたのは、ことし5月に就任したばかりのロシア大使。 「わざわざ大使館までおいでいただいて、ありがとうございます」 流ちょうな日本語を操る、ニコライ・ノズドリェフ氏です。国際基督教大学に留学し、ロシア外務省でも日本担当の局長を務めてきた“知日派”。冷え込む日露関係の中で、何を語るのでしょうか。

日本テレビ 国際部長 小林史 「8日にロシアがウクライナの首都キーウを攻撃をして、子どもを含めた民間人が犠牲になっているという現状について、大使はどのようにお考えですか」 ノズドリェフ大使 「おととい行ったキーウに対する攻撃なんですが、破壊をしたのはノルウェー製のNASAMSという対空防衛システムのミサイルだった。つまりロシアのミサイルを迎撃しようとして、最終的に誤った操縦があったかもしれません」 子どもを含む42人が死亡した小児病院などへのミサイル攻撃について、「ウクライナ側の迎撃ミサイルによるものだ」と主張しました。 また、民間人の虐殺などロシア軍による「戦争犯罪」が指摘されてきたことについて聞くと… 日本テレビ 報道局長 伊佐治健 「民間人がキーウ近郊のブチャで多数殺害されるという事態がありました」

ノズドリェフ大使 「それはそちらがおっしゃっていると思うんですけど」 日本テレビ 報道局長 伊佐治健 「私たちの取材で、ブチャに住んでいたウクライナの人を取材したところ、私たちはブチャでの虐殺はあったであろうと感じています」 ノズドリェフ大使 「私はまさに逆に思っている。今までウクライナに対しては、もしこのような事件があったとしたら、具体的な犠牲者の名前を、リストをきちんと渡していただければどうかと」 「ロシア軍が撤退したあとにウクライナ側が仕掛けた」とする従来の主張を繰り返しました。

9日、NATO(=北大西洋条約機構)は、首脳会議にゼレンスキー大統領も招き、ウクライナ支援の強化を呼びかけ。国連安保理の緊急会合では、西側諸国からロシアへの非難が相次ぎました。 西側によるロシア批判が広がる中、大使が期待を示したのは、中国などの新興国です。 ノズドリェフ大使 「アメリカと違って、たとえばグローバルサウスの国でブラジルとか、中国が平和のためのいくつかの提案を出している。それに対してはロシアも極めて高く評価しています」

実際、プーチン大統領は7月に入って、中国の習近平主席、インドのモディ首相と相次いで会談。大使も、次のように述べました。 ノズドリェフ大使 「中国はロシアにとって極めて重要な戦略的パートナー。インドはロシアにとって戦略的に極めて重要なパートナー」 中国やインドとの連携の重要性を何度も強調。その上で… 日本テレビ 報道局長 伊佐治健 「G7を中心とした世界経済あるいは安全保障…」 ノズドリェフ大使 「いま変わりつつあります。自分としてはもっと平等な世界をつくりたいと考えています。たとえば西側諸国については、国際貿易をみるといろいろな障壁をつくっています。それに対してグローバルサウス諸国からは不満の声が出ています」 欧米中心ではない、新たな枠組みに期待を寄せました。

また、欧米と足並みをそろえ、ウクライナ支援にまわる日本に対しても… ノズドリェフ大使 「二国間関係において一番重要なのは、敵対的な態度の撤去だと思います。岸田政権はいまでも非友好的な路線を続けていますから。その環境のなかでは、対話の再開の可能性はまずないと思います。私の仕事の一番大きな課題というのは、あくまで二国間関係を安定させて、限られた分野であってもその協力を保全して、何らかの形で発展していきたいと思います」
露軍がウクライナの軍事施設を攻撃、ウクライナの迎撃ミサイルが小児病院を破壊
ウォロディミル・ゼレンスキー政権はロシア軍が7月8日にキエフを38機のミサイルで攻撃、そのうち30機を撃墜したと発表したが、少なくとも5機が目標に命中している様子を撮影した映像がインターネット上に流れている。元CIA分析官のラリー・ジョンソンによると、命中した後、二次的な爆発が見られることから目標は軍事施設だ。
アルジャジーラを含む西側のメディアは軍事施設に対する攻撃には触れず、破壊された小児病院の様子を大々的に取り上げているのだが、これは迎撃に失敗したウクライナ側のミサイルによるものだと言われている。
ウクライナ軍は作戦として非武装の市民を狙う。例えば、クラスター爆弾を搭載したATACMS(陸軍戦術ミサイル・システム)で6月23日にクリミアのセバストポリ近郊の海岸を攻撃し、海水浴を楽しんでいた人びとを殺傷した。その時に使われたミサイルは5機で、そのうち4機は途中で無力化されたものの、残りの1機が浜辺の空中でクラスター弾頭を爆発させ、2名の子どもを含む4名が死亡、150名以上が負傷している。勿論、こうした攻撃を西側の有力メディアは無視する。
こうしたことを西側メディアは繰り返してきたが、今回の場合、イスラエル軍によるガザでの虐殺が世界に知られてアメリカやイギリスなどイスラエル支援国は厳しい状況に陥っていることから飛びき、イスラエルの受けているダメージを軽減させようとしたようにも思える。
イギリスの国防大臣だったベン・ウォレスは昨年10月1日、テレグラフ紙にウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えていると指摘、もっと多くの若者を前線へ送り出すようにゼレンスキー政権に要求していた。まつもな訓練を受けないまま戦場へ放り出されるため、ウクライナ側の死傷者数のその後、大幅に増えていると推測されている。
最近では街頭で軍の徴兵担当と思われるグループが青年男性を拉致する様子を撮影した映像がアップロードされている。それだけ戦況はウクライナにとって悪いということ。戦争を継続できるような状態ではないのだ。
それでもウクライナを支配する欧米の支配者は「最後のひとりまで」ロシア軍と戦えと命令してきたのだが、それでは間に合わなくなっている。
本ブログでも繰り返し書いてきたが、ウクライナにある軍事施設には少なからぬ西側の戦闘員や技術スタッフがいるが、それだけでなく、早い段階から特殊部隊はウクライナへ入り、戦闘に参加していたと言われている。正規軍の兵士や傭兵、あるいはオペレーターも入っている。
特にフランスの戦闘員派遣が目立つ。フランスのエマニュエル・マクロン大統領はNATOの地上軍をウクライナへ派遣すると口にし、フランス軍部隊約1000名がオデッサへ入り、さらに部隊が送り込まれる予定だとも伝えられていた。セルゲイ・ナリシキンSVR(ロシアの連邦対外情報庁)長官は3月19日、フランス政府がウクライナへ派遣する部隊を準備しているとする情報を確認、初期段階では約2000人を派遣する予定だとしている。ロシア軍が昼間に攻撃したのは兵器の製造や修理に従事する人びと、おそらく外国人を狙ったからだろう。
ロシア軍は1月16日にハリコフを攻撃した際、軍事施設のほか旧ハリコフ・パレス・ホテルを破壊したが、この旧ホテルは西側の情報機関や軍関係者に使われていて、爆撃された際、200人近くの外国人傭兵が滞在していたと言われている。その攻撃で死傷した戦闘員の大半はフランス人傭兵で、そのうち約60名が死亡、20人以上が医療施設に搬送されたと伝えられている。
ル・フィガロ紙の特派員、ジョージ・マルブルノによると、ウクライナではアメリカ陸軍のデルタ・フォース(第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊)やイギリス陸軍のSAS(特殊空挺部隊)が戦闘に参加、フランス軍も兵士を送り込んでいる疑いがあるのだが、自衛隊が隊員を派遣していたとしても驚きではない。



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