JOG(1471) 乳幼児の脳は母親の優しい語りかけで育つ

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JOG(1471) 乳幼児の脳は母親の優しい語りかけで育つ
脳科学と発達心理学が明かした、赤ちゃんの脳の育て方。 ■転送歓迎■ R08.05.10 ■ 85,089 Copies ■ 9,466,390Views■ 過去号閲覧: 無料受講申込み: __________ ■■■伊勢雅臣講演会 群馬県高崎市 5月22日(金)■■■ テーマ: 「国の宝」を育てる幼児教育 ~ご先祖様たちが知っていた、幼児の潜在能…

JOG(1471) 乳幼児の脳は母親の優しい語りかけで育つ

脳科学と発達心理学が明かした、赤ちゃんの脳の育て方。

■1.3歳までにどれだけ話しかけられたかで、その後の脳の発達が影響を受ける

伊勢: 花子ちゃん、今日はちょっと面白い研究の話をしようか。アメリカのカンサス大学の研究で、赤ちゃんが生後3年間に親から話しかけられた言葉の量と質が、その後の知的発達に大きな影響を与える、ということが明らかになったんだ。

花子: 生後3年間、ですか? 最初の一年くらいは、赤ちゃんはまだ言葉も話せないですよね。そんな時期に親の言葉を聴くことがそんなに大事なんですか?

伊勢: そうなんだ。これはアメリカのカンサス大学のベティ・ハートとトッド・リズリーという2人の児童心理学者の行った研究でね。

 2人は貧しい家庭から豊かな家庭まで42家族を対象に、生後9か月から3歳までの間、毎月1時間の親子間の会話を詳細に記録・分析する追跡調査を行ったんだ。その中には、1時間に40分以上、赤ちゃんとやりとりしていた家庭もあれば、その半分にも満たない家庭もあった。

 そして豊かな家庭の子供は生活保護世帯の子供に比べ1時間あたり約3倍の言葉を聞いており、3歳になるまでに累積で約3000万語もの膨大な格差が生じていることを発見した。そして、この初期の環境の差は、その後の子供の知能指数、言語処理能力、そして将来の学業到達度に決定的な影響を及ぼすことが科学的に証明された。

花子: でも先生、それだとお金持ちの家に生まれた子の方が有利、ということになってしまうんじゃないですか? なんだか不公平な気がします。

伊勢: そこが、この研究の本当に価値あるところなんだ。この発見は、たとえ低所得層の家庭でも、子供にたっぷり言葉をかければ、その子の知能が健全に育つ。逆に高所得層でも、子供をほったらかしにしたら、十分に知能が発達しない。というわけで、所得に関わりなく、子供の知能を健全に育てるための道を発見した、という点で、価値があるんだよ。

花子: なるほど! お金の問題じゃなくて、どれだけ話しかけてあげるかが大事なんですね。それなら、どんな家庭でも工夫次第で子供を伸ばしてあげられる、ということですね。

伊勢: その通り。この講座でも、幼児の頃に漢字をカード遊びや素読で教える事で、知能指数を高め、情操を豊かにするという石井方式を紹介したけど、その理論的裏付けが、この研究からなされたようだ。
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JOG(320) 子どもを伸ばす漢字教育
 幼稚園児たちは喜んで漢字を覚え、知能指数も高まり、情操も豊かになっていった。
https://note.com/jog_jp/n/n14b95dbcab8e
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花子: 私の従姉(いとこ)が3歳の赤ちゃんを育てているので、話してやりたいです。詳しいことを聞かせてください。

■2.1000億個の神経細胞のそれぞれに1万個の繋がり

伊勢: まず、脳科学で解明しつつある、脳の発達のしくみについて、見ておこう。脳は他の臓器と異なり、生まれた時にはまだできあがっていない。心臓、腎臓、肺など、他の臓器は誕生したその日から、まだ小さいとは言え、大人と同じように働くけど、脳の働きの発達は、かなりの部分が生後の環境に依存するんだ。

花子: えっ、そうなんですか? 心臓は生まれた時からちゃんと動いているのに、脳は違うんですね。

伊勢: そうなんだ。脳は成長すると、1000億個の神経細胞からなり、神経細胞どうしが相互につながっている。神経細胞1つあたりの接続は1万個にもなる。それが1000億個の神経細胞をつなぎ、私たちの脳の中にある。この膨大なネットワークが、運動能力、言語能力、記憶、感情、行動を担っているんだ。

花子: 1000億個の神経細胞のそれぞれ1万個の接続!? 天文学的な数字ですね…。

伊勢: そのすごい脳が、3歳末には85%ほどできあがり、4歳ごろまでに、臓器としてはほぼ発達し終える。だから、そのスピードがすごい。1秒ごとに700から1000もの新たな神経細胞の繋がりができるんだ。

花子: 1秒に700から1000!? 私たちが今こうして話している間にも、赤ちゃんの脳ではどんどん新しいつながりができているんですね。

■3.使われない繋がりは「刈り込み」される

伊勢: その通り。そしてここが面白いところでね。神経細胞間のつながりは、遺伝子の「設計図」によって作られる。だから、そこでは人種とか民族の違いはない。言語で言えば、生後7ヶ月くらいまでに、あらゆる言語の音を聞き分けるための回路が作られる。日本人の赤ちゃんも「R」と「L」を聞き分けることができるんだ。

花子: ええっ! 私は今、英語の授業で「R」と「L」の聞き分けなんか全然できませんけど…。日本人の赤ちゃんでも、最初は英語の発音を聞き分けられるんですか?

伊勢: そうなんだ。ところがね、その後の3ヶ月くらいで、母国語として日常的に聞く音の回路は補強され、その一方で聞く機会のない音の回路は「刈り込み」によって失われていくんだ。

 日本語の家庭に育った赤ちゃんは、周囲で「R」と「L」の音が区別なく使われているのを聞いて、生後10ヶ月ではそれらを聞き分ける能力が失って、それ以降は、赤ちゃんは日本人の脳を持つようになる。

花子: 刈り込み…使わないものは消えてしまうんですね。なんだか少しもったいない気もします。でも、必要なものに集中するためには仕方ないのかもしれませんね。

伊勢: そうだな、限られた資源を効率的に使うための仕組みなんだ。そしてこうして作られた神経細胞のネットワークが土台となって、4歳以降、会話能力、読み書き能力、思考能力、自己制御などのより高度な能力が発達していくわけだ。

花子: なるほど、4歳までの脳が土台で、その上にいろいろな能力が積み上がっていくんですね。

伊勢: その通り。だから、4歳くらいまでの土台つくりの時期に、親の言葉をたくさん聴いて育たないと、「刈り込み」によって、本来の豊かさが失われてしまう。その不十分な土台では、その後のより高度な能力の発達も順調にできない。

花子: あっ、それでさきほどの「3歳までにたくさん言葉を聞かせることが大事だ」という話につながるんですね。ちょうど脳の土台の85%ができあがる時期だからなんですね。

伊勢: その通りだ。だから、3,4歳の頃までに、赤ちゃんにたっぷり言葉を聴かせて、しっかりした言語能力の土台を作ることが大切、というわけだ。

花子: 家を建てるのと同じですね。土台がしっかりしていないと、その上にどんなに立派な建物を建てようとしても無理がある、ということですね。赤ちゃんに話しかけることって、本当に大切なんだなあ…。

■4.優しい、愛情あふれる母親からの言葉を赤ちゃんは吸収する

伊勢: 花子ちゃん、「赤ちゃんにたくさん言葉を聞かせるのが大事」と話したけど、ただ言葉を浴びせればいいというものでもないんだ。そのやり方も大切なんだ。

花子: 言葉のかけ方にも、良いやり方があるんですか?

伊勢: そうなんだ。生まれたての赤ちゃんの身になって考えてみよう。まだ目はぼやっとしか見えないが、聴覚はお腹の中にいる時から発達しているので、生まれてすぐに産んでくれたお母さんの声は聴き分けることができる。しかし、それが話し言葉だとは分からない。

花子: あっ、そうか。私たちは「言葉」だと知っているから言葉に聞こえますけど、赤ちゃんにとってはただの声なんですね。

伊勢: そう、そこが大事なところだ。例えて言えば、我々がある朝、目覚めたら突然、赤ちゃんになって、アラビア人の家庭に生まれていたと想像しよう。その1人の女性の声は聞き慣れているけど、その声が何を意味しているのか、まったく分からない。

花子: わあ、それは想像するとこわいですね。何を言われているのか全然わからない世界に放り込まれるなんて…。

伊勢: でも、その母親は、お腹が空くと、「ハリーブ・アッ=スゥド」と言って、温かいものを飲ましてくれる。やがて赤ちゃんは、「ハリーブ・アッ=スゥド」という音が、母乳を表す事を理解する。

 いずれ、その音を発することができるようになると、母親に「ハリーブ・アッ=スゥド」と言って、おっぱいを飲ませてくれるよう、要求することができるようになる。こうして赤ちゃんは言語を学んでいくんだ。

花子: なるほど、お腹が空いたときに毎回その言葉を聞くから、「ああ、これがミルクのことなんだ」とわかるようになるんですね。経験と音がセットになって覚えていくんですね。

■5.赤ちゃんをとりまく不安だらけの世界

伊勢: その通り。しかし、この世界は、聞き慣れた、優しい母親だけではない。聞いたことのない人の声もいろいろ聞こえる。人の声以外にもいろいろな音がする。時計のカチカチ言う音、テレビの音、外で自動車の走る音等々、赤ちゃんはそれらが何なのか、まったく分からない。それぞれが、赤ちゃんにとっては、自分を害するかもしれないというストレスを与えるんだ。

花子: 確かに、知らない音だらけの世界って、考えてみるとこわいですね。私たちは「あ、車の音だな」「時計だな」とわかるから平気ですけど、赤ちゃんにはそれが何かわからないんですもんね。

伊勢: ここで、一つ、「能面実験」と呼ばれる残酷な実験を紹介しよう。

 母親が赤ちゃんと遊んでいる時に、急に後ろを向き、その後、振り返ると、能面のような無表情をしている。赤ちゃんは母親を見つめ、びっくりした表情になる。赤ちゃんは、突然、あわてた様子で指をさしてみたり、母親に手を伸ばしてみたり、なんとかして反応を引き出そうとする。でも、母親は表情なく、子どもを見つめるばかりで、やがて赤ちゃんはからだをそらせ、泣き始める。

 でも、母親もそんな赤ちゃんは見てられないので、愛情にあふれた笑顔に戻ると、赤ちゃんもすぐに幸せな様子に戻る。こんな実験だ。[サスキンド、p64]

花子: うわあ…お母さんの表情がなくなるだけで、赤ちゃんはそんなに不安になるんですね。

伊勢: 未知の世界に生きている赤ちゃんには、不安がたくさんある。そして強いストレスにいつもさらされていると、乳幼児の脳は「ストレス・ホルモン」を浴び、構造自体が永久的に変わってしまう。これが慢性的な行動の問題、健康上の問題、学習困難などにつながるんだ。

花子: 永久的に、ですか…。心の問題だけじゃなくて、脳の構造そのものが変わってしまうなんて、本当に怖いですね。

伊勢: そうなんだ。だからこそ、そういう不安いっぱいの世界で、唯一安心できる母親から、「さあ、おっぱいを飲みましょうね」「おしめを替えたから、気持ちよくなったでしょう」などと、優しく愛情の籠もった声を掛けられることによって、赤ちゃんは安心して、言葉を学んでいくことができる。

花子: なるほど! ただ言葉が多ければいいんじゃなくて、安心できる人からの愛情のこもった言葉じゃないと意味がないんですね。テレビやラジオをずっと流しておけばいい、というわけじゃないんですね。

伊勢: その通り。お母さんの優しい声と笑顔があってこそ、赤ちゃんは「自分は安全な場所にいる」と感じて、安心して言葉を吸収していけるわけだね。

■6.挑戦と努力を後押しする褒め方

伊勢: これまでは4歳までの脳の土台づくりの話だったけど、4歳以降も、脳はそれまでの土台を活用して、様々な能力を獲得していくんだ。それまでに作られたネットワークを土台として、神経細胞どうしの新たな回路を作ることで、新しい能力が実現されるんだ。

 その新しい回路づくりをどれだけ活発にできるか、に影響する要因が見つかっている。それが、本人が「やればできる」というマインドセットを持っているかどうかなんだ。

花子: マインドセット…つまり、心の持ちよう、ですか? 心の持ちようによって、脳の回路の作られ方が変わってくるんですか?

伊勢: そう、そのマインドセットを持っていると、子供は積極的に新しいことにチャレンジして、どしどし新しい回路を発達させ、新しい能力を獲得していくんだ。

花子: 確かに、「やればできる」と信じている子は、難しい問題でも「やってみよう!」って取り組みますよね。

伊勢: その通り。逆に、「自分はできない子だ」信じ込んでいると、新しい事へのチャレンジには消極的になり、結果的に能力の発達は不十分となる。本来、遺伝的に持っている能力も発達しなくなってしまうんだ。

花子: それは、もったいないですね。じゃあ、どうしたら「やればできる」というマインドセットを持てるようになるんですか?

伊勢: 「やればできる」というマインドセットは、親からの励ましと、子供の挑戦や努力に対する褒め言葉から育つんだ。

花子: なるほど、努力したことを褒めてもらえると、「頑張ればできるんだ」って思えますもんね。

伊勢: その通り。逆に、テストで良い点をとっても、「頭がいいね」という褒め方では逆効果なんだ。「頭がいいね」と言われた子は、次のテストで悪い点を取るのが怖くて、難しい問題に挑戦しなくなる、という実験結果が得られている。

 子どもの能力をフルに発達させるには、赤ちゃんの時は親の温かい声がけを十分にして脳の土台をしっかり作り、4歳以降はチャレンジを勧め、努力を褒めて、それぞれの能力を伸ばしていく。これは日本の伝統的子育ての正しさを、現代の脳科学や児童心理学が理論的に裏付けたものだね。
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JOG(704) 江戸の子育てに学ぶ
 幕末に来日した欧米人は、江戸の子育てに眼を見張った。
https://note.com/jog_jp/n/n946746bfc943?magazine_key=m8a58bd34203f
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 日本の伝統的な子育ての智慧を今こそ思い出して、子供たちを立派に育て、彼らに生き甲斐のある幸せな人生を送って貰うとともに、国全体も立派にしていって貰いたいものだね。子供たちこそ「国の宝」なんだから。
(文責 伊勢雅臣)

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