現代の大手メディアの状況、今後の方向性に関する記事の紹介です。
2021年のデータですが、2000年と比較し大手メディアの凋落は激しく、現在はさらに酷くなっていると思われます。
特に紙媒体のメディアは見る影もなく、インターネット情報にとって変わられている事には実感があるのではないでしょうか。
ただ、テレビの影響力は衰えたとは言え、まだまだ大きいように思います。
そして、問題はその発信情報があまりに偏向していることです。
記事では、以下のような分析がされています。
2000年代の日本のメディアが、総じて、偏向してきた理由は、
1. 売り上げ減少で、財政基盤が弱くなったこと
2. スポンサーにおもねる必要が出てきたこと
3. 株主・金融資本・政府におべっかを使う経営的な必要が出てきたこと
大手メディアの情報はバイアスがかかっており、信用できないことは明白です。
今、私達に求められているのは、俯瞰的に情報を読み、事実を元に論理的に考えることです。
価値観や好き嫌い、固定観念や既存の常識に囚われず、自らが考えた、論理整合性によって判断する、本物の思考力、論理性、そして追求力が事実を掴む為には不可欠となっています。
なぜ新聞は世論を動かさなくなったのか?ジャーナリストではなくサラリーマンになった記者たち=吉田繁治
大手メディアの凋落が止まりません。購読者数・視聴時間ともに急落しており、財政基盤そのものが危機的状況にあります。スポンサーへの忖度ナシでは生きて行けないのが現実で、世論・選挙への影響力も持ちません。今後、メディアはどのような方向に進んでいくのかを考察します。(『 ビジネス知識源プレミアム:1ヶ月ビジネス書5冊を超える情報価値をe-Mailで 』吉田繁治)
※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム:1ヶ月ビジネス書5冊を超える情報価値をe-Mailで』2023年1月11日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
新聞・テレビ・雑誌、オールドメディアの崩壊
私がメールマガジン『 ビジネス知識源プレミアム:1ヶ月ビジネス書5冊を超える情報価値をe-Mailで 』を創刊したのは2000年でした。2000年代に、オールド・メディアがひどく衰退することが、わかっていたからです。
1990年代の後期の、ある雑誌編集者との対話を覚えています。
「雑誌業界では情報化時代といって、新聞・雑誌・書籍の購読は増えるとしているが、それは、まったく違う。1人当たりの、メディア情報に接する時間は増えるでしょう。しかし情報は、時間消費になるものです。
メディアがインターネットに移行していくと、TVと紙のオールド・メディアの視聴と購読の時間は、確実に減っていく。
人間の時間は、24時間であり有限です。PCと携帯でのインターネット接続が増えると、TVを見て新聞・雑誌・書籍を読む時間は減っていく。葉書と郵便もメールに振り替わる」。
そのように、雑誌編集者に言ったのです。その雑誌は、2020年に廃刊されました。
情報では「時間消費」であることが本質です。人間の時間を減らすことのない商品は、必要があれば、同時に増やすことができる。部屋の広さも同じです。
しかし個人の時間は増やせない。普通の人なら、量に限界がある食品の消費に似ています。パンを食べると米は減ります。肉を食べれば魚食が減る。
このため、インターネット情報が世界のメディアとして入りこむと、オールド・メディア全体への時間は、人口が同じ場合、減っていくのです。
紙のメディアの出版文化は、読書に不適な、蝋燭しかなかった夜の時間が活用できる電灯で、成長期の隆盛を誇ったのです。
電気が、家事と仕事のあとの生活時間を、拡張したからです。
お手伝いさん・書生・執事がいない普通の家では、洗濯・炊事・掃除には長い労働時間がかかっていました。お手伝いと執事が、7つの海(世界帝国)を支配した英国貴族の、読書と会食での談話(パーティ・政党の発祥)、新聞の時間を増やしていたのです。米国では奴隷です。
日本では、寺子屋から発展し、明治維新の英傑を生んだ吉田松陰の松下村塾。基本は漢学だったので、人間が生きる道を探索する倫理的なものでした。漱石は、漢学と英語の達人でしたが、翻訳について面白いことを言っています。
日本文化では、西洋人がよく使う「I love you」は馴染まない。状況に応じ「月が綺麗ですね」と翻訳しなければならない。こうした翻訳家が、現在いるでしょうか。
急速に進む新聞購読者数の減少
【新聞の購読数】 2000年 2021年 対比
——————————————————————————
・一般紙 4,740万部 2,869万部 60%
・スポーツ紙 637万部 215万部 34%
・総世帯数 4,741万世帯 5,826世帯 123%
・一般誌購読世帯 100% 49%
※参考:日本新聞協会
21年間で、一般紙の発行部数は4,740万部から2,969万部へと60%に減っています。世帯あたりでは2紙とっているところもあるので(拙宅)、正確には言えません。当方が日経新聞、家人は朝日と芸能、観光、食の雑誌です。次女の世帯は新聞をとっていないという。固定電話もない。代わりにインターネットのWi-Fiがあります。
2000年にはほぼ100%の世帯が新聞をとっていましたが、2021年には60%に減っています。内容では90%、40%くらいでしょう。新聞協会の発行部数は「広告のため」20%から30%くらい上げ底とも言われますが、同じ率の上底なら、推移は正確に出ているでしょう。
※参考:新聞の発行部数と世帯数の推移 – 日本新聞協会
日本には、世界にも稀(まれ)な宅配制度があって新聞王国だったのですが、その王国はない。とくに2022年の新聞購読数は急落し、朝日は45万部(-9.5%)、産経17万部(-14.9%)と減少が大幅です。地方紙も類似の減少割合であり、西日本-9.7%、京都新聞-7.9%、神奈川新聞-5.8%、徳島新聞-5.3%です
※参考:日本新聞協会
世帯の購読紙の内容では、全国紙が33.1%、ブロック紙が23.5%、地方紙が23.5%です。ブロック紙とは、中日新聞や西日本新聞のように、県単位の地方紙より広く、県をまたぐ新聞です。妹が住む温泉の別府市では、地元紙の大分合同新聞が多い。
読売、朝日、毎日、産経の全国紙の購読世帯数が3分の1しかないことに驚きます。
購読世帯の世代は、以下です(2020年)。
70代以上 83%
60代 78%
50代 67%
40代 50%
30代 43%
20代 33%
※参考:新聞購読率ってどのくらい?購読者像を「年代」と「地域」から分析【2021年版】- Shufoo!
60代・70代の約80%に対して、30代・20代は約38%です。全国紙は1/3くらいなので、60代・70代で約27%、30代・20代では13%でしょう。
60歳以上の高齢世帯では、全国紙の購読が27%、20歳から40歳では13%ということです。
衰えた新聞が世論と選挙に与える影響
全国紙・ブロック紙・地方紙が、世論と選挙に及ぼす影響は、2000年の半分に衰えています。
◎2000年代は、新聞世論に支えられてきた政治家の終わりを意味します。なお、岸田首相は新聞の世論調査では、20%台(毎日新聞)から35%(保守系の各紙)です。
◎不支持率が支持の約2倍と高いことは、過去の内閣ではなかった岸田政権の特徴です。これは、何を意味するか。
過去風の新聞記事の世論では、解散か、辞任が間近に見えます。ところが、不思議に続いています(新しい現象)。
しかも過去の自民党では不可能な政策だった「防衛費5年で2倍(GDPの2%:11兆円)」と、セットの増税すら、妙に生き生きして言っています。これは、岸内閣の安保条約以来、自民党の最大の政策です。
過去、新聞反支持が60%にもなる首相は、レーム・ダックになり、自民党の結党以来最大の政治課題を実行するどころではない。
この新現象は、岸田首相を動かす勢力が
・2020年のコロナ以降の購読数減が10%に近く激しくなって衰退が、会社の財政基盤の臨界点にまで進んだ新聞世論ではなく
・別の何ものかに変わったことを示すでしょう。なお、新聞も、防衛費2倍に対する反対の論は弱い。
その「何ものか」はまだ見えない。米国の、民主党~国務省の「古い軍産共同体」である可能性が最も高い。
※筆者注:軍隊内の派閥である「新しい軍産共同体(世代は若い)」は、大統領離任以来、トランプ側についているようです(表の情報はない)。ガソリンエンジンの内燃機関をひっくり返す革命になる電気自動車(EV)のイーロン・マスクも、トランプ側です。
財政基盤が臨界点に近くなった新聞社・放送局
企業は、売上が50%も減れば破産します。朝日新聞社のメディア・コンテンツ事業の収入は、2018年が3,530億円、2022年3月期は、2,329億円に減っています。4年で34%減、1年では10%減っています。7年で売上は半分になっているのです。
1年に10%売上が減り続け(7年で半減)、上昇する見込みがない企業を想定してください。「もうそれは、潰れている」ということです。今は、1990年代までの形骸しか残ってない。
購読料以上に、広告費の現象が激しい。新聞とTV広告費の多くは、電通(グループ年商1.2兆円)が企業から受けて、メディアに差配しています。
企業化したメディアの編集者はスポンサー忖度
日本のメディア情報を支配しているメディア王は、電通です。
電通は、自民党との関係が深い政商です。財政基盤が強かった時代までは左派だった朝日も含んで、電通の仲介で総与党になったのです。
しかし電通そのものの、広告仲介の収入も50%に減っています。過去最高の売上は8年前、2014年の、2兆3093億円でした。2022年は1兆2403億円です。これも、新聞の購読数、TVの視聴率と同じように、メディアの凋落を示すものです。
企業からの広告の依頼が、約10年で半分に減ったからです。このため、健康食品の「世田谷さん」のコマーシャルが異常に目立ちます。
現在の売上は、経営の臨界点になるピークの54%です。このため、電通は、立派だった本社ビルを売り(リースバック)、東京五輪の事業で、不正なリベートを得ていたのです(逮捕された高橋容疑者が総帥)。電通には、大学で同じクラスだった優しい性格の友人が入っていました。今、どうしているのか。
財政基盤が下がるとメディアも営利企業ですから、有力スポンサーにおもねって記事を曲げます。
当方にも、1990年代の記憶があります。チェーンストアの専門誌『販売革新』に、「チェーストアの1位、ダイエーは、時価で2兆円のリースの残債負債を抱え、事実上破産している」という主旨の記事を、空気は読まず書いたところ、ダイエーと編集部から、訂正記事の依頼がありました。
ダイエーは『販売革新』の一番の購読者であり、広告スポンサーだったからです。資本主義のなかで株式会社化したメディアの本質は、そういったところにあります。
スポンサーのご機嫌を、直接に、あるいは間接に損なう記事は、書けない。これが、広告料が購読料と並ぶ収入であるTV、新聞、雑誌の本質です。
多くの雑誌は、資産バブル崩壊の1990年代から、広告費が激減したという原因で、赤字の財政が続かず廃刊されたのです。赤字では、雑誌経営はできない。
2000年代の日本のメディアが、総じて、偏向してきた理由は、
1. 売り上げ減少で、財政基盤が弱くなったこと
2. スポンサーにおもねる必要が出てきたこと
3. 株主・金融資本・政府におべっかを使う経営的な必要が出てきたこと
自民党政府も、広告の有力なスポンサーです(政見広告、選挙広告)。岸田首相は、政府のマネーを使ってコロナワクチンのTVコマーシャルに、本人が出ています。
ジャーナリストではなくサラリーマンになった記者
メディアの編集者、TVのディレクターは、会社の売上と広告費を増やす記事、番組を創ることが職務の使命です。
記者が書いた記事は、編集と掲載の大きさ紙面決める割り付け(編成)で、内部評価されています。記事の方向が編集方針に合わないと判断されれば、カットされます。
2022年7月8日以来、安倍首相暗殺の複数犯を示唆する記事は、全部のメディアから「なぜか100%カット」されます。サラリーマンである記者も会社方針を忖度して、取材はせず、書くこともない。
米国の不正選挙、ウクライナ戦争の真実、コロナワクチンの副作用、2年間で12万人ともいう超過死亡数についての記事も同じです。書くと、どこかにいる、スポンサーのご機嫌を損ねるからです。
広告費は、購読数と視聴率が取れないと増えない。事実の公正な報道ではなく、スポンサーと、主たる読者層である高齢者へのポピュリズムに配慮した報道になるのは、当然でしょう。若い世代はTVの視聴時間が短い。新聞もとっていません。奴隷時代の黒人だった「Invisible men」と同じロスト・ジェネレーションです。SNSとスマホがメディアです。
内閣のマスコミ対策費
官房長官は、何に使っても領収証は要らない官房機密費(菅内閣、岸田内閣では1年に13億円)を使っています。
安倍内閣では、8年で95億円を使いました(1年平均12億円。古風な現金の札束。金庫に財務省職員が補充する。銀行振り込みでは足がつきます)。
安倍内閣では、メディアの幹部にも、機密費が現金で配られていました。「安倍の厚意」ですという言葉で…頻繁に開かれていた「総理を囲む会」に招かれることは、メディア幹部の名誉だったのです。
自分もここまで、来たか(出世したか)…。数千人が招待された桜を見る会も、同じ効果でした。民主政治とは、選挙です。
得票数が政治権力を与えます。私も万一招かれれば、一張羅を着て行ったかもしれないので、偉そうに言えません。小学校卒業のとき、当時はあった、1名の県知事賞(長崎県)をもらって素直にうれしかったのです。
党の総裁と幹事長は、自分の裁量で選抜して、国民の目には不透明な政治資金を配っています(税がもとになった政党助成金:総額315億円/年)。これが総裁と幹事長の権力の源です。
金権政治、金権マスコミは、政治とメディアの基礎部分です。メールマガジンで、以上の裏の真実が書けるのは、メールマガジンの収入は、有料版の1人600円/月の購読料だからです。
創刊以来、広告の依頼は多数ありましたが、丁寧にお断りしました。「広告は載せない方針です」と答えると重ねての依頼はなくなります。
スポンサーはいない。いや無料版・有料版の不特定の読者がスポンサーです。ただし著者には、誰が購読しているか、感想や質問のメールがこないかぎり分からない。配信と読者管理は、『まぐまぐ」が行っていて、アドレスは著者に分からない仕組みです。
インターネットの視聴時間
政府は、メディアの視聴時間の調査をしています(1日あたり:全世代)。
・TV:3.7時間(わずかに漸減の傾向)
・インターネット:2.9時間(9年間で2倍に増加)
・新聞:0.14時間=8.4分(9年間で40%減少)
※参考:主なメディアの利用時間と行為者率(2021年) – 総務省
全世代の1人平均では、新聞の購読時間が0.14時間(8.4分)と極端に短くなっています。新聞をとっている世帯(60%)も大きな見出しを、感情で見るだけでしょう。
記事を読んで考える時間はかけていない。文章は論理です。現代人の、文章を読んで考える論理的な読解力は、極端に弱くなっているでしょう。短いキャッチ・フレーズ的な、メッセージを感覚的に受け取って、判断しています。
本の種類は少ない、名文の漢文を読んでいた寺子屋・塾の時代とは、様変わりしています。
10代から本を読む時間と、文章を書く時間が、たぶん10倍以上は長かったので、改めてこれを見て、信じられない思いです。
TVは1日3.7時間。つけているだけの時間が多いでしょう。能動的な働きが必要なのは、スマホとインターネットです。一日中、スマホと切り離せない生活としている50歳代以下は多いと見ています。
スマホの利用時間は、中学生60から90分(学校に行くため)。高校生180分(3時間)以上。大学生60分から90分、社会人が30分から60分と出ています。4時間以上の人も35%(3人に1人)です。
世界中が、スマホの、短いメッセージ時代です。使用時間は、アンケートではなく、インターネット回線の利用時間として正確に測られています。
メディアの転換の時代
以上のように、2000年代はメディア転換の時代です。インターネットでは、自分の興味のあること好みのものしか見ない。この点が情報網羅的な新聞と違います。気に入らないものは「リセット」か、見ない。他のサイトに飛ぶ。これが、現代の情報への態度です。
マクルーハンが言ったように、メディアはメッセージです。どのメディアであるかということに、内容以上のメッセージがある。メッセージとは、単に情報ではなく方向性をもっていて、感覚的な判断をさせるものです。
論理的に考なければ発言できない、文章の言葉ではなく、衣服や表情、叫びのようなものです。とっさの叫びが、メッセージです。現代人は、鳥類のように、単純な文法の叫びである仲間の鳴き声に反応することが多くなったと言えるでしょう。吉本の芸人の、ボケやツッコミの、キャッチ・フレーズのようなものに近い。
論理の言葉が少ない、アニメへの至近距離がわれわれの世界。仮想人間を使うメタバースで、この傾向は加速するでしょう。世界のアニメ化です。誰も、これを止めることはできない。受け入れることしかない。これが、21世紀の2025年からでしょう。近代は新聞が民主主義を作ってきたのですが、もう、その復活はない。
事実と論理を読める人は5%
事実と論理で組み上げる当方のメールマガジンは、たぶん人口の5%程度にしか読まれないでしょう。5%という数字は意味があります。標準偏差の2倍の、5%のテールの領域です。しかしこの5%の人たちが、社会や経済を変えます。船井幸雄は、10万人(1%)と言っていました。1万人の会社で100名に相当します。1000人なら10人。ほかは、あれやこれや言っても、結局は、左右を見て横並びで追随する人たちです(空気に流される人々)。
有料版の読者の方は、職業は様々でも、たぶん5%に属しています。または1%の、埋もれた社会的エリートかもしれません。
コメント