トランプ氏の目論見は、大統領選に勝てば、新たな通貨制度、貨幣制度を導入するつもりでしょうね。
・・・下記記事の見立てとは違いますが。。。
米国の負債は絶対に返せないので、リセットするしかないです。
ビットコインは本来、主権国家の発行する通貨を中央銀行が管理・監督するという近代金融システムを否定し、仲間内(Peer to Peer)での決済可能通貨をめざすものだから、米連邦準備制度(FRB)や政府内の他の機関によって管理されているわけではない。むしろ、匿名による取引によって、麻薬取引のような不法行為を助長する面があった。
いずれにしても、ビットコインは国家による管理にまったくなじまない。だからこそ、トランプ自身、大統領在任中には、実にまともな発言をしていた。2019年7月12日には、つぎのようにツイートしていたのである。
「私はビットコインやその他の暗号通貨のファンではない。その価値は非常に不安定で、薄い空気に基づいている。規制されていない暗号資産は、麻薬取引やその他の違法行為を含む違法行為を助長する可能性がある。」
ビットコインのような暗号通貨決済に対しては、米政府は制裁を科すことができない。つまり、暗号通貨の利用が世界中に広がれば、相対的にドルの優位性が弱まりかねないのだ。それにもかかわらず、暗号通貨取引所の運営などで短期的な利益を見込める者から多額の寄付を得られれば、長期的なアメリカの影響力がどうなろうともかまわないというのがトランプの目論見のようにみえる。

トランプが暗号資産寄付欲しさに「ビットコイン大国宣言」
ドナルド・トランプ前大統領は7月27日、テネシー州の州都ナッシュビルで開催されたビットコイン会議で1万人以上を前に演説し、「米国は地球上の暗号の首都となり、世界のビットコイン超大国になる」と約束した(下の写真)。具体的には、徹底的な規制緩和を行い、「戦略的国家ビットコイン備蓄」(strategic national Bitcoin stockpile)を創設する。
この日、トランプは、この3年半の間、現政権は暗号とビットコインに対して、だれも見たことがないような戦争を仕掛けてきたが、自分が当選すれば、「ジョー・バイデンとカマラ・ハリスの反暗号聖戦は終わる」とし、「私が就任した瞬間、迫害は止まり、あなた方の業界に対する敵視は終わる」とした。
そのねらいは、もちろん、多額の寄付である。演説のなかで、トランプは、「ビットコインと暗号での寄付を受け入れるアメリカ史上初の主要政党候補者」であることをアピールした。さらに、自身の選挙キャンペーンがこの2カ月で暗号通貨による寄付から2500万ドルを集めたことまで明らかにした。

ビットコインの備蓄
演説で明らかにされた「ビットコイン備蓄」の創設は、決して荒唐無稽な提案ではない。なぜなら、米国政府は、ハッカーやさまざまな法執行活動から押収した21万ビットコイン(約140億ドル相当)を保有していると言われているからだ。
実は同日、シンシア・ルミス米上院議員(共和党)は、「戦略的ビットコイン準備金」(strategic Bitcoin reserve)を設立することで米ドルをインフレ上昇から強化し、急速に進化する世界金融システムにおける米国のリーダーシップを確固たるものにするという提案を発表した。どうやら、トランプ提案と、ルミス提案は対応関係をもっていたようだ。

米国は現在、金や石油など、米国の国家安全保障と独立に不可欠な特定のハード資産の戦略的準備を継続している。これに倣って、戦略的ビットコイン準備金(備蓄)を設立し、デジタルハード資産で米ドルを補強しようというのである。このビットコイン備蓄は、ビットコインを20年間保有することが求められるが、その期間中に支払いに使用できるのは、米国の国家債務の返済のみであるという。
具体的な法案の内容は、(1)米財務省が運営する安全なビットコイン保管庫の分散型ネットワークを構築し、国のビットコイン保有に対して最高レベルの物理的およびサイバーセキュリティを確保する、(2)一定期間にわたり100万単位のビットコイン購入プログラムを実施し、米国が保有する金準備の規模と範囲を反映させながら、ビットコイン総供給量の約5%の株式を取得する、(3)連邦準備制度と財務省内の既存の資金を分散することで賄う、(4)個人ビットコイン保有者の自己管理権を肯定し、ビットコイン備蓄は個人の金融の自由を侵害しないことを強調する――といったものである。
共和党綱領も暗号通貨重視
どうやら、「もしトラ」となれば、本気で暗号通貨を重視する政策を採用するようだ。すでに、7月8日に共和党全国委員会の綱領委員会によって承認され、同月15日の共和党全国大会で正式に採択された綱領では、「共和党は、民主党の非合法かつ非アメリカ的な暗号取り締まりに終止符を打ち、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の創設に反対する」と宣言している(CBDCは中国が先行して実証実験を広げている[詳しくは拙著『知られざる地政学』〈下巻〉を参照])。さらに、「私たちはビットコインを採掘する権利を守り、すべてのアメリカ人がデジタル資産を自己管理し、政府の監視や管理から自由に取引する権利をもつことを保証する」とのべている。
サトシ・ナカモトの発明したビットコイン
ここで、暗号通貨やビットコインについて、あまりよく知らない方に向けて補助線を引いておこう。ビットコイン(Bitcoin)は、ブロックチェーンを利用して取引される暗号通貨だ。たとえば、ビットコイン取引がどこかで行われると、その取引データはブロックチェーン参加者によって検算が行われる。その際、取引データは暗号化される。その値は不可逆性をもつために元のデータを読み取ることができない。この取引データのまとまりをブロックと呼び、それを時系列的につなげたものがブロックチェーンということになる。
ビットコインは、2009年にサトシ・ナカモトというペンネームの人物によってはじめられた。ただし、それがだれかはいまも判明していない。2024年3月14日、ロンドンの高等法院は、ビットコインを発明したと主張するオーストラリアのコンピューター科学者クレイグ・ライトは、暗号通貨の発明者である「サトシ・ナカモト」ではないとの判決を下した(「ロイター電」を参照)。これは、ツイッター創業者のジャック・ドーシーが立ち上げた会社ブロックが率いる有力グループがライトを裁判にかけたもので、ドーシーは、審理を監督していたジェームズ・メラー判事の判決文をXで紹介している。

(出所)https://www.nytimes.com/2024/05/21/business/bitcoin-satoshi-craig-steven-wright.html
国家とは相容れないビットコイン
暗号通貨は、フォルダやハードドライブに保存されているわけではない。「あなたが保有する暗号通貨の量を示す証拠は、ブロックチェーンに保存される」だけだ。この台帳は、新しいビットコインが採掘されたときや、だれかが自分の暗号通貨を移動したときなど、新しい取引のたびにネットワーク全体で更新される。個人の暗号通貨にアクセスするには、ウォレット(財布)の作成時にコードで生成される秘密鍵や複雑なパスワードが必要となる。ビットコインの場合、秘密鍵は256ビットのパスワードで、これは暗号言語であり、数十文字のバリエーションがある。秘密鍵は、暗号通貨を使って取引を行うための固有の署名を作成する。秘密鍵は、暗号取引所が提供するアプリである専用のバーチャルウォレット内に保管することができる。ウォレットは、暗号通貨を購入するためにサインアップすると手に入る。複雑なパスワードは、ハードウェアウォレットや、スマートフォンやコンピューターに保存することもできる。

ビットコインは本来、主権国家の発行する通貨を中央銀行が管理・監督するという近代金融システムを否定し、仲間内(Peer to Peer)での決済可能通貨をめざすものだから、米連邦準備制度(FRB)や政府内の他の機関によって管理されているわけではない。むしろ、匿名による取引によって、麻薬取引のような不法行為を助長する面があった。ただし、アメリカの場合、2014年に米内国歳入庁が定めた状況下で、税金の対象とされた。一般的に、納税者は暗号通貨の取引を米ドルに換算して内国歳入庁(IRS)に損益を報告することになっている。州によっては、オハイオ州のように、企業が暗号通貨を使ってさまざまな税金を支払うことを認めているケースもある。
いずれにしても、ビットコインは国家による管理にまったくなじまない。だからこそ、トランプ自身、大統領在任中には、実にまともな発言をしていた。2019年7月12日には、つぎのようにツイートしていたのである。
「私はビットコインやその他の暗号通貨のファンではない。その価値は非常に不安定で、薄い空気に基づいている。規制されていない暗号資産は、麻薬取引やその他の違法行為を含む違法行為を助長する可能性がある。」
バイデン政権の暗号通貨政策
バイデン大統領は2022年3月9日、「デジタル資産の責任ある開発の確保に関する大統領令」を発出した。「世界の金融システムにおける米国のリーダーシップを強化するため、技術および経済競争力における米国のリーダーシップを促進する」といった記述はみられるが、暗号通貨やブロックチェーンを管理したり、監督したりする姿勢が示されていたわけではない。
ただ、米証券取引委員会(SEC)は「暗号通貨取引所潰し」をはじめる。ゲーリー・ゲンスラー委員長はビットコインのような暗号トークンを証券に分類できると判断し、「投資契約」”に適用される規制の対象としたのである。

昨年6月5日、SEC は世界最大の暗号資産取引プラットフォームであBinance.com を運営するバイナンス・ホールディングス・リミテッド(以下、バイナンス)、およびこれらの創業者であるChangpeng Zhao(趙長鵬)を、さまざまな証券法違反で起訴したのだ。そのなかには、無登録の国内証券取引所、ブローカーディーラー、清算機関の運営のほか、バイナンスとBAM トレーディングは、いわゆる取引所トークンであるBNB、いわゆるステーブルコインであるバイナンスUSD(BUSD)などを含む、バイナンス独自の暗号資産の無登録での提供および販売などの容疑がかけられていた。6 月6 日になると、SEC は、暗号資産取引プラットフォームを無登録の国内証券取引所、ブローカー、清算機関として運営しているとして、コインベース(Coinbase)を起訴した。
こうした過去の経緯から、7月27日の演説で、トランプは、「暗号をつぶそうと躍起になっている左翼ファシストや全体主義者に終止符を打つ 」と大言壮語した。このとき、トランプは、カマラ・ハリスもそうした「ファシスト」の一人だと指摘した。この日の演説で歓声がもっとも大きかったのは、トランプが大統領就任初日に、危険な暗号スキームを取り締まってきたSECのゲンスラー委員長を解任すると発言したときだった。
暗号通貨で自らの首を絞めるアメリカ
暗号通貨は、ドルを基軸通貨とする世界貿易体制を切り崩しかねない。拙著『帝国主義アメリカの野望』に書いたように、通貨ドルによる決済を理由に、米政府は世界中で行われる金融取引に制裁を科してきた。
しかし、ビットコインのような暗号通貨決済に対しては、米政府は制裁を科すことができない。つまり、暗号通貨の利用が世界中に広がれば、相対的にドルの優位性が弱まりかねないのだ。それにもかかわらず、暗号通貨取引所の運営などで短期的な利益を見込める者から多額の寄付を得られれば、長期的なアメリカの影響力がどうなろうともかまわないというのがトランプの目論見のようにみえる。
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